

アレルギー性結膜炎の目薬の処方は、基本的に「抗アレルギー点眼薬」を土台に組み立てられます。点眼治療が主体で、病型・重症度に応じて薬剤を選択する、という考え方がガイドライン解説でも示されています。
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)について(解説資料)
抗アレルギー点眼薬には大きく分けて「抗ヒスタミン点眼薬」と「メディエータ遊離抑制点眼薬」があり、特に“かゆみ”が前面に出るタイプでは抗ヒスタミン系が選ばれやすい、という整理がされています。
慶應義塾大学病院KOMPAS:アレルギー性結膜炎
ここで重要なのは、「かゆみ=強い薬にすぐ切り替える」ではない点です。現場では、点眼回数の確保、アレルゲン対策(花粉・ダニ)、コンタクトレンズの扱い、点眼手技(目頭を押さえるなど)も含めて効き目が変わります。薬を増やす前に、処方意図(いつ・何回・どの順で)を確認するだけで改善するケースもあります。
また、皮膚のかゆみに悩む人は、もともとアレルギー体質(アトピー素因)を持つことが少なくありません。皮膚の炎症が強い季節は、目も同じアレルゲンで反応しやすくなり、目薬の処方が必要になる頻度が上がります。「皮膚は治っているのに目だけ治らない/逆もある」というときは、アレルギー反応の“入口”が複数あるサインなので、目だけ・皮膚だけの自己流対策で粘らないほうが安全です。
抗アレルギー点眼薬だけでかゆみや充血が抑えきれないとき、あるいは角膜に傷ができるなど炎症が強いときに、ステロイド点眼薬が処方に追加されることがあります。重症ではステロイド点眼薬も併用する、という説明は医療情報記事でも確認できます。
健活手帖:花粉症とドライアイ対策(4)
ステロイド点眼薬は効きが早い反面、長期・頻回使用で眼圧上昇(ステロイド緑内障)や感染リスクなどが問題になり得るため、医師の指導下での使用が前提です。少なくとも「症状が落ち着いたから、余った分を来年も使う」という運用は避けるべきで、花粉の時期に毎年繰り返す人ほど、受診して“同じ処方でよいか”を確認したほうが安全です。
意外に見落とされやすいのが「ステロイドが必要になる状態」と「単にかゆみが強いだけ」の区別です。たとえば、痛み、強い異物感、視力低下、片目だけ悪化、黄色い目やに、コンタクト装用中の急な悪化などは、アレルギー性結膜炎だけでは説明できないことがあります。こうした場合、ステロイド点眼薬を自己判断で使うと、感染性角結膜炎(ヘルペスなど)を悪化させるリスクがあるため、処方の変更や中止が必要になることもあります。
ガイドラインの解説資料では、アレルギー性結膜炎を含むアレルギー性結膜疾患の治療は、抗アレルギー点眼薬を基礎にしつつ、効果が不十分な場合に免疫抑制点眼薬の併用を推奨し、さらに必要ならステロイドも加える、という“ステップ”が紹介されています。
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)について(解説資料)
免疫抑制点眼薬(例:シクロスポリン、タクロリムス)は、重症例や再燃を繰り返すタイプで重要になります。効き始めがゆっくりなこともある一方で、ステロイド依存(やめるとすぐ悪化する状態)を減らす方向で治療設計できる点が強みです。重症治療では、ステロイドより効果発現は遅くても、併用で改善しステロイド離脱が可能になった、という説明も学会情報にあります。
日本アレルギー学会:重症アレルギー性結膜疾患の治療
皮膚のかゆみに悩む人向けの観点でいうと、免疫抑制点眼薬が話題に上がるのは「目の症状が長引く」「毎年重い」「まぶたの皮膚炎も併発しやすい」など、体質由来の炎症が強いケースです。皮膚科で外用薬をもらっている人ほど、“目は別物”と切り離さず、眼科で目の治療も同時並行に組み立てると、炎症の悪循環(かゆい→こする→バリア低下→さらに反応)が止めやすくなります。
アレルギー性結膜炎の治療薬は市販にもありますが、市販薬には防腐剤が入っていることが多く、ドライアイを併存している人では悪化しやすいので注意が必要、という指摘があります。防腐剤が涙液層の少ない目の表面に留まり、角膜などに炎症を起こすリスクがある、という説明もあります。
健活手帖:花粉症とドライアイ対策(4)
ここは検索上位記事でも触れられやすい論点ですが、もう一段踏み込むと「処方薬でも防腐剤はゼロではない」「点眼本数が増えるほど総暴露量は増える」という現実があります。つまり、医師が処方で本数を増やすときは、症状だけでなく“目の表面が薬に耐えられるか”も考慮していることが多いのです。
皮膚のかゆみに悩む人は、皮膚バリアが弱い時期に粘膜(結膜)も刺激に弱くなることがあります。そこで大事なのが、次のような「生活の微調整」です(意味のない根性論ではなく、刺激の総量を下げる発想です)。
・😷 花粉・ハウスダストの時期は、帰宅後すぐに洗顔+シャワーで付着アレルゲンを落とす
・🧴 目の周りの皮膚炎があるときは、こすらず冷やす(こする行為は“かゆみ神経”を増やしやすい)
・💧 目がゴロゴロするときも水道水で洗うのは避け、洗眼用の液や点眼薬で対応する(アカントアメーバ角膜炎リスク)
(※水道水洗眼の注意点は上記記事で明確に述べられています)健活手帖:花粉症とドライアイ対策(4)
意外な落とし穴として、点眼薬の刺激や防腐剤が原因で「アレルギーが治らない」と感じる人がいます。症状が長引く場合、真の原因は花粉ではなく、点眼による刺激性結膜炎・薬剤性眼瞼炎(まぶたのかぶれ)になっていることもあるため、「処方された薬なのに合わない気がする」を放置しないのがポイントです。
検索上位の多くは薬の種類(抗アレルギー点眼薬、ステロイド点眼薬、免疫抑制点眼薬)を中心に説明しますが、現実には“目をこする癖”が症状を固定化させることがあります。かゆみは一時的にこすると軽くなりますが、機械刺激で炎症が続き、結膜が敏感な状態に維持されると、同じ処方でも効きが悪く感じやすくなります。
皮膚のかゆみが強い人ほど、無意識に顔全体を触りやすく、目の周りも例外ではありません。そこで、処方を最大限に活かすための「行動の置き換え」を提案します(根性ではなく仕組みで勝ちます)。
・🧊 かゆいときは「こする」代わりに、清潔な保冷剤をタオル越しに数十秒あてる
・🧻 ティッシュで目頭・目尻を押さえる(こすらず圧迫でやり過ごす)
・📱 画面作業が長い人は、意識的に瞬きを増やす(涙液が薄いと刺激に弱くなる)
・🧼 目の周りのスキンケアは低刺激に寄せ、香料・アルコールが強いものは症状が強い時期だけでも休む
なお、目のかゆみを「花粉症だから」と決めつけるのは危険で、目が痛い・見えにくい・片目だけひどいなどがあるなら、点眼の処方以前に眼科で鑑別が必要です。診断を一度きちんと受けたうえで市販薬を活用する、という方針は医療情報でも推奨されています。
健活手帖:花粉症とドライアイ対策(4)
処方薬を「強い/弱い」で選ぶより、症状の正体を見極め、基礎治療→追加治療→副作用監視という流れに乗せるほうが、結果的にかゆみの総量は減らしやすくなります。ガイドラインが“段階的な治療”として整理しているのは、こうした遠回りに見えて最短のルートを示すためです。
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)について(解説資料)
参考:ガイドラインの位置づけ(根拠・合意形成の考え方)
日本眼科アレルギー学会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)
参考:市販点眼の防腐剤リスク、水道水洗眼NG、ドライアイ併存の注意点
健活手帖:花粉症とドライアイ対策(4)