

皮膚のかゆみは「乾燥」だけでなく、炎症がくすぶっている状態(赤み・熱感・掻破で悪化)で出やすくなります。そこで注目されるのが、米ぬか由来ポリフェノールとして知られるフェルラ酸です。
企業発表ベースではありますが、フェルラ酸には抗炎症効果などの美容効果が期待される、という整理がされています(化粧品領域の説明として)(新日本製薬のリリース)。
ここで重要なのは、「抗炎症=かゆみが必ず止まる」ではない点です。かゆみには少なくとも、
・乾燥・バリア低下由来(入浴後、冬、エアコンで悪化)
・アレルギー/接触皮膚炎由来(特定の衣類・洗剤・化粧品で悪化)
・汗・摩擦由来(首、肘裏、膝裏など)
・真菌や細菌など感染が絡む(悪臭、ジュクジュク、輪郭がはっきりした紅斑)
・ストレスや睡眠不足で閾値が下がる(夜間に強い)
のように複数タイプがあり、サプリは「炎症の土台」に寄与しても、原因そのもの(刺激物・感染・アレルゲン)を除かないと残ります。
また、フェルラ酸は“飲む”より“塗る”研究のほうが見つけやすい傾向があり、飲用サプリでの皮膚かゆみ改善を断言できる強い臨床データは、一般の検索上位記事では整理が甘いことがあります。よって、期待値は「補助線」くらいに置き、スキンケアや生活要因の是正とセットで設計するのが現実的です。
参考(研究の方向性がわかる日本語ソース)
皮膚バリア(タイトジャンクション)とフェルラ酸の関係:「フェルラ酸」と「センブリエキス」によりタイトジャンクションが緩和し皮膚透過が促進(新日本製薬)
かゆみ体質の人は、皮膚の「バリア機能」が落ちていることが少なくありません。バリアが落ちると、刺激(汗・洗剤・繊維・花粉・乾燥した空気)が入りやすくなり、かゆみのスイッチが入りやすくなります。
少し意外なポイントとして、「成分が浸透しやすい=常に良い」ではありません。新日本製薬の発表では、フェルラ酸の添加によりタイトジャンクションを構成するタンパク質(クローディン)量が減少し、透過性が高まった、という結果が示されています(新日本製薬のリリース)。これは“塗布成分の浸透を高める”文脈では魅力ですが、かゆみが強い人にとっては「刺激が入りやすい状態」にもつながり得るため、肌状態によっては「攻めのケア」は慎重にしたほうが安全です。
つまり、フェルラ酸を含む何か(サプリ・化粧品問わず)に期待する場合も、最優先は「バリアの回復」です。現場で役に立つ優先順位は次の通りです。
・保湿(入浴後すぐ、毎日、量をケチらない)
・洗いすぎ回避(熱い湯・強いボディソープ・ゴシゴシ)
・衣類の刺激回避(化繊やウール直当てを避ける)
・室内湿度(40〜60%目標)
・掻破対策(爪、夜間の無意識掻き)
この土台が整ってはじめて、サプリの差が感じられる確率が上がります。
サプリは「飲む量」より「続け方」と「中止判断」が成果を分けます。皮膚のかゆみは日内変動や季節要因が強く、短期で結論を出すとブレやすいからです。
実務的な進め方は、まず“観察期間”を作ることです。
・開始前にメモ:かゆみの強さ(0〜10)、出る時間帯、部位、睡眠への影響
・開始後:2週間は同じスキンケア・同じ入浴条件を維持し、サプリだけ変える
・4週間で判断:かゆみスコア、掻破回数、夜間覚醒が減るか
この手順を踏むと、プラセボや気温変化に引っ張られにくくなります。
また、DHCに限らず「合わないサプリがかゆみを誘発する」ケースもゼロではありません。実際に、DHCのビタミンCで“体が痒い”“発赤が出た”“やめると消えた”という一般利用者の口コミが見つかります(@cosmeの口コミ)。口コミは医学的証明ではないものの、かゆみ体質の人ほど「何かを足したら悪化」を早期に検知し、無理に続けない判断が重要です。
チェックポイント(当てはまるなら中止・相談を優先)
・飲み始めて数日〜2週間で、かゆみや発疹が“明らかに増える”
・蕁麻疹様(盛り上がる、移動する)
・息苦しさ、唇・まぶたの腫れ
・下痢や腹痛が強い(吸収・腸内環境の乱れで皮膚が荒れることがある)
かゆみ対策でサプリに寄せすぎると、遠回りになります。効率を上げるなら「外からの刺激を減らす」「炎症の燃料を減らす」「睡眠で回復させる」を同時に回すのが現実解です。
具体的には、次の併用が“地味に効く”ことが多いです。
・保湿剤:セラミド系やワセリン系など、刺激の少ないものを継続
・入浴設計:熱い湯を避け、入浴後3分以内に保湿
・洗濯:柔軟剤・香料の見直し(香りが強いほど接触刺激のリスクが上がりやすい)
・寝具:汗を吸う素材にして、夜間のかゆみを下げる
・爪:短くして掻破ダメージを物理的に減らす
そして“意外に見落とされる”のが、かゆみの原因が皮膚だけで完結していないケースです。例えば、ストレスで交感神経が立ち、体温が上がって夜にかゆくなる人がいます。このタイプは、サプリを増やすより「就寝前の入浴温度」「カフェイン」「寝室の温度湿度」「スマホ光」を調整したほうが改善が早いことがあります。
参考(皮膚透過・バリアに関する示唆)
タイトジャンクション(TJ)とクローディン、透過性の実験結果:新日本製薬:フェルラ酸とセンブリエキスでTJ透過性が上がった報告
検索上位の記事は「成分がすごい」「口コミが良い」で終わりがちですが、かゆみの人に本当に必要なのは“撤退戦略”です。なぜなら、かゆみは「原因が複数」「悪化の引き金が多い」「掻くことで二次炎症が増える」という性質があり、合わないものを早く切るほどダメージが小さく済むからです。
おすすめは、次のような“やめ時”ルールを先に決めてから始める方法です。
・ルール1:かゆみスコアが開始前より2以上増えたら一旦中止
・ルール2:新しい発疹(赤い点・盛り上がり)が出たら中止
・ルール3:夜間覚醒が増えたら中止(睡眠悪化は皮膚回復をさらに遅らせる)
・ルール4:4週間で改善が乏しければ、別アプローチに切り替え(皮膚科・環境・アレルゲン)
この設計にしておくと、「サプリを飲んでいるのに、なぜか治らない」期間を短縮できます。さらに、サプリの効果が出た場合も“たまたま季節が変わっただけ”を除外しやすくなり、次の年の再現性が上がります。
最後に強調したいのは、かゆみが続く人ほど「感染」「湿疹」「アトピー」「接触皮膚炎」など、診断で方針がガラッと変わる領域が混ざりやすい点です。サプリはあくまで補助に置き、悪化サインがある場合は早めに専門家へ寄せるのが、最短で楽になるルートです。