外用抗菌薬一覧:種類・成分・かゆみへの正しい使い方

外用抗菌薬一覧:種類・成分・かゆみへの正しい使い方

外用抗菌薬の一覧と種類・かゆみへの正しい使い方

かゆみを感じて「とりあえず抗菌薬の塗り薬を塗っておこう」と思っているなら、それがかゆみを2倍以上悪化させることがあります。


この記事の3ポイント要約
💊
外用抗菌薬には複数の種類がある

バシトラシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシンなど成分が異なり、効く菌の種類や適応症状も違います。症状に合った薬を選ぶことが大切です。

⚠️
水虫のかゆみに抗菌薬は逆効果

抗菌薬は細菌には効きますが真菌(カビ)には効きません。水虫(白癬菌)に誤って使うと症状が悪化し、治癒が遅れることがあります。

🦠
使い続けると耐性菌が生まれる

皮膚患者の黄色ブドウ球菌のゲンタマイシン耐性は83%に達するというデータがあります。自己判断での長期使用は厳禁です。


外用抗菌薬一覧:市販薬・処方薬の主な成分と特徴

「外用抗菌薬」とは、細菌の増殖を抑えるために皮膚に直接塗る薬の総称です。いわゆる「抗生物質の塗り薬」と呼ばれるものがこれにあたります。かゆみを伴う皮膚炎や、傷口が化膿しているような場面で使われることが多いですが、一口に外用抗菌薬といっても、その成分と効き方は薬によって大きく異なります。


代表的な外用抗菌薬の成分と市販・処方区分を以下にまとめます。


成分名 代表的な薬品名 分類 主な適応
バシトラシン+コリスチン ドルマイシン軟膏 市販(第2類) 傷の化膿予防・とびひ・湿疹
バシトラシン+フラジオマイシン ドルマイコーチ軟膏(+ステロイド) 市販(指定第2類) 化膿を伴う湿疹・皮膚炎・あせも
オキシテトラサイクリン テラ・コートリル軟膏a(+ステロイド) 市販(指定第2類) 化膿を伴う湿疹・虫さされ・かぶれ
オキシテトラサイクリン+ポリミキシンB テラマイシン軟膏 市販(第2類) とびひ・毛嚢炎
クロラムフェニコール+フラジオマイシン+ナイスタチン クロマイ-N軟膏 市販(第2類) 化膿性皮膚疾患(抗真菌成分も含む)
クロラムフェニコール+フラジオマイシン クロマイ-P軟膏AS(+ステロイド) 市販(指定第2類) 化膿を伴う湿疹・皮膚炎
ゲンタマイシン硫酸塩 ゲンタシン軟膏0.1% 処方薬 表在性皮膚感染症・びらん二次感染
フシジン酸ナトリウム フシジンレオ軟膏2% 処方薬 伝染性膿痂疹(とびひ)・毛嚢炎
ムピロシン バクトロバン軟膏2% 処方薬 とびひ・MRSA感染を含む皮膚感染


市販で手に入る薬は主に「バシトラシン」「クロラムフェニコール」「フラジオマイシン」「オキシテトラサイクリン」などを含む製品が中心です。つまり市販薬で対応できる範囲は限られています。


一方、「ゲンタマイシン(ゲンタシン軟膏)」「フシジン酸(フシジンレオ軟膏)」「ムピロシン(バクトロバン軟膏)」は処方薬となります。とびひや毛嚢炎が広範囲に広がっているような場合は、皮膚科を受診して適切な処方薬を使うことが基本です。


ステロイド配合の有無も重要な選択ポイントです。ステロイドが入っている製品(ドルマイコーチ軟膏、テラ・コートリル軟膏a、クロマイ-P軟膏ASなど)は、かゆみや炎症を同時に鎮める効果がありますが、使用期間や適応症状に注意が必要です。


参考:薬剤師監修による化膿止め塗り薬の詳しい成分と選び方
【薬剤師が厳選】化膿止めにおすすめの塗り薬8選|選び方と注意点 - ミネドラッグ


外用抗菌薬がかゆみに「効く場合」と「効かない場合」の違い

外用抗菌薬が有効なのは、かゆみの原因が「細菌」による感染や炎症である場合に限られます。それが重要なポイントです。


皮膚のかゆみには多様な原因があります。細菌感染(黄色ブドウ球菌など)によるものには外用抗菌薬が有効ですが、真菌(カビ)であれば外用抗真菌薬、アレルギーや皮膚炎であればステロイド外用薬など、使う薬のカテゴリーがまったく異なります。


かゆみの「原因別」に使うべき薬を整理すると、次のようになります。


  • 🦠 細菌感染(とびひ・毛嚢炎・化膿):外用抗菌薬が有効
  • 🍄 真菌感染(水虫・カンジダ):外用抗真菌薬(ラミシールニゾラールなど)が必要。抗菌薬は無効
  • 🌿 アレルギー性・接触性皮膚炎:ステロイド外用薬が基本。抗菌薬は原則不要
  • 🔴 アトピー性皮膚炎の二次感染:ステロイド+抗菌薬配合薬(ドルマイコーチ軟膏など)が選択肢


特に間違いやすいのが「水虫のかゆみ」への対応です。


水虫は白癬菌という真菌(カビ)が原因なので、抗菌薬を塗っても菌を退治することはできません。それどころか、ステロイドを含む抗菌薬配合の塗り薬を使うと、免疫を抑制する作用が白癬菌の増殖を助けてしまいます。足の指の間がかゆくてじゅくじゅくしているとき、反射的に手持ちの塗り薬を使うのは危険です。これは要注意です。


外用抗菌薬を「かゆみ止め」として使うのは誤りです。外用抗菌薬の目的は「感染している細菌を抑えること」であり、かゆみを直接止める成分(抗ヒスタミン薬など)は含まれていません。かゆみが改善するとすれば、細菌感染由来の炎症が落ち着くからです。つまり外用抗菌薬を塗ったことで「かゆみが収まった」としても、原因が菌でなければ偶然か、他の成分(ステロイドなど)の作用による可能性が高いのです。


参考:水虫に対して外用薬の選択を誤ると症状が悪化する理由について
ステロイド・抗生物質「リンデロンVG」の解説 - 巣鴨千石皮ふ科


外用抗菌薬の「耐性菌リスク」——黄色ブドウ球菌の83%がすでに耐性

外用抗菌薬を正しく使わないことで生じる最大のリスクは、耐性菌の出現です。耐性菌とは、その抗菌薬がもはや効かなくなった細菌のことを指します。


特に深刻なのが、市販・処方を問わず以前から広く使われてきたゲンタマイシン(ゲンタシン軟膏)の耐性問題です。


こばとも皮膚科院長の小林智子医師による情報によると、皮膚科の患者由来の黄色ブドウ球菌のうち、ゲンタマイシンに耐性を持つ菌の割合は83%に達しているとされています。ゲンタマイシンが発売されたのは1967年で、日本では約40年以上前から耐性菌の増加が問題になってきた経緯があります。


これは数字として衝撃的です。


耐性菌が増える主な原因は以下のような行動です。


  • 💊 症状が改善したからといって途中で使用をやめる(菌が完全に死なず、耐性を獲得しやすい環境になる)
  • 💊 症状が収まった後も漫然と使い続ける(必要以上に菌が薬にさらされ耐性化が進む)
  • 💊 使用量が少なすぎる(薬剤濃度が低いと菌が耐性を獲得しやすい)


厚生労働省が主催する薬事・食品衛生審議会の議事録(2012年)でも、ゲンタマイシン硫酸塩外用剤は「安易に使われ過ぎてきたことで耐性菌が増加している薬剤」として言及されており、近年は皮膚科での使用を控える動きが出て耐性菌がやや減少傾向にあることも示されています。


耐性菌の問題は個人の話だけに留まりません。耐性は別の細菌に伝達され、接触を介して社会に広がるリスクがあります。これが原則です。


外用抗菌薬を使用する際は、医師から指示された量・期間を必ず守ることが大切です。自己判断で市販薬を長期間塗り続けることは、自分だけでなく周囲の人の治療を困難にする可能性もあります。自分のためにも、正しく使いましょう。


参考:ゲンタシン軟膏の耐性菌データと正しい使用方法
ゲンタシン軟膏(ゲンタマイシン硫酸塩)の解説 - こばとも皮膚科


外用抗菌薬のステロイド配合・非配合の選び方——かゆみがある場合の判断基準

かゆみのある皮膚トラブルに外用抗菌薬を使う場合、「ステロイド配合あり」と「ステロイド配合なし」のどちらを選ぶかが非常に重要な分岐点になります。


ステロイド(副腎皮質ホルモン)は炎症とかゆみを抑える力が強いため、かゆみが強い場合や炎症が赤く出ている場合には有効です。しかしステロイドには免疫を抑制する作用があるため、病原体の種類によっては逆効果になります。


  • ステロイド配合が向いているケース:細菌感染を伴う湿疹・皮膚炎・虫さされ・あせも(炎症とかゆみが目立ち、かつ化膿もある場合)
  • ステロイド配合が向いていないケース:水虫・カンジダ(真菌感染)。これらにステロイドを塗ると菌が爆発的に増殖しやすくなります
  • ステロイド配合が向いていないケース②:傷口が化膿しているだけで炎症が軽い場合(不要なステロイドを塗る必要がない)


ステロイドなしの外用抗菌薬(ドルマイシン軟膏、テラマイシン軟膏など)は、細菌感染の疑いはあるが炎症が比較的軽い場合や、子どもの傷などに使いやすいという特徴があります。


市販薬のステロイド配合品は「Weak(弱い)」ランクのものが中心です。市販ではストロングクラス以上のステロイドは販売されていません。それだけ副作用への配慮がされているということですね。


もし症状が5〜6日で改善しない場合や、使い始めてから逆に悪化している場合は、薬が合っていないサインです。そのままドラッグストアで薬を買い続けるのではなく、皮膚科を受診して原因を確認することが重要です。


参考:ステロイド配合外用薬と非配合薬の使い分けについて(シオノギ製品情報)
ステロイドのみの外用剤と抗生物質も入った外用剤の違い - シオノギヘルスケア


外用抗菌薬を使うときの「正しい塗り方」と「見落としがちな注意点」

外用抗菌薬の効果を最大限に引き出すには、正しい使い方を守ることが不可欠です。薬の種類が合っていても、使い方が間違っていると効果が出ません。


まず塗布前の準備として、患部を清潔な水で洗い流すことが基本です。汚れや古い薬が残ったまま重ねて塗っても、薬が菌に届きにくくなります。患部を清潔にすることが条件です。


次に「塗る量」についてです。外用薬の量の目安として皮膚科領域では「フィンガーチップユニット(FTU)」という概念が使われます。これは、人差し指の先端から第一関節までの長さに絞り出した量を指し、約0.5gで、手のひら2枚分の面積に塗る量の目安になります。


  • 🖐️ 手のひら1枚分の面積 → 0.25g(チューブ先端から約1cm程度)が目安
  • 👣 足の甲全体(約200〜300cm²) → 0.5〜1gが目安


少なすぎると効果が出にくく、かつ耐性菌が生じやすい環境になりやすいです。多すぎると皮膚の刺激になることもあるため、「薄く均一に」塗るのが基本の考え方です。


使用回数は薬品によって「1日1〜3回」など異なります。「なかなか治らないから多く塗ればいい」という考え方は、かえって副作用リスクを高めるため禁物です。


また「目の周り」への使用は避けてください。外用抗菌薬の多くは無菌製剤ではないため、眼に使用すると感染リスクが高まります。これだけは例外なく守るべきルールです。


さらに「顔」への使用は特に注意が必要です。顔の皮膚は薄く、ステロイド配合薬を使い続けると皮膚が薄くなる・毛細血管が浮き出る(酒さ様皮膚炎)などの副作用が出やすいとされています。顔のかゆみや湿疹には、市販薬でセルフ判断をせず、皮膚科への相談がおすすめです。


ニキビへの自己判断使用にも注意が必要です。外用抗菌薬をニキビに自己判断で塗ると、皮膚の常在菌バランスを崩して逆に悪化させるリスクがあります。ニキビにはニキビに適応のある抗菌薬(ダラシンゲルなど処方薬)が別に存在します。


参考:外用薬の正しい塗り方・フィンガーチップユニットについて
外用抗菌薬「ゲンタシン軟膏」の使い方と注意点 - 巣鴨千石皮ふ科