グリアジンとグルテニンとグルテンの違い

グリアジンとグルテニンとグルテンの違い

グリアジンとグルテニンとグルテン

この記事でわかること
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グリアジン・グルテニン・グルテンの違い

小麦タンパク質の役割(粘り・弾力)と、なぜ「こねる」とグルテンができるのかを整理します。

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皮膚のかゆみと関連しうる病態

小麦アレルギー、セリアック病、疱疹状皮膚炎、非セリアック性グルテン過敏症などを見分ける視点を紹介します。

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自己判断で迷走しない進め方

検査や受診の目安、除去のやり方、再導入の注意点を実務レベルでまとめます。

グリアジンとグルテニンとグルテンの違い

 

小麦に含まれる主要タンパク質のうち、グリアジンは「伸びやすさ・粘着性」に寄与し、グルテニンは「弾力」に寄与すると説明されています。
この性質の違う2つが、水を加えてこねる工程で絡み合い、粘弾性をもったグルテン(麩素)を形成します。
つまり「グルテン=単一成分」ではなく、「グリアジン+グルテニンが結びついてできるネットワーク」という理解が出発点になります。
この違いは料理にも直結します。例えばパン生地は水分が多く、よくこねることで薄い膜を作れるほどグルテン網が発達し、気泡を保持して膨らみに関与すると解説されています。

 

参考)https://www.kinkiagri.or.jp/library/foods/wheat-protein.htm

一方、うどんはパンより加水が少なめで、グルテン量や形成のされ方が異なり、コシや食感の設計が変わるとされています。

「こね方・加水・粉のタンパク質量」でグルテンの出来方が変わるため、同じ小麦でも体感が違うと感じる人が出る背景として押さえておくと整理しやすいです。

グリアジンと皮膚のかゆみの関連

皮膚のかゆみを語るとき、最初に切り分けたいのは「小麦アレルギー(IgEが関与する即時型)」なのか、「セリアック病や疱疹状皮膚炎のような自己免疫」なのか、あるいは「非セリアック性グルテン過敏症」なのか、という病態の違いです。
農林水産省の解説では、グルテン関連の疾患の説明の中で、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシーなどが挙げられ、グルテンを構成するグリアジンやグルテニンなど多様な小麦タンパク質成分が関連しうるとされています。
この「グルテン=全部まとめて悪い」ではなく「どの免疫反応で、どの成分が関わることがあるか」の視点が、皮膚のかゆみ対策では重要になります。
また、意外と見落とされやすいのが「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)」です。

 

参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/129.html

CRCグループのQ&Aでは、食後2〜3時間以内の運動でじんましん、呼吸困難、血圧低下など急性症状が出ることがあるとし、WDEIAではω5-グリアジンが関与することがあり、特異IgE検査(ω5-グリアジン)が診断に有用と説明しています。

皮膚のかゆみが「運動・入浴・飲酒・解熱鎮痛薬(NSAIDs)などの条件で増悪する」タイプなら、単なる肌荒れではなく、こうした病態の可能性も含めて医療機関で相談する価値があります。

グルテンと疱疹状皮膚炎のIgA

皮膚のかゆみの中でも、グルテンと強く結びつく病態として有名なのが疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis)で、強い痒みを伴う慢性の皮膚疾患として扱われます。
農林水産省の解説では、かゆみを伴う水疱性皮疹と、皮膚でのIgA抗体の沈着が見られること、さらにこのIgAが表皮トランスグルタミナーゼ(tTG3)に特異的な抗体である点が述べられています。
この「皮膚でIgAが沈着する」という免疫学的な特徴は、単に“なんとなくグルテンが合わない”という話とは別物で、診断手順や治療方針が変わる重要ポイントです。
医学レビューでも、疱疹状皮膚炎では表皮トランスグルタミナーゼ(TG3)が皮膚に沈着するIgAの標的抗原であること、また腸管側の免疫反応(セリアック病)との関連が整理されています。

 

参考)Dermatitis herpetiformis: path…

さらにFrontiersの解説では、疱疹状皮膚炎の治療としてグルテンフリー食(GFD)が選択肢で、循環抗体は消失し皮膚症状は改善する一方、皮膚のIgA沈着は年単位で残ることがあると述べています。

 

参考)https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2021.657280/full

「除去してすぐ治らない=関係ない」と早合点しないためにも、免疫学的に“遅れて残る所見がある”ことは知っておくと役立ちます。

皮膚の痒みが強く、肘・膝・臀部・頭皮などに左右対称に出る、掻くと悪化して小さな水疱やびらんを繰り返す、など典型像が疑われる場合は、自己流の食事調整だけで引っ張らず、皮膚科での検査(皮膚生検など)を相談するのが安全です。

 

参考)Dermatitis Herpetiformis

一方で、セリアック病はグルテンに対する異常免疫反応により小腸粘膜を自己攻撃する疾患で、腹痛や下痢などが出ることがあるとMedical Noteは説明しています。

 

参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%83%E3%82%AF%E7%97%85/contents/171018-003-XD

皮膚症状が主で消化器症状が軽いケースもあり得るため、「お腹は大丈夫だから腸は無関係」と決めつけない方がよい領域です。

グルテンと非セリアック性グルテン過敏症

非セリアック性グルテン過敏症(NCGS)は、セリアック病や小麦アレルギーとは別枠として議論される概念で、皮膚症状を伴う人が一定数いることが報告されています。
NIHのオープンアクセス論文では、NCGSが疑われた患者486人のうち29%に皮疹、18%に明確でない皮膚炎があり、共通点として「強いかゆみ」が目立ち、グルテンフリー食導入で速やかに改善する例があったと記載されています。
この報告は「全員が当てはまる」ことを意味しませんが、皮膚のかゆみが“外用薬で押さえにくい”のに食事で変動する場合、鑑別のヒントになります。
ただし、NCGSは診断が難しく、思い込みで小麦を悪者にしてしまう落とし穴もあります。

 

参考)https://celiac.org/wp-content/uploads/2017/10/jama_celiac_2017.pdf

除去を試すなら、少なくとも「いつから」「何をどれくらい除去したか」「皮膚症状(かゆみ・湿疹)の程度」「睡眠やストレス」「運動・入浴」などをメモして、再導入(チャレンジ)まで含めて設計しないと結論がぶれやすいです。

また、自己判断で長期の厳格除去を続ける前に、セリアック病の検査を先に行うべきという考え方が一般的で、検査前に除去すると結果が変わることがある点も注意点として知られています。

グリアジンとグルテニンの独自視点:皮膚と行動ログ

検索上位では「グルテン=腸」という説明に寄りがちですが、皮膚のかゆみは“体内要因”に加えて“増悪因子(行動)”が重なって見えることが多いので、記録の設計が効果を左右します。
例えばWDEIAの説明では、食後2〜3時間以内の運動で症状が誘発されることがあり得るため、食事内容だけでなく「運動・入浴・発汗・NSAIDs」などの前後関係をログ化する価値があります。
ここを押さえると、「小麦を減らしたら良くなった気がする」という曖昧な体感を、再現性のある仮説に変えやすくなります。
ログの取り方は難しくありません。次の5点だけでも、因果の見え方が変わります。

 

  • 📅 食事:小麦(パン・麺・揚げ物の衣)を食べた時間と量(ざっくりでOK)
  • 🏃 行動:食後の運動、長風呂、サウナ、飲酒の有無(開始時間)
  • 💊 薬:解熱鎮痛薬(NSAIDs)を飲んだか
  • 🧴 皮膚:かゆみの強さ(0〜10)と部位、発疹の写真
  • 😴 生活:睡眠時間とストレス要因(会議・締切など)

このログは「グルテンが原因か」だけでなく、「グルテン+条件(運動など)で跳ね上がるタイプか」を見抜くのに役立ち、医師に説明するときの材料にもなります。
そして、グルテンの正体が“グリアジンとグルテニンが絡み合ったもの”だと理解しておくと、食品選択が少し現実的になります。

小麦の加工特性(よくこねたパン、加水が少ない麺など)でグルテン網の作られ方が変わるという解説は、同じ小麦でも体感差が出る可能性を考える材料になります。

もちろん、症状の重いアレルギーや疱疹状皮膚炎が疑われる場合は自己実験の範囲を超えるので、受診と検査を優先してください。

皮膚のかゆみと小麦の関係を深掘りする参考(疾患の全体像・IgA/tTG3などの免疫学的背景):農林水産省「グルテン関連の疾患とグルテンフリー」
小麦タンパク質(グリアジン・グルテニン)とグルテン形成の仕組み(粘着性と弾性の説明):近畿農政局「小麦のタンパク質と小麦粉食品の特徴」
食後運動での蕁麻疹・アナフィラキシー、ω5-グリアジン検査など(見落としやすい誘発条件):CRCグループ「小麦アレルギー検査について」
疱疹状皮膚炎とTG3(皮膚の標的抗原の整理、英語論文):Reunala T. Dermatitis herpetiformis (2015)
非セリアック性グルテン過敏症の皮膚症状(強いかゆみ・GFDでの改善、英語論文):Cutaneous Manifestations of Non-Celiac Gluten Sensitivity (2015)

 

 




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