

市販の痛み止めを飲むと、皮膚潰瘍がかえって治りにくくなることがあります。
皮膚潰瘍とは、皮膚の表皮から真皮・皮下組織まで欠損が及んだ状態のことです。一見すると「深い傷」のように思えますが、その背景には糖尿病・動脈硬化・下肢静脈瘤・膠原病など、さまざまな全身疾患が隠れていることが多く、これが皮膚潰瘍を「普通の傷」と大きく異なるものにしています。
かゆみと痛みは、皮膚潰瘍において切り離せない症状です。特に静脈うっ滞が原因の潰瘍(静脈うっ滞性潰瘍)では、足首付近にかゆみを伴う湿疹・色素沈着が先行して現れ、そこから潰瘍化が進むケースが多くみられます。老廃物を多く含む静脈血が足にたまり続けると皮膚に炎症が起こり、かゆみ・赤み・むくみを引き起こします。これが「うっ滞性皮膚炎」と呼ばれる状態です。
かゆいからといって掻いてしまうと、傷口を広げるリスクがあります。これは要注意です。かゆみ対処の基本は患部を清潔に保ちつつ保湿し、必要に応じてステロイド外用薬を使用することです。抗ヒスタミン薬(錠剤やクリーム)がかゆみ緩和に有効な場合もあります。
皮膚潰瘍の痛みには複数の種類があります。創部の表面が刺激されて生じる「表在性疼痛」、筋肉・血管・骨周囲の「深部疼痛」、そして神経そのものが傷つくことで生じる「神経障害性疼痛」です。これらが混在していることも多く、それぞれに対応する治療法が異なります。つまり「痛み止めを飲めばOK」という単純な話ではないということです。
| 痛みの種類 | 主な原因 | 効果的なアプローチ |
|---|---|---|
| 表在性疼痛 | ドレッシング材の摩擦・交換時の刺激 | 非固着性ドレッシング材・微温湯洗浄 |
| 深部疼痛 | 腫瘍増大・炎症・血流障害 | NSAIDs・オピオイド系鎮痛薬 |
| 神経障害性疼痛 | 糖尿病性神経障害など | NSAIDsは効きにくく、専門薬が必要 |
日本創傷外科学会によると、通常の治療を4週間以上続けても傷の大きさが半分より小さくならない場合、「難治性皮膚潰瘍」と定義されます。難治性の段階では、痛み止めだけで症状を抑えようとするのは危険です。
参考:足の難治性皮膚潰瘍の定義・種類・治療について詳しく解説されています。
痛みがつらいとき、多くの人がまず手に取るのはロキソニンSなどの市販NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)でしょう。確かに炎症性の痛みには効果的ですが、皮膚潰瘍においては注意が必要です。
NSAIDsには創傷治癒を妨げる作用があることが、専門家の間では知られています。NSAIDsはプロスタサイクリンの合成やアラキドン酸代謝を妨げ、創部の抗炎症反応やムコ多糖類合成を阻害します。簡単に言うと、傷を治すための体内反応をブロックしてしまうことがあるということです。
さらに重要なのは、「痛みの原因が炎症でない場合」です。たとえば糖尿病性神経障害による皮膚潰瘍では、痛みの主原因は「炎症」ではなく「神経の損傷」です。NSAIDsは炎症が原因の痛みに効く薬なので、神経障害性疼痛にはほとんど効果がありません。飲んでも痛みが取れない、という状況になりがちです。
血行障害(下肢閉塞性動脈疾患・CLTI)による潰瘍はさらに深刻です。この場合、動脈の流れが悪いことが根本原因ですから、痛み止めを何錠飲んでも潰瘍は治りません。塗り薬も同様で、血流が改善されなければ効果は出ません。これが基本です。
| 潰瘍の原因 | 市販痛み止めの効果 | 本来必要な治療 |
|---|---|---|
| 静脈うっ滞性潰瘍 | 一時的な鎮痛のみ | 弾性ストッキング+圧迫療法 |
| 糖尿病性足潰瘍(神経障害型) | ほぼ効果なし | 専門薬・フットウェア調整 |
| 血行障害(動脈硬化・CLTI) | 効果なし | 血行再建術(外科的バイパス術等) |
| がん性皮膚潰瘍 | 部分的のみ | 全身性オピオイドが必要 |
NSAIDs長期服用の場合、3ヵ月以上継続すると約15.5%に胃潰瘍が発見されるというデータもあります(厚生労働省)。皮膚の潰瘍を治そうとして、胃に新たな潰瘍を作ってしまうリスクも無視できません。NSAIDsに注意が必要です。
また、皮膚潰瘍を持つ患者の多くは糖尿病・腎臓障害・動脈硬化などの基礎疾患があります。NSAIDsは腎機能を悪化させる副作用があるため、腎機能が低下している人には特に危険です。自己判断での服用は避け、主治医に相談することが条件です。
参考:NSAIDsが創傷治癒に与える悪影響について詳しく記載されています。
疼痛を伴う下肢潰瘍と創傷治癒の妨げとなる薬物|Millennia Medical
痛み止めに頼りすぎる前に、創部への直接ケアで痛みを大幅に減らせる場合があります。これは使えそうです。
最も痛みを生じやすいのは、ドレッシング材(創傷被覆材)を交換する瞬間です。ガーゼが創部に貼りついて剥がすたびに激痛が走るという経験をされた方も多いはずです。これを防ぐためには「非固着性ドレッシング材」を選ぶことが重要です。非固着性のものを選ぶことで、交換時の疼痛を最小限に抑えられます(昭和大学医学部 中村清吾先生監修・マルホ医療情報より)。
湿潤療法(モイストヒーリング)もかゆみ・痛みの軽減に有効です。傷を乾燥させず、適度な湿潤環境を保つことで自然治癒力が最大化し、神経末端が空気にさらされる痛みも防げます。ハイドロコロイドドレッシングやハイドロゲルドレッシングがよく使われます。
洗浄時の痛み緩和も見落とされがちですが、以下のポイントが有効です。
- 🌡️ 水温は人肌程度の微温湯(約37℃) 冷たい水道水は痛みを悪化させます
- 💧 生理食塩水(水1リットルに食塩9g)を使うと痛みが緩和しやすいです
- 🚿 水圧・角度に注意 勢いよく直接あてると組織を傷つけます
- 🩸 出血がある場合は入浴の最後に洗うようにしましょう
感染が起きると、痛みが一気に増幅します。感染によって炎症物質が異常放出されると「ワインドアップ現象」という痛みの過敏化が起きるためです。感染予防が痛み予防に直結するということですね。
主な創傷ドレッシング材の種類と特徴を以下にまとめます。
| ドレッシング材 | 特徴 | 向いている創 |
|---|---|---|
| ハイドロコロイド | 湿潤環境維持に優れる | 滲出液が少ない創 |
| ハイドロゲル | 乾燥した創を潤す | 壊死組織がある創 |
| アルギン酸塩 | 滲出液吸収性が高い | 滲出液が多い創 |
| 非固着性ドレッシング | 交換時疼痛を最小化 | 全般(特に痛みが強い創) |
感染リスクが高い創では、ドレッシング材より外用薬(皮膚潰瘍治療薬)のほうが適しています。ゲーベンクリームは壊死組織を軟化させる乳剤性軟膏、ユーパスタは滲出液が多い創に使われる吸収性の軟膏で、傷の状態を見ながら使い分けます。軟膏の選択は傷の状態が条件です。
参考:ドレッシング材の種類・選び方・役割について詳しく説明されています。
これだけは知っておきたい ドレッシング材の選び方|アルメディアWEB
がん性皮膚潰瘍(自壊創・悪性腫瘍の皮膚転移)は、一般的な皮膚潰瘍とは痛みのメカニズムが異なります。ここだけは例外です。
がん性皮膚潰瘍では、表在性疼痛・深部疼痛・神経障害性疼痛が複雑に混在しています。局所に塗る痛み止めではなく、全身に作用する痛み止め(内服・注射)が必要です。特に深部疼痛にはオピオイド系鎮痛薬(モルヒネなど)や非ステロイド性消炎鎮痛薬が使われます。
一方で、全身オピオイドを服用していても「処置後に痛みが残る」「突発的な激痛(突出痛)が起きる」というケースが多く報告されています。この突出痛に対しては、処置前に速放性オピオイドを追加投与する「先取り鎮痛」が有効です。
難治性皮膚潰瘍で意外に見落とされているのが「服用中の薬が潰瘍を悪化させている」ケースです。痛いですね。たとえばヒドロキシ尿素(慢性骨髄性白血病の治療薬)を長期服用していた患者が、原因不明の下肢潰瘍に悩まされ続けたケースが報告されています。通常のケアを続けても治らず、ヒドロキシ尿素を中止してわずか2週間で完治したという症例があります(Millennia Medical記録)。
「治りにくい潰瘍が、実は皮膚の癌であった」というケースも存在します(名古屋市立大学皮膚科記載)。治らない潰瘍を放置するリスクは大きいです。以下の状況では速やかに専門医受診が必要です。
- ⚠️ 4週間以上続けても傷の大きさが半分以下にならない
- ⚠️ 強い痛みが続いているのに原因がわからない
- ⚠️ 複数の薬を服用していて、いつ潰瘍が悪化したか思い当たる
- ⚠️ 悪臭・大量出血・急速な拡大が起きている
参考:がん性皮膚潰瘍の痛みの種類と対処法について詳しく解説されています。
痛み止めやケアで症状を和らげることは大切ですが、根本原因を治療しなければかゆみも痛みも繰り返します。原因別アプローチが原則です。
静脈うっ滞性潰瘍の場合、治療の中心は弾性ストッキングや弾性包帯による「圧迫療法」です。老廃物を含む静脈血が足にたまらないよう、静脈の逆流を防ぎます。圧迫療法だけでかゆみが著しく改善するケースは多く、これが第一選択です。静脈逆流がある場合は、レーザー治療(血管内焼灼術)や手術療法が選択肢となります。
血行障害(動脈硬化・CLTI)による潰瘍では、「血行再建術」が必要です。外科的バイパス術では、人工血管や自家静脈を用いて血流を迂回させます。血管内治療(バルーンカテーテル)は体への負担が少ない方法です。血流が改善されれば、それまで何をしても治らなかった潰瘍が急速に治癒に向かうことがあります。意外ですね。
糖尿病性足潰瘍では、まず血糖コントロールが基本です。加えて、足への圧力を分散させる特殊な装具やオーダーメイド靴が重要な役割を担います。塗り薬をいくら丁寧に塗っても、潰瘍部への体重荷重が続く限り傷は治りません。白い靴下を履いて傷からの滲出液で気づく習慣も、早期発見に役立ちます。
かゆみが強い場合の対処として、以下も覚えておくと役立ちます。
- 🧴 保湿剤の定期的な使用(皮膚乾燥を防ぎかゆみを軽減)
- 💊 ステロイド外用薬(炎症性のかゆみ・湿疹に有効)
- 💊 抗ヒスタミン薬の内服(就寝前の就寝時かゆみに有用)
- 🧊 冷却(軽度のかゆみ・熱感には冷やすのが手軽)
喫煙も見落とされがちな悪化要因です。たばこ1本の喫煙は、末梢血流を1時間にわたり約50%減少させるというデータがあります。皮膚潰瘍に悩む人にとって、喫煙は非常に大きなリスクです。潰瘍が治りにくい人は喫煙習慣が条件のひとつを占めているかもしれません。
生活習慣の見直しも有効です。 長時間の立ち仕事・座りっぱなしを避け、こまめに歩いたり足を心臓より高い位置に上げる「下肢挙上」を習慣化することが、静脈うっ滞による潰瘍予防・治癒促進につながります。足のむくみが気になる人向けに、弾性ストッキングを選ぶ際は医療用(圧迫圧が適切に設定されたもの)を皮膚科や血管外科で処方してもらうのが確実です。
参考:静脈うっ滞性皮膚炎・潰瘍のかゆみと治療法について詳しく説明されています。
うっ滞性皮膚炎:原因・症状・治療法・自分でできるケア|Premedi
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