重症度スコアSOFAで知る敗血症の診断と臓器不全評価

重症度スコアSOFAで知る敗血症の診断と臓器不全評価

重症度スコアSOFAで見る臓器不全の評価と敗血症診断の基礎知識

かゆみを放置して掻き続けると、皮膚バリアが壊れ敗血症になることがあります。


重症度スコアSOFAの3つのポイント
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SOFAスコアとは何か

6つの臓器(呼吸・循環・肝臓・腎臓・凝固・中枢神経)をそれぞれ0〜4点で評価し、合計最大24点で重症度を数値化する指標。点数が高いほど予後が悪くなります。

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敗血症診断の基準点

感染症が疑われる状況でSOFAスコアが2点以上急上昇した場合に「敗血症」と診断されます。スコア11点以上では死亡率が80〜87%にも達します。

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2025年10月に30年ぶり改定

SOFA-2スコアがJAMA誌にて公表。9カ国330万例のICUデータをもとに現代の集中治療を反映した新しい評価基準が誕生しました。


重症度スコアSOFAの基本概念と誕生した背景

SOFAスコア(Sequential Organ Failure Assessment score)は、1996年にヨーロッパ集中治療医学会(ESICM)が提唱した多臓器不全の評価指標です。日本語では「全身性臓器不全評価スコア」とも呼ばれます。元々は「Sepsis-related Organ Failure Assessment(敗血症関連臓器不全評価)」として開発されましたが、後に名称が変更され、感染症以外の重症患者にも幅広く使われるようになりました。


ICU(集中治療室)での重症患者管理において、「なんとなく悪そう」という感覚的な評価ではなく、数値として重症度を示すために生まれたのがこのスコアです。臓器ごとの障害程度を客観的に点数化することで、医師・看護師など多職種間での共通言語として機能します。これは使えそうですね。


評価の対象となるのは、①呼吸器、②凝固系、③肝機能、④循環機能、⑤中枢神経系、⑥腎機能の6項目です。各項目を0〜4点の5段階で評価し、合計点(最高24点)で患者の全体的な重症度を把握します。点数が高いほど臓器障害が深刻で、予後が悪化するリスクが高まります。


なお、SOFAスコアは検査データが必要なため、ICUや集中治療科・救急科が主な使用場所です。一般病棟や外来では、後述するqSOFAというより簡易的なバージョンが使われることが多くなっています。


かゆみや皮膚症状で皮膚科を受診する方が直接SOFAスコアを計算することはありませんが、皮膚感染症が悪化した場合にこのスコアがどのような意味を持つかを知っておくと、早期受診・早期対処のきっかけになります。日本では毎年約37万人が敗血症を発症し、約10万人が亡くなるとされています(2025年推計)。


看護roo!「SOFAスコア|知っておきたい臨床で使う指標」(SOFAスコアの基本的な使い方と計算例を解説)


重症度スコアSOFAの計算方法と6臓器の評価項目

SOFAスコアは6つの臓器ごとに0〜4点を付け、それを合算します。各項目の基準を以下の表で確認してください。




























































評価項目 0点 1点 2点 3点 4点
🫁 呼吸 (P/F比) ≧400 <400 <300 <200(補助換気あり) <100(補助換気あり)
🩸 凝固(血小板) ≧150 <150 <100 <50 <20(×10³/µL)
🫀 肝臓(ビリルビン) <1.2 1.2–1.9 2.0–5.9 6.0–11.9 ≧12.0(mg/dL)
💉 循環(血圧/昇圧薬) MAP≧70 MAP<70 ドパミン≦5γまたはドブタミン ドパミン>5γまたはNE≦0.1γ ドパミン>15γまたはNE>0.1γ
🧠 中枢神経(GCS) 15点 13–14点 10–12点 6–9点 ≦6点
🫘 腎臓(クレアチニン/尿量) <1.2 1.2–1.9 2.0–3.4 3.5–4.9または尿量<500mL/日 ≧5.0または尿量<200mL/日


合計点数と重症度の関係は次の通りです。ICU入室時のスコアが9点以下では死亡率は33%以下と報告されていますが、11点以上になると死亡率が一気に80〜95%に上昇します。さらに、ICU入室後48時間以内にスコアが上昇した症例では、死亡率が50%に達するというデータもあります。


つまり、点数の「変化速度」も重要です。


また算出のタイミングは一般的にICU入室時、その後48時間ごととされています。継続的なモニタリングが、治療の効果判定や予後予測に大きく役立ちます。たとえば、スコアが入室時の8点から24時間後に12点に上昇した患者は、同じ12点でも入室時から12点だった患者よりも死亡リスクが高いという意味を持ちます。スコアの絶対値だけでなく、変化の方向と速度が基本です。


重症度スコアSOFAと敗血症診断基準(Sepsis-3)の関係

2016年2月、国際的な敗血症の定義が大きく改訂されました。これを「Sepsis-3(第3回国際コンセンサス定義)」と呼びます。この改訂によって、SOFAスコアが敗血症の公式診断基準の中心に据えられました。


Sepsis-3における敗血症の定義は「感染症に対して制御不可能な宿主反応が生じ、生命を脅かす臓器障害を伴う状態」です。診断基準は、感染症が疑われる状況でSOFAスコアがベースラインから2点以上急上昇すること、とされています。意外ですね。


旧定義ではSIRS(全身性炎症反応症候群)の基準が使われていましたが、SIRSは感染症以外の要因でも陽性になりやすく、特異度が低いという問題がありました。Sepsis-3では臓器障害の有無を重視する方向にシフトし、SOFAスコアが判断基準となったのです。


さらに、敗血症性ショックはより重篤な状態で、「敗血症の診断基準を満たした上で、十分な輸液を行っても平均動脈圧65mmHg以上の維持に昇圧薬が必要、かつ血中乳酸値2mmol/Lを超えている状態」と定義されます。敗血症性ショックの死亡率は40〜50%と非常に高く、緊急性が極めて高い病態です。


なお、SOFAスコアのベースラインは「感染症がなければ0点と仮定する」とされています。つまり、既存の慢性疾患で臓器機能がすでに低下している患者の場合、実際の「増加分」2点を評価する際に注意が必要です。SOFAスコアが2点以上ある慢性疾患患者では、感染による上昇分の判別が課題になります。これは盲点になりやすい部分です。


ニュートリー「SOFAスコア」(敗血症診断とSOFAスコアの関係を詳しく解説)


重症度スコアSOFAの簡易版「qSOFA」の見方と活用場面

qSOFA(quick SOFA)は、SOFAスコアをICU以外の場面でも使えるように簡略化したバージョンです。検査データが不要で、バイタルサインと意識状態だけで評価できるため、一般病棟や救急外来での迅速なスクリーニングに向いています。


評価項目はたった3つです。



  • 🧠 意識変容:GCS 15点未満(1点)

  • 💨 呼吸数増加:22回/分以上(1点)

  • ❤️ 収縮期血圧低下:100mmHg以下(1点)


この3項目のうち2点以上で敗血症の疑いがあるとされます。qSOFAが2点以上の患者は、それ未満の患者と比較して死亡率が3〜14倍高まるというデータがあります。


ただし、qSOFAには注意すべき弱点があります。qSOFAの感度はICU外患者では51.2%と低く、qSOFAが陰性でも敗血症を否定できない点です。一方で特異度はICU外患者で79.6%と高く、「引っかかったら敗血症を強く疑う」という使い方に適しています。qSOFAで2点以上陽性ならば、次のステップとしてSOFAスコアによる詳細評価に進むという流れが標準的です。


かゆみや皮膚のただれで通院中の方にとって、「呼吸が急に速くなった」「なんとなく頭がぼんやりする」「血圧が下がってきた」という3つの変化が重なった場合は、単なる体調不良ではなく感染症の重症化サインである可能性があります。このような変化に気づいたら、すぐに医療機関を受診することが重要です。







































比較項目 SOFAスコア qSOFAスコア
評価目的 多臓器不全の重症度を詳細に評価 敗血症の可能性を素早くスクリーニング
評価項目数 6臓器系 3項目のみ
必要な検査 血液検査・動脈血ガスなど バイタルサイン・意識状態のみ
使用場所 ICU・集中治療室 一般病棟・救急外来
感度(ICU外) 高い 51.2%(低め)
特異度(ICU外) 中程度 79.6%(高め)


重症度スコアSOFAの2025年最新改定「SOFA-2」の概要と変更点

2025年10月29日、JAMA誌にて「SOFA-2スコア」が発表されました。1996年のSOFAスコア誕生から約30年ぶりとなる大改訂です。9カ国1,319施設、約330万例の成人ICUデータを解析し、60名の国際専門家グループがDelphi法(専門家合意形成手法)を通じて作成しました。


改定が必要になった背景には、現代の集中治療の大きな変化があります。ECMOや持続的腎代替療法(RRT)、複数の昇圧薬の同時使用など、1996年当時には一般的でなかった治療法が今や標準となっており、旧SOFAスコアでは「現代の臓器サポートを正確に反映できない」という課題が指摘されていました。


主な変更点は以下の通りです。



  • 🧠 脳(中枢神経):GCSに加え、「サムズアップ」などの簡易応答テストやせん妄の評価も追加。鎮静中の患者でもスコア化できるように改良。

  • 🫁 呼吸:P/F比の閾値を再定義し、HFNC(高流量鼻カニュラ)・NIV(非侵襲的換気)・IMV(人工呼吸)・ECMOなど現代の換気補助を評価に反映。

  • 💉 循環:ノルアドレナリン+アドレナリンの「総用量」を0.2または0.4 µg/kg/minで区分け。補助循環装置(IABP・ECMO)も考慮に追加。

  • 🫘 腎臓:クレアチニン値と尿量に加え、RRT(腎代替療法)施行または適応時を4点と明記。

  • 🩸 止血(凝固系):血小板≦80や≦50×10³/µLを新たに細分化し、中等度障害をより明確に評価。


「免疫系」や「消化器系」の項目追加も検討されましたが、独立した予測能が乏しいとして不採用となりました。最大点数は従来どおり24点が維持されています。


死亡予測精度を表すAUROC(受信者動作特性曲線下面積)は0.79で、従来SOFAスコアよりも改善が確認されています。AUROC 1.0が完全予測、0.5がランダムと同等という尺度で考えると、0.79は相当高い予測精度と言えます。


SOFA-2は従来スコアを「置き換える」というより、現代の集中治療水準への「アップデート」として位置づけられています。今後、研究用途・臨床用途の両面でSOFA-2が標準になる可能性が高いとされています。


HOKUTO「SOFA-2スコア改訂速報」(2025年10月公表のSOFA-2の変更点と計算方法を監修医師が解説)


かゆみや皮膚症状から敗血症へ進行するリスクとSOFAスコアが示す重症化の意味

ここで、「かゆみをおさえたい人」にとって特に知っておきたい重要な事実があります。皮膚のかゆみを掻き続けることで皮膚バリアが破壊され、皮膚・軟部組織感染(蜂窩織炎など)を引き起こすことがあります。さらにその感染が血液中に侵入すると、敗血症へ進展するリスクがあるのです。


実際に、アトピー性皮膚炎患者が敗血症性肺塞栓症を発症した症例も国内で報告されています(日本呼吸器内視鏡学会誌掲載論文)。「たかがかゆみ」と油断しがちですが、皮膚感染症は敗血症の主要な入り口の一つなのです。


敗血症が疑われ始めた段階でSOFAスコアを測定し、2点以上の急上昇があれば敗血症と診断されます。その後のスコアの変化によって、治療の効果や予後が左右されます。入院から48時間以内にスコアが上昇した場合の死亡率は約50%というデータが、この病気の急速な進行を示しています。


一方で、皮膚感染症が原因の敗血症は、他の感染源(肺炎、腹腔内感染など)と比べると死亡リスクが約0.5倍(半分)と低いとするデータもあります(2025年研究報告)。これは、皮膚感染症は発見しやすく早期介入しやすいためと考えられています。皮膚トラブルに早めに気づき、適切に対処することが命を守ることにつながります。


かゆみを感じたら掻かないようにすることが基本です。掻いて傷になった部分から細菌が侵入します。市販の抗ヒスタミン薬や保湿ケアで対処しつつ、皮膚が赤く腫れて熱を持つ、発熱・悪寒・倦怠感が出てきた場合は迷わず医療機関へ相談してください。特に発熱を伴う皮膚トラブルは、qSOFAスコアの「呼吸数・血圧・意識」の変化とあわせて、全身状態の変化を注意深く観察することが重要です。かゆみへの早めの対処が、最終的に重症化を防ぐことにつながります。


いちょうクリニック大宮「敗血症とは|命を脅かす感染症の重症化を医師が解説」(皮膚感染症から敗血症に至るリスクと死亡率を詳しく解説)