

口腔アレルギー症候群(OAS)は、特定の果物や野菜、豆類などを食べた直後〜1時間以内に、唇・舌・口の中・のどに「イガイガ」「チクチク」といったかゆみや刺激感が出るのが典型です。
特に多いのは食後すぐ(数分以内〜15分程度)に始まり、口の中がピリピリしたり、唇が腫れぼったく感じたりして、しばらくすると自然に軽快するパターンです。
ここで大事なのは「症状の出方が毎回同じとは限らない」ことです。花粉の飛散時期や体調、口の中の粘膜の荒れ(口内炎、乾燥、寝不足)で、同じ食べ物でも反応が強く出る日があります。
また、皮膚のかゆみに悩んでいる人は「口の中の違和感=皮膚症状と無関係」と決めつけない方が安全です。OASは口腔症状が中心でも、じんましんなど皮膚症状を伴うことがあり、症状が広がるサインを見落とすと対応が遅れます。
参考)口腔アレルギー症候群:症状は?起こしやすい食べ物は?検査や治…
「口の中だけだから大丈夫」と我慢して食べ続けるのは推奨されません。原因食物を食べ続けることで重症化する可能性があるとされます。
参考)https://www.nakano-med.or.jp/topics/2013/03.php
OASの重要な背景として、花粉抗原と果物・野菜の抗原が似ているために起こる「交差抗原性」があります。まず花粉で体が感作され、その後に交差反応する食物を食べたとき、主に口腔粘膜で過敏反応が誘発されます。
この花粉関連の仕組みを強調して、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)と呼ぶことがあります。
関連が報告されている組み合わせには一定の傾向があります。たとえばカバノキ科花粉(ハンノキ、シラカンバ)と、リンゴ・モモなどのバラ科果物、大豆(特に豆乳)などが挙げられています。
参考)特殊な食物アレルギー/Q&A|一般社団法人日本アレルギー学会
イネ科花粉(オオアワガエリ、カモガヤ)とメロン・スイカなど、キク科花粉(ブタクサ、ヨモギ)とウリ科・セリ科野菜やスパイス類などの関連も整理されています。
少し意外かもしれませんが、「同じ果物でも、どのタンパク質に反応しているか」でリスク感が変わる点が重要です。PFASでは、カバノキ科花粉の主要抗原Bet v 1と似たPR-10ファミリー(例:リンゴのMal d 1、大豆のGly m 4など)が関与することが示されています。
参考)口腔アレルギー症候群|一般社団法人日本アレルギー学会
PR-10のようなタンパク質は加熱や消化で壊れやすいため、症状が口腔内に限局しやすい、と説明されています。
一方で、豆乳やセロリ、スパイスなどでは重篤な全身症状が起こりうる、と注意喚起されています。
多くのOASは口の中だけの症状で自然に消退しますが、消化器症状が出たり、まれにアナフィラキシーショックなど重篤な全身症状を呈することがあります。
特に豆乳やスパイスでアナフィラキシーが起きることがある、とされています。
「危険サイン」を曖昧にすると判断が遅れます。次の症状が絡む場合は、自己判断で様子見を続けないでください。
一般社団法人日本アレルギー学会のQ&Aでは、意識がもうろう、呼吸困難、ぜん鳴、繰り返し吐くなどがある場合は早期にアドレナリン自己注射薬(エピペン)を使用し、救急要請するよう述べられています。
また、OASは「口の中が少しかゆい」だけに見えても、体調や摂取量など条件が重なると全身に波及するケースがあるため、過去に全身症状が出た人は特に再発時の初動を決めておく必要があります。
皮膚のかゆみで悩む人向けの視点としては、「いつもの皮膚トラブル」と混ざって見えやすい点が落とし穴です。口の中の違和感に続いて、じんましん様の膨疹や全身のかゆみが短時間で広がるときは、皮膚の慢性症状ではなく急性アレルギー反応として扱うべき場面があります。
診断は「症状の経過(何を、どの状態で、どのくらいで症状が出たか)」の整理が土台で、必要に応じて血液検査や皮膚テストで裏づけを取ります。
日本アレルギー学会の解説では、血中特異的IgE抗体の測定や、プリックテスト(皮膚テスト)を行い、プリックテストでは生の野菜や果物を用いることがある、とされています。
検査の現実的な注意点も押さえておくと安心です。血液検査(特異的IgE)は便利ですが、項目によっては測れない食材がある場合があり、皮膚プリックテストで補うことがある、という説明があります。
参考)プリックテスト(Skin prick test, SPT)、…
そのため「検査が陰性だから絶対に違う」「陽性だから必ず症状が出る」と単純化せず、症状の再現性や食べ方(生/加熱/加工)まで含めて医療機関で評価してもらうのが安全です。
受診前にできる準備として、メモがあると診療の質が上がります。
検索上位では「原因食物」「花粉との関連」「加熱でOK」が中心になりがちですが、皮膚のかゆみに悩む人は、症状を増幅させる生活トリガーも一緒に管理した方が再現性の理解が進みます。PFASは花粉抗原への感作が前提になりうるため、花粉症状が強い時期ほど食物側の反応も目立つことがあります。
つまり「食べ物だけを悪者にする」のではなく、「花粉シーズン×生食×粘膜/皮膚バリア低下」という掛け算で考えると、対策が具体化します。
たとえば、皮膚がかゆい時期は入浴や暖房で乾燥しやすく、口の中も乾きやすい人がいます(唾液が減ると刺激を感じやすくなることがある)。ここに酸味の強い果物、香辛料、アルコールが加わると「アレルギー反応+刺激」の区別が難しくなり、結果として症状の記録がブレます。
また、「ジュースやスムージー」は噛まずに一気に摂取しやすく、口腔粘膜に触れる量が多くなりやすい点が落とし穴です。OASでは口腔粘膜に接触すると直後から症状が誘発される、とされているため、摂取形態の違いは無視できません。
対策は、禁止リストを増やすことより「安全な食べ方」を探すことが現実的です。日本アレルギー学会のQ&Aでも、花粉に関連する口腔アレルギーでは加熱で抗原性が変化し、ジャムやソースは大丈夫になることが多い、とされています。
ただし個人差が大きいので、「加熱なら絶対OK」と断定せず、症状が出た食材は主治医と相談しながら段階的に見直すのが安全です。
皮膚のかゆみがある人向けに、日常でやりやすい工夫をまとめます。
権威性のある日本語の参考リンク(花粉×食物の関連・原因食物の表が参考)。
特殊な食物アレルギー/Q&A|一般社団法人日本アレルギー学会
権威性のある日本語の参考リンク(交差抗原性・PR-10・検査の説明が参考)。
口腔アレルギー症候群|一般社団法人日本アレルギー学会
論文・ガイドライン(OAS診療ガイドラインPDFが参考)。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiaio/5/3/5_85/_pdf/-char/ja
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiaio/5/3/5_85/_pdf/-char/ja