

皮膚のかゆみは「乾燥」「炎症」「バリア低下」「感染(カビ等)」「アレルギー」「ストレスや睡眠不足」など、原因が1つに決まらないのが難点です。そこに“栄養”の視点を足すと、パントテン酸(ビタミンB5)は候補としてよく挙がります。理由は単純で、パントテン酸が体内で補酵素A(CoA)として働き、脂質・糖質・たんぱく質の代謝に広く関与し、さらにホルモンや抗体産生にも関わるとされるためです。
ただし、かゆみ=パントテン酸で直接止まる、という話ではありません。かゆみの“火種”が炎症やバリア低下由来なら、代謝や皮膚のコンディションを支える栄養素として間接的に寄与する可能性がある、という位置づけにしておくと現実的です。実際、公的情報でもパントテン酸は「皮膚の健康維持を助ける栄養素」とされ、湿疹・皮膚炎などの症状緩和に用いられることがあると説明されています。
参考)パントテン酸カルシウム
また、意外と誤解されがちなのが「パントテン酸」と「パンテノール(プロビタミンB5)」の違いです。スキンケアで有名なパンテノールは皮膚でパントテン酸に変換され、抗炎症作用やかゆみ軽減に触れた解説も見られます。つまり“外用(塗る)B5”と“内服(飲む)B5”は名前が似ていますが、届き方が違うため、期待の立て方も分けた方が失敗しにくいです。
参考)https://www.laroche-posay.jp/dermclass/article-033.html
「不足しているなら効きやすい」のは栄養素全般に言える鉄則ですが、パントテン酸は“通常の食生活では不足はまず起こりにくい”とされています。理由は、さまざまな食品に含まれ、腸内細菌による供給も期待できるからです。
それでも、生活習慣によっては“消費しやすい”という観点が出てきます。例えば大正健康ナビでは、カフェインを含む飲み物やアルコールが多い人はパントテン酸を消費しやすいとされ、さらに抗生物質の服用中は腸内細菌からの供給が期待できないので食事で補給するよう促しています。
かゆみ持ちの人は、睡眠不足→コーヒー増、ストレス→飲酒増、皮膚炎→抗生物質、のように“引き金”が揃いやすいケースもあるため、ここが盲点になりがちです。
不足の症状としては、疲れやすさ、食欲低下、便秘などが初期に見られ、進行すると知覚異常や激痛、臓器機能不全などに至る可能性が説明されています。
参考)パントテン酸の働きと1日の摂取量
ただ、現実には重い欠乏は稀なので、「かゆみ=欠乏」と短絡せず、もし便秘・疲労・食生活の偏りが重なっているなら“土台の立て直し”の一環として検討する、という順序が安全です。
サプリを検討する前に、まず「基準量」と「食事での補給」を押さえると、過剰摂取や無駄打ちを減らせます。健康長寿ネットでは「日本人の食事摂取基準(2025年版)」として、18歳以上の目安量は男性6mg、女性5mgと示されています。
また、令和元年の国民健康・栄養調査における平均摂取量は5.65mgとされ、平均としては目安量近辺を摂れている人が多い可能性も読み取れます。
食品面では、レバー、肉類、魚介類、納豆などが例として挙げられています。
健康長寿ネットの食品表では、例えば「にわとり肝臓 生 100gで10.00mg」「挽きわり納豆 30〜50gで4.28mg」など具体的な数値が載っており、食事で十分狙える栄養素だと分かります。
ここで、かゆみ対策としての“実務的な考え方”を整理します。
かゆみが強い人ほど「すぐ効くもの」を探しがちですが、栄養介入は“じわじわ土台を作る”タイプが多いです。もし試すなら、食事(タンパク質・脂質・発酵食品)とセットで1〜2か月は観察し、同時にスキンケア(低刺激・保湿)も固定して、変数を増やしすぎないのがコツです。
安全性の話は、サプリ検討で最重要です。健康長寿ネットでは、パントテン酸単独の大量摂取で明確な健康被害が報告されていないため耐容上限量は設定されていない一方で、他剤と一緒に大量投与した例で吐き気・食欲不振・腹痛を訴えた被験者がいたことや、動物実験で成長障害・下痢・脱毛などが報告されている、と注意喚起しています。
大正健康ナビでも「多量に摂取することによって、より健康が増進するものではありません。定められた摂取量を守って使用してください」と明確に釘を刺しています。
かゆみ体質の人は、サプリの添加物(賦形剤)や、別の成分(B群複合、乳酸菌、ハーブ等)で合わないこともありえます。したがって「パントテン酸で体調が悪化した」と感じた場合でも、パントテン酸そのものより、製品設計や併用成分が原因のケースも想定して切り分けると冷静に判断できます(例:単一成分に変える、用量を下げる、2週間止めて再開して再現性を見る)。
受診の目安も押さえておくと安心です。
この場合、栄養より先に診断が必要です(原因が違うと、サプリは遠回りになります)。
検索上位では「皮脂」「ニキビ」「疲労」方面に寄りがちですが、かゆみ対策で意外に盲点になるのが“腸内細菌”です。大正健康ナビは、パントテン酸が一部腸内細菌によって合成されること、そして抗生物質の服用でその供給が期待できない場合があることを述べています。
つまり、肌が荒れている→感染疑いで抗生物質→腸内環境が乱れる→ビタミン供給も揺らぐ、という“かゆみループ”に入る人が一定数いる、という見方ができます。
ここでの実践ポイントは、サプリ以前に「腸の条件」を整えることです。栄養の入口(食事)と出口(便通)が崩れると、体感としての改善が読み取りにくくなります。公的サイトでもパントテン酸欠乏の初期症状に便秘が挙げられており、便通は軽視できません。
かゆみがある人ほど、睡眠不足やストレスで自律神経が乱れ、腸の動きも鈍りがちなので、食物繊維・発酵食品・水分を固定し、サプリの効果判定をしやすい土台を作るのが“地味に効く”戦略です。
最後に、あまり知られていない視点として「調理法」も挙げておきます。健康長寿ネットでは、パントテン酸は酸・アルカリの存在下では熱に弱いため調理法に注意が必要、と説明しています。
「食事で十分なはずなのに、外食・加工食品が続くと調理や保存の影響も受ける」可能性があるため、サプリに飛びつく前に、納豆や乳製品など“加熱を前提としない選択肢”を足すだけでも試す価値があります。
皮膚の基礎:パントテン酸の働き・目安量・食品例(表あり)
健康長寿ネット:パントテン酸の働きと1日の摂取量
サプリ検討の注意点:不足しにくい理由、消費しやすい習慣、使用上の注意
大正健康ナビ:パントテン酸カルシウム