プロピオン酸と食品とパンとチーズ

プロピオン酸と食品とパンとチーズ

プロピオン酸と食品

この記事でわかること
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プロピオン酸は「保存料」と「短鎖脂肪酸」の2種類

同じ言葉でも、食品添加物としてのプロピオン酸と、腸内細菌が作るプロピオン酸では意味合いが変わります。

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パン・チーズで見かける理由と表示の読み方

「プロピオン酸Na」「プロピオン酸Ca」などの表記、使える食品の範囲、探し方のコツを整理します。

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かゆみの人が押さえる「腸―皮膚」視点

短鎖脂肪酸や腸内環境、バリア機能の話を「生活で再現できるレベル」に落とし込みます。

プロピオン酸 食品添加物 保存料の基本

 

プロピオン酸は、文脈によって意味が二重になります。ひとつは「食品添加物(保存料)」としてのプロピオン酸(およびプロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム)で、もうひとつは腸内細菌が食物繊維などを発酵して産生する「短鎖脂肪酸」としてのプロピオン酸です。
皮膚のかゆみで悩んでいると、つい「プロピオン酸=添加物=悪いもの」と短絡しがちですが、腸内で作られるプロピオン酸は、研究の文脈では“腸や免疫の調整に関わる代謝物”として扱われることがあります。
つまり「避けるべきプロピオン酸」と「増やしたいプロピオン酸」を同じ棚に置くと、食事設計が破綻しやすいのが落とし穴です。
皮膚のかゆみがある人が最初にやるべきは、原因を一気に決め打ちしないことです。アトピーや湿疹のかゆみは、乾燥、汗、衣類刺激、睡眠不足、ストレス、感染、合わない外用、食物アレルギーなど複数要因で上下し、添加物だけを犯人にしにくい場面が多いからです。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9736894/

そのうえで「食品側のプロピオン酸(保存料)」は、どの食品で遭遇しやすいのか、どう表示されるのか、避ける・減らすなら現実的にどうするかを把握する価値があります。

 

参考)https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shokuten/hozonryo.html

同時に「腸内で増えるプロピオン酸(短鎖脂肪酸)」についても、何を食べると増えやすいのかを知っておくと、かゆみ体質の土台作り(腸・バリア・炎症の視点)に役立つ可能性があります。

プロピオン酸 食品 パン チーズに多い理由

食品添加物としてのプロピオン酸(およびその塩類)は、代表的に「チーズ、パン、洋菓子」などが使用対象として挙げられています。
東京都の解説では、プロピオン酸類は自然界にも微生物の代謝産物として存在し、みそ・しょう油・パン生地・ぶどう酒・チーズなどの発酵食品にも含まれる一方、保存料としては「カビや芽胞菌の発育を阻止」し、しかも「パンの発酵などに用いられる酵母にはあまり影響を及ぼさない」のが特徴とされています。
ここがパンと相性が良いポイントで、パンは酵母発酵で膨らませるため、酵母を強く邪魔しない保存料は使い勝手が良い、という理屈です。
「パンでカビやすい季節にだけ気になる」「同じパンでもメーカーで差がある」と感じる場合、保存設計(製造日からの賞味期限、包装、流通、温度管理)や、保存料の採用方針が違う可能性があります。

 

参考)食品添加物とは|食品添加物の役割と利用|ウエノフードテクノ

また「チーズは発酵食品なのに保存料?」と混乱しやすいですが、発酵で生成する有機酸があることと、別途“保存性を高めるために添加する”ことは両立します。

かゆみが強い時期は、まず“遭遇頻度が高い食品群(パン・洋菓子・チーズ)”を押さえ、食べ方・頻度・銘柄をメモして体感を検証するのが現実的です(いきなり全排除より継続しやすい)。

プロピオン酸 食品 表示名 プロピオン酸Na プロピオン酸Ca

表示で見かけやすいのは「プロピオン酸ナトリウム(プロピオン酸Na)」「プロピオン酸カルシウム(プロピオン酸Ca)」などで、いずれもプロピオン酸の“塩”として保存料目的で使われます。
東京都の資料では、プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウムが保存料の例としてまとまっており、使用対象食品として「チーズ、パン、洋菓子など」が示されています。
つまり「プロピオン酸と書いてないから安心」ではなく、「プロピオン酸Na」「プロピオン酸Ca」のような表記も同類として拾う必要があります。
一方で、発酵食品(みそ、しょう油、ぶどう酒、パン生地、チーズ等)には、自然な代謝産物としてプロピオン酸が含まれ得る、という整理も重要です。

このため、皮膚のかゆみ対策として“プロピオン酸ゼロ”を狙う発想は、食生活の自由度を不必要に落とすことがあります。

現実的には、「保存料としてのプロピオン酸塩」を“連日・大量・固定化”しないよう、主食パンのローテーション、購入量、冷凍活用、洋菓子頻度の調整といった運用でコントロールする方が続きやすいです。

プロピオン酸 食品 短鎖脂肪酸 腸内細菌 かゆみ

皮膚のかゆみを「肌だけの問題」として扱うと、保湿や外用である程度は改善しても、波が強い人ほど限界が出やすいことがあります。そこで出てくるのが腸内環境と皮膚の関係で、レビューでは腸内細菌叢と皮膚(アトピー性皮膚炎など)の相互作用、そして腸内細菌が作る短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸など)の重要性が述べられています。
同レビューでは、短鎖脂肪酸が腸のバリア機能や抗炎症作用に関わること、アトピー性皮膚炎では腸内環境の乱れや短鎖脂肪酸の減少が示されている、という趣旨の記載があります。
この文脈の「プロピオン酸」は“食品添加物として摂る”というより、“腸内細菌が食物繊維などから産生する”側で語られている点が重要です。
さらに、子どもの便中短鎖脂肪酸を追った研究では、主要な短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)が成長とともに増えること、そして特定の短鎖脂肪酸(例:吉草酸)が後年の湿疹リスクと関連したという報告もあり、“腸内代謝物がアレルギーや湿疹と無関係ではない”可能性が示唆されています。

 

参考)303 See Other

もちろん、これらは「この食品を食べたら必ずかゆみが止まる」という単純な話ではなく、腸内細菌・食習慣・生活環境が絡む話です。

ただ、かゆみが長期化している人ほど、“即効狙いの除去”だけでなく、“腸内で短鎖脂肪酸が作られやすい食習慣(発酵性食物繊維など)を増やす”という攻め方も検討する価値があります。

論文としての関連(皮膚側の意外な話)も挙げておきます。皮膚の炎症に関して、プロピオン酸(propionate)の外用がIL-33の産生などを介して炎症を抑える可能性を示した研究があり、短鎖脂肪酸が“皮膚局所”でも機能し得る点は興味深いところです。
A dysregulated sebum–microbial metabolite–IL-33 axis initiates skin inflammation in atopic dermatitis (J Exp Med, 2022)
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9375142/

食事で摂るプロピオン酸保存料と、皮膚外用のプロピオン酸、腸内産生のプロピオン酸は同一視できませんが、「プロピオン酸=単純に悪」と決めつけない方が情報の整合性が取りやすくなります。

プロピオン酸 食品 皮膚 かゆみの独自視点:二重管理チェック

検索上位は「保存料としてのプロピオン酸は何に入っている?」に寄りがちですが、かゆみで困っている人ほど効くのは“二重管理”という考え方です。つまり、(1)食品表示でプロピオン酸Na/Caを拾って摂取頻度を把握する、(2)同時に短鎖脂肪酸(腸内産生)を増やす方向の食事要素を増やす、の両方を同じ週の中で回す、という運用です。
どちらか片方だけだと、「保存料を避けて食事が単調化→食物繊維や発酵性の要素が減る」「腸活を頑張るが主食パン固定で保存料摂取が高止まり」のように、体感がブレやすいパターンが起きます。
二重管理のコツは“記録の粒度”で、完璧な栄養計算ではなく、次のような簡易ログで十分に傾向が見えます。
📒簡易ログ例(2週間だけやる)
・パン:週○回、銘柄(袋の裏の表示を写真)→「プロピオン酸Na/ Ca」の有無をチェック。

・チーズ:週○回、種類(プロセス/ナチュラルなど)と量感。

・洋菓子:週○回(コンビニ菓子パンもここに入れる)。

・かゆみ:朝・夜の2回、10点満点で主観スコア(睡眠も一言)。

やってはいけないのは、かゆみが強い日に“全部を同時に変える”ことです。要因が多い症状ほど、何が効いたのか不明になり、結局いつもの食事に戻って振り出しに戻りがちです。

「保存料としてのプロピオン酸をゼロにする」よりも、「高頻度で固定化している食品を1つだけ変える→体感を見る→次を変える」という順番の方が、再現性のある結論に近づけます。

(参考リンク:プロピオン酸類が“どの食品に使われ、どう効くか(カビ・芽胞菌、酵母への影響が小さい等)”を公的機関が簡潔に整理)
用途別 主な食品添加物 保存料(東京都保健医療局)
(参考リンク:短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)と、腸―皮膚―かゆみの関係をレビューとして俯瞰できる)
An Altered Skin and Gut Microbiota Are Involved in the Pathogenesis of Atopic Dermatitis (Review, 2022)
(参考リンク:便中短鎖脂肪酸の推移や、湿疹との関連(吉草酸など)をコホートで追った一次研究)
Fecal short chain fatty acids in children… and a link… protection from eczema (Scientific Reports, 2020)

 

 


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