

硫酸カルシウムの化学式はCaSO4で、カルシウムの硫酸塩として整理できます。
固体としてはカルシウムイオン(Ca2+)と硫酸イオン(SO4 2-)からなるイオン結晶で、いわゆる「分子が並んでいる」タイプとは少し考え方が異なります。
学校化学の観点では、Caが2価、硫酸イオンが2価なので電荷が打ち消し合い、比が1:1になってCaSO4になる、という理解が最短です。
皮膚のかゆみで「成分名」を見て不安になるケースでは、まずこの“CaSO4=硫酸カルシウム”の同一性を押さえると、誤解(似た名前の別物と混同など)を減らせます。
参考)硫酸カルシウム(リュウサンカルシウム)とは? 意味や使い方 …
ただし、かゆみの原因は「化学式の危険性」よりも、粉体が皮膚に付着して擦れる刺激、乾燥、あるいは同時配合の別成分(香料など)であることも多いので、表示全体で判断する視点が重要です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/1/69_13/_pdf
一般に「石膏(せっこう)」は硫酸カルシウムが関係する材料で、主成分は硫酸カルシウム(CaSO4)です。
一方で、天然鉱物としての石膏や、建材・工業材料として語られる石膏は「二水和物(CaSO4・2H2O)」を指す文脈が多く、結晶水の有無がポイントになります。
メーカー情報でも、硫酸カルシウムを二水和物として「CaSO4・2H2O」「分子量172.17」のように表記する例があり、同じ“硫酸カルシウム”でも状態が違うことが分かります。
ここがややこしい点で、狙いワードの「硫酸カルシウム 化学式」はCaSO4ですが、現場の表示や資料ではCaSO4・2H2O(石膏)として出てくることがあります。
参考)石膏 - Wikipedia
皮膚のかゆみ目線では、二水和物かどうか自体が強い毒性差を意味するというより、「粉が舞うか」「水分をどう扱うか」「作業環境で皮膚が乾きやすいか」など、接触状況の差につながりやすい点が実務的です。
石膏は結晶水の形で分類され、半水石膏はCaSO4・1/2H2O、二水石膏はCaSO4・2H2O、無水石膏はCaSO4として区別されます。
無水石膏(無水硫酸カルシウム)は加熱生成条件などでI型・II型・III型…のように呼び分けられることもあり、同じCaSO4でも状態に幅があります。
また、半水石膏(CaSO4・1/2H2O)は結晶形の違いで分類される、という説明もあり、材料学では「どの相(phase)か」が品質や用途に直結します。
意外と知られていない実務上の落とし穴は、「化学式は同じでも、吸湿・水和の挙動が違う」ため、保管条件や使用手順が変わり、結果として皮膚トラブルの起点(手袋の蒸れ、洗浄不足、粉残り)になり得ることです。
参考)https://www.san-esugypsum.co.jp/howto/explanation12/
研究寄りの資料として、硫酸カルシウムの構造・結晶化学・反応性に触れた日本語PDFも公開されており、水和・転移など“状態変化”の観点が重要であることが分かります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/mukimate1953/1979/162/1979_162_201/_pdf/-char/ja
参考:結晶化学・反応性(水和や転移の話の根拠に)
J-STAGE:硫酸カルシウムの構造・結晶化学と反応性(資料PDF)
硫酸カルシウムは石膏の主成分としても知られ、材料分野では非常に登場頻度が高い物質です。
性質の一例として、分子量136.136、比重2.96、融点1450℃、CAS番号7778-18-9といったデータが整理されています(ただし表示は用途グレード等で差が出るため、手元のSDSも併用が安全です)。
濃硫酸中では硫酸水素カルシウムとして溶解する、チオ硫酸ナトリウムやアンモニウム塩では錯体生成で溶ける、という溶解性の補足もあり、単に「水に溶けにくい」で止めない方が誤解が減ります。
かゆみの文脈で「日用品や食品の表示で見かける」場合、硫酸カルシウムは食品添加物としても流通しうるため、皮膚に触れる経路(粉体・建材・作業)と、摂取経路(食品)を混同しないのがポイントです。
参考)硫酸カルシウムの添加物の危険性は?体に悪いのか・人体への影響…
また、メーカー情報では二水和物としての表記(CaSO4・2H2O)も一般的なので、「CaSO4だけを探して見落とす」ことがないよう、別表記を知っておくと役立ちます。
皮膚のかゆみを「硫酸カルシウムが原因かも」と感じたとき、まず知っておきたいのは、化学式がCaSO4である事実だけでは“皮膚で何が起きたか”は確定できない、という点です。
化粧品や外用薬などで問題になりやすい接触皮膚炎は、原因除去が原則で、漫然と対症療法を続けるより“原因物質の特定”が重要だと皮膚科領域で整理されています。
つまり、かゆみが出た環境(石膏ボード工事、粉体の取り扱い、乾燥した作業場、マスクや手袋の蒸れ)を時系列で記録し、触れたものを候補として並べるのが現実的なアプローチです。
実務で効くチェック項目を、過不足なく挙げます(化学式にこだわりすぎないための“道具”です)。
そして、医療機関に相談するときは「硫酸カルシウムが悪いはず」と決め打ちせず、製品名・作業内容・発症部位・発症までの時間・改善/悪化の条件をセットで持参すると、原因除去につながりやすくなります。
参考として、接触皮膚炎の原因除去の重要性を日本語で確認できる資料が公開されているので、かゆみが続く人は一度目を通しておくと“次に何を聞けばいいか”が明確になります。
参考:接触皮膚炎の考え方(原因除去・外用薬で悪化するケースの整理に)
J-STAGE:香粧品や外用薬による接触皮膚炎(PDF)