

最大酸素摂取量(VO2max/VO2peak)は、1分間に体重1kgあたり取り込める酸素量(mL/kg/分)で、全身持久力の代表的な指標です。定義としては「最大酸素摂取量=全身持久力の指標」と覚えるのが理解の近道です。なお、公的資料や解説記事では「VO2max」と「VO2peak」が混在しますが、健康づくりの文脈では“心肺体力の水準”を表す指標として扱われます。
「平均女性」を調べるときに最初につまずくのが、同じ“平均”でも、(1)健康のための「基準値(Reference value)」と、(2)実際の日本人データを統合した「推定平均値(Standard/estimated standard value)」が別物として提示される点です。基準値は「このくらいあると生活習慣病などのリスク低下が期待される目安」で、推定平均値は「実態としてその年代の平均はこのあたり」という意味合いです。ここを混同すると、数字だけ見て「平均なのに低い?高い?」と誤解が起きやすくなります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/001195874.pdf
たとえば、健康長寿ネットでは、厚生労働省「健康づくりのための運動基準2013」を根拠として、女性の基準値の例として18~39歳33、40~59歳30、60~69歳26(mL/kg/分)が紹介されています。これは“平均”というより「健康づくりの目標ライン」として受け取るのが安全です。
参考)最大酸素摂取量
一方で、厚生労働省の資料(身体活動・運動ガイド2023の関連資料)では、日本人研究のレビューから性・年代別の推定平均値(mL/kg/分)が示され、女性は20~29歳33.6、30~39歳30.6、40~49歳27.4、50~59歳25.6、60~69歳23.4、70~79歳23.1と提示されています。基準値と推定平均値を見比べると、年代が上がるほど「基準値を満たすのが難しい人が増えやすい」構造が見えてきます。
ここで、ブログ読者が最も知りたいのは「自分は平均と比べてどの位置?」だと思います。結論としては、同じ女性でも“年代”と“測り方(実測か推定か)”で値がズレるので、(1)まず年代の推定平均値で現在地を把握し、(2)次に基準値(目標ライン)に近づける、という二段構えが現実的です。
女性のVO2peak/kg(mL/kg/分)の推定平均値は、厚生労働省資料に年代別でまとまっています。ざっくり傾向としては、10代まで増加し、20代以降は加齢に伴い低下し、特に20~30代の低下が大きく、その後は緩やかに下がると説明されています。つまり「年齢のせい」で片づけるより、「生活が変わる時期(就職・出産・育児・介護など)と重なる」点を意識すると対策が立てやすいです。
女性の推定平均値(mL/kg/分)の例。
・20~29歳:33.6
・30~39歳:30.6
・40~49歳:27.4
・50~59歳:25.6
・60~69歳:23.4
・70~79歳:23.1
同じ資料では、メッツ(METs)にも換算でき、メッツ値×3.5でmL/kg/分に換算できる、とされています。メッツは日常の活動強度に直結するので、「数字がピンとこない」という人は、メッツ→生活場面のイメージに置き換えると理解しやすいです。
ここで意外に大事なのが、“平均”は「健康の安全圏」を意味しないことです。資料では全身持久力(心肺体力)と死亡や非感染性疾患リスクの関係について、系統的レビュー・メタ解析の結果として「直線的な負の量反応関係(高いほどリスクが下がる傾向)」が示唆され、1メッツ上がるごとに総死亡などの相対危険度が10~20%ほど低い傾向が示唆される、と説明されています。つまり平均に届いても、そこがゴールではなく「上げられるなら少しでも上げる価値がある」タイプの指標です。
また、数字の受け止め方として、1~2ポイントの増減に一喜一憂しすぎないのもコツです。推定値は測定条件(睡眠、疲労、気温、測定機器、心拍計の精度)でもブレるため、単発ではなく、同じ条件でのトレンドで見る方が実務的です。公的資料でも、実測には高価な装置と技術が必要で、個人が気軽に実測するのは困難、代替として推定が広く使われると整理されています。
最大酸素摂取量を“正確に”測る方法として代表的なのが、呼気ガス分析法です。専用マスクを着用してトレッドミルや自転車エルゴメータで負荷を段階的に上げ、酸素摂取量が頭打ちになる点を最大酸素摂取量として捉えます。言い換えると「どれだけ頑張っても、これ以上酸素を取り込めない上限」を装置で見に行く検査です。
ただし、実測は設備・コスト・安全管理のハードルが高いので、現実には推定が主流になります。厚生労働省資料では、最大下運動負荷試験での強度と脈拍数の関係と最高心拍数から推定できること、20mシャトルランや6分間歩行などフィールドテストから推定できること、さらにウェアラブルデバイスでも推定が可能、と整理されています。つまり“推定値”を使うこと自体は、今の健康づくりの流れに合っています。
推定の落とし穴は、「何をもって最大(max/peak)とみなすか」が手法ごとに違うことです。たとえば、歩行テスト系は安全性は高い一方、心拍反応が鈍い日(睡眠不足、貧血、薬の影響など)だと推定がズレる可能性があります。ウェアラブルも便利ですが、推定ロジックが公開されていない場合もあるので、「同じ機器で継続して比較する」用途に向きます。
ブログ記事としては、ここで“平均”を扱うときの注意点を明示すると信頼性が上がります。
✅注意ポイント
・「VO2max実測」と「VO2peak推定」を同列に比較しない
・測定条件(気温、睡眠、疲労、運動直後)をそろえる
・単発の値ではなく、月単位の推移で判断する
最大酸素摂取量を高めるには、有酸素運動が基本です。健康長寿ネットでも、ウォーキング、ジョギング、ランニング、自転車、踏み台昇降、水泳など、心拍数が上がった状態で一定時間続けられる運動が挙げられています。さらに、ダンスや球技のように“動き続ける”要素がある活動も、全身持久力の向上に役立つとされています。
厚生労働省資料では、VO2peak/kgの向上には有酸素性身体活動の習慣的実施が有効で、中高強度で1回30分、週3回以上の継続実施が推奨されています。強度の目安はVO2peak/kgの50~75%程度で、主観的には「ややきつい」と感じる程度が適切、と具体的に書かれているのが実務上ありがたいポイントです。つまり、毎回限界まで追い込む必要はなく、“続けられる強度での反復”が王道です。
また、健康長寿ネットでは、最大酸素摂取量は除脂肪体重と関連し、有酸素運動に筋力トレーニングをプラスすることでさらなる効果が期待できる、と説明されています。女性の場合、「体重を落とす」ばかりに寄せると、筋量も落ちてパフォーマンスが伸びず、結果として推定VO2が上がりにくいケースが起きます。筋トレは“見た目”だけでなく、持久力の土台作りにも絡む、という理解が安全です。
実行プラン例(“ややきつい”の解像度を上げる)。
・週3回:30分の速歩(会話はできるが歌うのは難しい程度)
・週1回:少し長め(40~60分)の楽な有酸素(疲労を残さない)
・週2回:短時間の筋トレ(下半身+体幹を中心に)
ここで「あまり知られていない意外な視点」を入れるなら、“数字を上げる”より先に「継続を邪魔する要因」を潰す方が、結局はVO2の改善が早い点です。皮膚のかゆみで悩む人は、汗・摩擦・乾燥・衣類素材で運動が億劫になりやすいので、運動強度の議論に入る前に、肌トラブルを悪化させない設計(汗対策、シャワー後の保湿、インナー選び)を整えると、週3回が現実になります。運動生理の話に見えて、実際は“生活設計”が勝敗を分けます。
皮膚のかゆみがあると「汗=悪」と感じて運動自体を避けがちですが、VO2の改善は“継続”が最重要です。厚生労働省資料が示す推奨も、週3回以上の継続実施という形で、習慣化の価値を前提に組まれています。そこで、このセクションでは医療行為ではなく、運動を継続するための現実的な工夫に絞ります。
かゆみがある人ほど、運動内容を「走る/走らない」ではなく「肌刺激を管理できるか」で選ぶのが合理的です。例えば、同じ“有酸素運動”でも、屋外ジョギングは汗+乾燥風+紫外線+衣類の擦れが重なりやすい一方、室内バイクは擦れが比較的少なく、強度を一定に保ちやすいので、週3回の実行難度が下がります。最大酸素摂取量の測定でも自転車エルゴメータが代表例として挙げられており、運動手段としての相性も悪くありません。
実際に続けるための工夫(“かゆみで中断”を減らす)。
・運動は「短め×高頻度」から開始(20分でも週3回を優先)
・汗の刺激が強い日は、強度を落として“ややきつい未満”でも実施し、習慣を切らない
・摩擦が少ない種目を選ぶ(バイク、速歩、プールが合う人もいる)
・運動後は放置せず、汗を早めに落として肌トラブルのトリガーを減らす(生活上の工夫として)
さらに“意外と見落とされる点”として、推定VO2を追う場合、心拍数が重要な入力になりやすいことがあります。かゆみや不快感で集中できないと、同じ運動でも心拍が上がりやすく(=負荷が高く出やすく)推定値が乱れることがあり、成長実感が得にくくなる場合があります。だからこそ、肌の不快感を減らして「同じ運動を同じ感覚でできる」状態を作るのは、データの安定にも直結します。
健康づくりの制度や研究の話は難しく見えますが、最終的にやることはシンプルです。年代別の推定平均値で現状を知り、基準値(目標ライン)を意識しつつ、週3回30分の“ややきつい”を積み上げる。皮膚のかゆみがあるなら、まず継続を阻む要因(汗・摩擦・乾燥)を減らす設計に寄せる――この順番が、遠回りに見えて最短になります。
推定平均値(女性・年代別)と研究レビューに基づく基準値の考え方(公的資料の要点)。
厚生労働省:全身持久力(最高酸素摂取量)について(推定平均値・基準値・評価法の整理)