テルフェナジン販売中止とかゆみ抗ヒスタミン薬

テルフェナジン販売中止とかゆみ抗ヒスタミン薬

テルフェナジン販売中止

この記事でわかること
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販売中止の本質

「かゆみ止め」なのに、条件がそろうと致死的な不整脈リスクが上がる仕組みを解説します。

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代替薬の選び方

第二世代抗ヒスタミン薬の位置づけ、眠気や相互作用の見方を具体例で整理します。

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薬以外の優先順位

ガイドラインに基づくスキンケア、乾燥(ドライスキン)由来のかゆみ対策も深掘りします。

テルフェナジン販売中止の理由とQT延長

テルフェナジンは、条件次第で「QT延長」や心室性不整脈(torsades de pointesを含む)につながり得ることが、当時の安全性情報で強く注意喚起されました。
厚生省(当時)の情報では、代謝が阻害されてテルフェナジン未変化体の血中濃度が上がると、QT延長・心室性不整脈などの心血管系副作用が起こり得て、海外では心停止(死亡を含む)の報告もあると明記されています。
さらに重篤例の分析として、QT延長・心室頻拍・Torsades de pointesを示した症例概要が掲載され、併用薬や背景要因の重要性が具体的に示されています。
ここで大事なのは、「薬そのものが常に危険」というより、“危険な状態を作りやすい構造”を持っていた点です。

 

参考)https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/0902/h0213-2.html

つまり、体内での代謝・排泄・電解質バランス・併用薬などの条件が重なると、一気に安全域が狭くなるタイプの薬だった、という理解が現実的です。

テルフェナジン販売中止と薬物相互作用(マクロライド・アゾール)

テルフェナジン問題の核心は「薬物相互作用」です。
厚生省の資料では、イトラコナゾール併用、クラリスロマイシン併用などがリスクファクターとして具体的に挙げられ、重篤なQT延長・心室性不整脈が報告された症例が整理されています。
なぜ相互作用で危険になるかというと、テルフェナジンは代謝が阻害されると未変化体が増え、その未変化体がQT延長などに関与し得る、という構造があったためです。

この「代謝が止まると危険な形が残る」というタイプの薬は、皮膚のかゆみのように“頻度が高く軽症も多い症状”へ使うには、リスクの見合いが取りにくくなります。

また、かゆみで受診すると、皮膚科だけでなく内科・耳鼻科・歯科などで別の薬が追加されることもあります。

「別の科でもらった抗菌薬や抗真菌薬が引き金になる」構図が起きやすい点が、当時の運用では特に怖かった部分です。

テルフェナジン販売中止後の第二世代抗ヒスタミン薬

販売中止(あるいは実質的な置き換え)が進んだ後、臨床では第二世代抗ヒスタミン薬へ軸足が移っていきました。
日本皮膚科学会の「皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020」でも、抗ヒスタミン薬は皮膚瘙痒症に対して高いレベルの根拠は乏しいとしつつ、現状では第一選択の一つとして投与されている、と整理されています。
同ガイドラインでは、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインに準じ、非鎮静性~軽度鎮静性の第二世代抗ヒスタミン薬を第一選択として検討する考え方が示されています。
ただし、ここで誤解しやすいのが「第二世代=万能にかゆみが止まる」という期待です。

 

参考)https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/souyouGL2020.pdf

ガイドライン本文でも、汎発性皮膚瘙痒症ではヒスタミン以外の起痒物質(例:サブスタンスP、IL-31、TSLPなど)も関与し得るため、抗ヒスタミン薬が奏功しにくいケースがあると背景説明されています。

つまり、抗ヒスタミン薬は“かゆみの原因がヒスタミン優位のときに強い”一方、乾燥や神経系、内臓疾患などの要素が強いと効き方が限定的になり得る、という整理が安全です。

(参考:かゆみが「毎日あるのに皮疹が乏しい」「夜間に悪化」「全身」「数週間以上」などの場合、薬の追加より先に原因検索が必要になることがあります。 )​

テルフェナジン販売中止と「かゆみが薬で止まらない」時の診断

テルフェナジン販売中止を調べる人の多くは、「今のかゆみ止めで効かない」「昔の薬の方が効いた気がする」など、切実な体感を抱えています。
そこで重要になるのが、「かゆみ=アレルギー」だけで片付けない視点です。
皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020では、汎発性皮膚瘙痒症は腎不全・肝障害・血液疾患など多様な基礎疾患に伴うことがあり、QOLを著しく低下させる、と背景が述べられています。

検査の章では、内服薬(薬剤性)や内臓異常の可能性も念頭に置き、血液検査(血算、腎機能、肝胆道系酵素、甲状腺ホルモン、血糖など)でスクリーニングする、といった実務的な方向性も書かれています。

意外に見落とされがちなのが、乾燥(ドライスキン)由来のかゆみです。

ガイドラインでは、ドライスキンのかゆみには表皮内への神経線維侵入やsproutingなどが関与し、軽い刺激でもかゆみが出やすくなる、というメカニズムの説明があります。

薬の話に戻すと、ここが分岐点になります。

抗ヒスタミン薬を増やすより、保湿・入浴方法・室内湿度・衣類刺激・洗剤残りなどを詰めた方が、結果的に“薬を減らせる”ケースがあるためです。

参考:スキンケアの具体例(熱い湯を避ける、強くこすらない、石鹸を十分にすすぐ、爪を短くする等)がガイドライン内の表としてまとまっています。

権威性のある日本語の参考リンク(販売中止の背景:QT延長・不整脈と相互作用の具体例)
厚生労働省:トリルダン錠(テルフェナジン)投与中のQT延長、心室性不整脈の発現について(緊急安全性情報)
権威性のある日本語の参考リンク(かゆみ全般の診断・治療アルゴリズム、乾燥・内臓疾患・薬剤性などの整理)
日本皮膚科学会:皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020(PDF)