

「快適な室温に保っているのに、かゆみが全然おさまらない」——実はその部屋の温度こそがアルテルナリアを一番元気にしています。
アルテルナリアは学名を「Alternaria属」といい、日本では「ススカビ」という名前で知られているカビの一種です。全世界には3万〜20万種ものカビが存在するとされていますが、その中でもアルテルナリアは空中に最も多く飛散しやすいカビのひとつとして位置づけられています。果実、イモ類、穀類、枯れ葉・枯れ草から、家の中の壁・古本・餅まで、信じられないほど広い範囲に生息しています。
アルテルナリアの胞子が体に影響を与える理由は、その「大きさ」にあります。多くのカビの胞子は小さいため、吸い込むと気管支の奥まで到達して喘息を起こします。しかしアルテルナリアの胞子はやや大きく、鼻腔の中に長くとどまりやすい性質があります。これが、アルテルナリアアレルギーで鼻炎症状(くしゃみ・鼻水・鼻づまり)が特に強く出る理由です。
胞子が鼻粘膜や気道に付着すると、免疫細胞がこれを異物と認識し、IgE抗体を産生します。このIgE抗体が再度アルテルナリアの胞子と接触すると、ヒスタミンなどの化学物質が一気に放出され、かゆみ・赤み・腫れといったアレルギー症状が引き起こされます。つまり、かゆみはカビそのものではなく「自分の免疫の過剰反応」が原因です。
皮膚への影響も見逃せません。胞子やカビが付着した物に触れることで「接触皮膚炎」が発生し、皮膚に赤みやかゆみ、湿疹が生じます。アトピー性皮膚炎を持っている方はアルテルナリアによって症状が悪化しやすいことが知られており、かゆみが慢性化している場合は検査で確認する価値があります。
アレルギー症状は「鼻だけ」「皮膚だけ」とは限りません。症状が全身に関係しているということですね。
カビのアレルギーについて(ふくおか耳鼻咽喉科):アルテルナリアの胞子サイズと鼻炎の関係を解説しています。
アルテルナリアが引き起こすアレルギー症状は多岐にわたり、まるで複数の病気が同時に起きているように感じることがあります。代表的な4つの症状を把握しておきましょう。
① アレルギー性鼻炎
くしゃみが連続して出る、さらさらした透明な鼻水が止まらない、鼻づまりで眠れないという状態です。花粉症と非常によく似た症状ですが、花粉がない季節(特に梅雨〜秋口)にも続く場合はアルテルナリアを疑う必要があります。
② 気管支喘息
アルテルナリアアレルギーを持つ喘息患者は「重症喘息になるリスクが高い」というデータがあります。アルテルナリアへの感受性が強いと、気道が激しく反応して持続的な炎症が起こり、治療が難しいコントロール不良喘息に発展するケースも報告されています。夜間に胞子の濃度が高まりやすい性質があるため、夜間の咳や息苦しさが増すことも特徴です。これは注意が必要ですね。
③ アレルギー性結膜炎
目の結膜が炎症を起こし、目がかゆくてたまらない・充血する・涙が止まらないといった症状が現れます。外から帰ってきた後に目のかゆみが強い場合、屋外のアルテルナリア胞子が原因の可能性があります。
④ 皮膚のかゆみ・接触皮膚炎・アトピー悪化
皮膚に赤みやかゆみ、湿疹が出る「接触皮膚炎」のほか、アトピー性皮膚炎を持つ方では全体的な皮膚症状の悪化がみられます。カビの胞子が付着したタオルや壁、カーテンに触れるだけで症状が出ることがあります。
この4つが主なパターンです。
| 症状の種類 | 主な症状 | かゆみとの関係 |
|---|---|---|
| アレルギー性鼻炎 | くしゃみ・鼻水・鼻づまり | 鼻・のどのかゆみ |
| 気管支喘息 | 咳・息苦しさ・夜間発作 | 直接かゆみは少ない |
| アレルギー性結膜炎 | 目のかゆみ・充血・涙目 | 目の強いかゆみ |
| 接触皮膚炎・アトピー | 皮膚の赤み・湿疹 | 皮膚の強いかゆみ |
喘息とアレルギー:アルテルナリアがもたらす影響(やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック):重症喘息リスクとアルテルナリアの関係を医師が解説しています。
「花粉症の季節でもないのにかゆくて鼻が詰まる」という状態が続いているなら、アルテルナリアの飛散ピークを知ることが大切です。
屋外でのアルテルナリア胞子の飛散は4月〜10月にかけて確認されており、ピークは6月と9〜10月の年2回あります。これは梅雨の高湿度期と、秋の枯れ葉・枯れ草が増える時期に対応しています。日内変動もあり、調査によると胞子の飛散量は午後と朝方に多い傾向が確認されています。つまり、朝起きたときや夕方に症状が強い場合、アルテルナリアが関与している可能性があります。
注意が必要なのは、屋内の話です。東京都の調査によると、12月〜3月にかけては室内の真菌(カビ)濃度が屋外より高くなることが確認されています。冬は窓を閉め切ることで室内にカビ胞子が滞留しやすくなるためです。「冬なのにかゆみが治まらない」という場合は、室内のアルテルナリアを疑うべきです。
室内でアルテルナリアが繁殖しやすい場所を整理すると。
- 🛁 浴室・洗面所:高温多湿でカビの繁殖に最適な環境
- 🪟 窓枠・サッシ:冬の結露が水分源になる
- ❄️ エアコン内部:結露とホコリが結合し、運転時に胞子を室内にまき散らす
- 🛋️ カーテン・壁紙:胞子が付着しやすく、目に見えにくい
- 🗄️ 押し入れ・タンスの裏:通気が悪く、湿気がこもりやすい
- 🌡️ 冷蔵庫の周辺:結露と温度差が発生しやすい
特に盲点になりやすいのがエアコンです。エアコンの内部でアルテルナリアが繁殖した場合、運転のたびに胞子が室内に強制的に放出されます。「エアコンをつけると咳やくしゃみが出る」という方は、エアコン内部のカビが直接原因になっている可能性があります。
エアコン由来のかゆみと症状悪化は、見落とされがちです。
カビアレルギー-アルテルナリア・アスペルギルス(イーウェルクリニック):飛散シーズンの詳細と血液検査の種類について記載されています。
かゆみや鼻炎が「アルテルナリアが原因なのか」を判断するには、正確な診断が不可欠です。自己判断で市販の抗アレルギー薬を飲み続けても、原因が特定されていなければ根本的な改善にはつながりません。
診断の流れは大きく次の3ステップです。
ステップ1:問診
どの季節・場所・時間帯に症状が強いかを確認します。鼻炎や喘息症状だけでなく、アトピー性皮膚炎・脂漏性皮膚炎・水虫など皮膚症状についても確認することがアルテルナリア特定の手がかりになります。「浴室の掃除後や古本を片付けた後に症状が強まる」といった具体的なエピソードが診断の精度を高めます。
ステップ2:血液検査(IgE抗体価測定)
アルテルナリアへの感作を確認するにはIgE抗体価を測定します。MAST法と呼ばれる複数アレルゲンを一度に確認できる検査にはアルテルナリアが含まれています。気管支喘息を持つ方向けには「成人喘息セット」(アスペルギルス・アルテルナリア・カンジダ・クラドスポリウム・ペニシリウム・ムコール・トリコフィトンを含む)での検査がおすすめです。
ステップ3:皮膚テスト(必要な場合)
特定のクリニックでは診断用アレルゲンエキス(アルテルナリア)を用いた皮膚テストも実施されています。皮膚の膨疹が対照の2倍以上または5mm以上で「陽性」と判定されます。
IgE検査が診断の基本です。
検査で陽性が確認された場合でも、「原因がわかっただけでは治らない」という点は注意が必要です。アレルギーを引き起こす物質(アルテルナリア)を日常生活からできるだけ排除する「環境療法」と、抗ヒスタミン薬などの薬物療法を組み合わせることが症状改善の基本的な方針となります。症状が強い・薬で十分にコントロールできない場合は、アレルゲン免疫療法(減感作療法)を専門医に相談する選択肢もあります。
アレルギー【アルテルナリア】(武蔵小山皮フ科形成外科):アルテルナリアアレルギーの原因特定と検査の詳細が記載されています。
診断で原因が特定できたら、次は環境から変えることが最優先です。薬でかゆみを抑えながら、同時に「アルテルナリアが増えにくい部屋」を作ることで症状を根本から軽減できます。
① 室内湿度を60%以下にキープする
アルテルナリアを含むカビの多くは、温度20〜30℃・湿度60〜80%の環境で最も活発に増殖します。この温度帯は人間が快適に感じる室温とほぼ一致しているため、現代の高断熱住宅はむしろカビにとって理想的な環境になりやすいのです。湿度計を常に設置し、除湿機やエアコンの除湿機能を使って湿度を50〜60%以下に保つことが基本です。梅雨・夏場は除湿機を積極的に活用しましょう。湿度管理が最初の一歩です。
② エアコンのフィルターを定期的に清掃する
エアコンは特にアルテルナリアの温床になりやすい家電です。シーズン開始前と使用中に1〜2回、フィルターを取り出してホコリを除去し、必要に応じて防カビスプレーを使用します。「エアコンをつけると症状が悪化する」という方は、フィルターの奥(熱交換器部分)にカビが繁殖していることがあります。その場合は専門のエアコンクリーニング業者に内部洗浄を依頼することで、かゆみや咳の発生源を取り除けます。
③ 水回り・浴室を徹底的に乾燥させる
お風呂から出た後は、冷水をシャワーで全体にかけて湯気の熱を冷まし、換気扇を1時間以上回すことが効果的です。タイルの目地、排水口周り、シャワーカーテンの根元は特にカビが発生しやすい部分です。週1回の防カビ剤使用で繁殖を大幅に抑えられます。これは継続が条件です。
④ 結露をすぐに拭き取る
冬場の窓ガラスや壁の結露は、アルテルナリアにとって貴重な水分源です。結露吸収シートや断熱シートを窓に貼ることで発生量を抑え、結露が生じた場合はすぐにタオルで拭き取る習慣をつけましょう。特に北側の部屋・寝室の窓は見落とされがちです。
⑤ 大型家具を壁から5〜10cm離す
タンスやソファを壁にぴったりくっつけると、その裏側に空気が流れず湿気がこもります。壁から5〜10cm(ハガキの短辺くらいの幅)の隙間を意図的に作るだけで、通気が改善されカビの繁殖リスクが下がります。模様替えのついでに確認してみましょう。
| 対策 | 頻度の目安 | 効果が出る期間 |
|---|---|---|
| 湿度管理(除湿機・換気) | 毎日 | 即効〜2週間 |
| エアコンフィルター清掃 | 月1〜2回 | 数日〜1週間 |
| 浴室乾燥・防カビ剤 | 週1回 | 1〜2ヶ月 |
| 結露拭き取り | 毎日(冬場) | 即効 |
| 家具を壁から離す | 一度設定すればOK | 1〜2ヶ月 |
かゆみを抑えるには環境対策と薬の両輪が原則です。
住居とアレルギー疾患(東京都保健医療局):室内に潜むアルテルナリアの特性と生活環境改善の指針が記載されています。