

不飽和脂肪酸は「二重結合を1つ以上もつ脂肪酸」の総称で、一価不飽和脂肪酸(MUFA)と多価不飽和脂肪酸(PUFA)に大別されます。文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編」でも、飽和・一価不飽和・多価不飽和、さらにn-3系(オメガ3)とn-6系(オメガ6)に分けて収載されています。
ここで最初につまずくのが「一覧」の数字の意味です。同じ食品でも、
・可食部100g当たり(その食品を100g食べたとき、脂肪酸がどれだけ入るか)
・脂肪酸総量100g当たり(脂肪酸“組成”。脂肪酸の中身の比率に近い)
の2種類の見せ方があり、目的が違います。普段の食事で「実際にどれくらい摂れるか」を知りたいなら、基本は可食部100g当たりを見るのが実用的です。
また、脂肪酸成分は原材料の品種、生育環境、加工方法などで変動することが知られており、成分表は「市場で入手し得る試料の分析値を基に、1食品1標準成分値」を原則としている点も押さえておくと、ネット記事のランキングを鵜呑みにしにくくなります。
皮膚のかゆみ対策で「不飽和脂肪酸を増やす」と言うと、油をドバッと増やすイメージになりがちですが、脂質はエネルギー過剰にもつながります。成分表がわざわざ脂肪酸のトリアシルグリセロール当量など“エネルギー計算の基礎”として整備されているのは、脂肪酸=健康食品ではなく、摂取量とバランスが大切という前提があるからです。
参考リンク(脂肪酸成分表の定義・表の構造・数値の表示方法の根拠)。
文部科学省:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編(PDF)
皮膚のかゆみが気になる人が、不飽和脂肪酸の中でも優先順位を付けるなら、まず候補に上がりやすいのがオメガ3(n-3系)です。オメガ3には、植物由来のα-リノレン酸(ALA)と、魚介由来のEPA・DHAがあり、同じ“オメガ3”でも食品選びが変わります。
食品カテゴリで覚えると実務的です。
・🐟魚介類:青魚(サバ、イワシ、サンマなど)を中心に、EPA・DHAの供給源になりやすい
・🫙油脂類:えごま油、アマニ油などはALAが多い設計になりやすい(ただし酸化しやすい)
・🥜種実類:くるみはALA寄りの脂肪酸プロファイルで語られることが多い
「意外な落とし穴」は、オメガ3を“サプリだけ”で増やす発想です。食事全体の置き換え(例:揚げ油の質、魚の頻度、ナッツの間食)を変えないと、オメガ6過多・総脂質過多が残ったままになりやすいからです。さらに、油脂は加熱・光・空気で酸化しやすいので、えごま油やアマニ油を「炒め物に使う」より「仕上げに小さじ1をかける」など、使い方の設計で結果が変わります。
皮膚の観点では、オメガ3由来の脂質が皮膚アレルギー反応に関与しうるメカニズムが示された研究発信もあり、食事の脂質を“皮膚の炎症バランス”の視点で見直す動機になります(ただし医療としての位置づけは別で、治療は医師の指示が前提)。
参考リンク(オメガ3脂肪酸が皮膚アレルギー反応を改善しうる可能性の研究紹介)。
京都大学:魚油に多く含まれるオメガ3脂肪酸が皮膚アレルギー反応を改善させうることを発見
オメガ6(n-6系)も必須脂肪酸側に入る重要な脂質ですが、現代の食生活では「摂りやすい」のが特徴です。主な供給源は植物油(コーン油、大豆油、ひまわり油など)や加工食品・外食の揚げ油で、本人が意識しなくても積み上がりやすいのが現実です。
厚生労働省の資料(食事摂取基準の解説資料)では、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸がそれぞれg/日で示される考え方や、脂質のエネルギー比率などが整理されています。「かゆみ対策で不飽和脂肪酸を摂る」という言葉が、いつの間にか“油を増やす”になってしまうと、脂質エネルギー過多に寄りやすいので、まずは摂取の土台(揚げ物頻度、スナック、マヨ・ドレッシング量)を棚卸しするのが安全です。
ここでのポイントは、オメガ6=悪ではないことです。皮膚は脂質が必要な臓器で、必須脂肪酸が不足すると皮膚の角質化などが起こりうることも、成分表の解説で触れられています。つまり「減らす」ではなく、「オメガ6が勝ちすぎないようにしつつ、オメガ3の手札を増やす」が、かゆみの話題に寄せた現実的な着地です。
参考リンク(n-6/n-3、脂質摂取の考え方、摂取量の扱いの基礎)。
厚生労働省:食事摂取基準(脂質)関連資料(PDF)
皮膚のかゆみは、炎症だけでなく「皮膚バリアの弱り」からも増幅します。バリアが弱ると乾燥しやすくなり、外的刺激に反応しやすくなり、結果として掻破→さらにバリア低下…という循環に入りやすいからです。ここで脂質が関わるポイントが、角層の“脂質の組み立て”です。
あまり一般記事で前面に出ない意外な論点として、PUFA欠乏と皮膚炎の関係を研究している大学発信の解説があります。京都薬科大学の解説では、リノール酸の代謝物であるγ-リノレン酸やアラキドン酸、EPAなどの一部PUFAが、皮膚バリア機能に関わるセラミド(アシルセラミド、角化膜セラミド)を増加させ、皮膚バリアを顕著に改善させる知見が示されています。これは「オメガ3だけ摂れば良い」「オメガ6は全部悪い」という単純化が危険であることの根拠にもなります。
実務的には、食事で“バリアの材料”を確保する発想が重要です。例として、
・🐟週2~3回の魚(難しければ缶詰を活用)
・🥗油は「種類」より「酸化しにくい運用」(開封後は冷暗所・早めに使い切る)
・🥜間食の質を、菓子→ナッツ少量に置換
のように、皮膚のかゆみ対策の文脈でも続けやすい設計ができます。
参考リンク(PUFA欠乏、γ-リノレン酸、EPAなどと皮膚バリア/セラミドの関係)。
京都薬科大学 薬理学分野:PUFA欠乏とADとの関係
検索上位の「不飽和脂肪酸 食品 一覧」は、ランキングや食品名の羅列で終わりがちです。しかし、皮膚のかゆみに悩む人が本当に詰まりやすいのは「良いと言われた油を買ったのに続かない」「むしろ胃が重い」「味やにおいが気になってやめた」という運用面です。ここは成分量より、保存と使い方で差が出ます。
不飽和脂肪酸は構造上、飽和脂肪酸より酸化の影響を受けやすい傾向があるため、次のルールが効きます。
・🧊開封後は“期限”より“劣化サイン”(におい、えぐみ)を重視して、早めに使い切る
・🧴大容量より小容量を選び、空気に触れる時間を短くする
・🔥高温加熱が前提の調理に「繊細な油」を使わず、仕上げや冷菜で使う
・🧂ドレッシングにして常温放置せず、必要量だけ都度作る
さらに意外なポイントとして、脂肪酸“そのもの”だけでなく、料理の「再現性」が継続を左右します。例。
・味噌汁+サバ缶(汁ごと)+すりごま少量
・豆腐+しらす+オリーブ油少量(MUFA寄りの組み立て)
・納豆+刻み海苔+えごま油を数滴(加熱しない)
のように、毎回迷わない型を3つ持つと、摂取量が安定しやすいです。
最後に注意点です。皮膚のかゆみが強い、湿疹が広がる、睡眠が崩れる、出血するほど掻いてしまう場合は、食事以前に皮膚科の治療(外用薬・保湿・原因精査)が最優先になります。食事はあくまで「土台の支援」として位置づけ、無理な油増量や極端な制限で栄養バランスを崩さない設計にしてください。

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