ビフィズス菌とヨーグルトの効果
皮膚のかゆみに悩む多くの人々が、塗り薬や保湿ケアに日々努力を重ねています。しかし、「外側からのケア」だけではどうしても改善しない、あるいは季節の変わり目や体調によってぶり返してしまうというかゆみには、体の「内側」にある原因が深く関わっている可能性があります。近年、腸内環境の研究が飛躍的に進み、特定のビフィズス菌を含むヨーグルトを摂取することで得られる効果が、皮膚の健康状態、特になかなか治らない「かゆみ」に対して科学的に有効であるというデータが次々と報告されるようになりました。
参考)https://www.lkm512.com/contents/20140805.pdf
なぜお腹の菌が肌のかゆみに関係するのでしょうか。私たちの腸内には、数百兆個もの細菌が住み着いています。健康な状態では善玉菌が優勢ですが、ストレスや食生活の乱れによって悪玉菌が増えると、腸内で腐敗物質が作られます。この腐敗物質が腸壁から吸収されて血液に乗って全身を巡り、皮膚に到達することで炎症やかゆみを引き起こす「腸脳皮膚相関(Gut-Brain-Skin Axis)」というメカニズムが存在するのです。
参考)「便秘が続くと肌荒れも悪化?」腸内環境と美容の深い関係
単に「お通じを良くする」というレベルの話ではありません。最新の研究では、特定のビフィズス菌が腸内で作り出す代謝物質そのものが、神経系に作用してかゆみを抑える働きがあることまで分かってきました。本記事では、皮膚科の治療と併用して取り入れたい、科学的根拠に基づいたビフィズス菌ヨーグルトの選び方と、その驚くべきメカニズムについて深掘りします。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000010851.html
腸内環境と皮膚の悪循環を断つメカニズム
「肌は内臓を映す鏡」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは単なる比喩ではなく、生理学的な事実に基づいています。腸内環境が悪化し、悪玉菌(ウェルシュ菌など)が増殖すると、タンパク質や脂肪を分解する過程で「フェノール類」や「パラクレゾール」といった有害な腐敗産物が生成されます。
参考)肌荒れと腸内環境の関係は!?改善方法を伝授!
これらの有害物質は腸管から体内に吸収され、血液循環に乗って全身を巡ります。通常であれば肝臓で解毒されますが、腸内環境が悪すぎて有害物質の量が多すぎたり、肝機能が追いつかなかったりすると、毒素は皮膚まで到達します。皮膚に蓄積したフェノール類は、表皮の細胞分裂(ターンオーバー)を阻害し、皮膚のバリア機能を低下させます。バリア機能が壊れた肌は、外部からの刺激(ダニ、ほこり、乾燥など)に対して極端に弱くなり、わずかな刺激でも「かゆみ」の信号を発信してしまうのです。
さらに、便秘が続くと、この悪循環は加速します。便が腸内に長く滞留することで、腐敗物質が再吸収され続けるからです。また、便秘自体がストレスとなり、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促します。コルチゾールは皮膚のセラミド分解を促進し、乾燥とかゆみをさらに悪化させます。
ここで重要な役割を果たすのがビフィズス菌です。一般的な乳酸菌が主に小腸で働くのに対し、ビフィズス菌は大腸を主戦場とします。ビフィズス菌は糖を分解して「乳酸」だけでなく、より殺菌力の強い「酢酸」を作り出します。この酢酸が腸内を酸性に保つことで、悪玉菌の増殖を強力に抑制し、かゆみの原因となるフェノール類の産生を元から断つのです。つまり、ビフィズス菌ヨーグルトを食べることは、皮膚に届く毒素の供給源をシャットダウンすることと同義なのです。
参考)「健康コスパ」を徹底比較 ヨーグルト編|特集「健康コスパで選…
参考リンク:腸内環境改善を介した皮膚性状改善効果についての詳細なレポート(ヤクルト本社)
LKM512株が成人アトピーのかゆみを軽減
一口にヨーグルトと言っても、そこに含まれる菌の種類によって期待できる効果は異なります。皮膚のかゆみ、特に成人型アトピー性皮膚炎に対して明確なエビデンス(科学的根拠)を持っているのが「ビフィズス菌LKM512株」です。
協同乳業(メイトー)の研究チームが行った臨床試験は、非常に興味深い結果を示しています。この試験では、成人型アトピー性皮膚炎の患者を対象に、ビフィズス菌LKM512を含むヨーグルトを1日100g摂取してもらい、その経過を観察しました。
- かゆみの軽減: 摂取開始から8週間後、プラセボ(偽薬)を摂取したグループと比較して、LKM512摂取群では「かゆみ」のスコアが有意に低下しました。医師による客観的な評価だけでなく、患者自身の主観的な評価(VASスコア)でも明確な改善が見られました。
- QOLの向上: かゆみが減ることで、睡眠不足やイライラが解消され、QOL(生活の質)のスコアも大幅に改善しました。
- 肌のバリア機能の兆候: 一部の被験者では、皮膚の赤みや炎症の見た目も改善する傾向が見られました。
この研究の重要なポイントは、「薬を使わずに、食品であるヨーグルトを食べるだけで変化が出た」という点です。もちろん、これは医療行為の代替にはなりませんが、標準治療(ステロイド外用薬など)と併用することで、治療効果を底上げしたり、薬の使用量を減らしたりできる可能性があります。8週間という期間は長く感じるかもしれませんが、腸内細菌叢(腸内フローラ)が入れ替わり、体質改善の効果が皮膚に現れるまでには、皮膚のターンオーバーのサイクル(約28日~)を考慮すると妥当な期間です。即効性を求めず、まずは2ヶ月続けることが成功の鍵と言えるでしょう。
参考)http://lkm512.com/lp/atopi.html
参考リンク:ビフィズス菌LKM512による成人型アトピー性皮膚炎のかゆみ改善効果に関する研究プレスリリース
キヌレン酸とポリアミンが作る体内のかゆみ止め
なぜLKM512株は、他数多ある菌株の中で特にかゆみに効くのでしょうか?ここで登場するのが、本記事における独自視点のトピック、「腸内細菌が作り出す天然のかゆみ止め物質」の話です。
多くの解説記事では「腸内環境が整う→毒素が減る→肌がきれいになる」という引き算の理論で終わっています。しかし、LKM512の研究では、さらに一歩進んだ「足し算」のメカニズムが解明されつつあります。それが「ポリアミン」と「キヌレン酸」の産生です。
参考)アトピー性皮膚炎を改善する
- ポリアミンによる抗炎症作用:
LKM512は大腸内で増殖する際、アミノ酸のアルギニンなどを材料にして「ポリアミン」という物質を増やします。ポリアミンは細胞の再生や修復に不可欠な成分ですが、強力な抗炎症作用も持っています。腸管のバリア機能を強化し、アレルゲンや毒素の侵入を防ぐことで、全身の炎症レベルを下げてくれるのです。
- キヌレン酸による鎮痒(ちんよう)作用:
さらに驚くべき発見として、LKM512を摂取してかゆみが改善した患者の便を解析したところ、「キヌレン酸」という物質が増加していることが分かりました。キヌレン酸は中枢神経系に作用する物質として知られていますが、実は動物実験レベルでは「かゆみの信号をブロックする」作用があることが報告されています。つまり、特定のビフィズス菌がお腹の中で「天然のかゆみ止め成分」を合成し、それが血中に入って神経に働きかけることで、脳が感じるかゆみを鎮めている可能性があるのです。
これは、単なる「整腸作用」を超えた、プロバイオティクスの新しい可能性を示しています。かゆみの原因は皮膚の表面だけでなく、神経の過敏さにもあります。ビフィズス菌が作り出す代謝産物が、神経レベルでかゆみの悪循環を断ち切ってくれるかもしれないのです。この「代謝産物(ポストバイオティクス)」に注目してヨーグルトを選ぶ視点は、まだあまり一般的ではありませんが、非常に重要です。
参考リンク:ポリアミンとアトピー性皮膚炎の関係についての解説(LKM512専門サイト)
大人のアトピーこそビフィズス菌種類にこだわる
「ヨーグルトなんてどれも同じでしょ?」と思っていませんか?実は、市販のヨーグルトの多くは「乳酸菌」のみで発酵されており、「ビフィズス菌」が含まれていない製品も多々あります。特に大人の皮膚トラブル改善を目的とする場合、この違いは決定的です。
- 乳酸菌(Lactobacillusなど):
主に小腸に定着します。糖を分解して乳酸を作ります。免疫細胞の活性化などに役立ちますが、酸素がある環境を好むため、酸素がほとんどない大腸の奥深くでは活動が鈍ることがあります。
- ビフィズス菌(Bifidobacterium):
主に大腸に定着します。乳酸に加え、強力な殺菌作用を持つ「酢酸」を大量に作り出します。大腸は便が作られる場所であり、腐敗物質発生の震源地です。ここを制圧できるのは、酸素を嫌うビフィズス菌だけです。加齢とともに腸内のビフィズス菌は激減するため、大人の肌荒れ対策にはビフィズス菌の補充が必須です。
かゆみ対策としてヨーグルトを選ぶ際は、パッケージの裏面を見て、以下の菌株名が含まれているか確認してください。
| 菌株名 | 主な特徴・研究報告 | 代表的な製品(例) |
|---|---|---|
| LKM512株 | 成人アトピーのかゆみ改善、ポリアミン産生 | メイトー(協同乳業)のヨーグルト、サプリメント |
| M-16V株 | アレルギー症状の緩和、皮膚スコア改善 | 森永乳業の製品、赤ちゃん用整腸剤など |
| BB536株 | 花粉症等のアレルギー抑制、整腸作用 | 森永ビヒダスなど |
| 11/19-B1株 | アトピー性皮膚炎の症状軽快(子供対象の研究あり) | 東北地方中心に販売される特定製品 |
特に「かゆみ」にフォーカスするなら、前述の通りLKM512株やM-16V株に関するデータが豊富です。単に「おいしいから」で選ぶのではなく、「自分の肌の悩みに合った菌株(機能性)」で指名買いすることが、改善への近道です。
参考)ビフィズス菌の摂取が、成人女性の顔の皮膚に現れる褐色斑などの…
改善効果を高める食べ方とプレバイオティクス
最後に、ビフィズス菌ヨーグルトの効果を最大限に引き出し、皮膚のかゆみ改善を加速させるための「食べ方の極意」を紹介します。ただ漫然と食べるだけでは、菌の多くは胃酸で死滅してしまったり、腸に定着せずに通過してしまったりします。
- タイミングは「食後」が鉄則:
ビフィズス菌は酸に弱い性質があります。空腹時は胃の中の酸性度が非常に高く(pH1~2)、菌が死滅しやすい環境です。食後は胃酸が薄まっているため、生きたまま腸に届く確率が格段に上がります。デザートとして食べるのが理にかなっています。
- 「菌のエサ」をセットで摂る(シンバイオティクス):
ビフィズス菌(プロバイオティクス)を摂取する際、同時にそのエサとなる成分(プレバイオティクス)を摂ることを「シンバイオティクス」と呼びます。エサがないと、せっかく届いた菌も増殖できません。
- 水溶性食物繊維: 海藻、大麦、ごぼう、キウイフルーツなど。
- オリゴ糖: きな粉、バナナ、ハチミツなど。
これらをヨーグルトにトッピングして食べるのが最強の組み合わせです。特にきな粉バナナヨーグルトは、手軽で強力な美肌メニューです。
- 温度に注意:
ビフィズス菌は熱に弱いため、温めすぎは厳禁です。人肌程度なら活動が活発になりますが、電子レンジで加熱しすぎると死滅します。冷たいまま食べるか、常温に戻す程度にしましょう。
- 死菌でも無駄ではない(パラプロバイオティクス):
もし胃酸で菌が死んでしまっても、がっかりする必要はありません。死んだ菌の細胞壁成分そのものが、腸の免疫細胞を刺激して免疫バランスを整える効果(パラプロバイオティクス効果)があることが分かっています。重要なのは「毎日継続して、腸に菌体を送り込み続けること」です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/23/11/23_559/_pdf/-char/ja
皮膚のかゆみは一朝一夕には治りませんが、腸内環境は約2週間~1ヶ月で変化し始めます。まずは2週間、自分に合ったビフィズス菌ヨーグルトを「食後に」「エサと共に」食べ続けてみてください。お腹の調子が良くなってきたと感じたとき、ふと気づけば肌のかゆみも和よいでいるかもしれません。それが、体からの「改善」のサインです。

【Amazon.co.jp 限定】ビオスリーHi錠 570錠【指定医薬部外品】整腸剤 [酪酸菌/糖化菌/乳酸菌 配合] 錠剤タイプ [腸内フローラ改善/腸活] 便秘や軟便に

