

エクラープラスター(一般名:デプロドンプロピオン酸エステル)は、抗炎症作用を持つステロイドを含有したテープ剤です。通常の軟膏やクリームとは異なり、患部を密封することで薬剤の浸透を高める「ODT(密封療法)」と同様の効果が得られるのが最大の特徴です。このセクションでは、多くの患者さんが疑問に思う「効果の期間」と「効き目の強さ」について、医学的な根拠に基づき詳細に解説していきます。
エクラープラスターの添付文書上の用法・用量では、通常12時間または24時間ごとに貼り替えることが推奨されています。これは、テープに含まれる有効成分が皮膚から徐々に放出され、組織内に浸透して抗炎症作用を発揮し続ける時間が、およそこのサイクルで設計されているためです。
参考)エクラープラスター20μg/cm2の基本情報(副作用・効果効…
多くの医師は1日1回、入浴後の貼り替え(24時間貼付)を指示します。これは生活リズムに合わせやすいだけでなく、血中濃度の安定化を図るためです。テープ剤のメリットは、貼っている間中、常に一定量の薬剤が供給され続ける「徐放性」にあります。塗布後すぐに濃度がピークに達して下がる軟膏とは異なり、エクラープラスターは貼付している間、持続的に炎症を抑え込みます。
参考リンク:PMDA 医療用医薬品情報検索 エクラープラスター添付文書(用法・用量や臨床成績の詳細なデータが確認できます)
また、「夜間のみ貼付」という指示が出ることもあります。これは24時間の連続使用で皮膚がかぶれてしまう場合や、副作用のリスクを軽減したい場合に選択される方法です。夜間だけでも十分な薬剤吸収が見込める場合が多いため、自己判断で時間を延ばさず、医師の指示に従うことが重要です。
ステロイド外用薬は強さに応じて5段階(Strongest, Very Strong, Strong, Medium, Weak)に分類されますが、エクラープラスターの評価は少し特殊です。
有効成分である「デプロドンプロピオン酸エステル」自体は、軟膏やクリームの形態では「Strong(強い)」ランクに分類されます。これはリンデロンVやフルコートと同じクラスです。
ここが非常に重要です。テープ剤は患部を覆って密封するため、薬剤の経皮吸収率が格段に高まります。そのため、臨床的な効果の強さは1ランク、あるいは2ランクアップし、「Very Strong(とても強い)」から「Strongest(最も強い)」に近い効果を発揮すると考えられています。
以下の表は、一般的なステロイドテープ剤の強さの比較です。
| 薬剤名 | 成分ランク | テープとしての実質的な強さ | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| エクラープラスター | Strong | Very Strong 〜 Strongest | 大人のケロイド、苔癬化した厚い湿疹、難治性の痒疹 |
| ドレニゾンテープ | Weak | Strong 相当 | 小児のケロイド、顔面、皮膚が薄い部位 |
この強力な効果ゆえに、エクラープラスターは「塗っても治らない分厚い皮疹」や「硬いケロイド」に対して第一選択となりますが、逆に言えば顔や首、陰部などの皮膚が薄い部分への安易な使用は副作用のリスクが高いため、注意が必要です。
参考)「ケロイド」と「ケロイド外来」について|日本医科大学武蔵小杉…
強力な効果を持つ反面、副作用のリスクも理解しておく必要があります。特に長期間(数週間〜数ヶ月)にわたって同じ場所に貼り続けるケロイド治療などでは、局所的な副作用の発現率が高まります。
広範囲に大量に使用した場合、ステロイドが全身に吸収され、副腎機能の抑制や緑内障、白内障を引き起こす可能性があります。特にまぶたへの使用は眼圧を上昇させるリスクがあるため、原則として避けるべきです。
参考リンク:くすりのしおり エクラープラスター(患者向けの分かりやすい副作用情報や使用上の注意点が記載されています)
エクラープラスターの効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるためには「貼り方」にコツがあります。ただ貼ればよいというわけではありません。特に指先や関節など、よく動かす部位では剥がれやすいため、以下のテクニックを駆使してください。
「患部からはみ出さない」ことが鉄則です。特にケロイド治療の場合、患部より大きく切って貼ると、周囲の正常な皮膚までステロイドを吸収してしまい、正常な皮膚が凹んでしまう(皮膚萎縮)原因になります。患部のサイズに合わせてハサミで正確に切り取ってください。
参考)https://kizu-clinic.com/wp-content/uploads/2025/05/a7deb6071912c09acf2bfd0041f438b5.pdf
四角く切ったテープの角(かど)は、衣服に擦れて剥がれるきっかけになります。切ったテープの四隅をハサミで丸く落としておくだけで、剥がれにくさが劇的に向上します。
軟膏や保湿クリームを塗った直後の「ベタベタした皮膚」には、テープはうまく張り付きません。
関節や曲面に貼る場合、テープに数カ所「切り込み(スリット)」を入れておくと、皮膚の動きに追従しやすくなり、浮きや剥がれを防げます。
最後に、一般的な検索結果ではあまり触れられない、「皮膚の厚さとバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)」という視点から効果期間と効き目を深掘りします。
ステロイド外用薬の吸収率は、体の部位によって最大42倍もの差があります。
前腕(腕の内側)の吸収率を「1」とした場合、以下のような違いがあります。
エクラープラスターは、ODT効果によって薬剤を強制的に浸透させる力が強いため、「かかと」や「手のひら」、「分厚い苔癬化した湿疹」など、通常の軟膏では薬が届きにくい部位に対して圧倒的なパフォーマンスを発揮します。これが、エクラープラスターが選ばれる最大の理由です。
逆に言えば、顔や首、陰部などの「吸収されやすい薄い皮膚」にエクラープラスターを使用することは、効果が強すぎて副作用(赤ら顔や皮膚萎縮)が短期間で出現するリスクが高いことを意味します。「よく効くから」といって、自己判断で顔の虫刺されなどに転用するのは非常に危険です。部位ごとの皮膚の厚さを理解し、適切な期間で使い分けることが、この強力な武器を使いこなす鍵となります。
また、意外なメリットとして「物理的なバリア機能」があります。エクラープラスターを貼っている間は、物理的に患部を掻き壊すことができません。かゆみの悪循環(イッチ・スクラッチ・サイクル)を物理的に遮断できるという点は、薬剤の薬理作用以上に、治癒期間の短縮に貢献している可能性があります。特に無意識に掻いてしまう就寝中の「掻き壊し防止」として、このテープの存在意義は非常に大きいのです。