フィラグリンの食べ物
フィラグリン食べ物:ヒスチジンとアミノ酸でバリア機能の素を作る
肌の潤いを守るために最も重要な物質の一つがフィラグリンです。このフィラグリンは、最終的に分解されて「天然保湿因子(NMF)」となり、角層の中で水分を抱え込む重要な役割を果たします 。しかし、このフィラグリンを体内で作り出すためには、その材料となる特定の栄養素が必要です。その代表格が「ヒスチジン」というアミノ酸です。
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ヒスチジンは、体内で合成できない必須アミノ酸の一つ(または準必須アミノ酸)であり、食事から摂取する必要があります。研究によると、ヒスチジンを豊富に含む食事を摂取することで、皮膚のフィラグリン産生量が増加し、バリア機能が改善されることが示唆されています 。特にアトピー性皮膚炎の患者さんでは、遺伝的要因や環境要因によってフィラグリンが不足しているケースが多く、食事からの積極的なアプローチが推奨されます 。
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具体的にどのような食材にヒスチジンが多く含まれているかというと、以下のような「赤身の魚」や「豚肉」が挙げられます。
- カツオ(鰹): ヒスチジン含有量が非常に高く、出汁としても摂取しやすい優秀な食材です。
- マグロ(鮪): 特に赤身部分に多く含まれ、刺身などで効率よく摂取できます。
- ブリ(鰤): 脂も乗っており、皮膚の材料となるタンパク質と共に摂取できます。
- 豚肉: 赤身肉にはヒスチジンが多く、ビタミンB群も豊富なため肌の代謝に最適です。
- 大豆製品: 豆腐や納豆などの植物性タンパク質にも含まれており、日常的に取り入れやすい食材です。
これらの食材を食べる際のポイントは、「タンパク質としてしっかり消化吸収させること」です。胃腸の働きが弱っていると、せっかくのアミノ酸も肌まで届きません。よく噛んで食べることや、消化を助ける大根おろしなどを添える工夫も、間接的にフィラグリン生成をサポートします 。まずは、毎日の味噌汁にカツオ出汁を使ったり、豆腐を入れたりすることから始めてみましょう。
参考)ヒスチジンとは?5つの効果と適切な摂取方法
アトピー性皮膚炎におけるヒスチジンの重要性を解説している論文情報です
表皮に含まれる脂質のバリア形成における役割 (J-Stage)
フィラグリン食べ物:生成を助けるビタミンB6とマグネシウムの栄養
「ヒスチジン」という材料をただ摂るだけでは、効率よくフィラグリンは作られません。体内でアミノ酸を代謝し、皮膚のタンパク質として再合成させるためには、「大工さん」の役割を果たすビタミンやミネラルが不可欠です。ここで特に重要なのが「ビタミンB6」と「マグネシウム」です。
ビタミンB6は「皮膚科のビタミン」とも呼ばれるほど、肌の健康に深く関わっています 。タンパク質の代謝を助け、アミノ酸の再合成をスムーズにする働きがあるため、ヒスチジンと一緒に摂ることでフィラグリンの生成効率を高めることが期待できます。また、マグネシウムは300種類以上の酵素反応に関わるミネラルであり、ビタミンB6の働きを助ける重要なパートナーです 。現代人の食事ではマグネシウムが不足しがちなため、意識して補う必要があります。
参考)ビタミンB6 マリヤ・クリニック
おすすめの食べ合わせは以下の通りです。
- カツオ(ヒスチジン)× ニンニク(ビタミンB6): カツオのタタキは理にかなったメニューです。
- マグロ(ヒスチジン)× アボカド(ビタミンB6): マグロとアボカドのサラダは、良質な脂質も摂れる最強の組み合わせです。
- 豚肉(ヒスチジン・B1)× 玄米(マグネシウム): 豚肉の生姜焼き定食を玄米に変えるだけで、肌への栄養価が跳ね上がります。
- 大豆製品(ヒスチジン・Mg)× 海藻(Mg): 味噌汁にワカメやアオサを入れることで、マグネシウムを強化できます。
さらに、亜鉛も皮膚の細胞分裂に欠かせないミネラルです。牡蠣や牛肉に含まれる亜鉛を組み合わせることで、肌のターンオーバー(生まれ変わり)を正常化し、フィラグリンが作られる角層の状態を整えることができます。単一の栄養素ではなく、「チーム」で肌を育てる意識を持つことが、バリア機能回復への近道です。
ビタミンB6と皮膚形成、マグネシウムとの協力関係について解説されています
ビタミンB6 - 栄養医学を支える栄養素 (マリヤ・クリニック)
フィラグリン食べ物:麹菌と発酵食品が肌の天然保湿因子を増やす
ここで、あまり知られていない「意外なフィラグリン対策」をご紹介します。それは、日本の伝統的な「麹菌(こうじきん)」の力です。近年の研究により、麹菌が作り出す特定の成分が、表皮細胞に働きかけてフィラグリンの産生を促進することが分かってきました 。
日本酒の醸造などに使われる麹菌は、「デフェリフェリクリシン」という物質を産生します。月桂冠総合研究所の研究によると、この成分が皮膚のバリア機能を改善し、フィラグリンを増やす効果があることが発見されています 。つまり、「飲む点滴」と言われる甘酒や、塩麹を使った料理は、腸内環境を整えるだけでなく、直接的な肌の潤いスイッチを入れる可能性があるのです。
また、別の研究では海藻由来の「サガラメエキス」や、柑橘系の「マンダリンオレンジ果皮エキス」にも、フィラグリン産生を促進する効果が確認されています 。これらは化粧品成分として有名ですが、食品として摂取することでも、抗酸化作用などを通じて肌環境の改善に寄与すると考えられます。
参考)ピジョン研究員が教えるフィラグリンとは?
日常に取り入れやすい「フィラグリンアップ」の食習慣は以下の通りです。
- 甘酒を飲む: 麹菌の酵素とアミノ酸を直接摂取できます。砂糖不使用の米麹甘酒を選びましょう。
- 塩麹・醤油麹を活用する: 肉や魚を漬け込むと、麹の酵素がタンパク質を分解して柔らかくし、消化吸収も良くなります。まさに一石二鳥です。
- 海藻を食べる: 味噌汁や酢の物に海藻をプラスすることで、肌に必要なミネラルと、フィラグリン産生をサポートする成分を摂取できます。
- 柑橘の皮を利用する: 無農薬のミカンやゆずの皮を刻んで料理の香り付けに使うことで、皮に含まれる有効成分を取り入れられます。
これらの食材は、日本人が昔から食べてきたものばかりです。「和食」を中心とした食生活が、実は理にかなったスキンケアであることを再認識し、伝統的な発酵調味料を積極的に使いましょう。
麹菌や植物エキスがフィラグリン産生に与える影響についての研究結果です
フィラグリンは肌のバリア機能に大切!天然保湿因子の源 (ナールス)
フィラグリン食べ物:アトピー改善に向けたヒスタミン管理と食べ方
フィラグリンを増やすために「ヒスチジン」が重要であるとお伝えしましたが、アトピー性皮膚炎や強いかゆみがある方には、一つだけ非常に重要な注意点があります。それは、「ヒスチジンは、かゆみ物質である『ヒスタミン』の原料にもなる」という事実です 。
参考)アトピー性皮膚炎の原因と治し方:食べ物やサプリメント - 東…
ヒスチジン自体は肌に良いアミノ酸ですが、食材の鮮度が落ちたり、特定の細菌が繁殖したりすると、ヒスチジンは「ヒスタミン」という物質に変化します。また、体内で炎症が起きている場合、摂取したヒスチジンがかゆみを引き起こすヒスタミンとして働いてしまうこともあります。これを「ヒスタミン食中毒」や「仮性アレルゲン」と呼びます 。
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したがって、「フィラグリンを増やしたいから」といって、やみくもにヒスチジンが多い食材を大量摂取するのは危険です。以下のポイントを守って、賢く摂取する必要があります。
- 鮮度を徹底する: 魚(特に赤身魚)は、鮮度が落ちるとヒスタミンが急増します。刺身は買ったその日に食べる、干物などの加工品は避ける、といった対策が有効です 。
- 調理法を工夫する: ヒスタミンは加熱しても壊れません。しかし、煮汁に溶け出す性質があるため、煮魚にして煮汁を飲まないようにする、あるいは茹でこぼすなどの工夫でリスクを減らせます。
- 自身の体調を観察する: 食べた後に体が温まってかゆくなる場合は、その食材が合っていない可能性があります。食事日記をつけて、かゆみが増す食材を特定しましょう 。
- ストレスケアも同時に: ストレスがかかると、抗炎症機能が低下し、少しのヒスタミンでもかゆみを感じやすくなります 。食事だけでなく、休息も立派なスキンケアです。
「攻めのスキンケア(フィラグリン生成)」と「守りのスキンケア(ヒスタミン対策)」のバランスが大切です。最初は少量から試し、肌の調子を見ながら、新鮮な食材を選んで食べるようにしてください。もし食事だけでコントロールが難しい場合は、皮膚科医と相談しながら食事療法を進めることを強くおすすめします。
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