平滑筋と横紋筋の違い
東京都立大学の研究紹介:平滑筋の仕組みや未解明な点、横紋筋との構造的な違いについて解説されています。
平滑筋と横紋筋の構造と細胞の決定的な違い
私たちの体を構成する筋肉は、顕微鏡で拡大して観察した際の見た目によって、大きく「平滑筋(へいかつきん)」と「横紋筋(おうもんきん)」の2種類に分類されます 。この分類の基準となるのは、筋肉の繊維に「横縞(よこじま)」模様があるかないかという点です。横紋筋には、その名の通り規則正しい横縞模様(横紋構造)が存在します 。この縞模様は、筋肉を収縮させるためのタンパク質である「アクチン」と「ミオシン」が、非常に規則正しく交互に配列されているために生じます 。一方で、平滑筋にはこの横縞模様が見当たりません。これは平滑筋にもアクチンとミオシンは存在しているものの、横紋筋のように規則的な配列をしておらず、散在しているためです 。
参考)HOT TOPICS :: 渡辺 賢
細胞レベルでの構造の違いも非常に顕著です。横紋筋の代表である骨格筋の細胞は、非常に細長い繊維状をしており、一つの細胞の中に多数の核(多核)を持っています 。これは、骨格筋が大きな力を生み出すために、複数の細胞が融合してできた巨大な細胞であるかのように振る舞うためです。対照的に、平滑筋の細胞は「紡錘形(ぼうすいけい)」と呼ばれる、中央が膨らんで両端が細くなった形をしています 。そして、一つの細胞につき一つの核(単核)しか持っておらず、骨格筋に比べて細胞のサイズも非常に小さいのが特徴です 。
参考)https://geidai.repo.nii.ac.jp/record/1178/files/fuzoku16_05.pdf
この構造の違いは、筋肉の質感や柔軟性にも影響を与えています。横紋筋は強固な収縮を生み出すために硬くなりやすい性質を持っていますが、平滑筋は内臓や血管の壁を構成するため、非常に柔軟で、大きく伸び縮みすることができる構造になっています 。例えば、胃や膀胱(ぼうこう)が食事や尿の貯留によって大きく膨らむことができるのは、この平滑筋の細胞が滑り合うようにして伸展できる特殊な構造のおかげなのです。私たちが普段「お肉」として認識しているステーキなどは横紋筋(骨格筋)ですが、ホルモン(内臓肉)の独特の食感は、この平滑筋の構造によるものです。
参考)https://w.kawasaki-m.ac.jp/info/teacher/pdf/04_matsumoto.pdf
このように、平滑筋と横紋筋は、単に縞模様があるかないかという見た目の違いだけでなく、細胞の形、核の数、そしてタンパク質の配列構造に至るまで、全く異なる設計図に基づいて作られているのです 。
参考)筋肉にはどのような種類があるの?
平滑筋は不随意筋?横紋筋である随意筋との働きの違い
筋肉を分類するもう一つの重要な視点は、「自分の意志で動かせるかどうか」という点です。この基準において、筋肉は「随意筋(ずいいきん)」と「不随意筋(ふずいいきん)」に分けられます 。
参考)【1-2(6)】筋組織 解説|かずひろ先生(黒澤一弘|解剖×…
一般的に、横紋筋の代表格である骨格筋は随意筋に分類されます 。これは、私たちが「手を挙げよう」「歩こう」と意識した瞬間に、脳からの指令が運動神経を通って筋肉に届き、意図的に収縮させることができるからです。働きとしては、関節を動かして運動を行ったり、姿勢を保持したりすることが主な役割です。随意筋は、意識的なコントロールが可能であるため、トレーニングによって太くしたり、動きを学習させてスムーズにしたりすることが容易です 。
参考)http://www.cis.kit.ac.jp/~kida/2008/c02.pdf
一方、平滑筋は不随意筋に分類されます 。平滑筋は、胃、腸、血管、気管支、子宮、膀胱などの内臓の壁に存在しており、これらの臓器の運動を担当しています 。私たちは、「今すぐ胃を動かして消化しよう」とか「血管を細くして血圧を上げよう」と意識しても、それらを実行することはできません。平滑筋は、私たちの意識とは無関係に、自律神経やホルモンの働きによって自動的に制御されているからです。この自動制御システムのおかげで、私たちは睡眠中であっても呼吸が止まることなく、食べたものが消化され、血液が全身に送り続けられるのです 。
ただし、ここで注意が必要な例外が存在します。それは「心筋(しんきん)」です。心臓を動かしている心筋は、構造上は縞模様を持つ横紋筋に分類されますが、機能的には自分の意志で止めたり動かしたりできない不随意筋です 。心筋は、平滑筋と同じように自律神経の支配を受けつつも、横紋筋のような力強い収縮力を持つ、いわばハイブリッドな筋肉と言えます。
参考)筋肉の種類とその特徴
また、平滑筋の働きの特徴として、「緊張(トーン)」の維持が挙げられます。平滑筋は、常に一定の弱めの収縮状態(緊張状態)を保つことができます。これにより、血管の太さを維持して血圧を調整したり、胃腸の形を保ったりしています。もし平滑筋が完全に弛緩してしまうと、血圧が維持できずに失神してしまったり、内臓が正常に機能しなくなったりするでしょう。このように、随意筋が「動き」を作るのに対し、不随意筋である平滑筋は生命維持に必要な「環境」を整える働きをしていると言えます。
平滑筋と異なる骨格筋と心筋の収縮と疲労の特徴
筋肉の種類によって、収縮のスピードや持続力、そして疲労のしやすさには大きな違いがあります。これは、それぞれの筋肉が果たすべき役割に最適化されているためです。
まず、骨格筋(横紋筋)の特徴は、収縮速度が非常に速いことです 。危険を察知して瞬時に身をかわしたり、重いものを持ち上げたりするためには、爆発的なパワーとスピードが必要です。しかし、その代償として骨格筋は非常に疲労しやすいという弱点を持っています 。激しい運動を続けると、すぐにエネルギーが枯渇し、乳酸などの代謝産物が蓄積して動けなくなってしまいます。長距離を全力疾走できないのは、骨格筋のこの特性によるものです。
次に、心筋(横紋筋)ですが、これは収縮速度も速く、強い力を発揮できる一方で、驚異的な疲労耐性を持っています 。心臓は生まれてから死ぬまで、片時も休むことなく拍動を続けなければなりません。そのため、心筋細胞にはエネルギー工場であるミトコンドリアが非常に多く含まれており、酸素がある限り動き続けることができる特殊な構造になっています 。心筋が「筋肉痛」になったり「疲れて動けない」となったりしないのは、この極めて高いスタミナのおかげです。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/44/3/44_3_P89/_pdf/-char/en
そして、平滑筋の収縮は、非常にゆっくりとしているのが特徴です 。骨格筋のように瞬時に縮むことはできませんが、その代わりに、一度収縮するとその状態を長時間維持する能力に長けています。これを「ラッチ機構」などと呼びますが、少ないエネルギー消費で収縮状態をキープできるため、極めて疲労しにくいのです 。例えば、血管の壁にある平滑筋は、一日中血管の太さを一定に保つために収縮し続けていますが、疲れて勝手に緩んでしまうことはありません。消化管の蠕動(ぜんどう)運動も、平滑筋によるゆっくりとした持続的な収縮の波によって行われています。
参考)https://db.kobegakuin.ac.jp/kaibo/his_pp/04/04.pdf
このように比較すると、以下のような特徴が見えてきます。
- 骨格筋:速くて強いが、すぐに疲れる(短距離走ランナータイプ)
- 心筋:速くて強いが、全く疲れない(スーパーマラソンランナータイプ)
- 平滑筋:遅くて弱めだが、省エネで持続力がある(縁の下の力持ちタイプ)
皮膚のかゆみや体調不良を感じている方にとって重要なのは、この平滑筋の「ゆっくりだが持続的に収縮する」という特性です。ストレスなどで平滑筋が過剰に収縮してしまうと、それが長時間続いてしまい、血流障害などが慢性化しやすいというリスクも孕んでいるのです。
平滑筋を制御する自律神経と血管とかゆみの意外な関係
順天堂大学の研究プレスリリース:精神的ストレスが交感神経を介して皮膚の炎症やかゆみを悪化させるメカニズムについて詳述されています。
ここで、ブログ読者の皆様が抱える「皮膚のかゆみ」と、ここまで解説してきた「平滑筋」との意外な接点について深掘りしましょう。実は、皮膚の状態を左右する血管の太さをコントロールしているのは、血管壁を取り巻く平滑筋であり、それを指令しているのが自律神経なのです 。
参考)むくみと炎症の関係 - リンパドレナージならMLDトレーニン…
人間はストレスを感じると、自律神経のうちの「交感神経」が優位になります 。交感神経は「闘争・逃走反応」を司る神経で、体を戦闘モードにします。この時、主要な臓器や筋肉に血液を集めるために、皮膚表面の血管にある平滑筋に対して「収縮しろ!」という命令が出されます 。すると、平滑筋がギュッと縮まり、末梢血管が細くなります。これにより、皮膚への血流が一時的に低下し、皮膚温が下がったり、酸素や栄養が行き渡りにくくなったりします 。
この「平滑筋による血管収縮」が慢性的に続くと、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなります 。さらに悪いことに、ストレスがかかり続けて交感神経が興奮状態にあると、ちょっとしたリラックス時(副交感神経への切り替わり時)に、抑えつけられていた血管が一気に拡張することがあります。この急激な血流の変化(血管平滑筋の急な弛緩)が、皮膚の知覚神経を刺激し、強烈なかゆみを引き起こす引き金になることがあるのです。
また、鳥肌が立つときに働く「立毛筋(りつもうきん)」も、実は皮膚に存在する平滑筋の一種です 。寒さや恐怖、ストレスを感じた時に鳥肌が立つのは、交感神経が立毛筋(平滑筋)を収縮させているからです。慢性的なストレスで立毛筋が緊張状態にあると、皮膚表面が常に強張った状態になり、これも皮膚の過敏性やかゆみの一因となり得ます。
最新の研究では、ストレスによって交感神経から放出される物質が、免疫細胞を刺激してアレルギー反応を悪化させるメカニズムも解明されています 。つまり、「平滑筋の緊張」は単なる筋肉の問題ではなく、自律神経の乱れを映し出す鏡であり、それが結果として頑固なかゆみや肌荒れにつながっている可能性があるのです。皮膚がかゆい時、塗り薬だけでなく「リラックスして平滑筋(血管)の緊張を解く」ことが重要だと言われるのは、生物学的に見ても非常に理にかなったアプローチなのです。
平滑筋の疲労耐性と内臓を守るための役割
最後に、平滑筋が持つ特殊な役割について、内臓保護の観点からもう少し詳しく見ていきましょう。先ほど、平滑筋は疲労しにくいと述べましたが、これは生命維持にとって決定的に重要な能力です 。
私たちの内臓の多くは「袋状」または「管状」の形をしています。胃、腸、膀胱、子宮、胆嚢、尿管、血管などです。これらの臓器の壁には平滑筋が層状に配置されており、中身(食べ物、尿、血液など)の量に応じて柔軟に伸び縮みしながら、一定の圧力を保っています 。もし、平滑筋が骨格筋のようにすぐに疲労してしまう筋肉だったらどうなるでしょうか?
例えば、膀胱に尿が溜まった時、膀胱壁の平滑筋は尿を漏らさないように、ある程度の張力を保ちながら伸展しています。もしここで平滑筋が「疲れたから休みます」と力尽きて弛緩してしまったら、尿を保持することができず垂れ流しになってしまいます。あるいは、胃が食事を受け入れた後に疲労して動かなくなれば、消化不良を起こしてしまいます。
平滑筋が、少ないエネルギーで長時間収縮を維持できるという特性は、こうした内臓の機能を24時間365日支え続けるために必要不可欠なものなのです。
また、平滑筋は「伸展されると収縮する」という面白い性質(伸展反射のような性質)も持っています。例えば、腸の中に食べ物が入ってきて壁が引き伸ばされると、その刺激で平滑筋が収縮し、食べ物を先へと送り出す「蠕動運動」が自動的に発生します。これも、脳がいちいち指令を出さなくても、内臓そのものが自律的に判断して動いているような仕組みです。
このように、平滑筋は派手な動きこそしませんが、私たちの体の恒常性(ホメオスタシス)を維持するために、縁の下で黙々と働き続けている筋肉です。皮膚の不調や体調不良を感じる時は、この働き者である平滑筋が、過剰なストレスや自律神経の乱れによって「無理をさせられている」サインかもしれません。意識して動かせない筋肉だからこそ、意識的にリラックスする時間を作り、自律神経を整えてあげることが、平滑筋をケアし、ひいては全身の健康や皮膚の状態を改善する近道となるのです。

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