ヒルドイドの効果とシミ
ヒルドイドの効果でシミは消えるのか?その嘘と真実
インターネットやSNSを中心に「ヒルドイドを塗るとシミが消える」「高級美容液よりも効果がある」といった情報が拡散されていますが、結論から申し上げますと、ヒルドイド自体にシミを直接消す成分(美白成分)は含まれていません。
参考)ヒルドイドでシミが薄くなるって本当?効果と注意点を解説【薬剤…
ヒルドイドの主成分である「ヘパリン類似物質」は、非常に高い保湿力と血行促進作用を持っています。これにより、肌の乾燥が改善され、肌のキメが整うことで、結果的に肌がトーンアップして見えたり、くすみが解消されたように感じたりすることがあります。これを「シミが消えた」と勘違いしてしまうケースが多いのが、この噂の真相です。
参考)ヒルドイドはシミに効果ある?正しいシミ対策や注意点を解説|A…
医学的には、シミの原因であるメラニン色素を還元したり、生成を抑制したりする作用はヒルドイドにはありません。もしシミ対策をしたいのであれば、ビタミンC誘導体やハイドロキノンといった、美白効果が認められている成分が配合された医薬品や化粧品を使用する必要があります。
参考)ヘパリン類似物質はシミに効く?正しいシミの治し方を解説
- 誤解: ヒルドイドはシミを漂白して消してくれる魔法のクリーム。
- 真実: ヒルドイドはあくまで保湿剤であり、美白剤ではない。肌のコンディションが整うことでシミが薄くなったように感じる「間接的な」影響に過ぎない。
参考:ヒルドイドはシミに効果ある?正しいシミ対策や注意点を解説(ANS.スキン)
※この記事では、ヒルドイドには美白成分が含まれていないこと、あくまで保湿によるターンオーバーの正常化が期待できる範囲であることが詳しく解説されています。
ヒルドイドの本来の効果と副作用、美容目的の危険性
ヒルドイド(ヘパリン類似物質)は、本来「皮脂欠乏症」「進行性指掌角皮症」「凍瘡(しもやけ)」「ケロイドの治療」などのために処方される医療用医薬品です。その主な作用は以下の3つです。
- 保湿作用: 角質層に水分を保持し、肌のバリア機能を回復させる。
- 血行促進作用: 血流を良くし、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促す。
- 抗炎症作用: 炎症を鎮め、正常な皮膚の状態へ導く。
しかし、この「血行促進作用」が、場合によっては裏目に出ることがあります。例えば、顔に赤みが出やすい人や、ニキビの炎症が起きている部位に使用すると、血行が良くなりすぎて赤みが悪化したり、痒みが増したりする副作用が出る可能性があります。
参考)赤ら顔には要注意!ヒルドイドの副作用と正しいケア法
また、医療用医薬品であるため、医師の診断なしに漫然と長期間使用し続けることは推奨されません。特に、出血性血液疾患(血友病など)のある人は、血液凝固を抑制する作用があるため使用が禁忌とされています。美容目的で安易に使用することは、こうした副作用のリスクを無視することにもなりかねません。
参考)ヒルドイドを顔に使うと後悔する?なぜ駄目といわれているの?
参考:ヒルドイドでシミが薄くなるって本当?効果と注意点を解説(EPARK)
※ヒルドイドの本来の効能効果や、使用上の注意点について薬剤師監修のもと解説されています。
ヒルドイドの処方と保険適用の問題点
近年、社会問題となっているのが「美容目的でのヒルドイド処方」による医療費の増大です。本来、公的医療保険は「病気の治療」に対して適用されるものであり、「肌をきれいにしたい」という美容目的は保険の対象外です。
参考)https://www.m3.com/news/iryoishin/582159
しかし、雑誌やSNSで「医者で処方してもらえる最強の美容クリーム」と紹介されたことで、皮膚科を受診し、乾燥肌を訴えてヒルドイドを大量に処方してもらおうとする人が急増しました。これにより、年間で数百億円規模の薬剤費がかかっているとも推計され、本当に薬が必要なアトピー性皮膚炎の患者さんなどへの処方が制限される議論にまで発展しました(2017年頃の議論)。
参考)2017年12月 北海道薬剤師会 「ヒルドイド 美容目的を避…
現在は、医師も厳格に審査を行っており、単なる美容目的での処方は断られるケースがほとんどです。私たち一人ひとりがモラルを持ち、美容目的であれば保険を使わず、自費診療や市販のスキンケア用品を利用することが求められています。
- 保険診療: 病気(アトピー、重度の皮脂欠乏症など)の治療が目的。3割負担。
- 自費診療/市販: 美容、アンチエイジングが目的。全額自己負担。
参考:ヒルドイドの適正使用について(協会けんぽ)
※健康保険組合連合会による、美容目的使用の問題点と医療費への影響についての公式な見解です。
ヒルドイド代わりの市販薬とヘパリン類似物質の活用
美容目的でヒルドイドを使いたい場合や、忙しくて病院に行けない場合は、ドラッグストアで購入できる「ヘパリン類似物質」配合の市販薬や医薬部外品を利用しましょう。近年、製薬会社各社からヒルドイドと同じ成分を配合した優れた製品が多数発売されています。
参考)ヒルマイルドとヒルドイドとでは何が違うのか?成分・効能・語源…
これらの市販品には、医療用と同等の濃度でヘパリン類似物質が配合されている「第2類医薬品」や、毎日のスキンケアとして使いやすいようにテクスチャーが調整された「医薬部外品」があります。
特に注目なのが、ヘパリン類似物質に加えて美白有効成分(プラセンタやトラネキサム酸など)を同時に配合した市販のスキンケア製品です。これらは、ヒルドイド単体では得られない「保湿+美白(シミ対策)」の両方のアプローチが可能であり、シミを気にする方にとっては、むしろ病院で処方されるヒルドイドよりも目的に合致していると言えます。
参考)https://www.lemon8-app.com/kinuyochinsho/6878189842899943941?region=jp
市販品を選ぶメリット:
- 病院へ行く手間や診察待ち時間がない。
- 美白成分など、プラスアルファの成分が入った製品を選べる。
- ローション、クリーム、泡タイプなど、好みの使い心地を選べる。
- 保険制度を圧迫せず、社会的に正しい選択ができる。
ヒルドイドと皮膚のかゆみ:バリア機能の回復とケア
最後に、皮膚のかゆみでお悩みの方へ、ヒルドイド(ヘパリン類似物質)がどのように役立つのか、そしてそれがどう「シミ」に関係するのかを独自の視点で解説します。
かゆみの主な原因の一つは、肌の乾燥による「バリア機能の低下」です。バリア機能が弱まると、外部からのわずかな刺激(髪の毛の接触、衣類の摩擦、アレルゲンなど)にも過敏に反応し、神経が興奮してかゆみを感じやすくなります。
参考)ヒルドイドの正しい使い方とは│医療コラム│一般皮膚科・美容皮…
ここで重要なのが、「かゆいから掻く」という行為が、結果としてシミ(色素沈着)を作るということです。これを「炎症後色素沈着」と呼びます。虫刺されや傷跡が茶色く残るのと同じ原理です。
つまり、ヒルドイド(またはヘパリン類似物質)を使ってしっかりと保湿し、肌のバリア機能を正常に保つことは、以下のようなサイクルでシミ対策に繋がります。
- 保湿ケア: 角質層の水分量を上げ、バリア機能を回復させる。
- かゆみの抑制: 外部刺激を受けにくくし、かゆみの発生を抑える。
- 掻破(そうは)の防止: 肌を掻きむしることを防ぎ、新たな炎症を起こさせない。
- 色素沈着の予防: 結果として、掻き壊しによる新たなシミ(黒ずみ)ができなくなる。
今あるシミを消すのではなく、「未来のシミ(炎症後色素沈着)を作らせない」ために、かゆみ肌のケアとしてヘパリン類似物質を活用するのは非常に理にかなった選択です。
参考:アトピー性皮膚炎・乾燥肌のスキンケア(マルホ株式会社)
※ヒルドイドの製造販売元であるマルホによる、皮膚のバリア機能と保湿の重要性に関する解説ページです。


