

インターロイキン(Interleukin)は、私たちの体の中にある免疫システムを支える重要な物質の一つです 。主に免疫細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間の情報伝達役を担っています 。その名前は「白血球(leukocyte)の間(inter)で働くもの」に由来し、免疫細胞同士が連携してウイルスや細菌などの外敵と戦うための司令塔のような役割を果たします 。
よく似た言葉に「サイトカイン」がありますが、これらはどのような関係なのでしょうか。実は、サイトカインは細胞間の情報伝達を担う生理活性物質の総称であり、インターロイキンはそのサイトカインの一種なのです 。サイトカインという大きなグループの中に、インターロイキン、インターフェロン、ケモカインなどが含まれているとイメージすると分かりやすいでしょう 。
インターロイキンは、炎症を引き起こす「炎症性サイトカイン」と、炎症を抑える「抗炎症性サイトカイン」に大別されます 。例えば、IL-1やIL-6は代表的な炎症性サイトカインで、感染が起きた際に体を守るために働きます 。一方で、IL-10などは過剰な免疫反応を抑えるブレーキ役を担います 。このバランスが崩れると、アレルギー疾患や自己免疫疾患など、様々な不調の原因となることがあります。
以下の参考リンクは、サイトカインとインターロイキンの種類や主な働きをまとめた表が掲載されており、両者の関係性を理解するのに役立ちます。
サイトカインの主な機能およびファミリー | コスモ・バイオ株式会社
しつこい皮膚のかゆみ、特にアトピー性皮膚炎に伴う強いかゆみの”犯人”として、近年注目されているのが「インターロイキン31(IL-31)」です 。IL-31は、免疫細胞の一種であるヘルパーT細胞などから産生され、「かゆみサイトカイン」とも呼ばれています。このIL-31が、かゆみを感じる神経(感覚神経)に直接作用することが、研究によって明らかになりました 。
具体的なメカニズムは以下の通りです。
実際に、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では、このIL-31が多く存在していることが分かっています 。つまり、IL-31の働きを抑えることが、つらいかゆみを根本から断つための鍵となります。この発見により、IL-31をターゲットにした新しい治療薬の開発が進み、これまでステロイド外用薬などでは十分に抑えきれなかったかゆみの治療に、新たな光がもたらされています。
アトピー性皮膚炎の病態には、IL-31だけでなく、「インターロイキン4(IL-4)」と「インターロイキン13(IL-13)」という2つのインターロイキンも深く関わっています。これらは「2型サイトカイン」と呼ばれ、アトピー性皮膚炎におけるアレルギー性の炎症(2型炎症)の中心的な役割を担っています 。
IL-4とIL-13がアトピー性皮膚炎を悪化させる主な働きは以下の2つです。
この悪循環を断ち切るために開発されたのが、IL-4とIL-13の働きをピンポイントで抑える生物学的製剤(抗体医薬品)です。代表的な治療薬として「デュピルマブ(商品名:デュピクセント)」があり、IL-4とIL-13が結合する受容体をブロックすることで、両方のシグナル伝達を阻害します。また、「レブリキズマブ(商品名:イブグリース)」のように、IL-13のみを選択的に阻害する薬剤も登場しています 。これらの薬剤は、従来の治療では効果が不十分だった中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対して高い改善効果を示し、多くの患者さんのQOL(生活の質)向上に貢献しています。
以下の参考リンクは、アトピー性皮膚炎の症状と、IL-4やIL-31がどのようにかゆみを引き起こすかについて図解で解説しており、病態の理解に役立ちます。
インターロイキンには「IL-1」「IL-2」のように番号が振られていますが、この数字が何を表しているかご存知でしょうか。実はこの番号、基本的には「発見された順番」なのです 。1970年代後半、世界中の研究者が様々な生理活性物質を発見し、それぞれが異なる名前で呼んでいたため、大きな混乱が生じていました。そこで1979年の国際会議で、「白血球間の情報伝達物質」を意味する「インターロイキン」という名称に統一し、発見順に番号を付けるというルールが定められたのです 。
しかし、このルールにはいくつかの面白い例外や事実が存在します。
このように、一見すると無機質な番号にも、科学者たちの発見と研究の歴史が刻まれています。この命名規則を知ることで、複雑な免疫の世界を少し身近に感じられるかもしれません。
インターロイキンの特定の分子だけを狙い撃ちする「分子標的薬」の登場は、アトピー性皮膚炎だけでなく、様々な疾患の治療に革命をもたらしています。従来の治療薬が免疫全体の働きを抑制する(その結果、感染症などの副作用リスクもあった)のに対し、分子標的薬は病気の原因に直接アプローチするため、より高い効果と安全性が期待できます。
現在、様々なインターロイキンを標的とした治療薬が開発・承認されています。
| 標的インターロイキン | 関連する主な疾患 | 代表的な治療薬の作用機序 |
|---|---|---|
| IL-4, IL-13 | アトピー性皮膚炎、気管支喘息 | 受容体をブロックし、シグナルを阻害 |
| IL-31 | アトピー性皮膚炎のかゆみ | IL-31受容体をブロックし、かゆみ信号を遮断 |
| IL-17 | 乾癬(かんせん)、強直性脊椎炎 | IL-17の働きを直接中和する |
| IL-23 | 乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎 | IL-23の働きを阻害し、下流の炎症性サイトカイン産生を抑制 |
| IL-6 | 関節リウマチ、キャッスルマン病 | IL-6受容体をブロックし、全身の炎症反応を抑制 |
さらに、治療法も進化を続けています。これまでの抗体医薬品は注射剤が中心でしたが、最近ではIL-23を標的とした経口薬(飲み薬)が登場するなど 、患者さんの負担を軽減する新しい選択肢も増えています。将来的には、がん免疫療法 やアルツハイマー病など、さらに多くの疾患に対してインターロイキンを標的とした治療が応用される可能性があり、世界中で研究が進められています。私たちの体の仕組みへの理解が深まることで、これまで治療が難しかった病気に立ち向かうための新たな武器が、これからも次々と生まれてくることでしょう。
以下の参考リンクは、医薬品の国際的な命名規則(INN)について解説しています。専門的な内容ですが、新薬の名前がどのように決められるのかを知ることができます。