乾皮症薬と効果的治療
乾皮症に効く保湿剤の種類と選び方
乾皮症の治療において、保湿剤は最も基本となる薬です。皮膚科で処方される代表的な保湿剤には、ヘパリン類似物質含有製剤、尿素製剤、ワセリンの主に3種類があり、それぞれ異なる作用機序を持っています。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E4%B9%BE%E7%9A%AE%E7%97%87/contents/200731-004-TF
乾皮症の薬の詳しい説明はこちら(メディカルノート)
ヘパリン類似物質は高い水分保持能力を持ち、角層の水分を保つ作用に加え、抗炎症作用と血行促進作用も兼ね備えています。肌のバリア機能を整える働きもあるため、乾燥肌の第一選択薬として広く処方されています。市販薬としても「ヒフニック」などの商品が発売されており、乾皮症や手指のあれに効果があります。
参考)乾燥肌治療薬ブランド『ヒフニック』より一般用医薬品(第2類医…
尿素製剤は角質を柔らかくする作用があり、特にかかとやひじなどの角質が厚い部位の乾燥に適しています。ただし、ひび割れや傷がある部位に使用すると刺激を感じることがあるため注意が必要です。市販薬では「ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム」などが人気です。
参考)乾燥肌(乾皮症)におすすめの市販薬はどれ?9選を紹介【薬剤師…
ワセリンは皮膚表面を油分で覆い、水分の蒸発を防ぐ作用があります。副作用が少なく安価で、大量に使用できる点が最大の利点です。敏感肌の方や口元・目元にも安心して使用できる「プロペトピュアベール」などの高精製度製品もあります。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/6722
保湿剤の形状も軟膏、クリーム、ローション、フォーム、スプレーなど多様で、季節や部位によって使い分けることが効果的です。夏場はサラサラとしたローションタイプ、冬場は保湿性の高い軟膏タイプやクリームタイプを選ぶと良いでしょう。
乾皮症処方薬ランキングと市販薬の比較
処方薬のランキングでは、ヒルドイドローション0.3%とヒルドイドソフト軟膏0.3%が上位を占めており、ヘパリン類似物質油性クリームも頻繁に処方されています。これらはマルホ株式会社が製造販売する代表的な保湿剤で、1日1回から数回の使用が推奨されています。
参考)医薬情報QLifePro
乾皮症の処方薬ランキング(QLifePro医薬情報)
市販薬も多数存在し、セルフケアに活用できます。第3類医薬品の「ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム」や「プロペトピュアベールa」、第一三共ヘルスケアの「ウレパールプラスローション10」などが代表的です。これらの市販薬は処方薬と同等の成分を含むものもありますが、濃度や配合成分が異なる場合があります。
処方薬と市販薬の主な違いは、医師の診断に基づいて症状に最適なものが選択される点です。また、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬など、市販では入手困難な治療薬を併用できる点も処方薬の利点です。皮膚の乾燥やかゆみが強い場合、長引く場合には、薬疹などのリスクも考慮して皮膚科を受診することが推奨されます。
皮膚科で処方される保湿剤は、患者の皮膚の状態に応じて適切に使い分けられます。軟膏はどのような皮膚の状態でも使用でき、クリームは軟膏より伸びが良くべたつかないという特徴があります。
参考)ステロイド外用剤 〜炎症の程度や発現部位で使い分けています〜…
乾皮症ステロイド外用薬の適切な使用法
乾皮症が進行して皮脂欠乏性湿疹が見られる場合や、かゆみや炎症を伴う場合には、ステロイド外用薬が処方されることがあります。ステロイド外用薬は炎症とかゆみを効果的に抑える作用があり、正しく使用すればほとんど副作用なく効果が得られます。
参考)乾燥肌には保湿剤。でもその塗り方、合っていますか?|薬局・薬…
ステロイド外用薬は強さによってランク分けされており、症状の程度や塗布する部位によって使い分けられます。体や体幹の一般的な湿疹・皮膚炎には通常ストロングクラス、症状が強いときはベリーストロングクラスが使用されます。顔などの吸収率が高い部位では、より弱いランクのステロイドが選ばれます。
参考)皮膚用薬によく配合されている「ステロイド」ってどんな薬?|ひ…
保湿剤とステロイドの併用方法(シオノギヘルスケア)
保湿剤とステロイド外用薬を併用する際の塗布順序には注意が必要です。一般的には、塗る面積の広い保湿剤を先に塗り、後からステロイド外用薬を患部だけに塗る方法が推奨されています。これにより、ステロイドを塗る必要のない正常な皮膚にまで広げてしまうことを防げます。別の方法として、まずステロイドを薄く塗り、数分おいてから保湿剤を重ねる方法もあります。
参考)乾皮症(ドライスキン)の治療薬とセルフケア|保湿剤の選び方
ステロイド外用薬の長期連用には注意が必要で、皮膚萎縮や毛細血管拡張、乾皮症などの副作用が現れることがあります。医師の指示に従って適切な期間使用し、症状が改善したら段階的に減らしていくことが大切です。
乾皮症改善のための入浴方法と生活習慣
入浴方法の見直しは乾皮症の予防と改善に極めて重要です。熱いお湯に長時間入浴すると、皮脂や角層内の保湿成分が流れてしまい乾燥を招くため、38~40℃のぬるま湯で10分程度に済ませることが理想的です。過度な入浴は皮膚の保護膜を除去してしまうため、1日1回の入浴が適切です。
参考)皮脂欠乏性湿疹の治療|皮膚科外来 - 粉瘤・ワキガ・赤ら顔・…
体を洗う際には、刺激の少ない石鹸またはボディソープを使用し、手か柔らかい布で泡を作ってから優しく洗うことが推奨されます。ナイロンタオルでゴシゴシ洗うことは肌への刺激となるため避け、綿やシルクといった天然素材のタオルか手で優しく洗うようにしましょう。乾燥しやすい方にはアミノ酸系の界面活性剤を使用したボディソープがおすすめで、必要以上にうるおいを洗い落とさないため乾燥を防げます。
参考)【医師監修】肌の乾燥は皮脂欠乏性湿疹を招く?自分でできる対処…
皮脂欠乏性湿疹の自分でできる対処法(フジ薬局)
保湿効果のある入浴剤やセラミド配合の入浴剤は、皮脂欠乏性湿疹の症状緩和に効果的です。入浴剤に含まれる保湿成分は、入浴中に皮膚からの天然保湿因子(NMF)や細胞間脂質の溶出を抑制し、膨潤した皮膚では保湿成分が容易に角層内に吸収されます。ただし、香料や色素を多く含む入浴剤は皮膚への刺激となる場合があるため注意が必要です。
参考)https://www.hattori-hifuka.com/old/menu/hihu/nyuuyokuhou/nyuuyokuhou.htm
入浴後は皮膚の水分が急激に蒸発するため、5分以内、できればすぐに保湿剤を塗布することが重要です。入浴後の肌はまだ角層に水分が残っているため、このタイミングで保湿することが最も効果的です。
参考)「乾燥肌・乾皮症」の原因・症状・対処法
室内環境の整備も乾皮症対策には欠かせません。特に冬場は乾燥が進行しやすいため、加湿器を利用して湿度を40~60%、または50~60%に保つことが重要です。エアコンの使用しすぎにも注意し、湿度が下がらないよう心掛けましょう。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E4%B9%BE%E7%9A%AE%E7%97%87/contents/200528-001-RC
乾皮症の原因を知る:加齢と環境要因の影響
乾皮症の最も大きな原因は加齢です。加齢に伴い皮脂や汗の分泌が減少し、皮膚の角層の水分保持機能が低下することで、皮膚が乾燥した状態になります。これは老化現象の一つで、個人差はありますが高齢になればほとんどの人に皮脂の欠乏が見られます。
参考)老人性乾皮症
老人性乾皮症の詳細情報(健康長寿ネット)
加齢による皮膚構造の変化として、皮膚のうるおいを保つ3つの重要な物質(皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質)が減少します。表皮や真皮の厚さが薄くなり、基底細胞の老化により分裂能が低下し、皮膚のターンオーバーの速度も低下します。真皮内のコラーゲンや弾性線維の量も減少し、皮膚は脆弱となり張りもなくなります。
参考)加齢に伴う症状が気になる方|「もっと知ろう!乾燥肌」皮脂欠乏…
環境要因も乾皮症の発症に大きく関わっています。空気が乾燥する秋から冬にかけて症状が出始め、真冬になるとひどくなることが多く、夏には自然に軽快することもあります。気温の低下、長時間・頻回・温度の高いお湯での入浴、入浴時や洗顔時の洗いすぎやこすりすぎも乾燥を招く要因です。
参考)肌がカサカサする!乾燥肌・乾皮症の原因&対処法|薬局・薬店で…
その他の原因として、ターンオーバーの乱れ、寝不足や過労、栄養不足、喫煙、紫外線なども皮膚の保湿機能や必要な皮脂を減少させ、皮膚の乾燥を進行させます。これらの複合的な要因により、皮膚に浅い亀裂や白いふけのような鱗屑が生じ、かゆみを伴う乾皮症が発症します。
かゆみは高齢者にとって非常に頻度が高く、つらい訴えです。かゆみに耐えられず掻いてしまうと、皮膚のバリア機能がさらに低下し、湿疹へと悪化する可能性があるため、早期の適切な治療とケアが重要です。


