人工甘味料と糖尿病のリスク
人工甘味料が糖尿病のリスクを高める血糖値への影響と仕組み
多くの人が「人工甘味料はカロリーゼロだから、いくら摂取しても血糖値は上がらない」と信じています。しかし、近年の研究により、その認識が必ずしも正しくないことが明らかになってきました。直接的にブドウ糖として吸収されるわけではありませんが、私たちの体、特に脳と膵臓(すいぞう)は、甘みを感じることで複雑な反応を示します 。
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まず理解すべきなのは「頭相インスリン分泌(Cephalic Phase Insulin Release)」と呼ばれる生理反応です。舌の味蕾(みらい)が「甘い」という信号を脳に送ると、脳は「これから糖分が入ってくる」と予期し、膵臓に対してインスリンを分泌するよう指令を出します。しかし、実際には血液中に糖分が入ってこないため、分泌されたインスリンが行き場を失います。この状態が頻繁に繰り返されると、体は「インスリンを出しても意味がない」と学習し始めたり、逆に空腹感が刺激されて過食につながったりする可能性があります 。
参考)6月
さらに深刻な問題として「インスリン抵抗性」の増大が挙げられます。インスリンは血液中の糖分を細胞に取り込むための「鍵」のような役割を果たしていますが、人工甘味料の常用によってこの鍵が効きにくくなる現象です。細胞が糖を取り込めなくなると、膵臓はさらに多くのインスリンを分泌しようと酷使され、最終的に機能不全に陥ります。これが2型糖尿病への入り口となるのです。実際、フランスで行われた10万人規模のコホート研究では、人工甘味料を多く摂取するグループは、摂取しないグループに比べて2型糖尿病の発症リスクが約1.7倍も高かったという衝撃的なデータも報告されています 。
参考)人工甘味料は2型糖尿病発症リスクに
また、心理的な「報酬系」への影響も無視できません。強い甘みを持つ人工甘味料(砂糖の数百倍の甘さを持つものもあります)に慣れてしまうと、自然な果物や野菜の甘みでは満足できなくなります。その結果、より強い甘味や高カロリーな食事を欲するようになり、結果として肥満や糖代謝異常を招くという悪循環に陥るのです 。
参考)人工甘味料の特長を知って賢く利用
人工甘味料摂取と2型糖尿病発症リスクの関連性についての詳細な解説(Y内科クリニック)
人工甘味料の摂取が腸内細菌に与える危険性と仕組み
皮膚のかゆみや体調不良に悩む方が特に注目すべきなのが、腸内環境への影響です。私たちの腸内には100兆個以上もの細菌が生息し、「腸内フローラ」と呼ばれる生態系を作っていますが、人工甘味料はこの繊細なバランスを崩壊させる「ディスバイオシス(腸内細菌叢の失調)」を引き起こすことが分かってきました 。
参考)腸内細菌叢(腸内フローラ)を人工甘味料が乱す可能性 血糖値に…
2014年に科学誌『Nature』に発表されたイスラエルの研究チームによる論文は、世界中に衝撃を与えました。サッカリン、スクラロース、アスパルテームなどの人工甘味料をマウスに投与したところ、腸内細菌の構成が劇的に変化し、ブドウ糖をうまく処理できない「耐糖能異常」が引き起こされたのです。さらに驚くべきことに、そのマウスの便(腸内細菌)を、人工甘味料を摂取していない無菌マウスに移植しただけで、移植されたマウスもまた糖尿病予備軍のような状態になってしまいました 。
参考)人工甘味料と腸内フローラ|城谷バイオウェルネスクリニック内科…
具体的には、以下のようなメカニズムが考えられています。
- 有益菌の減少: 血糖コントロールを助ける善玉菌が減少し、代謝に悪影響を与える菌が増殖する。
- 炎症反応の誘発: 腸内環境の悪化により、腸壁のバリア機能が低下(リーキーガット症候群)。これにより毒素が血液中に漏れ出し、慢性的な炎症を引き起こす 。
- エネルギー吸収の増大: 特定の腸内細菌が増えることで、食事から過剰なエネルギーを吸収しやすい体質に変化してしまう。
腸の状態は皮膚にダイレクトに反映されます。「肌は内臓の鏡」と言われる通り、腸内で発生した有害物質や炎症物質は血流に乗って全身を巡り、皮膚の炎症やかゆみとして現れることがあります。つまり、良かれと思って選んだ人工甘味料が腸内環境を荒らし、それが巡り巡って皮膚トラブルや糖尿病リスクへと繋がっている可能性があるのです 。
参考)https://www.nuas.ac.jp/IHN/report/pdf/15/05.pdf
腸内細菌叢を人工甘味料が乱す可能性と血糖値への影響に関する詳細記事(日経新聞)
人工甘味料による糖尿病リスクと皮膚のかゆみやアレルギーの意外な関係
糖尿病のリスクと皮膚のかゆみは、一見無関係に見えますが、実は密接にリンクしています。そして、その背後には人工甘味料特有の化学的な作用が隠れていることがあります。ここでは、一般的にはあまり語られない「皮膚への影響」という視点からリスクを深掘りします。
まず、「糖化(グリケーション)」という現象をご存知でしょうか?これは体内の余分な糖分がタンパク質と結びつき、細胞を劣化させる反応のことです。この時発生するAGEs(終末糖化産物)は、肌のコラーゲンを破壊し、弾力を奪い、黄色く変色させます。恐ろしいことに、人工甘味料の中には、ブドウ糖の10倍以上の速さでこの「糖化」を引き起こす可能性があると言われているものがあります 。肌のバリア機能が糖化によって低下すると、少しの刺激でもかゆみを感じやすくなり、乾燥肌が加速します。
参考)https://www.kodama-naika.com/wp-content/uploads/2024/06/R6.5%E6%9C%88.pdf
次に、アレルギー反応としての皮膚症状です。人工甘味料は化学合成物質であり、体質によっては異物として認識されます。特に以下のような成分には注意が必要です。
- アスパルテーム: 体内で分解される過程でフェニルアラニンなどを生成しますが、これに対してじんましんや発疹が出るケースが報告されています 。
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- アセスルファムカリウム: 分子構造が小さく吸収されやすいですが、人によっては消化管や皮膚にアレルギー様の炎症反応を起こすことがあります 。
参考)人工甘味料について
さらに、糖尿病の初期症状としての「皮膚そう痒症(そうようしょう)」も見逃せません。人工甘味料の過剰摂取によって隠れ高血糖状態が続くと、体は脱水傾向になり、皮膚が乾燥します。また、高血糖は末梢神経にダメージを与えるため、かゆみの感覚が過敏になります。「虫刺されでもないのに体がかゆい」「保湿しても乾燥が治らない」という症状は、実は血糖値の乱れを知らせるサインかもしれないのです。皮膚の悩みを持つ人こそ、スキンケアを見直すだけでなく、甘味料の選び方を見直す必要があります 。
参考)『ゼロカロリー』に騙されるな! - おやなぎアレルギークリニ…
糖尿病のリスクを避けるための人工甘味料の種類とWHOの勧告
では、私たちはどのように甘味料と付き合っていけばよいのでしょうか?全ての甘味料が絶対悪というわけではありませんが、リスクを避けるためには「種類」を見極め、国際的な「勧告」を知っておくことが重要です。
2023年5月、世界保健機関(WHO)は「非糖質系甘味料(NSS)に関するガイドライン」を発表しました。この中でWHOは、「体重コントロールや非感染性疾患(糖尿病など)のリスク低減を目的として、非糖質系甘味料を使用しないことを推奨する」と明言しています。これは、長期的な摂取が体脂肪の減少に寄与しないばかりか、2型糖尿病や心血管疾患のリスクを高める可能性があるというエビデンスに基づいています 。
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甘味料は大きく分けて以下の3つに分類できます。選ぶ際の参考にしてください。
- 合成甘味料(避けるべき):
- アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、サッカリンなど。
- これらは自然界に存在しない化学構造を持ち、腸内細菌への悪影響やインスリン抵抗性のリスクが最も懸念されています。カロリーゼロ飲料やダイエット食品に多く含まれます 。
- 糖アルコール(比較的安全だが注意):
- エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなど。
- 天然素材からも作られますが、一度に大量に摂るとお腹が緩くなることがあります。エリスリトールは血糖値を上げにくいとされていますが、最新の研究では血栓リスクとの関連も指摘され始めているため、過信は禁物です 。
- 天然甘味料(推奨される代替案):
- ステビア、ラカンカ(羅漢果)。
- 植物由来の甘味料で、血糖値への影響が極めて少ないとされています。ただし、商品によってはデキストリンなどの糖質が混ぜられている場合があるため、成分表示の確認が必須です。
結論として、最も安全なのは「甘味への依存そのものを減らすこと」です。人工甘味料を「魔法の杖」として使うのではなく、素材本来の味を楽しむ味覚を取り戻すことが、糖尿病リスクを遠ざけ、健康な皮膚を取り戻すための近道となります 。
参考)https://www.alic.go.jp/content/000138490.pdf
人工甘味料と糖代謝の関連性に関する農畜産業振興機構のレポート


