静脈瘤原因足のむくみとかゆみ!血管と弁の異常を知る

静脈瘤の原因と足の構造

静脈瘤の原因と足の対策ポイント
🦵
弁の破壊

逆流防止弁が壊れると血液が足に溜まります

🦶
アーチの崩れ

偏平足はポンプ機能を低下させる意外な原因です

💥
皮膚炎とかゆみ

放置するとうっ滞性皮膚炎を引き起こします

静脈瘤の原因となる足の静脈の弁が壊れて起きる逆流

 

足の静脈瘤(下肢静脈瘤)の最も根本的な原因は、足の血管内にある「逆流防止弁」が壊れてしまうことにあります 。私たちの体には動脈と静脈が走っていますが、動脈が心臓から送り出される勢いのある血液を運ぶのに対し、静脈は体の末端から心臓へ血液を戻す役割を担っています。特に足の静脈は、重力に逆らって下から上へと血液を持ち上げなければならないため、非常に過酷な環境にあります 。

 

参考)下肢静脈瘤は何科を受診する? 専門医はどこにいる?

この「重力への対抗」を可能にしているのが、静脈の中に備わっている逆流防止弁です。この弁は、血液が心臓に向かって流れるときだけ開き、重力で下に落ちそうになると閉じるという、一方通行のドアのような働きをしています 。しかし、何らかの原因でこの弁が閉じなくなったり、壊れてしまったりすると、血液は重力に負けて下方向へ逆流し始めます。

 

参考)【医師監修】足のむずむずは下肢静脈瘤かも?原因と病気の見分け…

  • 弁不全の進行プロセス
    • 正常な状態:筋肉の動きに合わせて血液が押し上げられ、弁が閉じて逆流を防ぐ。
    • 初期段階:弁の締まりが悪くなり、わずかに血液が漏れ始める。
    • 進行期:弁が完全に機能を失い、常に血液が足の下の方へ逆流し続ける。
    • 結果:逆流した血液が足の低い位置にある血管に溜まり(うっ滞)、血管が風船のように膨らんでボコボコと浮き出る「静脈瘤」が形成される 。

      参考)下肢静脈瘤の症状・診断・治療・治療後の経過について - ひと…

    この逆流が起きると、足の血管内の圧力が異常に高まります。これを「静脈高血圧」と呼びます。血管がパンパンに張り詰めた状態が続くことで、血管壁が引き伸ばされ、蛇行したりコブ状になったりするのです。多くの人が気にする「血管のボコボコ」は、実は氷山の一角であり、その裏では「血液が心臓に戻れない」という循環障害が起きていることを理解する必要があります 。

     

    参考)下肢静脈瘤 - 福地クリニック

    この弁が壊れる原因は一つではありませんが、一度壊れてしまった弁は、残念ながら自然に治ることはありません。虫歯が自然治癒しないのと同様に、物理的に破損してしまった組織であるため、放置すれば徐々に悪化の一途をたどります。だからこそ、初期の段階で原因を理解し、進行を食い止めるための対策や、適切な治療介入が必要になるのです。

     

    専門医による静脈瘤のメカニズム解説についてはこちらが参考になります
    下肢静脈瘤は何科を受診する? 専門医はどこにいる?

    静脈瘤の原因からくる足の皮膚炎としつこいかゆみ

    「足の血管がボコボコしている」という見た目の悩み以上に、患者さんを苦しめるのが「しつこい足のかゆみ」です。実は、このかゆみこそが静脈瘤の進行サインであり、専門的には「うっ滞性皮膚炎」と呼ばれる合併症の入り口なのです 。

     

    参考)Q7. 足のかゆみは下肢静脈瘤のせいですか?

    なぜ血管の病気が皮膚のかゆみを引き起こすのでしょうか?その原因は、血管から漏れ出した「老廃物」にあります。

     

    静脈瘤によって血管内の圧力が高い状態が続くと、血管の壁が引き伸ばされて薄くなり、血液中の成分が血管の外側にある皮膚組織へと滲み出し始めます。この漏れ出した成分の中に、赤血球やタンパク質などの老廃物が含まれています 。

     

    参考)下肢静脈瘤の症状 - 医療法人社団康静会

    1. 老廃物の蓄積と炎症

      血管外に漏れ出た赤血球は分解され、「ヘモジデリン」という鉄分を含んだ色素に変わります。これが皮膚組織にとって異物となり、慢性的な炎症反応を引き起こします。これがかゆみの正体です 。蚊に刺されたような一時的なかゆみとは異なり、体の内側から発生する炎症であるため、市販のかゆみ止めを塗ってもなかなか治まらないのが特徴です。

       

      参考)足のかゆみは下肢静脈瘤のサインかも?専門医が教える原因と対処…

    2. 皮膚のバリア機能崩壊

      炎症が続くと、皮膚は次第に乾燥し、カサカサとした状態になります。バリア機能が低下するため、少しの刺激でも湿疹ができやすくなり、かきむしることでさらに傷ができるという悪循環に陥ります。これを放置すると、皮膚が茶色く変色する「色素沈着」や、皮膚が硬くなる「脂肪皮膚硬化症」、最悪の場合は皮膚に穴が開く「潰瘍」へと進行してしまいます 。

    多くの人が「ただの乾燥肌だろう」「虫刺されかな?」と勘違いして皮膚科を受診しますが、根本的な原因である静脈瘤(血流のうっ滞)を治療しない限り、皮膚症状は完全には改善しません 。ステロイド外用薬などで一時的に炎症を抑えることはできますが、血液の逆流という「火種」が残っている限り、再燃を繰り返してしまうのです。

    この段階での対策として非常に重要なのが「スキンケア」と「圧迫療法」の併用です。保湿クリームで皮膚のバリア機能を保ちつつ、弾性ストッキングを着用して静脈の圧力を外側から抑え込むことで、老廃物の漏出を防ぐことができます 。

     

    参考)うっ滞性皮膚炎:原因は?症状は?治療法は?自分でできるケアは…

    皮膚炎の症状と治療ガイドラインに関する詳細はこちら
    うっ滞性皮膚炎 - MSDマニュアル プロフェッショナル版

    静脈瘤の原因を作り出す足への負担と立ち仕事や加齢

    静脈瘤の原因として最も広く知られているのが「立ち仕事」ですが、それ以外にも日常生活の中に多くのリスク因子が潜んでいます。静脈弁が壊れるリスクを高める要因を知ることは、予防への第一歩です。

     

    生活習慣と職業的リスク
    長時間の立ち仕事(調理師、美容師、警備員、販売員など)は、最大のリスク要因の一つです 。立っている間、足の静脈には重力による強い圧力がかかり続けます。通常、歩くことでふくらはぎの筋肉がポンプのように働き、血液を押し上げてくれますが、同じ場所に立ち続けているとこのポンプ作用が働かず、弁に過度な負担がかかり続けることになります。

     

    参考)MYメディカルクリニック

    また、意外に見落とされがちなのが「座りっぱなし(デスクワーク)」です。座ったまま足を動かさない状態も、筋肉ポンプが停止しているため、血液が足に溜まりやすくなります。特に膝を深く曲げた姿勢や、足を組む姿勢は血管を圧迫し、血流をさらに悪化させる原因となります。

     

    避けられない要因:加齢と遺伝

    • 加齢:年齢を重ねるとともに、血管の壁や弁そのものの弾力が失われ、脆くなっていきます。また、ふくらはぎの筋肉量も減少するため、ポンプ機能が低下し、静脈瘤を発症しやすくなります 。

      参考)下肢静脈瘤の原因について|四谷・血管クリニック

    • 遺伝:両親ともに静脈瘤がある場合、その子供が発症する確率は90%近くになるとも言われています。生まれつき弁が弱い、あるいは血管壁が弱い体質を受け継いでいる可能性があります 。​

    女性特有のリスク:妊娠・出産
    女性は男性に比べて静脈瘤になりやすい傾向がありますが、その大きな要因が妊娠と出産です 。

    • ホルモンの影響:妊娠中に分泌されるホルモン(プロゲステロン)には血管を拡張させる作用があり、弁が閉じにくくなります。
    • 血液量の増加:妊娠中は胎児を育てるために体内の血液量が増え、血管への負担が増します。
    • 子宮による圧迫:大きくなった子宮が骨盤内の静脈を圧迫し、足から心臓への血流を物理的に阻害します。

      出産後に改善することもありますが、妊娠をきっかけに弁が一度傷ついてしまうと、将来的に(特に2人目、3人目の妊娠時や閉経後に)静脈瘤が顕在化するケースが多く見られます。

       

    これらのリスク因子を完全に排除することは難しいですが、日常生活で「こまめに足首を動かす」「休憩時間に足を高くする」といった工夫を取り入れることで、弁への負担を軽減することは可能です。

     

    医師によるリスク因子の詳しい解説はこちら
    下肢静脈瘤とは?症状や原因、治療方法について医師が詳しく解説!

    静脈瘤の原因と足のアーチ崩れが及ぼすポンプへの影響

    一般的にはあまり知られていませんが、足の裏の「アーチ(土踏まず)」の状態も、静脈瘤の原因と深く関わっています。これは、検索上位の一般的な記事では見落とされがちな、足の構造的な視点からの重要な事実です。

     

    足の血液を心臓に戻すためのポンプ作用は、ふくらはぎの筋肉(筋ポンプ作用)が主役だと思われていますが、実は「足の裏(足底)」も重要な役割を果たしています。足の裏には多数の静脈が集まっており、歩くたびに体重がかかることで、スポンジを絞るように血液を力強く押し出しています。これを「フットポンプ」と呼びます 。

     

    参考)下肢静脈瘤と足の甲の関係は?下肢静脈瘤の原因や治療法とともに…

    扁平足とポンプ機能低下の悪循環
    足のアーチが正常であれば、着地時の衝撃を吸収しつつ、効率的に血液を送り出すことができます。しかし、運動不足や合わない靴、加齢などによってアーチが崩れ「扁平足(へんぺいそく)」や「開張足(かいちょうそく)」になると、このフットポンプ機能が著しく低下してしまいます 。

     

    参考)下肢静脈瘤の方必見〜快適な靴選び5つのポイント

    • アーチの役割:バネのように働き、歩行時の筋肉の動きを助ける。
    • 崩れた状態:足裏全体がべったりと地面につき、静脈を効果的に圧迫できなくなる。また、足の疲れやすさから歩行自体が億劫になり、ふくらはぎの筋ポンプを使わなくなるという二次的な悪影響も生じます。

    さらに、足の甲や足首周りのアーチ構造が崩れると、そこを通る血管が物理的にねじれたり圧迫されたりして、血流の渋滞を引き起こす原因にもなります 。特に、ヒールの高い靴やサイズの合わない靴を履き続けることは、足の形を変形させるだけでなく、ふくらはぎの筋肉の動きを制限し、結果として静脈瘤のリスクを跳ね上げることになります 。

     

    参考)下肢静脈瘤でやってはいけないことを現役医師が解説|日常生活か…

    対策としてのインソールと靴選び
    この「足の形状」からくる静脈瘤のリスクに対抗するためには、単に弾性ストッキングを履くだけでは不十分な場合があります。

     

    • インソール(中敷き)の活用:崩れたアーチをサポートするインソールを使用することで、フットポンプ機能を正常な状態に近づけることができます 。

      参考)足底腱膜炎

    • 靴選びの見直し:足指が自由に動かせ、かつ踵と甲をしっかり支える靴を選ぶことで、歩行時のポンプ作用を最大化できます。

    「足の静脈瘤だから足だけの問題」と捉えず、「足の裏の着地」から見直す視点は、再発予防や症状緩和において非常に有効なアプローチとなります。

     

    足のアーチと静脈瘤の関係についての専門的な解説
    下肢静脈瘤と足の甲の関係は?下肢静脈瘤の原因や治療法とともに

    静脈瘤の原因と足の不快なむずむず脚症候群との関連

    最後にもう一つ、意外な関連性について触れておきましょう。それは「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」と静脈瘤の関係です。

     

    「夕方や夜寝る前になると、足がむずむずしてじっとしていられない」「足の中に虫が這っているような不快感がある」といった症状に悩まされている場合、それは神経の病気ではなく、静脈瘤が原因である可能性があります 。

    なぜ「むずむず」が起きるのか?
    従来、むずむず脚症候群は脳の神経伝達物質(ドーパミン)の機能障害や鉄分不足が主な原因と考えられてきました。しかし近年の研究で、下肢静脈瘤による「血液のうっ滞」が、この不快な症状を引き起こす大きな要因の一つであることがわかってきました 。

    メカニズムとしては以下のようなプロセスが考えられています。

     

    1. 静脈弁の不全により、日中に血液が足に溜まる。
    2. 溜まった血液により、足の深部の組織圧が高まる。
    3. 夜間、リラックスしている時に、うっ滞した血液が周囲の神経を刺激したり、代謝産物が蓄積することで不快な知覚異常(むずむず感)を生じさせる。

    実際に、むずむず脚症候群と診断されていた患者さんが、検査の結果、隠れ静脈瘤(見た目にはボコボコしていないが、深部で逆流が起きているタイプ)であることが判明し、静脈瘤の治療を行ったところ、長年のむずむず症状が劇的に改善したという症例も報告されています 。

    この事実は、「かゆみ」と同様に、静脈瘤の症状が必ずしも「見た目の変化」だけではないことを示しています。

     

    もしあなたが、皮膚表面のトラブル(湿疹・かゆみ)だけでなく、足の内部の不快感や睡眠障害にも悩まされているなら、それは「皮膚科」や「精神科・心療内科」だけでなく、「血管外科」で解決できる問題かもしれません。原因不明の足の不調がある場合、一度エコー検査などで静脈の状態を確認することは、解決への近道となるでしょう。

     

    むずむず脚症候群と静脈瘤の関連についての医師監修記事
    【医師監修】足のむずむずは下肢静脈瘤かも?原因と病気の見分け方

     

     


    血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方

page top