関節リウマチの症状は指から?初期の腫れとこわばりをチェック

関節リウマチの症状は指から?初期の腫れとこわばりをチェック
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朝のこわばり

起床後30分以上続く指の動かしにくさは要注意サイン。

第2関節の腫れ

指の真ん中の関節がブヨブヨと柔らかく腫れるのが特徴。

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左右対称の痛み

片手だけでなく、両手の同じ場所に症状が出やすい。

関節リウマチの症状と指

関節リウマチという病気をご存じでしょうか。一般的には「お年寄りがなる病気」というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、実際には30代から50代の働き盛りの世代、特に女性に多く発症することが知られています。そして、この病気の最も典型的かつ初期に見られるサインが、「指」に現れる異常です。皮膚のかゆみや乾燥肌に悩んでいる方の中には、自身の体調の変化に敏感な方も多いでしょう。もし、皮膚のトラブルだと思っていた指の違和感が、実は関節の奥深くで進行している炎症のサインだとしたらどうでしょうか。

 

関節リウマチは、本来身体を守るはずの免疫システムが誤って自分自身の関節を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。この攻撃によって関節の内側にある「滑膜(かつまく)」という組織が炎症を起こし、それが痛みや腫れとなって現れます。恐ろしいことに、この炎症が続くと、関節の軟骨や骨そのものが破壊され、最終的には関節が変形して日常生活を送るのが困難になってしまう可能性があります。特に指の関節は、日常生活で最も頻繁に使用する部位であるため、わずかな違和感でも生活の質(QOL)を大きく低下させる要因となります。

 

しかし、逆に言えば、指に現れる初期のサインをいち早くキャッチし、適切な治療を開始することができれば、骨の破壊や変形を未然に防ぎ、これまで通りの生活を続けることが十分に可能です。近年、リウマチの治療薬は飛躍的に進歩しており、早期発見・早期治療ができれば「寛解(症状が出ない状態)」を目指すことも夢ではなくなっています。だからこそ、「たかが指の痛み」「使いすぎかな」と自己判断せず、その症状がリウマチ特有のものなのかどうかを見極める知識を持つことが非常に重要になります。

 

この記事では、皮膚のかゆみなどのトラブルを抱える方が見落としがちな、関節リウマチ特有の指の症状について、徹底的に深掘りしていきます。単なる痛みだけでなく、皮膚の感覚や見た目の変化、そして似たような症状を持つ他の病気との違いまで、詳しく解説します。あなたの指の違和感の正体を突き止め、不安を解消するための一助としてください。

 

朝のこわばりと指の違和感

 

関節リウマチの最も代表的な初期症状として挙げられるのが、「朝のこわばり」です。これは単に「朝起きた時に体が硬い」というレベルのものではありません。まるで指が錆びついた機械のようになってしまったかのように、思い通りに動かせない感覚に襲われます。具体的には、朝起きてすぐに手を握ろうとしても、指がパンパンに張ったような感じがして、グーの形が作れない、あるいは手のひらに指先がつかないといった状態になります。

 

この「こわばり」の背景には、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の体内での動きが関係しています。私たちが寝ている間、体はあまり動きませんが、炎症がある関節内では、夜間に炎症性サイトカインが蓄積されやすくなります。さらに、早朝は体内の抗炎症ホルモン(コルチゾールなど)の分泌リズムとも関係し、炎症の症状が最も強く出やすい時間帯なのです。その結果、朝目覚めた直後が最も指が動かしにくく、時間の経過とともに血流が良くなり、少しずつ動かしやすくなっていくという特徴的な経過をたどります。

 

ここで重要なのが、こわばりが続く「時間」です。加齢による変形性関節症や単なる使いすぎによる筋肉疲労でも、朝方に指が動かしにくいことはあります。しかし、それらの場合は通常、数分から長くても10分程度体を動かしていれば解消されることがほとんどです。一方で、関節リウマチによる朝のこわばりは、30分から1時間以上続くことが大きな特徴です。重症の場合には、昼頃までこわばりが取れないこともあります。「顔を洗う時にタオルが絞りにくい」「朝食の準備で包丁が握りにくい」「服のボタンが留めにくい」「歯ブラシをうまく持てない」といった、日常の些細な動作に支障が出る時間が長く続くようであれば、それはリウマチの強いサインである可能性があります。

 

リウマチの初期兆候とは?:朝起きた時に手のこわばりや痛みを感じやすい傾向があり、30分以上続くことが特徴と解説されています。

 

参考)https://www.azuma-rheumatology-clinic.jp/channel/channel-167/

また、このこわばりは「痛み」とは少し異なる感覚であることもポイントです。激痛があるわけではないけれど、指全体が腫れぼったく、手袋をはめているような、あるいは皮膚が突っ張っているような不快な感覚です。「なんとなく動かしにくい」という曖昧な症状であるため、多くの人が「疲れがたまっているだけだろう」「昨日の農作業やパソコン作業の影響かな」と見過ごしてしまいがちです。しかし、この「理由のない、長時間の朝のこわばり」こそが、体が発している最初のアラームなのです。

 

さらに、こわばりの強さは天候や気圧の変化にも影響を受けやすいと言われています。雨の日や台風が近づいている時などに症状が強く出ることもあります。もし、あなたが毎朝のように指の動かしにくさを感じ、それが30分以上続くようであれば、一度専門医への相談を検討すべき段階にあると言えるでしょう。指だけでなく、足の指にも同様のこわばりが出ることがあり、朝一歩目を踏み出す時に足の裏に砂利を踏んでいるような違和感を覚えることも、見逃せない初期症状の一つです。

 

指の第2関節の腫れと痛みの特徴

関節リウマチの症状が進行してくると、こわばりに加えて明確な「腫れ」や「痛み」が現れるようになります。この腫れ方には、他の関節の病気とは明らかに異なる特徴があります。まず、最も症状が出やすい場所は、指の第2関節(PIP関節)と、指の付け根の関節(MP関節)です。ここで非常に重要なポイントは、指の第1関節(爪に一番近い関節)には、リウマチの症状はほとんど出ないということです。もし、あなたの痛みが第1関節に集中しているなら、それはリウマチではなく「ヘバーデン結節」という別の病気である可能性が高くなります。リウマチは第2関節や付け根を好んで攻撃するのです。

 

リウマチの症状:リウマチの場合、手指の第2関節と指の付け根が痛くなることがほとんどで、9割の患者にみられると解説されています。

 

参考)リウマチの症状

そして、その腫れ方にも独特の感触があります。関節リウマチによる腫れは、関節の中にある滑膜が増殖して炎症を起こしているため、触ってみると「ブヨブヨ」とした柔らかい感触がします。まるで水を含んだスポンジや、ゴムまりが入っているかのような弾力のある腫れ方です。これを医学的には「紡錘状(ぼうすいじょう)腫脹」と呼びます。指の関節が膨らんで、指全体が紡錘(糸巻き)のような形に見えることからこう呼ばれています。一方で、加齢による変形性関節症の場合は、骨そのものが変形して突き出してくるため、触ると「ゴツゴツ」「カチカチ」とした硬い感触があります。この「柔らかいか、硬いか」という違いは、自分で触ってチェックできる重要な判断材料になります。

 

写真で分かる!手のリウマチ初期症状:指の付け根の関節が腫れている場合、押すとブヨブヨと膨らんでいて痛みが出るのが特徴とされています。

 

参考)写真で分かる!手のリウマチ初期症状

痛みに関しては、初期の段階では「激痛」というよりも、関節の奥底からじわじわと響くような鈍痛を感じることが多いです。特に、腫れている部分を押すと痛みが増す「圧痛(あっつう)」が特徴的です。誰かと握手をした時や、ドアノブを回した時、重いフライパンを持った時などに、「ズキッ」とした鋭い痛みではなく、重苦しい痛みを感じることがあります。また、炎症が強い場合は、患部に「熱感」を伴うこともあります。腫れている関節に手の甲を当ててみると、他の部位よりも熱っぽく感じることがあるでしょう。

 

さらに、この腫れや痛みは、放置すると急速に悪化するリスクをはらんでいます。関節の内部では、炎症によって増殖した滑膜組織(パンヌス)が、軟骨や骨を溶かす酵素を出し始めます。驚くべきことに、発症からわずか半年から1年以内に関節の破壊が始まってしまうというデータもあります。骨が破壊されると、指が不自然な方向に曲がったり、関節が固まって動かなくなったりする「変形」が生じます。例えば、第2関節が曲がり第1関節が反り返る「ボタン穴変形」や、その逆の「スワンネック変形」などが代表的です。こうなってしまうと、元に戻すことは手術以外では困難になります。だからこそ、「まだ我慢できる痛みだから」と放置せず、第2関節や付け根の「ブヨブヨした腫れ」に気づいた時点で、直ちにアクションを起こす必要があるのです。

 

左右対称に出る初期の症状

関節リウマチを疑う上で、もう一つ決定的に重要なキーワードが「左右対称」です。これは、リウマチが全身の免疫システムに関わる病気であることに起因します。例えば、怪我や使いすぎによる腱鞘炎であれば、酷使した側の手だけに症状が出るのが普通です。しかし、リウマチの場合は、右手の第2関節が痛むなら、左手の同じ第2関節にも痛みや腫れが出ることが非常に多いのです。もちろん、発症のごく初期には片方だけに症状が出ることもありますが、病気が進行するにつれて、左右両方の同じ関節に症状が広がっていく傾向が強く見られます。

 

この左右対称性は、手首の関節や足の指の付け根などにも当てはまります。「右手首が痛いな」と思っていたら、数日後には「左手首も痛くなってきた」というケースは、リウマチを強く疑うべきエピソードです。また、リウマチの症状は「移動する」こともあります。昨日は右の人差し指が痛かったのに、今日は左の中指が痛い、といったように、痛む場所が日によって変わることもありますが、長い目で見ると全体として左右の関節に炎症が広がっていきます。

 

なぜ左右対称に出るのでしょうか。それは、免疫異常による攻撃が、特定の部位の「使いすぎ」に対する反応ではなく、全身の血液に乗って運ばれる炎症物質によるものだからです。血液は全身を巡るため、右手の関節に到達した炎症物質は、当然左手の関節にも到達しやすく、結果として同じような部位に炎症を引き起こすのです。この「全身病」であるという性質は、指以外の症状にも現れます。リウマチの患者さんは、関節の痛みだけでなく、微熱が続いたり、ひどい倦怠感(だるさ)、食欲不振、貧血といった全身症状を伴うことがよくあります。「なんとなく最近疲れが取れないし、両手の指がこわばる」という組み合わせは、リウマチの典型的な初期像です。

 

症状:発症部位は左右対称に出現する場合もあれば、片側のみや複数の関節に出ることもあり、微熱や倦怠感を伴うと解説されています。

 

参考)朝方に指の第2関節が痛く、腫れやこわばりがでる・・・それは「…

特に、皮膚のかゆみなどで悩んでいる方は、もともとアレルギー体質であったり、免疫系が敏感であったりすることがあるかもしれません。リウマチも免疫の異常ですから、体全体の不調として捉える視点が大切です。鏡の前で両手を広げてみてください。右手の中指が腫れている時、左手の中指や薬指もなんとなく腫れぼったくありませんか? 両手を見比べることで、自分では気づかなかった「左右対称のサイン」が見えてくるかもしれません。

 

また、足の指の症状も見逃せません。手の指と同様に、足の指の付け根が腫れて痛むことがあります。靴を履くときつく感じたり、歩くときに足の裏の前方(指の付け根あたり)に痛みを感じたりする場合、それもリウマチの症状である可能性があります。手と足、右と左、全身の関節をトータルでチェックし、広範囲に、かつ対称的に症状が出ていないかを確認することが、早期発見のカギとなります。

 

指の皮膚の異常や違和感の原因

ここまでは関節リウマチの典型的な症状について解説してきましたが、ここでは視点を変えて、皮膚トラブルを抱える方が特に注意すべき「指の皮膚の異常」と関節痛の関係について深掘りします。実は、「指が痛い」と感じている時、それが純粋な関節リウマチ(RA)ではなく、皮膚病に関連した関節炎である可能性や、リウマチに合併した皮膚症状であるケースが存在します。

 

まず、最も注意が必要なのが「乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)」です。乾癬とは、皮膚が赤くなり、その上に銀白色のフケのようなものができてポロポロとはがれ落ちる、かゆみを伴う皮膚病です。この乾癬の患者さんの約10〜30%に、リウマチによく似た関節の痛みや腫れが現れることが知られています。これを乾癬性関節炎と呼びます。リウマチとの大きな違いは、第1関節(DIP関節)にも症状が出やすいことや、指全体がソーセージのように丸太状に赤く腫れ上がることがある点です。もし、頭皮や肘、膝などに治りにくい湿疹やかゆみがあり、同時に指の関節が痛む場合は、リウマチよりもこの病気を疑う必要があります。皮膚科とリウマチ科の両方の視点が必要になる複雑な病態です。

 

指関節の痛み、腫れが気になるときは?:乾癬性関節炎では皮膚症状に加え関節症状が現れ、リウマチと似ているが第1関節に症状が出やすいなどの違いがあると解説されています。

 

参考)指関節の痛み、腫れが気になるときは?

次に、リウマチそのものが引き起こす皮膚の違和感についても知っておく必要があります。リウマチは血管にも炎症を起こすことがあり(リウマチ性血管炎)、これによって指先に小さな赤い発疹ができたり、皮膚潰瘍ができたりすることがあります。また、リウマチに合併しやすい「シェーグレン症候群」という病気では、涙や唾液が出にくくなる乾燥症状に加え、皮膚が極度に乾燥し、強いかゆみを引き起こすことがあります。「指の関節が痛いし、最近肌がカサカサしてかゆい」という場合、単なる乾燥肌ではなく、自己免疫疾患の合併症状である可能性があるのです。

 

さらに、すでに皮膚のかゆみ止めステロイド外用薬など)を使用している場合、薬の影響で皮膚が薄くなり、少しの刺激で内出血しやすくなったり、違和感を感じやすくなったりすることもあります。逆に、リウマチの治療薬(メトトレキサートなど)の副作用として、薬疹やかゆみが出ることもあります。つまり、「指の違和感」と「かゆみ」は、病気の症状としても、治療の副作用としても、密接に絡み合っているのです。

 

「指の違和感の原因は、関節の中なのか、それとも皮膚表面なのか?」という視点を持つことは、正しい診断にたどり着くために非常に重要です。もし、関節の腫れに加えて、爪の変形(小さなくぼみができるなど)や、指の皮膚の赤み、皮むけ、強いかゆみがある場合は、必ず医師にそのことを伝えてください。リウマチの検査(血液検査でリウマチ因子や抗CCP抗体を調べる)だけでなく、皮膚の状態を詳しく観察することで、真の痛みの原因が明らかになることが多々あるのです。

 

腱鞘炎や他の病気との違い

指の痛みを訴えて病院を訪れる方の中で、リウマチと診断される方はもちろん多いですが、実際には別の病気であることも少なくありません。不要な不安を抱かないためにも、リウマチと間違えられやすい他の病気との違いを整理してチェックしておきましょう。

 

最も混同しやすいのが「変形性指関節症(へバーデン結節・ブシャール結節)」です。これは加齢や遺伝、手の使いすぎなどが原因で軟骨がすり減る病気です。

 

  • ヘバーデン結節: 指の第1関節(爪のすぐ下)が腫れて痛みます。リウマチは第1関節にはほとんど出ないため、ここが痛むならヘバーデン結節の可能性が高いです。
  • ブシャール結節: 指の第2関節が腫れて痛みます。場所がリウマチと同じため非常に紛らわしいですが、触った感触が「硬い(骨の隆起)」ことや、必ずしも左右対称ではないこと、血液検査での炎症反応がないことなどで区別します。

    【リウマチの初期症状】朝のこわばりや手指の痛みを...:乾癬性関節炎ではDIP関節(第1関節)に症状が出やすいが、リウマチは第2・第3関節に多いという違いが解説されています。

     

    参考)【リウマチの初期症状】朝のこわばりや手指の痛みをこわばり時間…

次に多いのが「腱鞘炎(けんしょうえん)」、特に「ばね指」です。指の付け根に痛みがあり、指を曲げ伸ばしする際に「カクン」と引っかかるような動きをするのが特徴です。リウマチでも腱鞘炎を併発することはありますが、単独のばね指であれば、特定の指(親指や中指などよく使う指)だけに症状が出ることが多く、全身の倦怠感や左右対称性は見られません。また、朝方に症状が強くても、お風呂に入って温めると楽になることが多いのも特徴です(リウマチも温めると楽になりますが、腱鞘炎の方が物理的な引っかかり感が強いです)。

 

また、「更年期障害」による関節痛も無視できません。閉経前後の女性は、エストロゲンというホルモンの減少により、手指の関節が腫れぼったくなったり、痛みを感じたりすることがあります。これも「朝のこわばり」を伴うことがあり、リウマチと非常に似ています。しかし、関節破壊(骨の変形)は起こりません。婦人科でのホルモン補充療法で改善することもあります。

 

このように、指の痛み一つとっても、その原因は多岐にわたります。自己判断の危険な点は、「きっと使いすぎの腱鞘炎だろう」と決めつけてリウマチの治療が遅れてしまうこと、あるいは逆に「不治の病かもしれない」と過度に心配してしまうことです。

 

重要なのは、以下の「リウマチ警戒サイン」にいくつ当てはまるかを確認することです。

 

  • 痛みが第2関節または付け根にある(第1関節ではない)
  • 腫れが柔らかくブヨブヨしている
  • 朝のこわばりが30分以上続く
  • 左右対称に症状がある
  • 微熱やだるさを伴う

これらに複数当てはまる場合は、整形外科の中でも「リウマチ専門医」がいるクリニックを受診することを強くお勧めします。現代の医学では、早期に発見すれば関節の変形を完全に防ぐことも可能です。あなたの指の未来を守るために、違和感を放置せず、専門家の目によるチェックを受けてください。

 

 


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