好酸球が高い症状
好酸球が高い原因とアレルギー性皮膚炎の関係
皮膚の激しいかゆみに悩まされている方の多くは、血液検査で「好酸球(こうさんきゅう)」の数値が高いと指摘されることがあります。好酸球は白血球の一種であり、本来は体内に侵入した寄生虫などを攻撃して体を守る役割を持っています 。しかし、この防御反応が過剰に働いてしまうと、自分の体を傷つけ、炎症やかゆみを引き起こす原因となります。
参考)好酸球とは?役割と病気との関係をわかりやすく解説
特にアレルギー性皮膚炎(アトピー性皮膚炎)においては、好酸球の数値と症状の重さに強い相関関係が見られます。アレルギー反応が起きると、体内で「サイトカイン(IL-4、IL-13など)」という物質が放出され、これが好酸球を炎症部位に呼び寄せます。集まった好酸球は、組織を傷つけるタンパク質や活性酸素を放出し、さらに強いかゆみや湿疹を引き起こすという悪循環に陥ります 。
好酸球が増加する主なアレルギー疾患:
- アトピー性皮膚炎: 皮膚の乾燥やバリア機能の低下により、アレルゲンが侵入しやすくなり、好酸球が活性化します。
- 気管支喘息: 喘息患者の多くで血中の好酸球が増加しており、数値が高いほど発作のリスクが高まると報告されています 。
参考)好酸球とは何か?【喘息】【COPD】
- アレルギー性鼻炎: 花粉やダニなどが原因で好酸球が増え、鼻粘膜の炎症を引き起こします。
- 食物アレルギー: 特定の食物に対する反応として、消化管だけでなく全身の好酸球が増加することがあります 。
参考)院長の独り言109(好酸球)
このように、好酸球が高いということは、体の中で何らかのアレルギー炎症が「現在進行形」で起きているサインと言えます。単なる「かゆみ」と捉えるのではなく、体からのSOSとして受け止め、原因となっているアレルゲンを特定することが治療の第一歩となります。
好酸球が高い基準値と血液検査の数値の見方
健康診断や病院の血液検査で「好酸球が高い」と言われても、具体的にどのくらいの数値が危険なのか、正しく理解している人は少ないかもしれません。血液検査表では、好酸球は「Eos(Eosinophils)」と表記されることが一般的です。
好酸球の基準値の目安:
| 項目 | 単位 | 基準値(目安) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 好酸球数(実数) | /μL | 70 ~ 450 |
1μLあたりの個数 |
| 白血球分画(%) | % | 0.0 ~ 8.5 |
全白血球に占める割合 |
数値による重症度の分類:
- 軽度増加(500 ~ 1500/μL): アレルギー疾患(アトピー、喘息、花粉症)でよく見られる数値です。かゆみや鼻水などの症状が強い時期には、この範囲まで上昇することがあります。
- 重度増加(1500/μL以上): 「好酸球増多症」と診断されるレベルです。単なるアレルギーだけでなく、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)などの膠原病や、寄生虫感染、あるいは血液疾患の可能性も考慮し、詳しい検査が必要になります 。
- 極端な高値(5000/μL以上): 直ちに入院や専門的な治療が必要な緊急性が高い状態です。臓器障害のリスクが高まります。
重要なのは、好酸球の数値は「変動しやすい」ということです。日内変動(朝と夜で変わる)や、ストレス、季節の変わり目などでも上下します。一度高い数値が出たからといって過度に不安になる必要はありませんが、高い状態が続く場合や、1500/μLを超える場合は、皮膚科だけでなく、血液内科やアレルギー科などの専門医に相談することをお勧めします。また、喫煙者は非喫煙者に比べて好酸球数が高くなる傾向があることも知っておくべきでしょう 。
好酸球が高い症状とストレスが及ぼす意外な影響
「ストレスでアトピーが悪化する」とよく言われますが、これは単なる気のせいではありません。最新の研究により、精神的ストレスが好酸球による炎症を悪化させる具体的なメカニズムが解明されつつあります。これは検索上位の一般的な医療記事ではあまり深く触れられていない、非常に重要な視点です。
順天堂大学の研究(2024年発表)によると、精神的ストレスがかかると、交感神経から「ストレスホルモン(ノルアドレナリンなど)」が分泌されます。通常、体内には炎症を抑えるブレーキ役の「抗炎症性マクロファージ」という細胞が存在しますが、ストレスホルモンがこの細胞にある「β2アドレナリン受容体」に作用してしまうと、ブレーキ機能が低下してしまうことが判明しました 。
参考)精神的ストレスがアトピー性皮膚炎を悪化させるメカニズムを解明…
ストレスが悪化させるメカニズム:
- ストレス発生: 仕事や人間関係などで精神的ストレスを感じる。
- ホルモン分泌: 交感神経が興奮し、ストレスホルモンが放出される。
- ブレーキ故障: 炎症を抑えるはずの免疫細胞(マクロファージ)の機能が低下する。
- アクセル全開: 炎症を促進する好酸球などの細胞が暴走しやすくなる。
- 症状悪化: 結果として、アレルギー症状や皮膚のかゆみが激化する。
つまり、どれだけ薬で治療をしていても、強いストレスにさらされ続けていると、体内の「炎症を抑える力」自体が弱まってしまい、好酸球の活動を抑え込めなくなってしまうのです。
好酸球の数値を下げるためには、薬物療法だけでなく、自律神経を整えるケアが極めて重要です。十分な睡眠、リラックスする時間の確保、そして「ストレスは肌の大敵である」という科学的な根拠を理解して生活を見直すことが、遠回りのようで確実な治療への道となります。
好酸球が高い病気の治療法と食事による改善アプローチ
好酸球が高い状態を改善するためには、医療機関での治療と、自宅での生活習慣(特に食事)の改善の両輪が必要です。
1. 医療機関での標準的な治療
- ステロイド外用薬・内服薬:
炎症を強力に抑え、好酸球の活動を鎮静化させます。急激な悪化時には内服薬(プレドニンなど)が使われることもあります。
- 抗ヒスタミン薬:
好酸球などが放出するヒスタミンの働きをブロックし、かゆみを抑えます。
- 生物学的製剤(注射薬):
重症の喘息やアトピー性皮膚炎に対し、好酸球を活性化させるIL-4やIL-13などの物質をピンポイントで阻害する最新の治療法です(デュピクセントなど)。
2. 食事による改善アプローチ
好酸球性胃腸炎などの研究から、特定の食物を除去することで好酸球が劇的に減少することが分かっています。皮膚症状のみの場合でも、腸内環境を整えることは全身の炎症レベルを下げるのに有効です。
- 「6大アレルゲン」のチェック:
牛乳、卵、小麦、大豆、ナッツ、魚介類は、好酸球性炎症のトリガーになりやすい食品です 。これらを一時的に除去して症状の変化を見る「除去食試験」が有効な場合があります(必ず医師の指導下で行ってください)。
- Rainbow(レインボー)食事療法:
野菜、果物、芋類を中心に摂取し、タンパク質はアレルギーを起こしにくいアミノ酸栄養剤などで補う方法も研究されています 。これは極端な例ですが、「加工食品を減らし、自然な食材を摂る」という基本は誰にでも応用できます。
参考)好酸球性胃腸炎の新たな食事療法を開発
- 抗炎症作用のある食材の摂取:
青魚(EPA/DHA)、緑黄色野菜、発酵食品などは、体内の炎症を抑える効果が期待できます 。
- 食品日誌をつける:
「何を食べたときに体が痒くなったか」を記録することで、自分だけの隠れたアレルゲン(好酸球を増やす原因)を見つけ出すことができます 。
参考リンク:国立成育医療研究センターによる好酸球性胃腸炎の新しい食事療法(Rainbow食事療法)の解説
上記リンクは、食事療法によって薬を使わずに好酸球数を正常化させた研究結果について詳しく解説しており、食事の影響力を知る上で非常に参考になります。
好酸球が高いとかゆみが止まらない?寄生虫や薬の意外な原因
皮膚のかゆみや好酸球の増加=アレルギー、と考えがちですが、実はそれ以外の意外な原因が隠れていることがあります。これを見落とすと、アレルギーの治療をしていても一向に良くならないという事態になりかねません。
1. 寄生虫感染
現代の日本では少ないと思われがちですが、以下のようなケースで寄生虫による好酸球増加が見られます。寄生虫に対し、体は好酸球を大量に動員して攻撃するため、数値が跳ね上がります 。
- 生魚やジビエ肉の摂取: アニサキスや旋尾線虫など。
- 海外渡航歴: 東南アジアなどへの旅行で感染する糞線虫など。
- ペット飼育: 犬や猫からの回虫感染(トキソカラ症)。
この場合、ステロイドを使うと逆に寄生虫を助長してしまうことがあるため、必ず鑑別が必要です。
2. 薬剤性(薬の副作用)
普段飲んでいる薬が原因で、アレルギー反応として好酸球が増える「薬剤性過敏症症候群」があります。抗生物質、解熱鎮痛剤、抗てんかん薬、漢方薬など、あらゆる薬が原因になり得ます。
- 特徴: 新しい薬を飲み始めてから数週間後に、発疹、発熱、リンパ節の腫れとともに好酸球が増加します。
- 対策: 原因と思われる薬を中止することで改善します。
3. その他の疾患
- 好酸球性副鼻腔炎:
喘息持ちの人に多く、鼻茸(ポリープ)ができ、嗅覚(におい)がわからなくなるのが特徴です。鼻づまりと共に全身の好酸球が高くなります 。
- 膠原病(EGPA):
血管に好酸球による炎症が起きる病気で、手足のしびれや紫斑が出ることがあります 。
参考)好酸球性筋膜炎
「たかがかゆみ」と思わず、原因が特定できない場合や数値が異常に高い場合は、アレルギー以外の可能性も含めて全身を詳しく調べることが、健康を取り戻す近道となります。


