

耳かきをやめれば治ると思っていませんか?実は、かゆい耳を「きれいにしよう」と綿棒で丁寧に拭くだけで、湿疹が悪化し難治化するケースがあります。
「耳介」とは、耳たぶを含む耳の外側に見える部分全体のことです。耳介湿疹は、この耳の外側の皮膚に炎症が起きてかゆみ・赤み・ジュクジュクした湿疹が生じる状態を指します。一方、「外耳道」とは耳の穴から鼓膜まで続く管状の部分で、ここに炎症が起きると「外耳道湿疹(外耳道炎)」と呼ばれます。
両者はまったく別の場所に起きる症状ですが、実際には密接に関係しています。外耳道の炎症が悪化すると、次第に耳介にまで炎症が広がり「耳介湿疹」へと進行するケースが少なくありません。つまり、耳介湿疹は外耳道湿疹の「次のステージ」にあたる状態ともいえます。
症状の特徴は、かゆみ・赤み・皮膚のカサカサ・じゅくじゅくした分泌物の3点です。かゆみが強く、掻いてしまうと皮膚がただれ、そこから分泌物が出てきてかさぶた状に固まることがあります。これをみみあかと勘違いしている方も多く、さらに掻き取ろうとして悪化させてしまうケースが典型的な悪循環です。
また、症状は昼間よりも夜間・就寝中に悪化しやすい傾向があります。眠っている間に無意識のうちに耳を触っていることがあるためです。これは地味に大事な情報ですね。かゆみが夜中に強くなると感じている方は、就寝前の保湿ケアや手の清潔を心がけると悪化を防ぎやすくなります。
| 部位 | 名称 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 耳の外側(耳たぶ含む) | 耳介湿疹 | かゆみ・赤み・ただれ・分泌物 |
| 耳の穴〜鼓膜 | 外耳道湿疹・外耳道炎 | 強いかゆみ・痛み・耳だれ・耳閉感 |
耳介湿疹・外耳道湿疹の最も多い原因が、耳かきや綿棒による過剰な刺激です。「毎日お風呂上がりに綿棒で耳の中を拭く」という習慣を持つ方は4人に1人いるとされていますが、これが湿疹の大きなリスクになります。
外耳道の皮膚はとても薄く、爪で軽くひっかく程度の力でも傷がつきます。傷ついた皮膚は外からの刺激に過敏になり、シャンプーや汗などが触れるだけでも炎症を起こしやすい状態になります。そこから細菌(主に黄色ブドウ球菌)が入り込み、湿疹がさらに悪化するという流れが典型的です。
「耳垢は自然に外に排出される」が原則です。耳の外耳道の皮膚は内側から外側に向かってゆっくりと移動する「マイグレーション」という性質を持っており、本来であれば耳垢は自然に耳の外へ押し出されるようになっています。これはハガキの横幅ほどの距離(約10cm)を、1ヶ月単位でゆっくりと移動するイメージです。つまり、毎日熱心に耳掃除をすることは、この自然な機能を邪魔することになります。
耳掃除の適切な頻度は「月に1回程度」とされており、それ以上行う必要は基本的にありません。やるとしても耳の入り口から1〜1.5cm以内にとどめ、綿棒を奥まで入れないようにするのが鉄則です。奥に入れると、耳垢を奥に押し込む「耳垢栓塞(じこうせんそく)」につながり、聴力低下の原因にもなります。耳かきのやりすぎに注意が必要です。
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:耳垢と耳掃除の正しい知識
近年、耳介湿疹・外耳道湿疹の原因として急増しているのが、イヤホンの長時間使用です。これは現代人が見落としやすいポイントです。
イヤホンを長時間装着すると、外耳道が密閉されて高温多湿な環境になります。蒸れた状態の皮膚はバリア機能が低下しており、少しの摩擦でもかぶれ(接触性皮膚炎)が起きやすくなります。また、イヤホンの素材がシリコンやプラスチックでも、人によってはアレルギー反応を起こすことがあります。カナル型(耳穴の奥まで差し込むタイプ)のイヤホンは特に注意が必要です。
リモートワークや音楽・ゲームの習慣で、1日3〜4時間以上イヤホンをつけている方は少なくありません。これは外耳道に慢性的な刺激を与え続けていることになります。使えそうな情報ですね。
具体的な対策として、以下のポイントを参考にしてください。
補聴器も同様で、長時間装着することで外耳道内が蒸れ、湿疹の引き金になります。補聴器を使用している方で耳のかゆみが続く場合は、補聴器の形状や素材を見直すことも一つの選択肢です。補聴器のかかりつけ店や耳鼻科に相談するのが確実です。
沢井製薬「サワイ健康推進課」:イヤホンの長時間使用と外耳炎(外耳道炎)の関係について
耳介湿疹の原因として見落とされがちなのが、シャンプーやリンス・コンディショナー、整髪剤などが耳に入ることによる接触性皮膚炎です。
洗髪中にシャンプー液が耳に入り、そのまま残ってしまうと耳介や外耳道の皮膚を刺激します。特に界面活性剤を多く含むシャンプーは皮膚への刺激が強く、アレルギー体質の方や皮膚が薄い部位には炎症を引き起こしやすいです。また、整髪剤やヘアスプレーは耳の後ろ(耳介後部)に付着しやすく、繰り返し刺激されることで耳介後部に皮膚炎が起きることもあります。
「シャンプーをしっかりすすいでいるから大丈夫」と思いがちですが、問題は耳穴の内部へ入った液が完全に取り切れていないことです。洗い残しが症状につながるということですね。
予防のポイントは、洗髪時に耳の入り口をコットンや指で軽くふさぐことです。洗髪後は耳の入り口付近をタオルで軽く押さえるように水分を取り除きます。ドライヤーで30cm以上の距離から弱風を当てることで、耳の中の湿気を取るのも効果的です。ただし、熱風を耳の穴に直接当てると皮膚の乾燥が進みすぎてかゆみが悪化することがあるため、距離と温度には注意しましょう。
耳介湿疹は、皮膚の問題だけではなく「全身のアレルギー体質」と深く関係していることを知っておく必要があります。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症を持っている方は、そうでない方に比べて耳介湿疹を起こしやすいことが臨床的に知られています。
特に花粉症との関係は意外と知られていません。スギ花粉が飛散する2〜4月の時期に耳の中のかゆみが強くなるケースがあります。これはスギ花粉などのアレルゲンが耳の外耳道に入り込み、鼻や目と同様にアレルギー反応を引き起こすためです。また、鼻と耳は「耳管」という管でつながっているため、鼻の炎症が耳にも影響を及ぼしやすい構造になっています。花粉症の季節に耳のかゆみが起きるのは偶然ではないということですね。
アトピー性皮膚炎を持つ方では、皮膚のバリア機能が健常な方よりも低下しているため、外耳道の薄い皮膚がさらにダメージを受けやすい状態にあります。シャンプーや汗、気温の変化といった日常的な刺激が、耳のかゆみとして現れることも多いです。
花粉症が原因の耳のかゆみには、抗アレルギー薬(市販の花粉症薬)が有効なケースがあります。耳鼻科では、花粉症の治療と耳介湿疹の治療を同時に行ってもらえることも多いため、かゆみが花粉の季節と重なる方はその点を医師に伝えると診断の参考になります。
池袋ながとも耳鼻咽喉科:花粉・アレルギーと耳の中のかゆみの関係について解説
耳介湿疹が長引く最大の理由は、「かゆい→掻く→悪化→さらにかゆくなる」という悪循環にあります。これが最も知っておくべき仕組みです。
かゆみを感じて耳を掻くと、炎症が生じた皮膚にさらに傷がつきます。傷口からは細菌が侵入しやすくなり、外耳道炎へと発展することがあります。さらに悪化すると、外耳道内が高温多湿な状態になり、真菌(カビ)が繁殖しやすくなります。これが「外耳道真菌症」と呼ばれる状態で、こうなると治療が大幅に長引きます。軽症なら2週間で改善することもありますが、深部まで感染が進むと完治まで数ヶ月かかるケースもあります。痛いですね。
特に注意が必要なのは「ステロイド軟膏を自己判断で使い続けること」です。耳介湿疹の基本治療はステロイドの外用薬ですが、真菌(カビ)が原因の場合にステロイドを使い続けると、免疫が抑制されてカビの繁殖をかえって助けてしまいます。かゆみが1〜2週間以上続く・匂いが気になる・耳だれが止まらない、といった場合は自己判断でのステロイド塗布を続けず、耳鼻科を受診することが条件です。
かゆみを感じたとき、すぐにできる対処は次の通りです。
「かゆいから掻く」以外のストレス発散法として、冷たいタオルを耳の周りに当てて冷却するのが手軽で効果的です。かゆみの神経は熱に弱く、冷やすことで一時的に感覚が和らぎます。これは使えそうです。
また、就寝前に耳周辺を清潔に保ち、乾燥している場合はワセリン(白色ワセリン)を耳介の外側のひだに薄く塗っておくと、皮膚バリアの保護になります。ただし、耳の穴の中にワセリンを塗るのは通気性を妨げるため避けてください。
徳島県医師会:外耳道湿疹の原因・症状・治療の基礎知識(医師監修コラム)