

ジメチコンが入った化粧品を使うと肌にかゆみが出ると思っているなら、その判断で2万種超の優良な選択肢を捨てています。
ジメチコンは、シリコーン(珪素化合物)の一種で、化学的には「ポリジメチルシロキサン」と呼ばれる直鎖状のポリマーです。無臭・無色透明の液体で、触れるとなめらかでするんとした感触が特徴です。
肌ケア商品・ヘアケア・日焼け止め・メイク下地・リップ製品など、実に2万種を超える化粧品に配合されています。これほど広く使われている理由は、「撥水性が高い」「テクスチャーをなめらかにする」「他の成分と化学的に安定して反応しない」という3つの優れた特性を持っているからです。
ジメチコンは医薬品添加剤規格2021にも収載されており、消化管ガスを排出させる胃腸薬(ガスコンなど)の有効成分としても長年使用されています。医薬品としての信頼性も積み重なっている成分です。
化粧品表示では「ジメチコン」と記載され、医薬部外品では「メチルポリシロキサン」「高重合メチルポリシロキサン(1)」と表示されます。成分表を見てどちらかが記載されていれば、それがジメチコンです。これだけ覚えておけばOKです。
<参考:ジメチコンの成分詳細と配合目的に関する化粧品成分オンラインの解説>
化粧品成分オンライン|ジメチコンの基本情報・配合目的・安全性(更新日:2023年6月5日)
「ジメチコンは危険」という話を一度は聞いたことがあるかもしれません。意外ですね。しかし結論から言うと、現時点でジメチコンが皮膚に危害を及ぼすという科学的根拠は存在しません。
CIR(米国化粧品成分審査委員会)が実施した安全性評価によると、103名の被検者に5%ジメチコン溶液を用いたHRIPT(皮膚刺激性・皮膚感作性試験)を行った結果、試験期間中に皮膚刺激も感作も一切確認されませんでした。さらに別の106名を対象とした試験でも同様に有害反応はゼロ。この試験物質は「皮膚感作剤ではない」と明確に結論づけられています。
皮膚吸収性の観点でも、5名の被検者の背中にジメチコンを10日間連続で塗布した試験では、血中・尿中のケイ素に有意な増加がみられませんでした。つまり、皮膚からほとんど吸収されない成分であることが確認されています。
また、CIRは洗い流し不要の製品(スキンケア・メイクアップ製品など)におけるジメチコンの安全な配合濃度を「最大24%」と設定しています。24%という数字は、市販の化粧品の実際の配合量(通常は数%以下)と比べるとはるかに高い水準です。安全域は十分に確保されています。
30年以上の使用実績を持つ成分として、医薬品添加物規格2018・医薬部外品原料規格2021の双方に収載されているのも、この安全性評価の積み重ねがあるからこそです。
<参考:ジメチコンを含むシリコーンの安全性について解説したポーラ・チョイス公式ページ>
Paula's Choice Japan|化粧品に含まれるシリコン(シリコーン)は肌に安全な成分?
「ジメチコンは毛穴を詰まらせる」「使うと肌がかゆくなる」という話が一部のオーガニック・無添加系情報サイトで広まっています。これは本当でしょうか?
まず毛穴詰まりについて。ジメチコンはノンコメドジェニック(毛穴詰まりを起こしにくい)に分類されています。分子が大きく固体ではなく液体のため、毛穴の開口部に詰まりにくい性質があります。さらに化学的に安定していて酸化しないため、ニキビの原因となる過酸化脂質を生成することもありません。角栓やイチゴ鼻の原因になるリスクは、科学的に見て非常に低いといえます。
次に皮膚呼吸の阻害について。ジメチコンが形成する皮膜は、食品用ラップのような密閉構造ではなく、メッシュ状の網目構造を持っています。そのため酸素や水蒸気は透過できる状態が保たれます。肌の代謝を妨げるほどの密閉性はありません。
さらに皮膚常在菌への影響について。皮膚常在菌(表皮ブドウ球菌・アクネ菌など)のエサは皮脂や汗などの有機物です。化学的に不活性なシリコーンが菌のバランスを乱すという機序は現実的ではなく、根拠のある話とはいえません。
かゆみの本当の原因は、多くの場合「香料」「防腐剤(パラベン・メチルイソチアゾリノンなど)」「界面活性剤」「特定の植物エキス」です。ジメチコンを含む製品でかゆみが出た場合でも、原因成分を特定するにはパッチテストか皮膚科受診が最も確実です。「ジメチコンだろう」と断定するのはリスクがあります。
<参考:資生堂公式によるシリコーンと地肌への影響に関する解説>
ジメチコンの安全性は高い。これが原則です。ただし、実際に問題になりうる点が2つあります。
① 油脂系オイルとの相性問題
ジメチコンはシリコーンオイルであるため、椿オイル・スクワラン・ホホバオイルなどの植物性油脂系の美容オイルとは相性がよくありません。ジメチコン配合の美容液やクリームを先に塗ったうえに、植物系美容オイルを重ねると、油脂成分が酸化して嫌なにおいの原因になることがあります。スキンケアのレイヤリングをよく行う方は、この点に注意が必要です。
② ビルドアップ(成分蓄積)の可能性
ジメチコンは水に溶けないため、通常の洗顔料だけでは落ちにくい性質があります。特にトリートメントや日焼け止めで高濃度のジメチコンを毎日使い続けると、髪の毛や肌の表面にシリコーンが蓄積する「ビルドアップ」が起こることがあります。これが毛穴周囲に積み重なると、他のスキンケア成分の浸透を妨げたり、ごわつきの原因になったりします。
解決策はシンプルです。ダブルクレンジング(オイルクレンジングと泡洗顔の併用)を週に1〜2回取り入れることで、蓄積をリセットできます。
③ 環境への蓄積問題については近年指摘が増えています。ジメチコンなどのシリコーンは生分解性がなく、排水を通じて水路や魚類・鳥類の体内から検出されたという研究報告もあります。これは肌への直接被害ではありませんが、環境意識の高い方が「シリコーンフリー」の製品を選ぶ理由のひとつになっています。
<参考:ジメチコンの使用理由とデメリットを解説したCONCIOの記事>
CONCIO|ジメチコンが多くの化粧品で使われる理由とデメリット(2023年9月11日)
かゆみに悩む方にとって、ジメチコンは意外なほど役立つ可能性があります。これは使えそうです。
ジメチコンの最も重要な働きは「半閉塞性の保護膜形成」です。肌の表面に薄い保護膜をつくり、経表皮水分蒸散量(TEWL)を最大30%削減することが対照試験で確認されています。TEWLとは、肌から水分が蒸発する量のことで、この値が高いほど乾燥肌・かゆみが悪化しやすいとされています。
乾燥による肌バリアの低下が原因のかゆみは、外部からの刺激物質が侵入しやすくなることでさらに悪化するサイクルに入ります。このバリア機能の修復を「守りの保湿」として担う成分がジメチコンです。
N95マスクを着用した医療従事者を対象とした臨床研究では、ジメチコン配合クリームが摩擦による皮膚炎(接触性皮膚炎)を軽減することが確認されています。また、小児湿疹クリームや術後の傷跡ケア製品にもジメチコンが配合されているのは、この保護効果と安全性の高さがあるからです。
かゆみの原因が「乾燥」にある場合は、ジメチコン配合の保湿クリームが症状の改善に役立ちます。特に「ジメチコン 2%以上」がINCI成分表の上位に記載されている製品は、保護膜効果がより期待できます。ドラッグストアで入手できるヒルドイドクリームやセタフィル、ワセリンを含む処方クリームの多くにジメチコンが配合されています。
かゆみを根本的に解消したい場合は、皮膚科でのパッチテストを受けることが最も確実な方法です。
<参考:ジメチコンの肌への効果と保護膜形成について解説した医療機関の記事>
Clique Clinic|ジメチコンが肌に及ぼす影響:知っておくべきことすべて(2025年8月1日)
ジメチコンに対して過剰に不安を持つ必要はありません。大切なのは、正しい成分表の読み方を身につけることです。
化粧品の全成分表示は「配合量が多い順」に記載するルールがあります。ジメチコンが上位(1〜5番目)に記載されている製品はシリコーン比率が高く、保護効果が高い一方、ビルドアップのリスクも高まります。一方、下位(10番目以降)に記載されている場合は、テクスチャー改善目的での少量配合がほとんどです。
かゆみが気になる敏感肌の方が成分表でチェックすべき本当の注意点は、ジメチコンよりも以下のような成分です。
- メチルイソチアゾリノン(MIT):防腐剤の一種で、EU圏では洗い流さない製品への配合が禁止されています。皮膚感作性が高く、かゆみ・赤みの原因になりやすいです。
- 香料(フレグランス):成分表に「香料」と一括表示されますが、内訳には多数のアレルゲンが含まれる可能性があります。
- ラウリル硫酸Na(SLS):洗浄力が強く、繰り返し使用でバリア機能を低下させるリスクがあります。
ジメチコン入りであっても、これらの刺激成分が含まれていなければ、かゆみが出にくい製品と判断できます。逆に、「シリコーンフリー」と書かれた製品でも、別の刺激成分が入っていれば肌トラブルのリスクはあります。
一つの成分だけで「良い・悪い」を判断しないことが基本です。全体の成分バランスを見て選ぶことが、かゆみをおさえるための最も賢い化粧品選びです。
<参考:美容皮膚科医によるジメチコンを含む化粧品の安全性解説>
ナールスエイジングケアアカデミー|ジメチコンが危険って本当?効果と安全性や都市伝説を徹底検証!(薬剤師監修)