生物学的製剤一覧リウマチの種類と選び方を解説

生物学的製剤一覧リウマチの種類と選び方を解説

生物学的製剤一覧リウマチの種類・特徴・費用を徹底解説

生物学的製剤を使っても、かゆみや感染症が出ると薬をやめてしまう人がいますが、それが関節破壊を進める原因になります。


この記事でわかること
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生物学的製剤の種類と一覧

TNF阻害薬・IL-6阻害薬・T細胞調整薬の9種類を表形式で整理。それぞれの仕組みや投与方法の違いを解説します。

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費用・バイオシミラーの節約術

3割負担で月2万〜4万5千円かかる場合も。バイオシミラーへの切り替えや高額療養費制度を活用すれば大きく節約できます。

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副作用・かゆみへの対処法

注射部位のかゆみ・感染症リスクなど主な副作用と、症状が出たときの具体的な対処法を解説します。


生物学的製剤とは何か:リウマチ治療の仕組みをわかりやすく

関節リウマチは、免疫システムが誤って自分の関節を攻撃することで慢性的な炎症が起こり、放置すると骨や軟骨が破壊されていく病気です。生物学的製剤は、この免疫異常の「原因物質」にピンポイントで働きかけることで、炎症を根本から抑える薬です。


従来の抗リウマチ薬(DMARDs)が免疫全体を広く抑制するのに対し、生物学的製剤はTNF・IL-6などの「炎症性サイトカイン」や、免疫細胞であるT細胞という特定の標的だけを狙います。そのため、より効率的に炎症を止められるとされています。これが生物学的製剤の最大の特徴です。


日本では2003年にレミケード®(インフリキシマブ)が最初の生物学的製剤として承認されて以来、現在は9種類の生物学的製剤が使用されています。リウマチの治療に使われる生物学的製剤は、大きく3つのグループに分類されます。①TNFを抑えるTNF阻害薬が6種類、②IL-6を抑えるIL-6阻害薬が2種類、③T細胞の活性化を抑えるT細胞共刺激分子調節薬が1種類です。


生物学的製剤を使用すると、約7割の患者さんで炎症がほとんどない「寛解」または「低疾患活動性」の状態になるとされています。また、早期から使い始めるほど関節破壊を防ぐ効果が大きいことも知られています。早めの治療開始が原則です。


日本リウマチ学会(rheuma-net):生物学的製剤の種類と作用機序について(生物学的製剤・バイオシミラーの解説)


生物学的製剤一覧:リウマチに使われる9種類の特徴と比較表

現在、日本でリウマチに使われる生物学的製剤は以下の9種類です。まず一覧で確認しましょう。




































































分類 一般名(商品名) 投与方法 投与間隔 MTX併用
TNF阻害薬 インフリキシマブ(レミケード®) 点滴(約2時間) 6〜8週ごと ✅ 必須
エタネルセプト(エンブレル®) 皮下注射(自己注可) 週1〜2回 必須でない
アダリムマブ(ヒュミラ®) 皮下注射(自己注可) 2週に1回 必須でない
ゴリムマブ(シンポニー®) 皮下注射 4週に1回 必須でない
セルトリズマブペゴル(シムジア®) 皮下注射(自己注可) 2〜4週に1回 必須でない
オゾラリズマブ(ナノゾラ®) 皮下注射(自己注可) 4週に1回 必須でない
IL-6阻害薬 トシリズマブ(アクテムラ®) 点滴 or 皮下注射 点滴:4週 / 皮下注:1〜2週 必須でない
サリルマブ(ケブザラ®) 皮下注射(自己注可) 2週に1回 必須でない
T細胞調整薬 アバタセプト(オレンシア®) 点滴 or 皮下注射 点滴:4週 / 皮下注:週1回 必須でない


各薬剤の特徴を少し掘り下げます。レミケード®(インフリキシマブ)は日本初の生物学的製剤で、唯一MTX併用が必須という制約があります。ただし点滴製剤のため量を増やしたり投与間隔を縮めたりと、効果が出るよう医師が細かく調整できる点が強みです。


エンブレル®(エタネルセプト)は中和抗体が出にくいため長期的に効果が安定しやすく、高齢の患者さんにも比較的よく使われます。ヒュミラ®(アダリムマブ)は2週に1回の自己注射が可能で、生物学的製剤の中で唯一、診断直後から使い始めることが保険上認められています。


アクテムラ®(トシリズマブ)はMTXが使えない方でも単独で高い効果が証明されており、生物学的製剤の中で最も継続率が高いとされています。これは使えそうですね。


オレンシア®(アバタセプト)は唯一T細胞を標的とする薬で、TNF阻害薬と比べてアプローチがまったく異なります。TNF阻害薬が効かなかったケースでも有効なことがあります。


東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター:各生物学的製剤の投与方法・適応の詳細一覧(専門病院による解説)


生物学的製剤の費用とバイオシミラー:リウマチ治療の経済的な負担を減らす方法

生物学的製剤は非常に効果が高い反面、費用の高さが最初のハードルになりがちです。3割負担の場合、生物学的製剤の自己負担額は1か月あたり2万〜4万5千円程度になることが多いです。痛いですね。


一方で、費用を大幅に下げる手段が2つあります。1つ目が「バイオシミラー(後発バイオ医薬品)」の活用、2つ目が「高額療養費制度」の利用です。


バイオシミラーとは、特許が切れた生物学的製剤をもとに別のメーカーが製造した薬で、有効性・安全性は先行品と同等と認められています。価格は原則として先行品の約70%に設定されており、インフリキシマブ・エタネルセプト・アダリムマブについてはバイオシミラーが利用可能です。たとえば月3万円の薬がバイオシミラーに切り替わると2万1千円程度になる計算で、年間では約10万円以上の差になる場合もあります。


高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担が一定額(所得により異なりますが、標準的な収入の方で約8万7,000円)を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。生物学的製剤を使うほど治療費は高くなりますが、上限があるので安心できます。医療費が月10万円を超える場合でも、自己負担は8万7,430円+αまでに抑えられます(一般所得の場合)。高額療養費制度の利用は必須です。


また、生物学的製剤を使用しない場合の直接医療費が年間約25万円であるのに対し、使用した場合は年間約70万円と、約3倍に膨れ上がるという試算もあります(ファーマスタイル)。ただしこれらの費用は高額療養費制度の適用で大きく変わりますし、関節破壊が進んで手術が必要になった場合のコストと天秤にかけると、早期治療の経済的メリットは決して小さくありません。


加入している健康保険の窓口か、通院先の病院のソーシャルワーカー・相談窓口に一度確認してみてください。


リウマチ治療費と制度活用の解説(治療費の目安と高額療養費・難病制度の活用方法)


生物学的製剤の副作用とかゆみ:リウマチ患者が知っておくべき注意点

生物学的製剤は免疫の働きを部分的に抑えることで効果を発揮するため、免疫が過剰に低下すると感染症にかかりやすくなります。これが最も注意が必要な副作用です。


特に注意すべき感染症として、結核・肺炎・帯状疱疹・敗血症があります。生物学的製剤の開始前には必ず胸部X線やCT検査、結核の血液検査(QFT検査)、肝炎ウイルス検査などが行われます。活動性の感染症がある状態では投与できません。リスクに応じて結核やニューモシスチス肺炎の予防薬が処方されることもあります。


かゆみについては、主に皮下注射製剤で注射部位の発赤・かゆみ・腫れが出ることがあります。多くの場合は軽度で、繰り返し使用するうちに軽減することが多いです。点滴製剤(レミケード®など)では投与中に発熱・皮膚のかゆみ・血圧低下・呼吸困難などが起こることがあり、「infusion reaction(インフュージョン反応)」と呼ばれます。これが起こった際はすぐに医師に伝える必要があります。


感染症リスクは高齢・肺疾患・糖尿病・ステロイド服用中などの場合に高まります。薬を使いながら肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種を行っておくと感染症リスクを下げられるため、受診の際に医師に相談してみてください。かゆみや発熱が出たときの対応を事前に確認しておくことが大切です。


副作用が心配で薬をやめてしまう方がいますが、自己判断での中止はリウマチの再燃につながります。気になる症状が出た場合はすぐに主治医に連絡するのが原則です。


中外製薬「リウマチ治療ナビ」:抗リウマチ薬と生物学的製剤の副作用・治療中の注意点(副作用の種類と対処法の解説)


生物学的製剤の選び方:リウマチ専門医が重視する4つの判断基準

生物学的製剤は9種類あり、どれが自分に合うかは専門医が複数の要素を判断して決めます。ここでは、その判断基準を4つに整理します。


① MTX(メトトレキサート)が使えるかどうか


レミケード®(インフリキシマブ)はMTX併用が必須です。腎臓の状態が悪い・妊娠を希望しているなどの理由でMTXが使えない場合は、MTX不要のアクテムラ®(トシリズマブ)単独療法が選ばれることが多いです。MTXを使えるかどうかが、最初の分岐点です。


② 注射に対する抵抗感・生活スタイル


自宅で自己注射できる製剤(エンブレル®・ヒュミラ®・シムジア®・ケブザラ®など)と、病院での点滴または月1回受診が必要な製剤(レミケード®・シンポニー®など)があります。仕事が忙しく通院が難しい方には自己注射型が、自宅での注射に抵抗がある方には月1回受診のシンポニー®などが向いています。


③ 妊娠の希望があるかどうか


シムジア®(セルトリズマブペゴル)とエンブレル®(エタネルセプト)は胎盤通過が少ないとされており、妊娠中の継続が比較的安全と考えられています。妊娠希望がある場合は、治療開始前に必ず主治医へ伝えることが条件です。


④ 合併症・年齢・過去の治療歴


うっ血性心不全・脱髄疾患(多発性硬化症など)のある方にはTNF阻害薬が禁忌です。高齢で感染リスクが高い場合には、比較的安全性の評価が高いエンブレル®が選ばれる傾向があります。また最初の生物学的製剤が効かなかった場合、別の系統(TNF阻害薬からIL-6阻害薬やオレンシア®など)に切り替えることで効果が出ることがあります。


いずれの製剤も「3か月使っても効果が不十分であれば切り替える」というのがリウマチ治療の基本的な流れです。どれが合うかを試行する過程があることをあらかじめ理解しておきましょう。最初から「完璧な1本」を選ぶ必要はありません。


リウマチ専門医による生物学的製剤・JAK阻害薬の使い分け解説(選択の考え方を図示)


生物学的製剤とJAK阻害薬の違い:リウマチ治療の「次の選択肢」を知っておく

生物学的製剤で効果が不十分だったり、副作用が出て続けられない場合に「JAK阻害薬」が選択肢として浮上します。これは生物学的製剤とは別カテゴリの薬です。意外ですね。


JAK阻害薬は経口薬(飲み薬)で、トファシチニブ(ゼルヤンツ®)・バリシチニブ(オルミエント®)・ウパダシチニブ(リンヴォック®)・フィルゴチニブ(ジセレカ®)・ペフィシチニブ(スマイラフ®)の5種類が日本でリウマチに使用可能です。


生物学的製剤との最大の違いは「投与方法」です。生物学的製剤は注射または点滴ですが、JAK阻害薬は毎日飲む錠剤で、自己注射が不要です。注射が苦手な方にとっては選びやすい選択肢になります。


作用機序の違いも重要です。生物学的製剤が細胞の外でサイトカインそのものを直接ブロックするのに対し、JAK阻害薬は細胞の中でサイトカインの信号伝達を遮断します。複数のサイトカインをまとめて抑えられるため、場合によってはより広い効果が期待できます。結論はどちらが優れているわけではなく、患者さんの状況に合わせて選ぶということです。


ただしJAK阻害薬は、心血管系リスク(脳梗塞・心筋梗塞)の懸念から、50歳以上でリスクを持つ方への使用に注意が必要とされています。現時点では生物学的製剤より先にJAK阻害薬を使うことは推奨されておらず、まず生物学的製剤を優先して検討するのが原則です。あくまで「次の手段」として知っておくのが正しい位置づけです。


日本リウマチ学会:JAK阻害薬の解説(生物学的製剤との違い・使用の優先順位)