

卵を完全除去し続けると、かえって73%の子どもが治りにくくなるといわれています。
食物経口負荷試験(oral food challenge、OFC)とは、食物アレルギーが確定しているか、または疑われる食品を実際に食べて症状の有無を確認する検査です。かゆみ・蕁麻疹・腹痛・呼吸器症状など、食物アレルギーのあらゆる症状に対して、現在の医療では「最も確実な診断法」と位置づけられています。
血液検査(特異的IgE検査)の数値が高くても、実際に食べて症状が出ない子どもは少なくありません。逆に、血液検査が陰性でも症状が出るケースも存在します。つまり血液検査は「感作の有無」は分かっても、「本当に食べたときに症状が出るかどうか」は分からないのです。OFCはその疑問に直接答えてくれる検査です。
OFCの主な目的は次の3つです。
OFCはアナフィラキシーなど重篤な症状が誘発される可能性があるため、必ず医師の管理下で緊急対応できる体制が整った医療機関で実施されます。これは決して怖いことではなく、「もしもの時にすぐ対応できる」安全な環境だということです。安心して受けられます。
日本小児アレルギー学会ガイドライン2021(第9章:食物経口負荷試験):OFCの目的・実施方法・リスク評価のガイドラインが詳しく掲載されています。
OFCは基本的に外来(日帰り)で実施され、試験全体で2〜3時間ほどかかります。流れを事前に把握しておくと、お子さんも保護者も当日の不安が大幅に減ります。
試験開始前に、医師が体調を確認して実施可否を判断します。その後、ごく少量(目標量の1/8)からスタートし、30〜60分間隔で症状を観察しながら、2〜3回に分けて量を増やしていきます。たとえば鶏卵の場合、目標量の1/8→3/8→1/2という順序で段階的に摂取します。鶏卵は症状出現が遅いため、摂取間隔は1時間以上が望ましいとされています。これが基本です。
全量摂取後、1〜2時間の経過観察を経て帰宅となります。帰宅後も遅れて症状が出る場合があるため、当日はなるべく安静にして外出を控えましょう。
| フェーズ | 内容 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 受付・体調確認 | 医師の診察で実施可否を判断 | 〜30分 |
| 段階的摂取 | 少量から2〜3回に分けて摂取・観察 | 1〜2時間 |
| 経過観察 | 全量摂取後の観察 | 1〜2時間 |
| 帰宅判断 | 問題なければ退院。陽性の場合は処置 | 随時 |
試験後に何も症状が出なかった(陰性)場合でも、その量をすぐに自宅で毎日食べてよい、というわけではありません。まず自宅で数回摂取して問題がないことを確認し、次回の診察で最終的に「陰性」と判定されます。このステップが大切です。
なお、OFCで使用する食品はご家族が持参するのが一般的です。施設によって指示内容は異なりますが、食べやすい形に調理したもの(ホットケーキに混ぜた卵、カレーに溶かした牛乳など)を持ってくるよう指示されることがあります。お子さんが嫌がらずに食べられる工夫が重要です。
環境再生保全機構(すこやかライフ):「食物経口負荷試験について」として試験の内容・注意点がわかりやすく解説されています。
「検査費用がかかるのでは?」と心配される保護者は多いですが、実は費用面でのハードルはそれほど高くありません。2022年4月の診療報酬改定により、対象が拡大されました。OFCの保険適用範囲は次のとおりです。
費用は負担割合によって異なります。6歳誕生月の3月末以前(義務教育就学前)で2割負担の場合は約12,000円、義務教育就学以降の3割負担なら外来の場合は数千円程度になります。入院で行う場合は日帰りで2万円前後、1泊2日で4万円前後が目安です(食事代・差額ベッド代は別途)。
保険適用外(16歳以上または年4回目以降)の場合は全額自費となるため、計画的に受診スケジュールを立てることが重要です。年3回という上限を考えると、段階的に食物の種類を変えながら計画的に進める必要があります。主治医とよく相談しましょう。
複数の食品にアレルギーがある場合も、1回のOFCで調べられる食品は1品目だけです。複数の食品を1度に試すと、症状が出たときにどの食品が原因か特定できなくなるためです。つまり複数品目の確認には複数回の受診が必要ということです。
日本小児アレルギー学会:2022年度保険診療改定の詳細。対象年齢と回数上限の変更内容が確認できます。
OFCを受けるにあたって、多くの保護者が見落としがちな重要な準備があります。それは「アトピー性皮膚炎のコントロール」です。
アトピー性皮膚炎が悪化した状態でOFCを受けると、試験中に食べたことで皮膚がかゆくなったのか、もともとのアトピー症状によるかゆみなのか、区別がつかなくなります。これが問題です。判別がつかないと試験の結果が正確に評価できず、誤った除去指示につながるリスクがあります。
同様に、気管支ぜん息が不安定な状態でも注意が必要です。OFCでアレルギー反応が出た場合、ぜん息が悪化していると想定以上に強い呼吸器症状に至る危険性が高まります。そのためOFC実施前には、次の体調が条件となります。
体調が整っていない場合は、試験を延期してコンディションを整えてから臨むことが推奨されています。かゆみを完全に止めようとして抗ヒスタミン薬を飲み続けている場合も注意が必要です。OFCの結果に影響するため、抗ヒスタミン薬は試験の3日前から、抗アレルギー薬は前日から中止する必要があります。ステロイド内服薬は14日前からの中止が求められます。
一方、軟膏・点眼薬・点鼻薬・吸入薬などの外用薬は中止不要です。アトピーのスキンケア用の保湿剤やステロイド外用薬はそのまま使用できます。これは安心ですね。
きりんキッズアレルギークリニック:OFC当日の注意点・中止すべき薬の具体的なリストが詳しく掲載されています。
OFCで陰性(症状なし)と判定された後の過ごし方が、実はアレルギーの「治り方」を左右します。試験後の管理が大切です。
鶏卵・牛乳・小麦のアレルギーを持つ子どもは、6歳までに70〜73%が治るという報告があります。ただし、これは「完全に除去し続けた場合」ではなく、「食べられる範囲で少量ずつ食べ続けた場合」の話です。完全除去を続けてしまうと、治りやすいはずのアレルギーが治りにくくなるというデータがあります。国立成育医療研究センターの研究でも、鶏卵の長期完全除去は予後に悪影響があると示されています。
OFCで食べられる量が分かったら、次のような家庭での継続摂取が推奨されます。
卵の場合、炒り卵のような「卵だけの料理」より、小麦粉に混ぜたホットケーキのほうがアレルギー症状が出にくいことが分かっています。食べ方の工夫で症状リスクを下げられるのは意外ですね。
なお、継続摂取できなかった期間(風邪、旅行などで数週間食べられなかった場合)は、再開時に量を減らして慎重に始める必要があります。1週間以内なら同量で再開、2週間以内なら1/2に減量、3週間以内なら1/3に減量するのが一般的な目安です。体調不良時に慌てて食べさせる必要はありません。
実施施設を探す際は、「食物アレルギー研究会」のホームページに全国の実施施設一覧が掲載されています。かかりつけの小児科に相談し、必要に応じて紹介状を持参して専門施設を受診する流れが一般的です。まずはかかりつけ医への相談が最初の一歩です。
済生会:「子どもの食物アレルギーを怖がり過ぎないで!食物経口負荷試験」:少量摂取継続の重要性・OFCの流れが保護者向けに丁寧に解説されています。
食物アレルギー研究会 実施施設一覧:全国の食物経口負荷試験実施医療機関を地域ごとに検索できます。