IL-17阻害薬一覧とかゆみを抑える生物製剤の選び方

IL-17阻害薬一覧とかゆみを抑える生物製剤の選び方

IL-17阻害薬の一覧と乾癬のかゆみを抑える仕組みを知ろう

かゆみを何年も我慢していたのに、注射1本で8割以上の患者の皮膚がきれいになるケースがあります。


この記事のポイント3つ
💊
IL-17阻害薬は現在4種類

コセンティクス・トルツ・ルミセフ・ビンゼレックスの4剤が日本で使用可能。それぞれターゲットと投与間隔が異なります。

⚠️
使えない人がいる

炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)がある方はIL-17阻害薬を使うと悪化する可能性があるため、原則として使用不可です。

🏥
処方できる病院は限られている

日本皮膚科学会が認定した「分子標的薬使用承認施設」(2022年時点で全国760施設)でのみ処方が可能です。


IL-17阻害薬とは何か、乾癬のかゆみとの関係

乾癬(かんせん)は、皮膚のターンオーバーが通常の28〜40日から約4〜5日に極端に短くなってしまう病気です。皮膚が急激に作られ続けるため、赤みを帯びた盛り上がり(紅斑)・うろこ状の皮膚(落屑)・激しいかゆみが起こります。


この異常なサイクルを引き起こす中心的な犯人の一つが「IL-17(インターロイキン-17)」というタンパク質です。IL-17にはAからFまで6種類のサブファミリーがあり、なかでもIL-17AとIL-17Fが乾癬の発症と症状の維持に深く関わっています。免疫細胞の一種であるTh17細胞がIL-23の刺激を受けてIL-17Aを大量に産生し、これが皮膚の角化細胞を過剰に増殖させることで乾癬の症状が出てきます。


IL-17阻害薬は、このIL-17の働きを直接ブロックすることで炎症を根元から抑え、かゆみ・赤み・落屑を改善します。これが基本です。


外用ステロイドや光線療法とは作用する場所が根本的に異なり、「炎症を起こすシグナルそのものを止める」という点がこの薬のポイントです。乾癬の治療では、外用療法・光線療法・内服療法などで効果が不十分な中等症〜重症の患者さんが対象となります。


日本皮膚科学会「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)」— IL-17阻害薬の使用基準・承認施設数(760施設)など詳細な使用指針が掲載されています。


IL-17阻害薬の一覧と各薬の特徴・ターゲットの違い

現在、日本で使用できるIL-17阻害薬は全部で4種類です。それぞれ「どのIL-17をどこで止めるか」が少しずつ異なります。


商品名 一般名 ターゲット 投与方法 自己注射
コセンティクス® セクキヌマブ IL-17A 皮下注(2〜4週間ごと) ✅ 可能
トルツ® イキセキズマブ IL-17A 皮下注(2〜4週間ごと) ✅ 可能
ルミセフ® ブロダルマブ IL-17受容体A(IL-17RA) 皮下注(2週間ごと) ✅ 可能
ビンゼレックス® ビメキズマブ IL-17AおよびIL-17F(両方) 皮下注(4週間ごと) ✅ 可能


コセンティクス(セクキヌマブ) は2016年から使われている最初のIL-17阻害薬です。治療開始から最初の1か月間は毎週注射する「導入期」を経て、その後は4週間に1回の「維持期」に移行します。完全ヒト型抗体であるため中和抗体が生じにくく、効果が長続きしやすいのが特長です。なお、生物学的製剤の中で唯一小児(6歳以上)にも保険適用があります。これは重要なポイントです。


トルツ(イキセキズマブ) は、同じくIL-17Aを阻害するタイプです。コセンティクスと比較して、投与4週後のPASI90(皮膚症状が90%改善)達成率がやや高いというデータもあります。効果の発現が早い傾向にあり、皮膚・関節両方の症状が強い方に向いています。


ルミセフ(ブロダルマブ) は他の3剤とアプローチが少し異なります。IL-17そのものではなく、IL-17が細胞に結合するための「受容体(IL-17RA)」をブロックする薬です。そのため、IL-17A・IL-17A/F・IL-17C・IL-17E・IL-17Fと幅広くブロックできるという点が特徴です。皮膚症状に対する有効性が非常に高いとされています。


ビンゼレックス(ビメキズマブ) は2022年に日本で承認された最新のIL-17阻害薬です。IL-17AとIL-17Fの両方を同時にブロックできる日本初の薬剤として注目されています。今まで他の治療でうまくいかなかった患者さんでも効果が出るケースがあると報告されています。つまり、既存のIL-17阻害薬への反応が不十分だった場合の選択肢にもなり得ます。


日本リウマチ学会「乾癬性関節炎・強直性脊椎炎に対するIL-17阻害薬ガイドライン」— 各薬剤の使い分け基準と注意事項が網羅されています。


IL-17阻害薬の主な副作用と使えない人の条件

IL-17阻害薬はかゆみや皮膚症状に対して強力な効果を発揮しますが、同時に注意すべき副作用があります。正しく理解しておくことが大切です。


最も特徴的な副作用の一つがカンジダ症真菌感染症)です。IL-17は本来、皮膚や粘膜における真菌(カビ)の侵入を防ぐ免疫機能も担っています。それを薬でブロックすることで、口腔カンジダ症・性器カンジダ症などの真菌感染症が起こりやすくなります。日本皮膚科学会のガイダンスでも「IL-17阻害薬に特徴的な副作用として真菌感染症、とくにカンジダ症がある」と明記されています。


感染症リスクとして他に挙げられるのは、鼻咽頭炎・副鼻腔炎・扁桃炎などの上気道感染です。免疫を調整する薬である性質上、細菌・ウイルス感染にも注意が必要です。


また、炎症性腸疾患(IBD)の悪化・新規発症も報告されています。IL-17は腸管のバリア機能を守る役割も担っているため、クローン病や潰瘍性大腸炎がある方にIL-17阻害薬を使用すると腸炎が悪化するリスクがあります。注目すべき点として、2025年5月の報告では「IBD患者に対してIL-17阻害薬は効果がなく、逆説的に新規の大腸炎発症と関連している」とされています。腸の病気がある方は要注意です。


主な副作用・注意点をまとめると以下の通りです。


  • 🍄 カンジダ症(真菌感染):口腔・性器などで起きやすい。義歯を含む口腔内を清潔に保つことが推奨されています。
  • 🤧 上気道感染:鼻咽頭炎・副鼻腔炎・扁桃炎など。発熱が続く場合は受診が必要です。
  • 🦠 炎症性腸疾患の悪化:腹痛・下痢・血便が現れた場合はすぐに主治医へ連絡を。
  • 💉 注射部位反応:注射した箇所の赤みや痛みが起きる場合があります。
  • 🩸 好中球数減少:定期的な血液検査で確認が必要です。


以下に該当する方はIL-17阻害薬が使えないか、慎重な対応が必要です。


  • ❌ 活動性のクローン病・潰瘍性大腸炎がある
  • ❌ 活動性結核など重篤な感染症がある(治療完了後は相談可能な場合あり)
  • ❌ 真菌感染症が現在進行中の方
  • ⚠️ 悪性腫瘍の既往がある方(主治医と十分に相談が必要)


国立病院機構宇多野病院「乾癬性関節炎」— IL-17阻害薬の副作用や使えない患者の条件について、わかりやすく解説されています。


IL-17阻害薬の費用と処方を受けるための条件

IL-17阻害薬を含む生物学的製剤は非常に効果が高い反面、費用も高額です。ここは現実的に知っておくべき重要なポイントです。


例として、スキリージ(IL-23阻害薬)の場合、1回の投与にかかる医療費の総額は約475,700円で、3割負担の場合は1回で約142,700円になります。IL-17阻害薬も同様の価格帯で、仮に月1回投与の場合、3割負担で毎月数万円〜十数万円の負担が発生します。ただし、高額療養費制度を利用すると月の上限額が所得に応じて決まるため、実際の自己負担額は大幅に抑えられます。


高額療養費制度では、たとえば年収約370〜770万円の一般的な所得の方であれば、1か月の自己負担の上限は約80,100円(超過分は1%追加)です。これを超えた分は払い戻しが受けられるため、実質的に月10万円以下の負担で治療を継続できるケースも多くあります。


また、生物学的製剤は日本皮膚科学会が認定した「分子標的薬使用承認施設」でのみ処方可能です。2022年7月時点で全国760施設が認定されています。近くの皮膚科に行けば必ず処方してもらえるわけではないという点は把握しておく必要があります。日本皮膚科学会のウェブサイトで認定施設の検索が可能です。


さらに、処方を受けるためには以下のような事前検査が必要です。


  • 🔬 結核の検査:胸部レントゲン・ツベルクリン反応またはIGRAテスト
  • 🩸 血液検査:感染症(B型・C型肝炎、HIV等)の有無を確認
  • 📋 問診・身体診察:現在の感染症・腸疾患の有無を確認


これらの検査を経て、主治医が処方の可否を判断します。処方が出たら、自己注射の方法についての指導も行われます。自己注射が可能になると、通院の頻度を大幅に減らせるため、仕事が忙しい方にとっては大きなメリットになります。


IL-17阻害薬とIL-23阻害薬の選択——かゆみを抑える薬の使い分け

乾癬の生物学的製剤にはIL-17阻害薬のほかに、IL-23阻害薬(トレムフィア・スキリージ・イルミアなど)もあります。どちらを選ぶかは症状やライフスタイルで変わってきます。


IL-17阻害薬の強みは、効果の発現が早いことです。治療開始から2〜4週間という短期間で皮膚のかゆみや赤みが改善し始めるケースが多く報告されています。これは素早い改善を望む方にとって大きな利点です。爪の病変や頭皮の難治部位にも強い効果を発揮することが知られています。


一方でIL-23阻害薬の強みは、投与間隔の長さです。スキリージ(リサンキズマブ)やイルミア(チルドラキズマブ)は維持期になると3か月に1回の投与で済みます。通院の手間を最小限にしたい方、注射に対して不安が強い方にはこちらが向いています。また、IL-23阻害薬はIL-17阻害薬と比べてカンジダ症のリスクが低いとされており、口腔内のトラブルが気になる方には選択肢になり得ます。


主治医と相談する際には、次のような点を伝えておくと薬の選択に役立ちます。


  • 🗓️ 通院頻度の希望:できれば3か月に1回にしたい、など
  • 💪 症状の深刻さ:かゆみがひどく早く改善したい、関節も痛い、など
  • 🩺 既往歴:クローン病・潰瘍性大腸炎・真菌感染症の有無
  • 💉 自己注射への意欲・不安:慣れれば自宅でできる点を確認しておく


「IL-23阻害薬の方が副作用が少なくてよさそうだから、もうIL-17阻害薬は古い」という考え方は必ずしも正しくありません。IL-17阻害薬は現在も「皮膚症状が重度で速効性を求める患者」「爪や頭皮の症状が強い患者」に対して推奨され続けています。どちらが優れているのではなく、適切な患者さんに合っているかどうかが基本です。


IL-17阻害薬を使うときに知っておくべき独自の視点——腸と皮膚のつながり

あまり一般に語られない視点として、「腸と皮膚の関係」があります。IL-17阻害薬を理解する上で、これを知っておくと服薬管理に役立ちます。


IL-17は皮膚のかゆみや炎症に悪影響を与える一方で、腸の粘膜バリアを正常に保つためには「必要なもの」でもあります。腸の内壁はわずか1〜2層の細胞でできており(厚さは約0.5mm、髪の毛の直径5本分ほど)、この薄い壁が何百億もの腸内細菌と血液の間に立っています。IL-17はこの腸壁の修復にも使われているサイトカインです。


つまり、IL-17阻害薬で「皮膚のかゆみを抑えるためにIL-17を全体的にブロックする」と、腸のバリア機能も同時に低下させてしまうリスクがあるということです。これがクローン病・潰瘍性大腸炎のある方に禁忌とされている理由です。


この性質は服薬中の生活管理にも関係します。腸に負担をかける行動(暴飲暴食・過度の飲酒・ストレスによる腸の過活動など)は、IL-17阻害薬を使用中により慎重に避ける必要があります。腸に軽い炎症が起きかけている状態であっても、IL-17のブロックによって状態が悪化する可能性があるためです。腸の調子に注意すれば大丈夫です。


具体的には次の点を日常的に意識しておきましょう。


  • 🧘 ストレス管理:過剰なストレスは腸の炎症を誘発しやすい。ウォーキングや深呼吸など、自分に合ったリリーフ法を確保しておく。
  • 🥦 食物繊維の摂取:腸内環境を整えることで腸管バリアを補助できます。1日の目標は成人で20〜25g。(キャベツ100gあたり約1.8g)
  • 🚫 過度の飲酒を避ける:アルコールは腸壁の透過性を高め、炎症を誘発しやすくします。乾癬そのものもアルコールで悪化しやすいとされているため、二重の意味で注意が必要です。
  • 📋 腹部症状の記録:下痢・腹痛・血便が続く場合は次の受診日を待たずにすぐ主治医に連絡する。


なお、2025年5月に発表された研究では、IL-17阻害薬を使用中に「IBDに類似した病理像を呈する新規消化管症状」が報告されています。IBDの既往がない人でもゼロではないリスクです。腸の異変を早めにキャッチする習慣をつけておくことが、治療を長く続けるためのカギになります。


CareNet「IL-17阻害薬による新規消化管症状、IBDに類似した病理像を呈する」— 2025年5月時点の最新知見。腸の副作用リスクについて詳しく報告されています。