

花粉症の薬を飲んでいてもかゆみが止まらないのは、花粉ではなくアルテルナリアが原因の場合があります。
アルテルナリアとは、学名「Alternaria(アルテルナリア)属」というカビの一種で、一般的には「ススカビ」と呼ばれています。全世界には3万〜20万種ものカビが存在すると言われていますが、アルテルナリアはその中でも特にアレルギーとの関係が深いカビです。
見た目は灰色から黒色のやや綿毛状の集落を作り、浴室・台所の水回りや、冷蔵庫の周辺、結露が発生した窓枠などによく見られます。果物(なし・りんご・柑橘類)や枯れ葉、土の中にも広く分布しているため、屋外でも頻繁に触れる機会があります。代表的な菌種は「アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)」で、これが最もアレルゲン性が強いとされています。
重要なのは胞子の特性です。アルテルナリアの胞子は非常に軽く、空気中に長時間浮遊し続けます。他のカビの胞子は吸い込むと気管支まで到達しやすい一方、アルテルナリアの胞子はやや大きいため鼻腔内にとどまりやすく、アレルギー性鼻炎の原因になりやすいという独自の特徴があります。つまり、かゆみや鼻の症状を中心に起こしやすいカビということですね。
また、アルテルナリアは湿度60%以上・気温20〜30℃の環境で急速に増殖します。驚くことに、この温度帯は人間が最も快適と感じる室温とほぼ重なっています。快適な住環境こそが、アルテルナリアにとっても理想的な繁殖環境なのです。
| 特性 | 詳細 |
|---|---|
| 正式名称 | Alternaria属(ススカビ) |
| 見た目 | 黒〜灰色の綿毛状・斑点状 |
| 増殖しやすい環境 | 湿度60%以上・気温20〜30℃ |
| 主な発生場所 | 浴室・窓枠・エアコン内部・冷蔵庫周辺 |
| 代表的な菌種 | Alternaria alternata |
アレルゲンとして知られる主な空中浮遊真菌はアルテルナリアとクラドスポリウム(黒カビ)の2種ですが、アレルギー誘発力はアルテルナリアの方が強いと報告されています。これは覚えておきたい事実です。
ふくおか耳鼻咽喉科「カビのアレルギー」:アルテルナリアを含む主要なカビアレルゲンの解説と対策。アレルギー性鼻炎との関係が詳しく記載されています。
アルテルナリアのアレルギー症状は、皮膚・鼻・目・気管支と全身に及びます。症状の範囲が広いため、花粉症やダニアレルギーと混同されることが多く、原因特定が遅れるケースも少なくありません。
まず、かゆみを感じやすい人が最初に気づく症状が皮膚症状です。アルテルナリアの胞子や菌体が皮膚に付着すると「接触皮膚炎」が起こり、赤みやかゆみ、湿疹が現れます。特にアトピー性皮膚炎を持っている方は、アルテルナリアへの感受性が高く、かゆみが急激に強くなることが知られています。皮膚が弱い方には要注意です。
次にアレルギー性鼻炎の症状です。くしゃみ・鼻水・鼻づまりが主な症状で、花粉症と非常によく似ています。花粉症は季節性ですが、アルテルナリアによる鼻炎は梅雨から秋にかけて悪化する傾向があり、室内でも症状が出るのが特徴です。
アレルギー性結膜炎も頻繁に報告される症状です。目のかゆみ・充血・涙目などが現れ、まぶたに湿疹が出ることもあります。目をこすることでさらにかゆみが広がるため、症状の悪循環に陥りやすいです。
そして最も注意が必要なのが気管支喘息との関係です。研究によると、アルテルナリアに対するアレルギーを持つ喘息患者は重症喘息になるリスクが高いというデータがあります。夜間に胞子濃度が高まりやすいため、特に夜間に咳・息切れ・胸の圧迫感が悪化しやすい点が特徴です。重症化するリスクが高い点は見逃せません。
かゆみが強い時期と、アルテルナリアが増殖しやすい梅雨〜秋の時期が重なる場合、アルテルナリアアレルギーを疑う価値があります。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック「喘息とアレルギー:アルテルナリアがもたらす影響について」:アレルギー専門医による喘息重症化リスクの解説。夜間発作との関係も記載されています。
かゆみをおさえるには、原因となるアルテルナリアの発生源を特定することが先決です。「水回りだけを気をつければいい」と思っていると見落としが生まれます。それだけでは不十分です。
アルテルナリアはほかのカビに比べて乾燥耐性がやや高いため、湿度が低めの場所にも広がる能力を持っています。浴室・台所はもちろん、リビングの壁、カーテン、エアコン内部、押し入れなど、家中どこにでも潜む可能性があります。
特に見落とされやすいのがエアコン内部です。エアコンの内部では冷却時に結露が生じ、アルテルナリアを含むカビが繁殖しやすい環境が生まれます。エアコンを稼働させるたびに胞子が室内全体に吹き出される仕組みになるため、エアコンの存在がかゆみや鼻炎を悪化させている可能性があります。つまりエアコンの清掃が最優先です。
次に意識したいのが窓枠・サッシ周辺です。冬場の結露が水滴となり、アルテルナリアの格好の繁殖場所になります。「ちょっと黒くなってきたかな」という小さな変色も見逃さないようにしましょう。
屋外の土・落ち葉・植物の表面にもアルテルナリアは普遍的に存在しています。窓の開閉や衣類への付着によって室内に侵入するため、完全に防ぐことは難しいです。だからこそ、「どこで繁殖させないか」という視点が重要になります。
自宅でかゆみや鼻炎の症状が特に強く出る部屋・場所を特定することが、効率的な対策への第一歩です。症状が強い場所を先にチェックするのが原則です。
かゆみや鼻炎が長引いているのに、花粉症の薬が効いていないと感じたら、アルテルナリアアレルギーの検査を受けることを検討してください。自己判断は難しい部分です。
最も一般的な検査は血液検査(特異的IgE抗体検査)です。採血だけで実施でき、アルテルナリアに対するIgE抗体の量を数値で確認できます。SRL(エスアールエル)などの臨床検査機関では「アルテルナリア」を単独の検査項目として取り扱っており、アレルギー科・耳鼻咽喉科・皮膚科などで依頼できます。複数のアレルゲンを一度に調べる「39項目アレルギー検査」や「View39」のパネル検査でもアルテルナリアは含まれていることが多いです。
また皮膚テスト(スクラッチテスト・皮内テスト)も診断に使われます。皮膚に微量のアレルゲンエキスを触れさせ、膨疹(ぼうしん)の大きさで反応を判定する方法です。ただし、抗ヒスタミン薬を服用中の場合は検査前に内服を中止する必要があるため、事前に医師へ相談することが必須です。
検査の結果としてアルテルナリア感作(陽性)が判明した場合は、アレルゲン免疫療法(減感作療法)の適用も検討されることがあります。鳥居薬品が製造する「治療用アレルゲンエキス皮下注(トリイ)アルテルナリア」は医療機関での皮下免疫療法に使用される製剤で、気管支喘息の症状コントロールを目的として処方されます。また、2026年1月に発表された最新の研究では、アルテルナリアとオリーブ花粉の混合免疫療法が小児の鼻炎・喘息の重症度を軽減する効果が示されており、治療の選択肢が広がりつつあります。
かかりつけの内科・アレルギー科・耳鼻咽喉科に相談するのが最初のステップです。「カビアレルギーの検査をしたい」と伝えれば、アルテルナリアを含む検査を依頼してもらえます。受診のハードルは高くありません。
SRL総合検査案内「アルテルナリア」:医療機関が利用する臨床検査会社の検査詳細ページ。検査方法や基準値の参考情報として有用です。
アルテルナリアによるかゆみをおさえるには、「体への薬の対処」と「環境へのアプローチ」の両輪で取り組むことが重要です。どちらか一方だけでは不十分です。
① 室内の湿度を50%以下にキープする
アルテルナリアが最も活発に増殖するのは湿度60%以上の環境です。梅雨・夏場・加湿器を使う冬場は特に注意が必要です。湿度計を一つ用意して、室内の湿度を常に確認する習慣をつけましょう。エアコンの除湿機能や除湿器を活用し、湿度50%を維持するのが目標です。湿度管理が基本です。
② エアコンのフィルターを月1回掃除する
エアコン内部はアルテルナリアの温床になりやすい場所です。特に冷房シーズン前と後には内部の洗浄が推奨されます。自分でできるフィルター掃除に加え、1〜2年に一度は業者によるエアコン内部洗浄を検討する価値があります。エアコン清掃はかゆみ対策の中でも費用対効果が高い方法です。これは使えそうです。
③ 浴室・窓枠の黒い斑点を早期に除去する
黒い斑点を見つけたら放置せず、カビ取り剤(次亜塩素酸系)を使ってすぐに除去することが大切です。市販のカビキラーやカビハイターは有効ですが、拭き取りだけでは菌糸が残ることがあります。除去後は乾燥させることで再発を防ぎやすくなります。結露が発生しやすい窓には結露防止シートを貼るのも効果的です。
④ 換気を徹底して胞子の滞留を防ぐ
アルテルナリアの弱点は風通しです。湿気が多い場所でも空気の流れがあれば定着しにくくなります。入浴後は必ず換気扇を30分以上回し続けましょう。また、大型家具を壁から3〜5cm離して設置するだけで、背面の通気が改善されカビの発生を抑えられます。換気と通気の確保が条件です。
⑤ 皮膚のかゆみには抗ヒスタミン薬+保湿の組み合わせが有効
アルテルナリアによる皮膚のかゆみには、皮膚科・アレルギー科で処方される抗ヒスタミン薬(ビラスチン・デスロラタジンなど)が一般的に使われます。同時に、皮膚バリア機能の低下がかゆみを悪化させるため、保湿剤を1日2回以上塗り、皮膚を乾燥させないことが重要です。かゆくなったら冷やすことも有効です。患部に水をかけるか保冷剤を当てると、一時的にかゆみを和らげることができます。
| 対策 | ポイント | コスト目安 |
|---|---|---|
| 湿度管理 | 50%以下をキープ | 湿度計 1,000〜2,000円 |
| エアコン清掃 | フィルター月1回+業者洗浄1〜2年に1回 | 業者洗浄 約8,000〜15,000円 |
| カビ取り剤の使用 | 黒い斑点を見つけたらすぐ処置 | 市販品 300〜600円 |
| 換気の徹底 | 入浴後30分以上換気扇を回す | 電気代のみ(ほぼ無料) |
| 薬による症状緩和 | 抗ヒスタミン薬+保湿剤を併用 | 処方薬 数百円〜(保険適用) |
これらの対策を組み合わせることが、かゆみを根本から抑えるための近道です。環境対策と医療を両立することで、症状のコントロールは格段に改善されます。
横浜日ノ出町呼吸器内科「アレルギーと喘息について」:アルテルナリアによる喘息・アレルギーの環境対策(換気・湿度管理)についての医療機関による解説ページです。