

健康にいいと思って食べている和食の調味料が、かゆみを悪化させているかもしれません。
アスペルギルスは「コウジカビ」とも呼ばれ、自然界のどこにでも存在する真菌(カビの仲間)です。土壌・ほこり・空気中に広く分布しており、その種類は約150〜200種にのぼると言われています。
実はこのアスペルギルス、日本の食文化とは切っても切り離せない関係があります。
| 発酵食品 | 使用されるアスペルギルスの種 |
|---|---|
| 味噌・醤油 | アスペルギルス・オリゼー(黄麹菌) |
| 日本酒・みりん | アスペルギルス・オリゼー |
| 焼酎 | アスペルギルス・アワモリ |
| クエン酸製造 | アスペルギルス・ニガー |
発酵食品に使われるアスペルギルス・オリゼーは「国菌」として日本醸造学会にも認定された安全な菌です。しかし問題は、全てのアスペルギルスが同じではないという点にあります。住環境に存在するアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)などの別種は、アレルギーや気道疾患の原因になることが医学的に確認されています。
アスペルギルスの胞子は非常に小さく、直径わずか2〜3μm(マイクロメートル)ほどです。これはA4用紙の厚さが約100μmであることを考えると、いかに微細かがわかります。この小ささゆえに、吸い込むと肺の奥深くまで到達してしまうのです。
食べ物の観点では、アスペルギルスが含まれる食品、あるいはアスペルギルスを使って製造された発酵食品が、アレルギーを持つ人のかゆみ・皮膚炎を悪化させるケースがあることが実際の事例でも報告されています。つまり食事も対策のカギです。
東京都保健医療局の食品衛生情報によれば、パン・まんじゅう・ケーキ・紅茶・ピーナッツ・ナッツ類・トウモロコシ・穀類など幅広い食品にアスペルギルスは発生し得ます。これらすべてを無闇に避ける必要はありませんが、自分の体の反応を知ることが第一歩です。
東京都保健医療局「食品衛生の窓」アスペルギルスのページ(食品への発生実態・菌種の解説が確認できます):
https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kabi/kabi1-3.html
「カビアレルギー=呼吸器の問題」と思っていませんか?実はかゆみや皮膚症状にも深く関わっています。
アスペルギルスの胞子が気道に入り込むと、免疫細胞が過剰に反応します。この過剰反応こそがアレルギー症状の正体で、呼吸器だけでなく皮膚にも影響を及ぼします。
アスペルギルスアレルギーで報告されている皮膚・体全体の症状は以下のとおりです。
- 毛包炎(毛穴周囲の炎症・赤み)
- 膿皮症(細菌との複合感染による皮膚病変)
- ざ瘡様丘疹(ニキビに似た発疹)
- 鼻づまり・鼻水
- 咳・喘鳴(ぜんぜい)
- 目・鼻・喉のかゆみ
かゆみが生じるメカニズムを簡単に言うと、免疫がアスペルギルスを「敵」と認識した際にIgE抗体が産生され、ヒスタミンが放出されることで皮膚や粘膜のかゆみが起きます。
注目すべきは、喘息患者の10〜15%がアスペルギルス(特にAspergillus versicolor)の皮膚テストで陽性になるという医療機関のデータです。これは、かゆみや皮膚症状で悩む人の中に、アスペルギルスが一因となっているケースがかなり含まれる可能性を示しています。つまり見逃されやすい原因です。
さらに見落とされがちな点として、アスペルギルスを使って製造された発酵食品を日常的に口にすることで、体内から免疫反応が刺激される「経口感作」の可能性もあります。医師への相談報告の中には「和食中心の食事(醤油・味噌・みりん・酒・酢)が続くと皮膚炎が悪化し、塩コショウやオリーブ油などのシンプルな調味料にすると皮膚炎が引いた」という実例(アスクドクターズ掲載)も存在します。
これが直接の証明にはなりませんが、体質によっては発酵食品由来のアスペルギルスへの感作が皮膚症状に関与している可能性があります。かゆみが改善しない場合は食生活も見直す視点が重要です。
カビアレルギー(アスペルギルス)の症状・診断・対策について(イーウェルクリニック)
アスペルギルスアレルギーがある人が食べ物で注意すべき点は大きく2つあります。1つ目は「アスペルギルスを使って発酵させた食品」、2つ目は「アスペルギルスが発生しやすい食品」です。
アスペルギルスを使用した発酵食品(体質次第で注意が必要)
| 食品カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 発酵調味料 | 醤油・味噌・みりん・日本酒・米酢・料理酒 |
| 発酵食品 | 甘酒・塩麹・醤油麹・鰹節(かつおぶし) |
これらはアスペルギルス・オリゼー(黄麹菌)を使って製造されます。多くの人には何も問題ありませんが、アスペルギルスに強く感作されている体質の人では、継続的に摂取することで免疫系が刺激されやすくなる可能性があります。これは重要な注意点です。
アスペルギルスが発生しやすい食品(腐敗・保存状態に注意)
- ピーナッツ・ナッツ類全般(保存状態が悪いと発生しやすい)
- トウモロコシ・穀類・穀粉類
- パン・まんじゅう・ケーキ類
- 紅茶(乾燥不十分なもの)
特にピーナッツやトウモロコシに生えたアスペルギルス・フラバスは、肝臓に悪影響を及ぼすアフラトキシンという発がん性のカビ毒を産生する可能性があるため、保存状態には細心の注意が必要です。
一方で、食べ物全般のリスクを過度に恐れる必要はありません。同じ大豆アレルギーの方でも「発酵過程でたんぱく質が分解されているため醤油・味噌は食べられる」というケースが多いように、アスペルギルスアレルギーでも体の反応は個人差が大きいです。自分の体に合わせて判断することが大切です。
体質が気になる方は、まず醤油や味噌などを1〜2週間控えてみて、かゆみや皮膚の状態が変化するか記録してみることが出発点になります。食事日記をつけると原因食品の特定に役立ちます。
「自分がアスペルギルスにアレルギーを持つかどうか、どうやってわかるのか?」と疑問に思う方は多いです。診断の流れを整理します。
①問診・身体診察
まず医師が症状のパターン・生活環境・職業歴などを確認します。特に浴室・押し入れ・エアコン周辺にカビが多い環境かどうか、発酵食品を多く摂取しているかなども参考にされます。皮膚症状(毛包炎・ざ瘡様丘疹)はアスペルギルスアレルギーの手がかりになります。
②血液検査(特異的IgE抗体検査)
最も一般的な確認方法です。アスペルギルスに対する特異的IgE抗体を測定します。陽性であれば、体がアスペルギルスに対して免疫反応を起こしていることが確認できます。
この検査は「View アレルギー39」などの多項目アレルギー検査パネルに含まれており、アスペルギルスと同時にカンジダ・マラセチアなど他の真菌アレルゲンも一度の採血で確認できます。1回の採血費用は保険適用で約5,000円程度(3割負担)が目安です。
③胸部レントゲン・CT(肺の状態確認)
咳・喘鳴・息苦しさがある場合、胸部CTで気管支の粘液栓や気管支拡張の有無を確認します。これはABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)の診断に使われます。
ABPAの診断では血清総IgE値が1,000 ng/μL(417 IU/mL)以上であることが診断の目安となり、特異的IgE抗体と沈降抗体を組み合わせて判断します。
かゆみや皮膚症状のみの場合は皮膚科、呼吸器症状がある場合はアレルギー科・呼吸器内科への受診が適切です。日本アレルギー学会の認定専門医に相談すると、より正確な診断が期待できます。
日本呼吸器学会によるABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)の解説ページ(診断・治療・生活上の注意が確認できます):
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-04.html
薬だけに頼らず、日常の食事と住環境を組み合わせて症状をコントロールするアプローチを紹介します。医療機関での治療と並行して実践できる内容です。
🥗 食事面の対策
発酵食品を完全にやめる必要はありません。ポイントは「過剰摂取を避けること」と「自分の体の反応を観察すること」です。
具体的には、毎日みそ汁・醤油で味付けした料理・日本酒という組み合わせが続く場合、週に3〜4日はオリーブオイル・塩・柑橘系調味料などシンプルな調理に切り替えてみるのが有効な試みになります。アスペルギルスアレルギーが皮膚炎悪化の一因となっている人では、症状が変化する可能性があるからです。
砂糖の摂りすぎにも注意が必要です。糖質が腸内環境を乱し、真菌(カビ)が増殖しやすい状態を作ることが指摘されています。腸内環境が乱れると免疫が「過敏モード」になり、アレルギー反応が起きやすくなります。チョコレート・菓子パン・ジュースなどの甘いものを「毎日」から「週数回」に抑えるだけでも腸内環境の改善につながります。
一方、積極的に取り入れたい食材として次のものが挙げられます。
- オメガ3脂肪酸(サバ・イワシ・亜麻仁油):炎症を抑える働き
- 亜鉛(牡蠣・赤身肉・ナッツ類):皮膚のバリア機能を支える
- ビタミンD(きくらげ・しらす・鮭):免疫の正常化に関与
- 食物繊維・海藻類:腸内環境の改善を助ける
🏠 住環境の対策(食事と同じくらい重要です)
アスペルギルスへの「暴露量」を減らすことが、かゆみのコントロールに直結します。
まず室内の湿度を50%未満に保つことが最重要です。アスペルギルスは湿度60%を超えると急速に増殖します。除湿器・エアコンの除湿機能・窓の定期的な換気を組み合わせましょう。
次にエアコンのフィルター掃除を最低でも1〜2週間に1度は行います。エアコン内部はアスペルギルスが繁殖しやすい絶好の環境で、運転中に胞子を部屋全体に拡散させてしまいます。これが盲点です。
押し入れ・クローゼット・シューズボックスには除湿剤を置き、月に1回は中身を出して換気します。また、冷蔵庫の中も定期的に整理し、食品のカビ発生を防ぐことが食卓からのアスペルギルス接触を減らします。
空気清浄機を使う場合はHEPAフィルター搭載のものが有効です。アスペルギルスの胞子(2〜3μm)はHEPAフィルターで99.97%以上捕集できます。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックによる甘い食生活とABPAの関連解説(専門医による食事と腸内環境の視点からの考察が確認できます):
https://yamaguchi.clinic/blog/e_39467.html