

クラス2以上でも、症状がまったく出ない人が約87%います。
かゆみが続いているのに原因がわからない、という悩みを抱えている方は少なくありません。アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、花粉症など、かゆみの背景にはアレルギーが関わっていることが多く、その原因を特定するために活用されるのが「CAP法(CAP-RAST法)」です。
CAP法の正式名称は「capsulated hydrophilic carrier polymer法」といい、日本語では単項目測定法とも呼ばれています。血液を採取して、その中に含まれる「特異的IgE抗体」の量を測定する検査です。IgE抗体とは、Ⅰ型アレルギー(即時型アレルギー)に関わる免疫グロブリンの一種で、体にアレルゲンが入り込んだとき、ヒスタミンなどの化学物質を放出させる引き金になるものです。このヒスタミンが皮膚のかゆみや、くしゃみ・鼻水・目の充血などの症状を引き起こします。
つまり、CAP法はそのIgEが「何に対して反応しているか」を血液から探し出す検査です。ダニ、スギ、卵白、牛乳、小麦など200種類以上のアレルゲンに対応しており、気になるものを選んで個別に調べることができます。これが他の多項目検査(VIEW-39やMASTなど)と異なる最大の特徴です。原因として疑われるアレルゲンが予想できている場合、CAP法は非常に効率よく原因を絞り込める方法です。
保険適用の範囲では1回に最大13項目まで検査でき、3割負担の場合は1項目あたり約330円が目安となっています。13項目すべて調べた場合でも、検査費用は約4,000〜5,000円程度(診察料別)に収まることが多く、比較的手が届きやすい検査です。結果は外注検査になるため、通常5〜7日程度で判明します。
かゆみの原因を正確に知ることが第一歩です。
参考:アレルギー検査の仕組みと保険診療の詳細について(葛西よこやま内科アレルギー科)
https://www.kasai-yokoyama.com/allergy_test/
CAP法の結果は「クラス0〜6」の7段階で表示されます。クラスが高いほどそのアレルゲンに対するIgE抗体が多く、アレルギー反応を起こしやすいことを示します。一般的な判定基準は以下の通りです。
| クラス | 判定 | 抗体価(UA/mL) | スギ花粉症の発症率(参考) |
|---|---|---|---|
| 0 | 陰性 | 0.34以下 | 3% |
| 1 | 疑陽性 | 0.35以上 | 3% |
| 2 | 陽性 | 0.70以上 | 13% |
| 3 | 陽性 | 3.50以上 | 38% |
| 4 | 強陽性 | 17.5以上 | 50% |
| 5 | 強陽性 | 50.0以上 | 85% |
| 6 | 強陽性 | 100.0以上 | 100% |
ここで大切なのは、クラス2以上「陽性」と出たとしても、それは「アレルギー症状が必ず出る」という意味ではない、という点です。上の表を見るとわかるとおり、クラス2の段階でスギ花粉症が発症する確率は13%にとどまります。つまり87%の人は陽性でも症状が出ていない計算になります。
逆に、クラス4以上の「強陽性」になると、大部分の患者さんに何らかのアレルギー反応が認められると言われています。そして注目すべきはクラス6で、抗体価が100 UA/mLを超えると発症率は100%に達するとされています。クラス6はおよそスタジアム満席の観客全員が反応を示すイメージといえます。
ただし、クラス値は「感作(かんさ)されているかどうか」を示すものであり、実際の症状の強さとは必ずしも一致しません。感作とは、体がアレルゲンを「危険」と認識して抗体を作った状態のことを指します。感作されていても、症状が出るかどうかは個人差があります。
クラスが高い=症状が重い、とは限りません。
この点を誤解していると、クラスが少し高くて不安になる方も多いですが、医師の診察で症状との照らし合わせをすることが重要です。逆に、クラスが低くても繰り返しかゆみが出る場合は、別のアレルゲンが原因である可能性もあります。
参考:特異的IgE抗体のクラス判定とスギ花粉症発症率の相関データ(CRCグループ)
https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/59.html
CAP法は万能ではありません。どんな症状・状況の人に向いているかを正しく知ることで、より効率的に原因を特定できます。
CAP法が特に有効なのは、「ある特定のものを食べたり触れたりするとかゆくなる」「特定の季節だけかゆみや鼻水が出る」など、原因アレルゲンがある程度予想できるケースです。調べたい項目を自分で選べるため、疑いのあるものにピンポイントで絞って調べられます。1項目330円(3割負担)で、最大13項目まで保険が使えます。これは効率よく使えば非常にコストパフォーマンスの高い検査です。
一方で、「何にかゆみが出るのか全くわからない」「蕁麻疹やアナフィラキシーが突然出た」という状況では、多項目検査のVIEW-39(39項目)やMAST-36(36項目)の方が向いています。これらは、多くのアレルゲンを一度に調べられるスクリーニング検査で、1回の採血で幅広く原因を探れるのが特徴です。
以下に各検査の特徴をまとめます。
| 検査名 | 測定項目数 | 特徴 | こんな人に向いている |
|---|---|---|---|
| CAP法(単項目) | 最大13項目 | 項目を自由に選べる・精度が高い | 原因に心当たりがある人 |
| VIEW-39 | 39項目 | 食物・花粉・動物など幅広く調べる | 原因が全くわからない人 |
| MAST-36 | 36項目 | VIEW-39と類似・食物項目に強み | 食物アレルギーを広く調べたい人 |
| イムノキャップラピッド8 | 8項目 | 指先採血・約20分で結果 | 子ども・採血が苦手な人 |
注目すべきは、CAP法にはCAPマルチアレルゲンという応用バージョンもある点です。イネ科・雑草・食物・穀物・動物上皮・カビなど主要なアレルゲンをグループごとにまとめて1つの項目として調べることができます。単項目のCAP法と組み合わせて使うことで、より幅広い原因を効率的に探れます。これは知っておくと得する情報です。
かゆみの状況に合わせた検査選びが大切です。
参考:各種アレルギー検査の特徴と使い分けについて(アレルギーポータル・日本アレルギー学会)
https://allergyportal.jp/knowledge/testing/
CAP法を受けた結果、「異常なし(クラス0)」だったのにかゆみが続いている、という経験をしたことがある方もいるかもしれません。実はCAP法(IgE抗体検査)には、偽陰性(本来陽性なのに陰性と出る)・偽陽性(本来陰性なのに陽性と出る)が生じることがあります。
偽陰性が起きやすい代表的な例として知られているのが、豆乳アレルギーです。豆乳アレルギーを持っている方が、CAP法で「大豆」の項目を調べると、陰性になることが多いと報告されています。なぜかというと、豆乳アレルギーの原因タンパク質は「大豆」の検査項目に含まれていないことがあるためです。このような場合は、「アレルゲンコンポーネント検査」という、より細かいタンパク質レベルで調べる検査が有効です。
また、IgEが関与しないアレルギー反応も存在します。サバ・マグロ・イカ・エビなどの魚介類、ホウレンソウ・トマト・ナスなどの野菜、ワイン・チョコレートなどに含まれる「仮性アレルゲン」は、IgE抗体を介さずに症状を引き起こすことがあります。こうした場合、CAP法では原因を検出できないことがあります。これは陰性でも安心できないケースです。
逆に偽陽性の問題もあります。アトピー性皮膚炎などでは総IgEが著しく上昇(500 IU/mL以上になることもある)しやすく、その影響で特定のアレルゲンに対するIgEも高めに出てしまうことがあります。クラス3以上でも、実際にはそのアレルゲンを摂取しても症状が出ない、というケースも報告されています。
つまり、CAP法の結果は「可能性の目安」と理解するのが基本です。
以下のような場合は、検査と並行してより詳しい評価が必要です。
このような状況では、食物経口負荷試験(実際に食べて症状が出るか確認する検査)や、皮膚プリックテストを組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。自己判断で食事制限をするよりも、専門医に相談して総合的に判断してもらうことが安全です。
参考:IgE関与しない仮性アレルゲンとアレルギー症状の関係(日本食品安全委員会)
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu01550580314
CAP法でアレルゲンが特定できたら、次はそれをどうかゆみ改善につなげるかが重要です。結果を受け取って終わりにせず、治療や生活改善に活かすことで初めて検査の意味が生まれます。
まず、クラス2以上のアレルゲンが見つかった場合は、そのアレルゲンとの接触を極力減らすことが基本的な対処法です。例えばダニが陽性だった場合、寝具を週1回以上洗濯する、防ダニカバーを使う、掃除機は毎週かけるといった環境整備が有効です。ダニは1ミリにも満たないほどの微小な生き物ですが、その死骸やフンが1g分ほどベッドマットに溜まるだけで強いかゆみを引き起こすことがあります。
スギやヒノキなどの花粉が原因の場合は、花粉シーズン前に医師に相談するのがポイントです。アレルギー症状が出る前から抗アレルギー薬を服用し始める「初期療法」によって、症状の発現を約7割軽減できると言われています。この「早めの受診・早めの投薬」という考え方を知っているかどうかで、春のかゆみや鼻づまりの辛さが大きく変わります。
また、CAP法でクラス3以上のスギ陽性が確認できれば、舌下免疫療法(スギ花粉エキスを舌の下に垂らして少しずつ体を慣らす治療)の対象となります。毎日の服用が必要ですが、3〜5年継続することでアレルギーの根本的な改善が期待できる治療法です。これも早い時期から始めるほど効果的とされています。
食物アレルゲン(卵・牛乳・小麦など)がクラス3以上で出た場合、自己判断で食事制限するのは危険です。不必要な除去は栄養バランスを崩す可能性があります。医師の指示のもと、食物経口負荷試験を経て対応を決めることが推奨されています。
クラスが下がれば、改善のサインです。
治療を続けながら定期的に再検査を行い、クラスの変化を追うことで、アレルギーの状態が良くなっているか悪化しているかを客観的に評価できます。かゆみが治まってきたと感じても、検査で確認することで安心感が得られます。
参考:アレルギー性鼻炎・花粉症の治療と舌下免疫療法の適応について(日本アレルギー学会)
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=18
CAP法の検査結果は一度きりではなく、「時系列で追う」ことに大きな価値があります。多くの人が一度検査を受けて終わりにしてしまいますが、アレルギーは年齢や生活環境によって変化します。子どものうちに卵アレルギーがあった人が大人になって解消するケースや、逆に大人になってから突然そばや甲殻類にアレルギーが出るケースも珍しくありません。
1年から数年おきに定期的にCAP法を受けることで、アレルゲンの変化を「数値で見える化」できます。かゆみが治まったときに再検査して「クラスが2から0になった」と確認できれば、それは治療が効いているエビデンスになります。逆に新しいアレルゲンでクラスが上がっていれば、かゆみ再発の予防策を早めに取れます。
また、CAP法の結果は「プロバビリティカーブ(確率曲線)」という特別な参照データと組み合わせて使えます。これは食物アレルゲン(特に卵・牛乳・小麦・ピーナッツ)に対して整備されており、「この数値ならば実際に食べたとき何%の確率で症状が出るか」を統計的に推定できます。単純なクラスだけでなく定量値(UA/mL)を合わせて医師に確認することで、より精密な対応が可能になります。これが条件です。
定量値まで確認することが精度を上げます。
さらに、かゆみの原因がアレルギーだけとは限らない点も認識しておくべきです。CAP法では調べられない「ストレス・ホルモンバランスの乱れ・皮膚のバリア機能低下」などもかゆみの原因になります。特に女性はホルモン変動によって皮膚状態が変わりやすく、アレルギー検査で異常なしでもかゆみが続くことがあります。
こうしたケースでは、皮膚科で「皮膚のバリア機能」を評価してもらい、保湿剤や外用薬を適切に使うことが有効です。セラミド配合の保湿クリームを入浴後5分以内に塗ることで、バリア機能の維持を助けることができます。かゆみの悩みが続く場合は、アレルギー科と皮膚科の両方で相談することを検討してみてください。
参考:食物アレルギーの診療の手引き・特異的IgE検査の正しい使い方(日本小児アレルギー学会監修)
https://corporate.thermofisher.com/content/dam/phadia/library/ja/2305-ot-456-2jp.pdf