

かゆみを何とかしたいと外用薬を塗るだけでは、根本が変わらないことがあります。
麹菌の正式な学名は Aspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼー)、和名は「ニホンコウジカビ」または「黄麹菌」といいます。学名の「oryzae」はイネの属名 Oryza に由来し、直訳すると「米に生えるカビ」という意味です。
学名とは世界共通で使われる生物の名前のことで、属名+種名の2語で構成されます。「アスペルギルス」が属名、「オリゼー」が種名です。つまり麹菌の正体は、アスペルギルス属というグループに属する一種のカビということになります。
一般的に「カビ」という言葉を聞くと不衛生なイメージを持つ方も多いですが、麹菌は食品衛生上の安全性が非常に高く評価されています。実際に2006年(平成18年)、日本醸造学会によって麹菌は正式に「日本の国菌」として認定されました。
国菌という称号は、国が法律で定めたものではなく、日本醸造学会という学術団体が認定したものです。国鳥がキジ(1947年・日本鳥学会認定)、国蝶がオオムラサキ(1957年・日本昆虫学会認定)であるのと同じ仕組みです。つまり麹菌は、味噌・醤油・日本酒などの伝統食品を通じて日本の食文化を根底から支えてきた存在として、学会が公式にその価値を認めているということです。
麹菌のゲノム(遺伝情報の全体)は、2005年に産業技術総合研究所を中心とした研究チームによって解読が完了しています。その結果、ゲノムサイズは約3,800万塩基対(37Mb)で、約12,000個の遺伝子を持つことが明らかになりました。この遺伝子数は微生物の中でも最大級の規模です。東京ドーム約7個分のグラウンドに匹敵する情報量をたった1個の菌体に収めているようなイメージです。これだけ多くの遺伝子を持つ理由として、デンプン・タンパク質・脂質などを分解する酵素関連の遺伝子を近縁種よりも多く持つことが挙げられています。
かゆみを抱える方にとって重要なのは、この酵素の多様性が腸内環境や皮膚のバリア機能に関わる成分の生産にも関係しているという点です。つまり麹菌の学名を正確に知ることは、単なる豆知識に留まらず、かゆみ対策の選択肢を広げる第一歩になります。
参考:麹菌のゲノム解析情報(産総研・NITE)
麹菌 Aspergillus oryzae RIB40 ゲノム情報(NITE 製品評価技術基盤機構)
麹菌(Aspergillus oryzae)の祖先が何者かをご存じでしょうか。実はアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)という、強力な発がん性カビ毒「アフラトキシン」を産生する菌の近縁種または突然変異体と考えられています。これは、かゆみや炎症を引き起こす外敵から身を守るために毒素を生産する「自然界の戦略」の産物です。
意外ですね。
当然ながら、現在の麹菌(Aspergillus oryzae)はカビ毒を生産しません。これは1,000年以上にわたる人間による品種改良と選別の結果です。かつての種麹職人は、麹菌にアルカリ性の灰をまぶして生き残った個体だけを選ぶという手法を繰り返しました。その地道な積み重ねが、今日私たちが安心して口にできる麹菌を作り上げました。
東京工業大学などの研究によって、麹菌は「家畜化された微生物」と呼ばれることがあります。イヌがオオカミから人間との生活に適応したように、麹菌もまた自然界の荒々しい性質を失い、人間の食文化の中で生き続ける形に進化してきたとも言えます。
この歴史を踏まえると、麹菌の「安全性」は偶然ではなく長い年月をかけて磨かれた信頼の積み重ねであることがわかります。千年を超える利用の歴史が、その安全性の証拠です。かゆみや炎症が気になる方にとって、体内に取り入れる食品の安全性は重要な判断基準のひとつです。麹菌由来の食品が長く愛用されてきた背景には、こうした確かな安全性があります。
参考:麹菌の家畜化に関する研究情報
麹菌A. oryzaeの進化と家畜化の関係(東京工業大学)
日本醸造学会が国菌として認定している麹菌は4種類あり、それぞれに学名と用途が異なります。一覧で整理すると以下のようになります。
| 和名 | 学名 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 黄麹菌 | Aspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼー) | 清酒・味噌・味醂・甘酒 |
| 醤油麹菌 | Aspergillus sojae(アスペルギルス・ソーヤ) | 醤油 |
| 黒麹菌 | Aspergillus luchuensis(アスペルギルス・リュウキュウエンシス) | 泡盛・焼酎・黒酢 |
| 白麹菌 | Aspergillus kawachii(アスペルギルス・カワチ) | 焼酎 |
これが原則です。
黄麹菌(Aspergillus oryzae)はデンプンを糖に分解するα-アミラーゼ(糖化酵素)と、タンパク質をアミノ酸に分解するプロテアーゼの産生力が特に強いという特徴があります。そのため清酒・味噌・甘酒など幅広い発酵食品に使われており、一般に「麹菌」というとこの菌を指すことが多いです。
醤油麹菌(Aspergillus sojae)は特にタンパク質分解力が高く、大豆のアミノ酸を引き出して醤油の豊かな旨みを生み出す役割を担います。
黒麹菌(Aspergillus luchuensis)と白麹菌(Aspergillus kawachii)は、クエン酸を多量に産生するという共通した特徴を持っています。温暖で湿潤な九州・沖縄の気候でも雑菌の繁殖を抑制できるのは、このクエン酸による酸性環境のおかげです。白麹菌は黒麹菌の突然変異種として発見された菌で、胞子が白いため取り扱いが容易という利点があります。
これら4種はいずれも、アスペルギルス属の中でカビ毒を産生しないことが確認されており、国際的にも「GRAS(一般的に安全と認められる)」として認められています。かゆみの原因のひとつに腸内環境の乱れや免疫の過剰反応が挙げられますが、これら4種の麹菌由来の発酵食品を継続的に摂取することで、腸内の善玉菌増殖を促し免疫バランスを整える可能性が研究で示されています。
参考:国菌認定の詳細情報
「国菌」認定 一部改正(菌名変更)(日本醸造学会)
かゆみをおさえたい方にとって直接的に関係するのが、麹菌(Aspergillus oryzae)由来の「グルコシルセラミド」という成分です。これはセラミド(スフィンゴ脂質と脂肪酸の結合体)にブドウ糖が結合したスフィンゴ糖脂質の一種で、麹菌の細胞膜に由来します。
乾燥からくるかゆみが起こる、という状況を理解するには皮膚の構造を知ることが近道です。皮膚は外側から「角層(角質層)」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層構造を持つ表皮で覆われており、その表皮全体の厚みはわずか0.1〜0.2mm、ほぼお札1枚分しかありません。
角層には保湿とバリアという2つの大切な機能があり、その機能を支えているのがセラミドです。アトピー性皮膚炎の方はもともとセラミドの量が少ない傾向があり、乾燥が起きやすくなっています。乾燥→バリア機能低下→外部刺激に過敏反応→かゆみ発生→搔き壊し→さらにバリア機能低下、という悪循環に陥りやすいのが特徴です。
ここで麹甘酒に含まれるグルコシルセラミドが注目されます。この成分は体内でセラミドの前駆体(材料)として機能し、肌の保湿力を高めてバリア機能を補強するとされています。八海醸造株式会社の「麹だけでつくったあまさけ」は、「麹由来グルコシルセラミドは肌の潤いを守るのを助ける機能がある」として消費者庁への機能性表示食品の届出が受理されており(届出番号:I290)、これは科学的根拠に基づいた公的な評価です。
また、麹甘酒(118gあたり)には約1.35mgのグルコシルセラミドが含まれていることが研究で確認されています。麹甘酒を継続的に摂取することで肌の内側から保湿機能をサポートできるということです。
麹甘酒に加えて、味噌・塩麹・濁り酒などにもグルコシルセラミドが豊富に含まれています。塩の代わりに塩麹を使う、毎日の食事に味噌汁を取り入れるといった習慣が、かゆみをおさえたい方の内側からのケアにつながります。
参考:麹甘酒と肌保湿に関する研究PDF
麹甘酒を毎日続けて飲むと肌の保湿に効果あることが確認できました(八海醸造株式会社)
外用薬を塗っても繰り返すかゆみの背景に、腸内環境や体の免疫バランスの乱れが関わっている場合があります。麹菌(Aspergillus oryzae)の菌体そのものが炎症を抑制する可能性があるという研究結果があります。これは、一般的にはあまり知られていない視点です。
玄米と米糠を麹菌で発酵させた食品FBRAを用いたマウス実験では、麹菌体を摂取したグループで炎症性細胞の数が対照グループと比較して有意に低下することが確認されました(J. Funct. Foods, 88, 104907、2022年)。つまり麹菌の働きは発酵食品の製造に留まらず、菌体自体が炎症を抑える可能性を持っているということです。
腸と皮膚の関係も重要です。腸内環境が整うと免疫細胞が適切に機能し、過剰なアレルギー反応が起こりにくくなります。麹菌由来の発酵食品には腸内の善玉菌を増殖させる効果があり、腸内環境改善→免疫バランス調整→かゆみ・炎症反応の緩和という経路が期待されます。
また、麹菌が生成する発酵食品にはビタミンB群(B1・B2・B6・パントテン酸・ビオチン・イノシトールなど)が豊富に含まれています。これらは皮膚の修復・維持に直接関わる栄養素で、花粉症シーズンの肌荒れ・かゆみの予防にも役立つとされています。これは使えそうです。
さらに麹菌が産生する「コウジ酸」は、メラニン合成を抑制する美白成分として知られており、かゆみを繰り返した跡の色素沈着(色素沈着性痒疹)の対策にも間接的に関わります。かゆみをおさえたい方が米麹甘酒や塩麹を毎日の食事に取り入れることは、外側ケアだけでは届きにくい内側からのアプローチとして理にかなっています。
腸内環境を整えたい場合、麹菌由来の発酵食品を継続的に摂取することが基本です。毎日の味噌汁に加えて、甘酒を朝の1杯として取り入れるという具体的なルーティンから始めてみると実践しやすいです。腸内環境の改善には継続が条件です。
参考:麹菌の炎症抑制に関する研究
炎症を抑える効果は麹菌による発酵で生まれる(FBRA学術研究)
参考:麹菌と腸内環境・健康効果の詳細
麹菌の種類とは?麹菌ごとに異なる発酵の世界(ヤヱガキグループ)

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