軟膏基剤の分類とかゆみをおさえる塗り薬の正しい選び方

軟膏基剤の分類とかゆみをおさえる塗り薬の正しい選び方

軟膏基剤の分類とかゆみをおさえる塗り薬の正しい選び方

「軟膏」と書いてあっても、実はクリームに分類される薬があなたのかゆみを悪化させていることがあります。


この記事の3つのポイント
💊
軟膏基剤は大きく3種類

油脂性・乳剤性・水溶性の3種類に分類され、それぞれかゆみや肌の状態への作用がまったく異なります。

⚠️
基剤の選び間違いがかゆみを悪化させる

湿潤した患部に乳剤性基剤を使ったり、ジュクジュクした傷にクリームを塗ったりすると、かゆみや炎症が強くなるリスクがあります。

「名前」で判断すると危険

「〇〇軟膏」という名前でもクリーム剤に分類される薬は複数存在します。添付文書で基剤を確認する習慣が大切です。


軟膏基剤の分類とは何か——油脂性・乳剤性・水溶性の3区分

かゆみをおさえる塗り薬(外用剤)は、「主薬(有効成分)」と「基剤」の2つで構成されています。基剤とは、有効成分を皮膚に届けるためのベースとなる素材のことで、薬そのものに薬効はありません。しかし、基剤の種類によって使用感・皮膚への刺激性・有効成分の浸透しやすさが大きく変わります。つまり基剤が重要です。


軟膏基剤は大きく「油脂性基剤」「乳剤性基剤」「水溶性基剤」の3種類に分類されます(日本薬局方製剤総則より)。さらに乳剤性基剤は「水中油型(O/W型)」と「油中水型(W/O型)」の2つに分かれるため、実質4分類として整理されることもあります。


分類 代表的な基剤 水での洗浄 かゆみ肌への主な用途
油脂性基剤 白色ワセリン、プラスチベース ❌ 困難 乾燥・保護・ジュクジュク部位
乳剤性(O/W型) 親水クリーム、ヒルドイドクリーム ✅ 容易 乾燥した患部・保湿補給
乳剤性(W/O型) ヒルドイドソフト軟膏、吸水クリーム ⚠️ やや困難 保湿・皮膚保護(乾燥部位)
水溶性基剤 マクロゴール軟膏 ✅ 容易 滲出液が多い湿潤した患部


かゆみの原因が「乾燥」なのか「湿疹で浸出液が出ている状態」なのかによって、適切な基剤は変わります。乾燥が原因のかゆみには油脂性や乳剤性(W/O型)が向いており、滲出液が出ている部位には水溶性基剤が適しています。これが基本です。


参考:マルホ株式会社「剤形からみた基剤の分類と特徴」では、基剤ごとの特性を詳しく解説しています。


軟膏基剤の分類①——油脂性基剤の特徴とかゆみへの効果

油脂性基剤は、水を一切含まない「完全に油だけでできた基剤」です。白色ワセリンが代表格で、ドラッグストアでも単体で購入できます。水をはじく性質があるため、皮膚の表面にしっかりと膜を張り、水分の蒸発を防ぎます。


油脂性基剤の最大の強みは「皮膚への刺激が非常に低い」点です。添加物がほとんど含まれておらず、アレルギーや接触性皮膚炎(かぶれ)が起きにくいとされています。乾燥からくるかゆみや、アトピー性皮膚炎のようなバリア機能が低下した皮膚には向いています。これは使えそうです。


ただし、油脂性基剤にも注意点があります。


- 白色ワセリン:不純物が少なく刺激は低いが、精製度に応じて「白色ワセリン<プロペト<サンホワイト」の順に不純物が減っていく
- プロペト:より高精製で、眼軟膏用として使われるが、抗酸化物質も取り除かれているため遮光保存が必要
- プラスチベース:外見がゲルに似ているが、れっきとした油脂性基剤。温度変化に強く、のびがよい


べたつきが強いため、顔面への使用は避ける方もいますが、刺激を最小限にしたいときは油脂性基剤が原則です。


参考:管理薬剤師.com「基剤の種類と特徴」では各基剤の成分・特性が一覧で確認できます。


基剤の種類と特徴 – 管理薬剤師.com


軟膏基剤の分類②——乳剤性基剤(O/W型・W/O型)の違いとかゆみへの使い分け

乳剤性基剤は、水と油を界面活性剤で混ぜ合わせた(乳化させた)基剤です。「クリーム剤」と呼ばれるものの多くがこれに該当します。ベタつきが少なく伸びがよいため、使用感に優れています。


O/W型(水中油型)は、水の中に小さな油の粒が分散している構造です。マヨネーズに似た構造と言えば、イメージしやすいかもしれません。水分が多いため皮膚に水分を補給する「補水」効果が期待でき、乾燥した患部に向いています。ただし、湿潤した患部や傷口には適していません。皮膚刺激性が比較的高く、かぶれが起きやすい点にも注意が必要です。


W/O型(油中水型)は逆に油の中に水滴が散らばった構造で、水分含有量が少なめです。ヒルドイドソフト軟膏やパスタロンソフト軟膏がこれにあたります。皮膚保護作用がやや強く、冬場の乾燥や重症の乾燥肌に向いています。厳しいところですね。


重要な注意点として、乳剤性基剤は全般的に「湿潤面には使わない」 のが原則です。O/W型・W/O型を問わず、滲出液が多いジュクジュクした部位には乳剤性基剤は刺激になります。乳剤性基剤を湿潤面に使ってしまうと、かゆみや炎症がかえって悪化するリスクがあります。


また、乳剤性基剤に含まれる添加物(ラノリンアルコール、プロピレングリコールパラベンなど)がアレルギー性接触皮膚炎を引き起こすケースが報告されています。かゆみ止めを塗っているのにかゆみが増した、という経験がある方は、基剤の添加物が原因である可能性も頭に置いておく必要があります。


参考:マルホ株式会社「ぬり薬の蘊蓄 Q&A」では、基剤の添加物によるかぶれの種類と原因物質を詳しく解説しています。


軟膏基剤の分類③——水溶性基剤の特徴とかゆみ・湿潤部位への使い方

水溶性基剤の代表は「マクロゴール軟膏」です。ポリエチレングリコール(PEG)400と4000を等量混ぜ合わせたものが一般的で、ユーパスタコーワ軟膏やカデックス軟膏などの褥瘡治療薬にも使われています。


水溶性基剤の最大の特徴は「滲出液を吸収する」ことです。つまり、ジュクジュクと滲出液が出ているかゆみの強い患部、びらん(皮膚がただれた状態)などに向いています。水で簡単に洗い流せる点も扱いやすいメリットです。


一方で、皮膚を過剰に乾燥させるリスクがあります。滲出液を「吸収する」性質は、同時に皮膚から水分を奪う側面も持ちます。乾燥した健常皮膚に繰り返し使用すると、水分が奪われてかゆみがかえって悪化することも。乾燥した患部には向きません。それだけは例外です。


また、水溶性基剤は主薬の皮膚浸透性が高くないため、有効成分をしっかり皮膚に届けることより「患部を清潔に保ちながら湿潤環境を管理する」ことに向いた基剤です。かゆみが強くジュクジュクしている患部には使える場面がありますが、乾燥型のかゆみには不向きという点だけ覚えておけばOKです。


基剤の種類 かゆみが乾燥タイプ かゆみが湿潤タイプ(滲出液あり)
油脂性基剤 ✅ 向いている ✅ 使用可(保護目的)
乳剤性(O/W型) ✅ 向いている(補水) ❌ 不向き(刺激あり)
乳剤性(W/O型) ✅ 向いている(保湿) ❌ 不向き
水溶性基剤 ❌ 不向き(乾燥悪化) ✅ 向いている(吸水)


参考:みどり病院(神戸市)の薬剤師によるブログ記事では、軟膏・クリームの基剤の違いと選び方が患者向けに分かりやすく解説されています。


皮膚外用剤のポイントは「基剤」です – みどり病院 薬剤師ブログ


軟膏基剤の分類で見落としやすい落とし穴——名前と実際の基剤が一致しない薬がある

「軟膏と書いてあるから軟膏基剤だろう」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。意外ですね。


実際に、「名前が軟膏でも実際の分類はクリーム剤」という薬が複数存在します。代表的なものを以下に示します。


製品名 名前の印象 実際の基剤・剤形
ヒルドイドソフト軟膏® 「軟膏」と書いてある 油中水型クリーム(乳剤性基剤)
インテバン軟膏 1% 「軟膏」と書いてある 水性ゲル基剤
フェルデン軟膏 0.5% 「軟膏」と書いてある 水性ゲル基剤
アクアチム軟膏 1% 「軟膏」と書いてある 油中水型クリーム(乳剤性基剤)
5-FU軟膏 5%(協和) 「軟膏」と書いてある 水中油型クリーム


たとえば「ヒルドイドソフト軟膏」は、名前に「軟膏」と入っていますが、現在の日本薬局方の規定では「油中水型クリーム剤」に分類されます。正式な一般名も「ヘパリン類似物質油性クリーム」です。水で洗い流しにくく、べたつきが強い特性は、確かに軟膏に近い使用感ですが、基剤の性質はW/O型クリームです。


なぜこれが問題になるかというと、基剤を間違えると「湿潤面に乳剤性基剤を使う」という状況が起きやすくなるからです。「軟膏だから傷口にも使えるはず」と思い込んで、ジュクジュクした患部に乳剤性クリームを塗ってしまうと、炎症を悪化させる可能性があります。


製品を使う際は、製品名の「軟膏」「クリーム」という表記に頼らず、添付文書または薬剤師への確認で基剤を調べる習慣が大切です。ドラッグストアで市販薬を選ぶ際も、登録販売者に患部の状態を伝えてから選ぶのが安全です。


参考:日経DI(日経ドラッグインフォメーション)の記事では、名前と基剤が一致しない外用剤の事例が実際の調剤現場の視点で解説されています。


基剤を誤解しやすい薬剤の事例 – 日経DI(日経ドラッグインフォメーション)


軟膏基剤の分類を踏まえた、かゆみタイプ別の選び方と独自視点

かゆみには大きく分けて「乾燥型」「湿疹・湿潤型」「アレルギー型」の3つのパターンがあります。どのパターンかによって、選ぶべき基剤が変わります。つまり基剤が条件です。


乾燥型のかゆみ(カサカサ・粉をふく・冬場に悪化)
皮膚のバリア機能が低下して水分が失われているケースです。油脂性基剤(白色ワセリンなど)またはW/O型の乳剤性基剤が向いています。ワセリンは市販品でも購入できます。乾燥が特に強い冬場や、アトピー体質の方には油脂性基剤の方がかぶれのリスクも低く安心して使えます。


湿疹・湿潤型のかゆみ(ジュクジュク・びらん・浸出液あり)
患部に水分や浸出液が多い状態です。水溶性基剤(マクロゴール軟膏系)が適しています。市販のかゆみ止めでは「ジュクジュクした患部への使用は避けてください」と注意書きがある製品が多く、この基剤の性質を示しています。これも問題ありません。


アレルギー型・敏感な皮膚のかゆみ(かぶれ・蕁麻疹傾向がある方)
乳剤性基剤はラノリンアルコール、プロピレングリコール、パラベンなどの添加物を多く含むため、敏感な皮膚や過去にかぶれた経験がある方には注意が必要です。この場合は添加物が少ない油脂性基剤が選択肢になります。接触性皮膚炎がある方は特に、基剤の添加物をチェックすることが健康面でのリスク回避につながります。


ここで少し独自の視点を加えると、「同じ有効成分なのに剤形によって効きが変わる」という現象が実際に存在します。たとえばヘパリン類似物質の場合、ヒルドイドクリーム(O/W型)は補水作用が強く、ヒルドイドソフト軟膏(W/O型)は保湿・皮膚保護作用が強いです。有効成分は同一ですが、基剤の違いだけで皮膚への作用がまったく異なります。かゆみの原因が「水分不足」なのか「皮膚バリアの損傷」なのかによって、同じ薬でも最適な剤形が変わるわけです。


さらに、主薬が水溶性か脂溶性かによっても吸収率が変わります。脂溶性の有効成分(ステロイドなど)を油脂性基剤に溶かした場合、「基剤と皮膚の親和性が高くよく吸収されるが、主薬も基剤に溶けてとどまるため実際の吸収量は思ったほど多くない」という特性があります。これを利用して、荒れた皮膚への刺激を最小限にしながら穏やかに有効成分を届けることができるのが油脂性基剤です。意外ですね。


かゆみ止めを選ぶ際は、まず患部の状態(乾燥か湿潤か)を確認し、次に有効成分(ステロイドの強さ、抗ヒスタミンの有無)を確認する、この2ステップが重要です。基剤の違いを理解しているだけで、薬の選び間違いを防げます。これが基本です。


参考:アルメディアWEB「外用薬が褥瘡に効くメカニズム」では、基剤の機能別分類と皮膚状態への対応が丁寧に解説されています。


基剤の特徴と分類・外用薬の選び方 – アルメディアWEB