pde4阻害薬一覧とかゆみを抑える薬の選び方

pde4阻害薬一覧とかゆみを抑える薬の選び方

PDE4阻害薬の一覧とかゆみを抑える仕組みを徹底解説

ステロイドを使わなくても、かゆみがほぼ消える薬が生後3ヶ月の赤ちゃんから使えます。


この記事のポイント
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PDE4阻害薬とは?

炎症を引き起こすPDE4という酵素を選択的に抑えることで、かゆみや赤みを根本から鎮める新世代の薬。ステロイドとは全く異なる作用機序を持ちます。

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国内で使える主な種類

外用薬のモイゼルト軟膏(ジファミラスト)と経口薬のオテズラ錠(アプレミラスト)が代表。適応疾患や使い方が異なるため、正しい知識が重要です。

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知らないと損する副作用の差

外用薬と経口薬では副作用のリスクが大きく異なります。経口のオテズラでは約15.9%が下痢を経験するなど、薬の選択が日常生活に直結します。


PDE4阻害薬の一覧:作用機序をわかりやすく解説

PDE4(ホスホジエステラーゼ4)とは、私たちの体の免疫細胞の中に存在する酵素のひとつです。この酵素は「cAMP(サイクリックAMP)」という物質を分解する働きを持っています。cAMPは炎症を抑えるブレーキ役のような物質で、これが十分にあると免疫細胞が暴走しにくくなります。


アトピー性皮膚炎や乾癬など炎症性皮膚疾患の患者では、このcAMPの量が正常より少ない状態になっていることがわかっています。結果として炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-17、IL-23など)が過剰に産生され、皮膚の赤みやかゆみが悪化し続けます。つまりPDE4が悪さをしているということですね。


PDE4阻害薬はそのPDE4を選択的に止めることで、cAMPの分解を抑えます。cAMPの濃度が保たれると、炎症性サイトカインの産生が抑制され、抗炎症性サイトカインは増加します。かゆみと炎症を同時に抑えられるのがこの薬の大きな特徴です。


ステロイドのように皮膚を薄くする副作用がない点も、長期使用の観点から注目されています。ステロイド外用薬の代わりではなく、「新たな選択肢」として位置づけられています。



以下は国内で使用できる主なPDE4阻害薬の一覧表です。


一般名 商品名 剤形 主な適応疾患 使用可能年齢
ジファミラスト モイゼルト軟膏0.3%・1% 外用薬(軟膏) アトピー性皮膚炎 生後3ヶ月以上
アプレミラスト オテズラ錠10mg・20mg・30mg 経口薬(錠剤) 尋常性乾癬・乾癬性関節炎・ベーチェット病による口腔潰瘍・掌蹠膿疱症 成人(18歳以上)




なお、海外ではロフルミラスト(商品名Daliresp)という経口PDE4阻害薬がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に使われていますが、日本国内では2026年3月時点で皮膚科・呼吸器疾患向けに承認された製品はこの2剤が中心となっています。


参考:PDE4阻害薬をはじめとする免疫抑制薬の薬効分類・商品名・適応一覧(管理薬剤師.com)
https://kanri.nkdesk.com/drags/meneki.php


PDE4阻害薬一覧:モイゼルト軟膏(ジファミラスト)の特徴と使い方

モイゼルト軟膏は、大塚製薬が30年かけて研究開発した日本初の外用PDE4阻害薬です。2022年6月に発売が始まり、アトピー性皮膚炎の治療薬として現場に浸透しています。外用薬としては国内で最も早い段階(生後3ヶ月)から使えるのが大きな特徴で、非ステロイド外用薬の中では最も低年齢から処方可能です。


製品名「MOIZERTO」は、潤い(MOIsture)と確実(CERTainly)という言葉を組み合わせた造語です。その名の通り、皮膚のバリア機能回復を意識した設計になっています。


濃度は0.3%と1%の2種類があります。


  • 🧒 生後3ヶ月〜14歳の小児:0.3%または1%(症状に応じて選択。1%は短期間にとどめ、症状が落ち着いたら0.3%に切り替える)
  • 🧑 15歳以上の成人・70歳まで:1%製剤のみ使用可


使用方法は1日2回、患部に適量を塗るだけです。1回あたりの塗布量に上限がない点は他の非ステロイド系外用薬(コレクチム軟膏など)と大きく異なります。これは使えそうですね。


副作用は比較的少なく、添付文書に記載されている頻度0.5%以上の副作用は、塗布部位の色素沈着障害(約1.1%)、毛包炎、そう痒症、ざ瘡(ニキビ様)などに限られています。ステロイドでみられる皮膚萎縮毛細血管拡張はありません。


ひとつ覚えておきたい注意点があります。妊娠中または妊娠の可能性がある方への使用は推奨されていません。また、使用中止後2週間程度は避妊が推奨されています。日常ではあまり語られない情報ですが、女性は特に確認しておく必要があります。


薬価は1%製剤が1g=約146円〜152円、1本10gで約1,460円(3割負担なら約440円)です。医師の診察と処方が必要になるため、気になる方はまずかかりつけの皮膚科に相談するのが最短ルートです。


参考:モイゼルト軟膏(ジファミラスト)の特徴・副作用・薬価を皮膚科専門医が解説
https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/moizerto.html


PDE4阻害薬一覧:オテズラ錠(アプレミラスト)の適応と副作用

オテズラ錠(アプレミラスト)は、世界初の経口PDE4阻害薬として2017年に日本で発売されました。飲み薬タイプのため、全身の炎症に対応できる点がモイゼルト軟膏との大きな違いです。


適応疾患は複数にわたります。


  • 🔴 尋常性乾癬(局所療法で効果不十分な場合)
  • 🦴 乾癬性関節炎
  • 👄 ベーチェット病による口腔潰瘍(局所療法で効果不十分な場合)
  • 🤲 掌蹠膿疱症(局所療法で効果不十分な場合)


注目すべきは、乾癬の経口治療薬としては約25年ぶりの新薬という点です。それほど長い間、新しい選択肢がなかった疾患領域だったということが背景にあります。


副作用については特に理解が必要です。経口薬であるため、全身への影響が外用薬より大きくなります。国内臨床試験での主な副作用は下痢が約15.9%、悪心(吐き気)が約12.9%で、頭痛・嘔吐なども報告されています。


これらの消化器症状の多くは投与開始後2週間以内に出現し、4週間以内に消失することが確認されています。そのため、オテズラ錠は1日目から30mgを飲み始めるのではなく、10mg→20mg→30mgと1週間かけて段階的に増量する「タイトレーション」が設定されています。


副作用が心配な方が実際にやってしまいがちなのは、自己判断で途中からやめてしまうことです。4週間を超えても継続している下痢や悪心は、医師への相談が必要です。自己判断での中断は避けるのが原則です。


また、体重減少や気分変調(抑うつ傾向)が報告されるケースもあるため、精神的な変化にも注意が必要とされています。


薬価は高額で、30mg錠1錠あたり約2,600〜2,700円前後です。1日2錠(60mg/日)で計算すると、1ヶ月の薬剤費は約16万円前後になります(3割負担で約4.8万円)。高額療養費制度の対象になるケースもあるため、事前に医療機関や保険窓口で確認しておくと安心です。


参考:オテズラ錠の作用機序・副作用・使い方(アムジェン公式)
https://www.otezla-japan.jp/patient/pso_psa/about_otezla/otezla_side_effect


PDE4阻害薬一覧:ステロイド・JAK阻害薬との違いを比較

かゆみを抑える外用薬は複数の種類が存在します。それぞれの違いを知ることで、どの薬が自分に合っているかを判断しやすくなります。


以下に、代表的なアトピー性皮膚炎の外用薬を比較します。


薬の種類 代表薬 主な特徴 使用量上限 小児対応
ステロイド フルメタ・ロコイドなど 強力な抗炎症作用。長期連用で皮膚萎縮・毛細血管拡張のリスク なし(医師の判断による) 2歳未満から使用例あり
カルシニューリン阻害薬 プロトピック軟膏(タクロリムス 顔・首など皮膚の薄い部位に有用。炎症急性期に灼熱感が出やすい 2歳以上
JAK阻害薬 コレクチム軟膏(デルゴシチニブ 低分子薬で吸収良好。刺激感が少ない。使用量上限あり(1回5g) あり(1回5g) 2歳以上
PDE4阻害薬 モイゼルト軟膏(ジファミラスト) 使用量上限なし。生後3ヶ月から使用可。ステロイドの副作用なし なし 生後3ヶ月以上




PDE4阻害薬の特徴は、使用量の上限がなく、顔や首などの敏感な部位にも使いやすいことです。コレクチム軟膏(JAK阻害薬)と違い、1回5gという制限がないため、広い面積にも対応しやすい点が評価されています。


一方で、ステロイドの「切れ味の強さ」はなく、症状が急性期にある状態ではステロイドが先に使われることが多いです。モイゼルト軟膏が特に力を発揮するのは「寛解維持期」、つまり症状がある程度落ち着いている状態でのコントロールです。つまり急性期はステロイド、維持期はPDE4阻害薬という使い分けが基本です。


ステロイドの副作用が気になり、長期でかゆみをコントロールしたい方にとっては、PDE4阻害薬は非常に有力な選択肢になります。皮膚科の受診時に「ステロイドを減らしたい」と医師に相談することで、切り替えの検討が始まります。


参考:アトピー性皮膚炎の外用薬の比較と新薬の解説(EM-AVALON 薬剤師監修)
https://em-avalon.jp/column/detail?id=231


PDE4阻害薬を使う前に知っておきたい独自視点:「寛解維持」の考え方とかゆみの悪循環を断つ

かゆみに悩む方が見落としがちなのが、「かゆみを完全になくすこと」ではなく「かゆい状態を繰り返さないこと」を目標にするという発想の転換です。これが寛解維持という考え方です。


アトピー性皮膚炎では「かゆい→掻く→皮膚バリアが壊れる→もっとかゆくなる」という悪循環が知られています。医学的には「痒み・掻破サイクル」と呼ばれており、掻くことで皮膚からアレルゲンが侵入しやすくなり、さらなる炎症が起きます。この悪循環を断ち切ることが治療の核心です。


PDE4阻害薬(モイゼルト軟膏)は、この悪循環の入口にある「炎症性サイトカインの産生過剰」を根本から抑えます。症状が落ち着いている時期にも継続的に塗り続けることで、次の炎症の波を小さくできる可能性があります。これが長期使用を前提とした薬の使い方です。


実際に、離乳食が始まる生後5〜6ヶ月頃までにアトピー性皮膚炎の炎症を抑えておくことで、食物アレルギーや喘息など後に続くアレルギーマーチ(アレルギー疾患の連鎖)を予防できる可能性があるという報告もあります。生後3ヶ月から使用できるモイゼルト軟膏の特性は、こうした観点からも注目されています。


注意したいのは、「症状がおさまったからもう塗らなくていい」と自己判断してしまうケースです。見た目が改善しても皮膚の内側では炎症が続いていることがあります。継続のタイミングや頻度は必ず医師に確認することが大切です。


また、保湿剤ヒルドイドなど)との併用で皮膚バリアを同時に強化することで、薬の効果が最大限に活かせるとされています。「PDE4阻害薬+保湿」のセットで考えるのが基本です。


かゆみをコントロールするためのアプローチは薬だけではありません。入浴温度を下げる(40℃以下)、綿素材の衣類を選ぶ、部屋の湿度を50〜60%に保つといった日常ケアと組み合わせることで、薬の必要量を減らしながら症状をコントロールしやすくなります。


参考:アトピー性皮膚炎の治療3本柱と最新の薬物療法(済生会病院 公式サイト)
https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/atopic_dermatitis/