

「アレルギー性皮膚炎」の病名だけでレセプト請求すると、特異的IgE検査費用が全額減点されます。
身体のどこかにかゆみが出る、原因不明の蕁麻疹が繰り返す、目が痒くて鼻水が止まらない——そんな症状が続くとき、医師が勧めることが多いのが「特異的IgE検査(RAST法)」です。この検査は、血液を採取して体内にある特定のアレルゲンに反応するIgE抗体の量を調べるものです。つまり、ハウスダスト・ダニ・スギ花粉・卵白・小麦など200種類以上あるアレルゲンのうち、何が原因でかゆみが起きているのかを客観的に特定できます。
IgE(免疫グロブリンE)は、アレルギー反応の引き金を引くタンパク質です。非特異的IgEが「体内の総IgE量」を測るスクリーニングであるのに対し、特異的IgEは「何の抗原に対して反応しているか」を個別に明らかにします。これが大きな違いです。
検査はⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)の診断補助として位置づけられています。Ⅰ型アレルギーとは、アレルゲンが体内に入ってから15〜30分以内に発赤・膨疹・かゆみが現れるタイプで、アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・アレルギー性鼻炎・気管支喘息・食物アレルギーなどがこれに当たります。
保険算定のルールとして、特異的IgE半定量・定量検査は1種類の特異抗原ごとに110点(1,100円相当)を算定できます。ただし、1回の採血で複数の抗原を調べた場合は1,430点(14,300円相当)が上限です。1,430 ÷ 110 = 13種類が上限の計算になります。
つまり13種類が基本です。
患者さんの3割負担で計算すると、13項目の検査費用は約4,290円になります(別途診察料・判断料が加算されます)。39項目を一度に調べるパネル検査「View39」を受けても、保険で算定できるのは変わらず13項目分(1,430点)のみです。検査を受ける前に、この仕組みを知っておくと損をしません。
参考:シスメックスによる特異的IgE半定量・定量の保険請求ポイント解説
特異的IgE半定量・定量 - プライマリケア - シスメックス
特異的IgE検査の費用を保険請求するとき、レセプトには正しい傷病名の記載が不可欠です。病名が不適切だと、審査機関から「必要とした傷病名をお知らせください」と返戻されるか、または検査費用が減点(査定)されてしまいます。これは医療機関側の話ですが、患者としても知っておくと、自分の検査が保険適用になるかどうかの判断材料になります。
特異的IgE検査が認められる傷病名(確定病名)は主に以下のものです。
| 傷病名 | アレルギー型 | 備考 |
|---|---|---|
| アトピー性皮膚炎 | Ⅰ型 | 代表的な適応疾患 |
| 蕁麻疹(じんましん) | Ⅰ型 | アレルギー性蕁麻疹に限る |
| アレルギー性鼻炎・花粉症 | Ⅰ型 | 鼻アレルギーを含む |
| 食物アレルギー | Ⅰ型 | 疑い病名でも食物は認められる場合あり |
| 気管支喘息 | Ⅰ型 | アレルギー性気管支炎も含む |
| アレルギー性結膜炎 | Ⅰ型 | 眼科でも算定可 |
これらは全て「Ⅰ型(即時型)アレルギー」疾患です。これが原則です。
一方、次の傷病名ではレセプトが査定される可能性が高いので注意が必要です。
「アレルギー性皮膚炎」という病名について補足すると、実は保険診療上ICD10分類では「アレルギー性皮膚炎」という独立した病名は存在しないとされており、皮膚科の保険診療マニュアルでもこの名称での特異的IgE請求は認められないとされています。意外ですね。アトピー性皮膚炎という正確な病名でなければ算定できないという考え方が主流です。
参考:国民健康保険中央会 審査情報提供事例(特異的IgEの病名に関する取扱い)
審査情報提供事例について(医科)|国民健康保険中央会
特異的IgE検査が査定(減点)されるケースは病名の問題だけではありません。算定の方法・頻度・組み合わせにも複数の落とし穴があります。かゆみで通院している患者さんが知っておくと、医療機関に適切な確認ができるようになります。
査定が起きやすいパターンをまとめると次の通りです。
厳しいところですね。
これらの問題は医療機関側のレセプト業務に関わるものですが、患者側の視点からも重要です。例えば「検査してもらったはずなのに診療明細書に載っていない」という場合、査定によって請求が消えている可能性があります。医師や受付スタッフに確認することで、正しい検査の記録が残っているかどうかを把握できます。
参考:レセプトで特異的IgEが査定される理由の詳細解説(こあざらしブログ)
レセプトで特異的IgE半定量・定量が査定される理由
かゆみや蕁麻疹に悩む方が「アレルギーの原因を調べたい」と思ってクリニックを受診するとき、保険適用で検査を受けられるかどうかは診断内容によって変わります。これを知らずに受診すると、予想外の出費になることがあります。
保険適用となる主な条件は次の2点です。まず、医師がアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・アレルギー性鼻炎・食物アレルギーなど)と診断または強く疑うこと。次に、その病名がレセプトに正式な傷病名として記載されること。この2つが条件です。
費用の実態を整理すると、保険適用・3割負担の場合、13項目の検査費用は約4,290円です。別途、初診料や再診料、免疫学的検査判断料(144点・1,440円相当)が加算されるため、窓口負担の総額は5,000〜7,000円程度になるのが一般的です。
一方、「何となく調べたいだけ」「症状はないが念のため」という理由では保険適用にならず、自由診療(全額自己負担)になります。39項目のパネル検査(View39)を自費で受けると、医療機関によっては10,000〜15,000円以上かかることもあります。
注意が必要なのは6歳未満の子どもの場合です。小児科クリニックの多くが「小児科外来診療料」を算定しており、この点数に検査費用が包括されているため、特異的IgE検査を別途算定できません。つまり、6歳未満に特異的IgEを13項目行っても追加費用を請求できず、医療機関側が赤字になるという構造があります。これは注意が必要な点です。
患者側の行動として1つ覚えておくと便利なのは、受診時に「症状の記録」を持参することです。いつからかゆみが出るか、何を食べたあとに症状が出るか、季節性があるかなどをメモしておくと、医師が適切な確定病名をつけやすくなり、保険適用の検査につながりやすくなります。
参考:アレルギー診療と診療報酬の詳細(note・クリニック開業医視点)
アレルギー診療と診療報酬|開業医の視点から小児科のサブスペを語る
特異的IgE検査はあくまで「何に感作されているか」を示す参考情報であり、数値が高いからといって必ずしも症状の直接原因とは限りません。これは多くの方が誤解しているポイントです。
たとえば、卵白の特異的IgEがクラス3(やや高値)でも、卵を食べても何も症状が出ない人がいます。反対に、検査では低値なのに特定の食品を食べるとかゆみや蕁麻疹が出る人もいます。検査と症状の一致・不一致を医師と丁寧に確認することが大切です。つまり検査結果だけで判断するのは危険です。
また、アトピー性皮膚炎では血清総IgEが500 IU/mL以上になるケースが多く、特異的IgEも複数のアレルゲンに陽性反応を示します。しかし皮膚のバリア機能の低下が根本原因であることも多く、特定のアレルゲンを除去しただけでは症状が改善しないことも少なくありません。
かゆみを根本から抑えるための視点として、特異的IgE検査の結果を活用する際は次の手順が有効です。
特にスギ花粉・ダニに対するアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)は、特異的IgE検査で陽性を確認した後に適応を判断できる治療法です。症状を一時的に抑えるだけでなく、体質改善を目指せるという点で注目されています。
かゆみで困っているなら、検査を受けて終わりにするのではなく、その結果を治療方針に繋げることが最も重要です。結果だけ持って終わりはもったいないです。
日本アレルギー学会がまとめているアレルギー検査の実際についても参考にしてください。

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