IL-23阻害薬一覧|乾癬のかゆみを抑える生物学的製剤

IL-23阻害薬一覧|乾癬のかゆみを抑える生物学的製剤

IL-23阻害薬一覧|乾癬のかゆみに効く生物学的製剤の種類と選び方

塗り薬を毎日頑張っているのに、3ヶ月に1回の注射だけで同等以上の効果が出る場合があります。


この記事のポイント
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IL-23阻害薬は現在4種類

ステラーラ・トレムフィア・スキリージ・イルミアの4剤があり、それぞれ投与間隔・適応症が異なります。

🗓️
最長3ヶ月に1回の投与でOK

スキリージ・イルミアは維持期に3ヶ月に1回の通院で済むため、忙しい方に選ばれやすい選択肢です。

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高額療養費制度が使える

1本約49万円のイルミアも高額療養費制度を活用すれば自己負担を大幅に抑えられます。主治医に確認を。


IL-23阻害薬とは何か|乾癬のかゆみを引き起こす炎症の根本をブロック

乾癬の皮膚症状やかゆみは、免疫系の誤作動が引き金になっています。健康な皮膚は約28〜40日かけてターンオーバー(新陳代謝)しますが、乾癬の患者さんの場合はこのサイクルがわずか4〜5日に短縮されてしまいます。その結果、皮膚が盛り上がって赤くなり、フケのようなかさぶた(落屑)が生じ、強いかゆみをともなうのです。


この異常なサイクルの原因のひとつが、「IL-23(インターロイキン-23)」というタンパク質です。IL-23は免疫細胞の一種であるTh17細胞を活性化させ、さらにTh17が「IL-17A」を産生することで皮膚の炎症を持続・悪化させます。つまり、かゆみや皮疹の連鎖の「上流」にあるスイッチがIL-23なのです。


IL-23阻害薬は、このスイッチに直接ブロックをかける生物学的製剤です。結果として、IL-17という炎症物質の産生も間接的に抑えることができます。従来の塗り薬やステロイド内服と大きく違う点は、「炎症の原因となるサイトカインをピンポイントで狙い撃ちにする」という作用機序にあります。


IL-23は「p40」と「p19」という2つのタンパクが合体した構造をしています。最初に登場したステラーラ(ウステキヌマブ)はIL-12とIL-23の両方に含まれるp40を阻害するタイプで、現在の主流は乾癬により特異的なp19だけをブロックする「p19阻害薬」です。この違いが、効果の精度や副作用プロファイルにも影響しています。


































薬剤名(商品名) 一般名 ターゲット 発売年
ステラーラ ウステキヌマブ IL-12/23(p40) 2011年
トレムフィア グセルクマブ IL-23(p19) 2018年
スキリージ リサンキズマブ IL-23(p19) 2019年
イルミア チルドラキズマブ IL-23(p19) 2020年


IL-23阻害薬の登場は、乾癬治療の歴史を大きく変えました。それまで「一生付き合う病気」と言われてきたかゆみや皮疹が、多くの患者さんで著明に改善できるようになったのです。


参考リンク(乾癬の治療薬一覧・IL-23阻害薬の位置づけについて詳しく解説しています)。
【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ|PASSMED


IL-23阻害薬一覧と種類別の特徴|スキリージ・トレムフィア・イルミア・ステラーラを比較

IL-23阻害薬は現在4種類が乾癬に保険適用されています。名前が似ていて混乱しやすいですが、それぞれに特徴があります。


まずステラーラ(ウステキヌマブ)は、2011年から使われている最も歴史のあるIL-23阻害薬です。p40という部位を阻害するため、厳密にはIL-12も同時に抑えます。体重に応じて増量できるのが特徴で、体重の重い患者さんにも対応しやすい薬剤です。バイオシミラー(後発品)も登場し、薬価が下がったことで以前より使いやすくなりました。


次にトレムフィア(グセルクマブ)は2018年に登場した第一世代のp19阻害薬です。維持投与期は2ヶ月に1回の通院で管理できます。掌蹠膿疱症や乾癬性関節炎にも適応があり、2025年にはクローン病・潰瘍性大腸炎への適応も追加されました。適応疾患の幅広さがこの薬剤の強みのひとつです。


スキリージ(リサンキズマブ)は2019年に発売され、維持期には3ヶ月に1回の注射で済むため、通院頻度をできる限り減らしたい方に選ばれやすい薬剤です。尋常性乾癬・乾癬性関節炎・膿疱性乾癬乾癬性紅皮症・掌蹠膿疱症などに幅広く適応があります。皮下注射には「オートドーザー」という器具が使われ、5分かけてゆっくり注入される仕組みになっています。つまり注射の痛みが少ない工夫がされているということですね。


イルミア(チルドラキズマブ)は2020年発売のp19阻害薬です。現時点では尋常性乾癬のみに適応がありますが、治療1年目は年5回、2年目以降は年4回(約3ヶ月に1回)の注射で維持できます。副作用が少ないとされており、安全性を重視したい患者さんに向いているとされています。薬価は1本あたり486,197円ですが、高額療養費制度を利用することで自己負担を大幅に軽減できます。


































薬剤名 維持投与間隔 自己注射 主な適応(乾癬関連)
ステラーラ 12週(約3ヶ月)に1回 不可 尋常性乾癬・乾癬性関節炎など
トレムフィア 8週(約2ヶ月)に1回 可(一部) 尋常性乾癬・関節炎・掌蹠膿疱症
スキリージ 12週(約3ヶ月)に1回 尋常性乾癬・関節炎・膿疱性・紅皮症・掌蹠
イルミア 12週(約3ヶ月)に1回 不可 尋常性乾癬のみ


どの薬剤が合うかは、症状の種類・重症度・生活スタイルによって異なります。この表はあくまで目安で、最終的には主治医との相談が不可欠です。


参考リンク(各IL-23阻害薬の適応や投与スケジュールの詳細が確認できます)。
IL-23 p19モノクローナル抗体製剤の特徴まとめ|小金井つるかめクリニック


IL-23阻害薬のかゆみへの効果|塗り薬と何が違うのか、効果が出るまでの期間は

「塗り薬で何年も治療してきたのに、なぜ急に注射が必要になるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。塗り薬(外用薬)は皮膚の表面から直接作用するのに対し、IL-23阻害薬は血液を通じて全身の免疫システムに働きかけます。


意外ですが。塗り薬のステロイドを長期間塗り続けても根本の炎症スイッチ(IL-23)は切れないため、塗り薬を止めるとすぐ再燃することが多いのです。一方、IL-23阻害薬はIL-23自体をブロックするため、炎症の連鎖を上流で断ち切ることができます。


ただし、効果が出るまでの時間は薬剤によって差があります。IL-17阻害薬に比べると、IL-23阻害薬は効果の発現がやや遅めとされています。一般的に、導入後数週間でかゆみや赤みの軽減を感じ始め、12週前後で皮膚症状の改善がはっきりとわかることが多いです。これが基本です。


日本皮膚科学会のガイドラインでは、16週時点での治療反応を評価してその後の継続を判断するとされています。16週の時点でBSA(体表面積)が10%未満、あるいはPASI(乾癬面積重症度指数)が75%以上改善していることが、継続の目安のひとつになります。


では、実際の臨床試験でのかゆみ・症状改善データはどうでしょうか。スキリージ(リサンキズマブ)の臨床試験では、16週時点でPASI90(症状が90%以上改善)を達成した患者さんの割合が約73〜75%に上ったことが報告されています。これはIL-17阻害薬と同等か、それ以上の成績です。イルミア(チルドラキズマブ)の試験でも、28週時点で PASI75を達成した患者の割合は約66%という結果が示されています。


かゆみという主観的な症状については「治療開始から数週間のうちに楽になった」と感じる患者さんが多く、皮膚の見た目が改善するより先にかゆみが和らぐケースもあります。これは使えそうな情報ですね。


一方、IL-23阻害薬は一般的に「副作用が少ない」とされていますが、感染症への注意は必要です。体の免疫バランスを変える薬であるため、風邪などの上気道感染症や水虫が起こりやすくなる可能性があります。重篤な副作用(アナフィラキシーや重篤感染症)は1〜5%未満の発現頻度とされており、他の生物学的製剤と比較しても安全性が高い部類に入ります。


参考リンク(乾癬の治療ステップとIL-23阻害薬の選択基準が詳しく解説されています)。
乾癬の治療法を徹底解説!|日野皮フ科医院


IL-23阻害薬が使える条件と使えない場合|乾癬のかゆみが強い人が知っておくべき注意点

IL-23阻害薬はすべての乾癬患者さんが最初から使える薬ではありません。日本皮膚科学会の使用ガイダンスでは、生物学的製剤(IL-23阻害薬を含む)の適用には一定の条件があります。


基本的には、①塗り薬・光線療法・内服薬などの既存治療で十分な効果が得られない場合、②乾癬性関節炎で関節の症状が強い場合、③乾癬性紅皮症や膿疱性乾癬など重症タイプの場合、に限って使用が認められています。また、これらの薬を処方できるのは「日本皮膚科学会が定めた生物学的製剤使用承認施設」のみです。かかりつけの皮膚科が承認施設かどうかは、受診時に確認してみましょう。


使用開始前には必ず結核の検査が必要です。生物学的製剤は免疫を調整するため、潜在性の結核が活性化するリスクがあるからです。また、活動性の重篤な感染症がある場合は投与が禁忌となっています。過去に悪性腫瘍(がん)を患った方は主治医との十分な相談が必要ですが、一律に禁忌というわけではありません。2025年に発表された実臨床データでは、悪性腫瘍の既往がある乾癬患者198例に対してIL-23阻害薬を投与した結果、安全に使用できたことが報告されています。


IL-17阻害薬と比較したときのIL-23阻害薬の大きなアドバンテージのひとつが「炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の方にも比較的使いやすい」という点です。IL-17は腸管バリア機能の維持に関わるため、IL-17阻害薬は炎症性腸疾患の方には原則禁忌とされています。一方、IL-23阻害薬はむしろ炎症性腸疾患の治療薬としての適応も広がっており、乾癬と腸疾患を併発している患者さんにとって特に有力な選択肢になります。



  • 🚫 使用できない・慎重投与が必要なケース:活動性結核・活動性の重篤感染症・妊娠中(要相談)・生ワクチン接種直後

  • ✅ 比較的使いやすいケース:炎症性腸疾患がある方・通院頻度を減らしたい方・自己注射が難しい方

  • 💊 事前に必要な検査:結核スクリーニング(ツベルクリン反応またはIGRA検査)・胸部X線・血液検査


投与前の準備が少し手間に感じるかもしれませんが、安全に長期使用するための大切なステップです。忘れずに主治医に確認するようにしてください。


IL-23阻害薬と他の生物学的製剤の違い|TNF阻害薬・IL-17阻害薬との比較

乾癬に使われる生物学的製剤は大きく3つのグループに分類されます。TNF阻害薬・IL-17阻害薬・IL-23阻害薬の3タイプです。それぞれ作用するポイントが異なるため、患者さんの状況によって向き不向きがあります。


TNF阻害薬(ヒュミラ・レミケード・シムジアなど)は最も歴史が長く、乾癬性関節炎への効果が特に高いことが知られています。骨の破壊を抑制する作用もあり、関節症状が強い方の第一選択肢とされることが多いです。しかし2週間〜4週間に1回と注射の頻度が多く、うっ血性心不全や脱髄疾患のある方には使えないという制限もあります。


IL-17阻害薬(コセンティクス・トルツ・ルミセフ・ビンゼレックスなど)は、乾癬の皮膚症状への効果発現が早く、重度の皮疹がある方に向いています。ただし炎症性腸疾患の方や真菌感染症のある方には使えません。週1回から始まる導入期があり、慣れるまで通院負担がやや大きいのが特徴です。


IL-23阻害薬(ステラーラ・トレムフィア・スキリージ・イルミア)の最大の強みは「投与間隔が長い」「副作用が少ない」「効果が持続しやすい」という3点です。3ヶ月に1回の注射でコントロールできるため、仕事が忙しくて通院しにくい方に特に向いています。自己注射ができない方でも、通院のたびに医療スタッフが打ってくれるため安心です。


3つのグループを比較した場合、皮膚症状への「効果の速さ」はIL-17阻害薬、「投与の楽さと副作用の少なさ」はIL-23阻害薬が優位とされることが多いです。乾癬性関節炎の骨破壊を止めるにはTNF阻害薬のエビデンスが最も豊富です。厳しいところですね。ただしこれらは一般論であり、個人差が大きいため、主治医と相談して決定することが大切です。




























種類 代表薬 注射頻度 特徴・向いている方
TNF阻害薬 ヒュミラ、レミケード 2〜8週に1回 関節症状が強い方、関節破壊を防ぎたい方
IL-17阻害薬 コセンティクス、トルツ 2〜4週に1回(維持期) 重度の皮疹・速い効果を求める方
IL-23阻害薬 スキリージ、イルミア 8〜12週に1回(維持期) 通院を減らしたい・副作用を抑えたい方


参考リンク(乾癬の生物学的製剤ガイダンス2022年版:各薬剤の推奨度と使い分けの根拠が詳しく記載されています)。
乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)|日本皮膚科学会


乾癬のかゆみを持つ人が見落としがちな盲点|IL-23阻害薬を始める前に確認すべき費用・制度・生活の注意点

IL-23阻害薬を検討するうえで、多くの患者さんが最初に気になるのが費用の問題です。薬価を見ると確かに高額で、たとえばイルミアは1本あたり約486,197円です。3割負担の場合は1回の注射だけで約14万円以上かかる計算です。痛いですね。


しかし、このような高額な医療費には「高額療養費制度」という強力な味方があります。同一月内に支払う医療費が一定額を超えた場合、超過分が後から払い戻される制度です。年収約370〜770万円(70歳未満)の方の自己負担上限は月約8万円程度となっており、年間を通じた実質負担は見た目の薬価よりずっと少なくなります。


さらに、生物学的製剤は「難病医療費助成制度」の対象疾患と合わせて申請できる場合もあり、乾癬の種類によっては自己負担がゼロになるケースもあります。これは知っておくと得する情報です。3ヶ月に1回の通院ならば、1年に4回分の自己負担で済むわけで、月換算すると思ったより抑えられるのが現実です。


日常生活での注意点も確認しておきましょう。IL-23阻害薬を使用中は免疫が変化するため、生ワクチン(BCG・水痘・麻疹・風疹・おたふくかぜなど)の接種は禁忌となっています。インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)は接種可能なため、流行シーズン前に接種しておくことが推奨されています。


また、注射後に体調が変化した場合は我慢せずに速やかに受診することが大切です。かゆみ・蕁麻疹・息苦しさ・声のかすれなどはアナフィラキシーの可能性があり、すぐに連絡が必要です。日常的には外出後の手洗い・うがいを継続して感染予防に努めることも、治療を安全に続けるための重要な習慣になります。


もう一点、あまり語られない視点として「治療をやめると再燃しやすい」という点があります。IL-23阻害薬は症状が消えても「根本のIL-23の産生過多」という体質自体は変わっていません。自己判断で投与を中断すると、数ヶ月以内に皮疹やかゆみが戻ってくるケースが多く報告されています。かゆみが収まったからといって薬を止めてしまうのはダメということです。継続の必要性については主治医と必ず相談してください。



  • 💰 高額療養費制度を必ず活用する(主治医または病院の医療相談窓口に確認する)

  • 💉 生ワクチンは治療中は禁忌。インフルエンザ(不活化)はOK

  • 🤧 感染症の初期症状があればすぐ受診する(発熱・のどの痛みなど)

  • 🚫 症状が改善しても自己判断での投与中断は避ける


IL-23阻害薬は、正しく使えば長期にわたって乾癬のかゆみや皮疹をコントロールできる有効な選択肢です。費用面のハードルは制度を活用することで大幅に下げられます。まずはかかりつけの皮膚科または生物学的製剤承認施設に相談することが、最初のステップになります。


参考リンク(イルミアの患者負担額・高額療養費制度の活用方法について詳しく解説されています)。
乾癬治療薬「イルミア(チルドラキズマブ)」生物学的製剤|巣鴨千石皮ふ科