

スギ花粉が終わったのにまだかゆい、それはカモガヤ花粉のせいかもしれません。
カモガヤはイネ科の多年草で、牧草として海外から持ち込まれた植物です。今では道端・河川敷・公園・空き地など、あらゆる場所に根付いています。草丈は最大120cmほど、ちょうど小学生の腰くらいの高さで、気づかないまま近づいてしまうことも少なくありません。
スギ花粉が飛散するのは主に2〜4月ですが、カモガヤ花粉の飛散は4月下旬から本格化し、5月〜6月上旬にピークを迎えます。つまり、「スギの季節が終わった」と感じた頃に、カモガヤが主役に替わるのです。これが「なぜか5〜6月に症状がぶり返す」人の正体です。
飛散の終息時期も重要です。地域によって大きく異なります。
| エリア | 飛散開始時期 | 飛散ピーク | 終息時期 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 5月初旬 | 6月中旬〜下旬 | 9月いっぱい |
| 東北 | 3月下旬 | 5月初旬〜6月中旬・8月〜9月 | 10月いっぱい |
| 関東 | 2月中旬 | 4月中旬〜7月上旬・7月下旬〜10月中旬 | 12月いっぱい |
| 関西 | 1月上旬 | 4月下旬〜5月・8月中旬〜9月上旬 | 11月中旬 |
| 九州 | 2月中旬 | 4月中旬〜6月中旬・8月下旬〜9月 | 11月いっぱい |
特に関東・関西・九州では、真冬以外はほぼ一年中、少量ながら飛散が確認されています。これが「花粉症かと思ったら通年で症状がある」と感じる原因のひとつです。
飛散のピークは年2回あることも見逃せません。5〜7月に1回目のピーク、秋(8〜10月)に2回目のピークが来ます。2回目は稲刈りのタイミングとも重なり、イネ科全体の花粉量が増える時期です。秋に突然かゆみが出た場合も、イネ科花粉を疑う必要があります。
また、「スギ花粉は数十km飛ぶが、カモガヤの飛散距離は約200m程度」という特徴があります。逆にいえば、身近な場所にカモガヤがあれば集中的にかゆみが出やすく、河川敷や公園の近くに住んでいる人は特に注意が必要です。
飛散が多い日の条件は「晴れて気温が高い日」で、花粉が飛ぶ時間帯のピークは午前8〜10時です。朝の通勤・通学時間帯に症状が強くなるのはそのためです。午前中の気温が低く午後に上がる日は、午後に飛散が増えることもあります。かゆみが強い日の外出タイミングを調整することが、症状を抑える第一歩です。
出典・参考情報:イネ科花粉の地域別飛散データについては、下記のリンクが詳しく解説しています。
大正製薬アレルラボ「イネ科花粉のピーク時期と飛散状況(地域別一覧)」
カモガヤ花粉によるかゆみは、4つの部位に現れます。それぞれ原因と特徴が異なるので、自分の症状がどのタイプかを把握することが大切です。
① 目のかゆみ・充血
カモガヤ花粉症で最も特徴的なのが、目のかゆみの強さです。スギ花粉症と比べて、アレルギー性結膜炎の症状が強く出やすい傾向があります。目がゴロゴロと異物感を感じたり、まぶたの裏にぶつぶつができることも。外出時にメガネをしていない人は、目から直接花粉が入るため、症状が特に悪化しやすいです。
② 鼻のかゆみ・くしゃみ・鼻水
サラサラした水のような鼻水と、連続するくしゃみが典型的な症状です。鼻の粘膜が腫れ、夜も眠れないほど鼻詰まりがひどくなるケースもあります。
③ 皮膚のかゆみ(花粉皮膚炎)
顔や首など皮膚の薄い部分に赤みやかゆみが生じることがあります。これは花粉皮膚炎と呼ばれ、花粉が直接肌に触れることで起こるアレルギー反応です。帰宅後に顔を洗わずにいると症状が悪化しやすく、花粉がついた衣服のまま過ごすことで皮膚への刺激が続きます。
④ 口・喉のかゆみ(口腔アレルギー症候群)
これが最も見落とされやすい症状です。カモガヤ花粉症の人が夏にメロン・スイカ・バナナ・トマト・キウイなどを食べると、口や喉がピリピリ・イガイガすることがあります。口腔アレルギー症候群と呼ばれ、カモガヤ花粉のたんぱく質と似た構造を持つ食品に、体が「花粉と同じだ」と誤反応する現象(交差反応)です。
口腔アレルギー症候群はカモガヤ花粉症を持つ人の5〜8%にみられるとされています。さらにそのうち1〜2%はアナフィラキシーショックに至る可能性も指摘されているため、「少し口がかゆいだけ」と放置するのは危険です。
つまりかゆみは目・鼻・皮膚・口の4箇所に出ます。
夏に「メロンを食べると口がかゆくなる」と感じたことがある人は、カモガヤ花粉症の疑いがあります。原因特定のために耳鼻科や内科でアレルギー検査(血液検査)を受けることをおすすめします。1回の採血でカモガヤ・オオアワガエリを含む39種類のアレルゲンを一度に調べられる「View39検査」などが便利です。
参考情報:口腔アレルギー症候群とカモガヤの関係について
大石内科循環器科医院「カモガヤ(イネ科花粉)のアレルギー症状と口腔アレルギー症候群の詳細解説」
かゆみを日常生活で減らすための具体的な対策をまとめます。難しいことはなく、「花粉に触れる量を減らす」ことが基本です。
外出時の対策
まず押さえるべきは、カモガヤの飛散距離が約200mと短いという点です。スギ花粉のように空の向こうから飛んでくるのとは異なり、近くにカモガヤが生えていなければ症状が出にくい。これは逆に言えば、「草むらに近づかない」だけで症状がかなり抑えられるということです。
- 🌿 河川敷・公園・空き地の草むらには近づかない
- 😷 マスクは「顔にぴったりフィットするタイプ」を正しく着用する(隙間があると意味が薄い)
- 👓 外出時はメガネ、できれば花粉症用フードつきメガネを着用する(目のかゆみ対策に特に有効)
- 🧢 つばの広い帽子をかぶり、髪への付着を防ぐ
- 👕 ポリエステル・ナイロンなどツルツルした素材の服を選ぶ(ウール・綿は花粉が付着しやすい)
帰宅後の対策
帰宅したら花粉を家の中に持ち込まないことが大切です。玄関の外で服の花粉を払い、玄関を入ったらすぐに洗顔・うがいを行います。鼻うがい(生理食塩水0.9%を人肌に温めて鼻から洗う方法)は、鼻粘膜の炎症を抑える効果があると言われており、飛散ピーク前から習慣にすることが推奨されています。
帰宅後すぐが基本です。
室内での対策
花粉の飛散が比較的少ない夜〜早朝に換気を行い、昼間はレースのカーテンを閉めたまま窓を10cm程度だけ開けるにとどめます。空気清浄機は高性能HEPAフィルター付きのものを寝室の枕元に置き、24時間稼働させると効果的です。また、外に干した洗濯物に花粉が付着するため、飛散ピーク時は室内干しを徹底しましょう。
もし自宅の庭や近隣にカモガヤが生えているなら、花を咲かせる前(4月下旬前)に草刈りをするのが最も根本的な対策です。カモガヤは地下茎が深く張っているため、地面ごと除去しないとすぐに再生します。除草剤の使用も選択肢のひとつです。
出典:花粉の室内対策および草刈り対策について
松山市医師会「カモガヤ花粉症(イネ科花粉症)について」
生活対策だけでは症状が抑えられない場合、市販薬の活用を検討しましょう。カモガヤ花粉症に対して有効な薬の選び方を解説します。
まず大前提として、「症状が出てから飲む」のではなく、飛散ピーク(5月〜6月)の2週間前から飲み始める「初期療法」が推奨されています。症状が出てから飲み始めるよりも、シーズン中のかゆみが明らかに軽くなるためです。これが条件です。
かゆみ全般(目・鼻・皮膚)に:第二世代抗ヒスタミン薬
眠気が少なく、1日1〜2回の服用で効果が持続するのが第二世代抗ヒスタミン薬の特徴です。代表的な市販薬は以下の通りです。
| 商品名 | 主な有効成分 | 特徴 |
|---|---|---|
| アレグラFX | フェキソフェナジン塩酸塩 | 眠気が出にくい。車の運転への影響が少ない |
| アレジオン20 | エピナスチン塩酸塩 | かゆみ止め効果が高め |
| クラリチンEX | ロラタジン | 眠気が最も少ない部類 |
| ストナリニZ | セチリジン塩酸塩 | 効き目が強め、眠気が出やすいタイプ |
皮膚のかゆみ(花粉皮膚炎)に:外用薬
肌のかゆみや赤みに対しては、塗り薬も有効です。ジフェンヒドラミン配合の「キュアレアa」などが市販されており、花粉・乾燥によるかゆみを鎮める働きがあります。ただし塗り薬は症状のある部位への対処療法であり、根本的には飲み薬と組み合わせて使うのが一般的です。
目のかゆみに:抗アレルギー点眼薬
目薬は市販のアレルギー用点眼薬(抗ヒスタミン成分配合)を使いましょう。ただし、充血を取るだけの「白目すっきり系」目薬はかゆみの原因に作用しないため、アレルギー性結膜炎には効果が低いことに注意が必要です。「アレルギー専用」と明記されたものを選ぶのが鉄則です。
なお、症状が重い場合や市販薬で改善しない場合は、処方薬の方が効果の高いステロイド点鼻薬・点眼薬・抗ロイコトリエン薬が使えます。耳鼻咽喉科・眼科・アレルギー科への受診を検討してください。スギ花粉症で根本治療として行われるアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)は、現時点ではカモガヤに対して日本国内では保険適用がないため、その点は念頭に置いておく必要があります。
参考:カモガヤ花粉症に対する市販薬の選び方について
阪野クリニック「イネ科花粉症・カモガヤの特徴と対処法を知る」
毎年「スギが終わってからも症状が続く」「夏になっても鼻水とかゆみが止まらない」と悩んでいる人の多くが、カモガヤを含むイネ科花粉の存在を知らないまま市販の風邪薬で対処し続けているケースがあります。これは大きな落とし穴です。
実は関東では、イネ科花粉の飛散は2月中旬から始まり、12月まで続くことが確認されています。ほぼ10ヶ月間、何らかのイネ科花粉が空気中を漂っている計算です。この事実を知らないと、「スギが終わったから薬をやめよう」と判断した途端にかゆみが再発するという繰り返しが起きます。
もう一つの見落とし点が、カモガヤ以外のイネ科植物の存在です。カモガヤの飛散が落ち着く8月以降は、代わりにオオアワガエリ・ネズミホソムギ・ススキ・ブタクサなどが飛散を引き継ぎます。カモガヤにアレルギーがある人は、他のイネ科植物にも交差反応を示す場合があり、「カモガヤの時期が終わったから大丈夫」とはならないケースが多いのです。これは意外ですね。
さらに独自視点で伝えたいのが「雨の翌日」の問題です。雨の日は花粉の飛散量が少なくなるため、「雨の日は症状が楽」という人が多くいます。しかし、雨の翌日に晴れると、地面に落ちた花粉が乾燥して一気に舞い上がり、飛散量が急増します。「雨が降ったら安心」ではなく、翌日の晴れた日こそが最もリスクが高いタイミングです。この逆転を知っておくと、外出日の調整がより的確にできます。
かゆみが長引く人に共通するのは、「原因を正確に特定していないこと」です。血液検査(アレルギー検査)でカモガヤ・オオアワガエリを含む複数のイネ科花粉への感作(反応)があるかを確認することが、症状を根本的に改善する出発点となります。検査費用は保険適用で数千円程度です。「もしかして自分もカモガヤかも」と思ったら、まず検査を1回受けることを強くおすすめします。
参考:イネ科花粉の複数種と飛散パターンについて
NAFIAS「カモガヤ(イネ科)花粉症の時期・症状と対策」