

「セラミド」さえ入っていれば、どんな化粧品でもかゆみに効く、と思っていませんか?
「かゆみが止まらない」「保湿してもすぐ乾く」という悩みを持つ方の多くが、実は同じ原因を抱えています。その原因こそが、角層(皮膚の最も外側の層)の「セラミド不足」です。
セラミドは、肌の角層に存在する脂質成分で、細胞間脂質全体の約50%を占める主役的な成分です。角層の細胞をレンガに例えると、セラミドはそのレンガ同士をつなぐ「セメント」のような役割を果たしています。このセメントがしっかりあれば、水分は逃げにくくなり、外部の刺激も跳ね返せます。
セラミドが不足すると、この「セメント」に穴が開いた状態になります。すると肌内部の水分がどんどん蒸発し、乾燥が進行します。それだけでなく、外からのアレルゲンや細菌が肌内部に侵入しやすくなり、「かゆみ」「赤み」「ピリピリ感」といった敏感肌症状を引き起こします。これがかゆみの正体のひとつです。
実際、花王の研究(2023年)では、バリア機能が低下した敏感肌のセラミドプロファイルが、アトピー性皮膚炎(AD)の肌と類似しているという結果が報告されています。かゆみに悩む方の肌は、アトピー肌に近い状態になっている可能性があるということです。これは意外ですね。
つまり、かゆみを根本から止めるには「水分を補う」だけでは不十分で、「セラミドを補ってバリアを修復する」ことが必須条件です。
かゆみが長引いている方はセラミドの補充から始めるのが原則です。
参考:花王による敏感肌のセラミドプロファイルとアトピー肌の類似性に関する研究発表
花王|皮膚バリア機能が低下傾向の敏感肌ではアトピー性皮膚炎の肌と類似(2023年)
セラミドには大きく4つの種類があり、かゆみや乾燥肌への効果はそれぞれ大きく異なります。「セラミド配合」とパッケージに書いてあっても、どの種類かで話はまったく変わります。これだけ覚えておけばOKです。
① ヒト型セラミド(バイオセラミド)
酵母などを使って、人間の肌にあるセラミドと同じ立体構造に合成されたセラミドです。肌との親和性が非常に高く、角層の「スカスカになった隙間」にぴったりはまるように浸透します。保湿力・バリア機能改善の効果が最も高く、かゆみや乾燥が気になる方には特におすすめの種類です。
成分表では「セラミドEOP(セラミド1)」「セラミドNG(セラミド2)」「セラミドNP(セラミド3)」「セラミドAP(セラミド6)」などのアルファベット表記で確認できます。価格帯はやや高めですが、それだけの価値があります。
② 天然セラミド(動物性セラミド)
馬や牛などの哺乳類から抽出されたセラミドで、人のセラミドに構造が近く浸透力が高いとされています。成分表では「ビオセラミド」「セレブロシド」と記載されます。価格は非常に高価で、近年は動物由来という点から化粧品業界でも使用が敬遠される傾向があります。
③ 植物性セラミド
米ぬかやトウモロコシ、大豆などの植物から抽出されます。「コメヌカスフィンゴ糖脂質」「ユズセラミド」などの表記で成分表に登場します。肌に優しく価格も比較的手頃ですが、ヒトのセラミドとは構造が一部異なるため、ヒト型セラミドと比べると角層への浸透力・バリア機能改善効果はやや劣ります。保湿補助として取り入れるのには適しています。
④ 疑似セラミド(合成類似セラミド)
化学的に合成された「セラミドに似た物質」で、厳密にはセラミドではありません。「ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド」という長い化学名で成分表に登場します。化粧品への配合がしやすく大量生産できるため価格は安価ですが、角層への浸透力はヒト型セラミドに比べると限定的です。
以下に4種類の特徴をまとめます。
| 種類 | 浸透力 | 保湿・バリア効果 | 価格帯 | 成分表での表記例 |
|---|---|---|---|---|
| ヒト型セラミド | ⭐⭐⭐ 非常に高い | ⭐⭐⭐ 最も高い | やや高め | セラミドEOP、セラミドNP など |
| 天然(動物性)セラミド | ⭐⭐⭐ 高い | ⭐⭐⭐ 高い | 非常に高価 | ビオセラミド、セレブロシド |
| 植物性セラミド | ⭐⭐ 中程度 | ⭐⭐ 中程度 | 手頃 | コメヌカスフィンゴ糖脂質 |
| 疑似セラミド | ⭐ やや低い | ⭐ 限定的 | 安価 | ヘキサデシロキシPGヒドロキシ… |
かゆみや乾燥肌の改善を本気で目指すなら「ヒト型セラミド」が基本です。
参考:セラミドの種類・成分名・選び方について(小林製薬・日本皮膚科学会専門医監修)
セラミドとは?顔や体の肌の保湿に効果的な化粧品の選び方を簡単解説(小林製薬)
ヒト型セラミドは1種類ではありません。現在、化粧品に配合されているヒト型セラミドには複数の種類があり、それぞれ働きが少しずつ異なります。成分表を見ればどれが入っているか確認できますが、表記が変わっていることを知らないと見落としがちです。
かつて「セラミド1」「セラミド2」のように数字で表記されていたヒト型セラミドは、研究の進展に伴い2000年代以降にアルファベット表記(構造由来)に変更されました。たとえば「セラミド2」は「セラミドNG」に対応します。古い情報と新しい成分表示が混在しているので注意が必要です。
主な対応関係と効果は以下のとおりです。
- セラミドEOP(旧セラミド1):バリア機能の「安定化」に最も重要とされる長鎖アシルセラミドのひとつ。外的刺激への防御力を高める
- セラミドNG(旧セラミド2):人間の肌に最も多く含まれるセラミド。高い保湿力でバリア機能を補う
- セラミドNP(旧セラミド3):保湿効果に加え、小じわ対策にも期待されている
- セラミドAP(旧セラミド6):保湿効果・ターンオーバー促進・小じわ対策
- セラミドEOS(旧セラミド1の一部):セラミドEOPと並び、バリア安定化に非常に重要な役割を担う
特にかゆみ・バリア機能の低下に悩む方は「セラミドEOP」か「セラミドEOS」が入っているかどうかを確認するのが有効です。この2つは長鎖構造(アシルセラミド)で、角層バリアの安定に欠かせないとされています。
つまり、セラミドEOPとEOSの存在確認が条件です。
参考:セラミドの種類と最新研究(医学博士・神戸大学)
セラミドは何種類ある?「マルチセラミド」がキーワード【医学博士解説】(DSR)
年齢を重ねるほどかゆみが増す、乾燥がひどくなる……そういった変化を感じている方は少なくありません。これには明確な生物学的理由があります。
セラミドは肌のターンオーバー(皮膚の新陳代謝)の過程で自然に生み出される成分ですが、この生産力は年齢とともに落ちていきます。20代をピークに徐々に減少し、40〜50代になるとピーク時の約半分にまで減少するという研究結果が複数報告されています。半分というのは相当な減り方で、肌の細胞間のすき間がどんどん空いていくイメージです。
20代の肌がスポンジのようにしっとりしているのに、40代で「保湿してもすぐ乾く」「夜中にかゆくて目が覚める」という悩みが増えるのは、このセラミド減少が大きな原因です。
さらにセラミドを減らす要因はほかにもあります。
- 洗いすぎ・摩擦:ゴシゴシ洗顔や熱いお湯での洗顔は、セラミドを過剰に洗い流します
- 紫外線:年中、紫外線はセラミドを分解・減少させます
- 睡眠不足・栄養不足:ターンオーバーに必要な成長ホルモンは睡眠中に分泌されます。睡眠不足はそのままセラミド生産力の低下に直結します
- 過度なストレス:ホルモンバランスを乱し、ターンオーバーを乱れさせます
こうした複合的な要因でセラミドが消耗されていくため、特に30代後半〜40代以降は「内側からの生産」だけに頼らず、外側からの補充が重要になります。スキンケアでのセラミド補充は現実的で即効性のある対策のひとつです。
加齢と生活習慣の両面への対策が原則です。
参考:加齢によるセラミド減少と乾燥肌の関係(日経グッデイ・皮膚科医解説)
かゆみを止めるスキンケアの基本—セラミドが50代で20代の約半分に(日経グッデイ)
セラミドの種類と量が重要だということは分かりました。では、実際にどう製品を選べばよいのでしょうか。
最新の研究では、人の肌には1,300種以上(将来的に2,000種超の可能性も)のセラミドが存在することがETVOSの取材で東京都医学総合研究所・平林哲也博士により紹介されています。腸内細菌のバランスと同様に、「多様な種類のセラミドが適切な比率で存在すること」がバリア機能の質を高めるとされています。
これが意味するのは、1種類だけのセラミドで全てを補うのは難しいということです。複数のヒト型セラミドを配合した「マルチセラミド処方」の製品こそが、かゆみや乾燥肌の改善に最も効果的だということです。
成分表で製品を選ぶ際の具体的なチェック項目は以下のとおりです。
- ✅ 「セラミドEOP」または「セラミドEOS」が含まれているか(バリア安定化に最重要)
- ✅ ヒト型セラミドが2種類以上含まれているか(マルチセラミドの証)
- ✅ 成分表の上位にセラミドが記載されているか(化粧品の成分表は配合量が多い順に記載される)
- ✅ コレステロールや遊離脂肪酸も含まれているか(この3成分のバランスがバリア機能に最重要)
特に注目したいのが「コレステロールと脂肪酸」との組み合わせです。角層のバリア修復には、セラミドだけでなくこの3成分が「黄金比率」で揃うことが必要とされています。これは使えそうです。
一方、「疑似セラミド(ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド)」だけが配合されている製品は、確かに保湿効果はありますが、バリア機能の根本的な修復という観点からはヒト型セラミドより効果が限定的です。かゆみや乾燥が深刻な場合は、成分表での確認が大切です。
なお、医薬部外品(薬用スキンケア)は成分の記載順序が一般化粧品とは異なるため、前後関係だけで判断せず、成分名そのものを確認することをおすすめします。
参考:セラミドの種類・選び方と「マルチセラミド」の重要性(ETVOS)
知らぬ間に減っていく?セラミドの多様性と役割【深堀り】(ETVOS)