

洗顔を1日3回以上しているのに、むしろ皮脂が増えてかゆみがひどくなっていませんか?
「なぜかゆみが出るのか?」を理解するには、まず皮脂が過剰になる仕組みを知る必要があります。
皮脂は本来、肌のバリア機能を守るために分泌される大切なものです。ところが、皮脂が過剰になると、皮膚の常在菌であるマラセチア(カビの一種)が急増しやすくなります。このマラセチアが皮脂の成分のひとつであるトリグリセライドを分解し、「遊離脂肪酸」という炎症を引き起こす物質を生み出します。これがかゆみや赤みの直接的な引き金です。
つまり「皮脂の過剰分泌→マラセチアの増殖→炎症→かゆみ」という一連の流れが起きているわけです。
では、皮脂が増えすぎてしまう原因は何でしょうか? 主に以下の4つが挙げられます。
- 🔴 ホルモンバランスの乱れ:男性ホルモン(テストステロン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)が皮脂腺を直接刺激します。思春期・月経前・ストレス時に悪化しやすいのはこのためです。
- 🔵 ビタミンB群(B2・B6)の不足:脂質の代謝に欠かせないビタミンが不足すると、摂取した脂質がうまくエネルギーに変わらず、皮脂の過剰分泌を招きます。糖質・脂質の多い食事をしている方は特に注意が必要です。
- 🟡 ストレス・睡眠不足:交感神経が優位になるとコルチゾールやアドレナリンの分泌が増え、皮脂腺が刺激されます。睡眠不足は肌のターンオーバーも乱すため、二重に悪影響を与えます。
- 🟢 間違ったスキンケア(洗い過ぎ):過度な洗顔で必要な皮脂が取り除かれると、肌は危機を感じてさらに皮脂を大量分泌します。これが「インナードライ」の状態です。
ホルモンが原因の場合は漢方薬や内服薬が、ビタミン不足が原因の場合はビタミンB剤が有効です。
原因が複数重なっていることも多いですね。自分の生活習慣を振り返ることが、まず最初のステップになります。
参考:皮脂過剰・脂漏性皮膚炎の原因と薬の解説(一之江駅前ひまわり医院)
https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/seborrheic-dermatitis/
市販薬で「皮脂を直接ゼロにする薬」は存在しません。これが基本です。
ただし、皮脂分泌が増えている根本原因にアプローチすることで、過剰な分泌を落ち着かせることは十分に期待できます。市販薬には大きく3つの方向性があります。
① ビタミンB群含有薬(チョコラBBプラスなど)
ビタミンB2とB6は、脂質代謝に直接かかわる栄養素です。不足すると皮脂腺が必要以上に活発になり、かゆみのもとになる炎症が起きやすくなります。「疲れやすい」「口内炎がよくできる」という方は、体内のビタミンB群が枯渇しているサインかもしれません。チョコラBBプラス(エーザイ)は60錠で約1,000円前後と比較的手に入りやすく、脂漏性皮膚炎に悩む方が最初に試すことが多い市販薬のひとつです。
② 漢方薬(加味逍遙散・黄連解毒湯など)
「生理前に肌荒れが悪化する」「イライラすると顔がテカる」という場合、ホルモンバランスや自律神経の乱れが背景にある可能性が高いです。加味逍遙散はホルモンバランスの乱れに、黄連解毒湯はのぼせやすく炎症・赤みが強い方に向いています。漢方薬は体質(証)に合わせて選ぶことが大切です。
③ ヘパリン類似物質含有の保湿外用薬
「インナードライ」タイプの方—角層は乾燥しているのに表面だけ皮脂が浮く状態—には、外側から保湿してバリア機能を整える外用薬が有効です。皮膚のうるおいが補われると、過剰に出ていた皮脂が落ち着いてくることがあります。クリームとローションでは使用感が異なるため、塗る部位や肌質に合わせて選びましょう。
これは使えそうです。 自分の症状がどのタイプか見極めることが、市販薬選びの成否を左右します。
なお、膿をもつ強いニキビや、市販薬を2〜4週間続けても改善しない場合は、市販薬の対応範囲を超えた皮膚疾患の可能性があります。その際は自己判断を続けず、皮膚科に相談することを優先してください。
参考:薬剤師監修・皮脂を抑える市販薬12選(EPARKくすりの窓口)
市販薬で改善しない場合、皮膚科での治療が必要になります。
脂漏性皮膚炎や重度の皮脂過剰に対して、皮膚科では主に以下の薬が使われます。
脂漏性皮膚炎の悪化因子であるマラセチア菌を直接殺菌する薬です。有効成分のケトコナゾールはマラセチアに対して高い効果を示します。炎症が強い時期は効果が十分でないことがあるため、ステロイドと組み合わせて使われることも多いです。症状が落ち着いた後も続けて使うことで再発予防にもなります。
② ステロイド外用薬
赤みや強いかゆみを素早く抑えるのに最も有効な薬です。ただし、顔や頭皮は皮膚が薄いため、比較的弱いランクのものが選ばれます。長期連続使用には副作用リスクがあるため、症状が落ち着いたらニゾラールなどに切り替えるのが基本的な流れです。
③ プロトピック(タクロリムス)・コレクチム軟膏
もともとアトピー性皮膚炎の治療薬ですが、ステロイドで再発を繰り返す脂漏性皮膚炎にも使用されます。長期使用でも皮膚萎縮などのステロイド特有の副作用が少ない点が特徴です。塗り始めの数日はヒリヒリ感を感じることがあります。
④ イソトレチノイン(重症ニキビ・皮脂過剰の切り札)
皮脂腺そのものを縮小させる唯一の内服薬です。0.5〜1.0mg/kg/日の投与で、6週間以内に皮脂排泄量が最大90%程度劇的に減少すると報告されています(豊洲イーウェルクリニック)。一般的な外用薬やスキンケアで改善しない重度の皮脂過剰に使われます。ただし日本では未承認薬であり、自由診療(保険適用外)での提供となります。副作用として乾燥(唇・皮膚・目)、光線過敏症などが90%以上の使用者に見られるため、必ず医師の管理下で使用することが条件です。
治療薬の選択は症状の重さと部位によって大きく変わります。
なお、脂漏性皮膚炎は日本の皮膚科受診者の約2〜3%が抱える疾患で、決して珍しいものではありません。
参考:脂漏性皮膚炎の薬・治療法詳解(新宿駅前クリニック)
https://www.shinjyuku-ekimae-clinic.info/hihuka/shirouseihihuen.html
薬を使っていても、スキンケアが間違っていると効果が半減します。
最も多いミスが「洗い過ぎ」です。皮脂を抑えたい気持ちから1日に何度も洗顔・洗髪をすると、肌のバリアが失われ、脳が「緊急事態」と判断してさらに皮脂の分泌を増やしてしまいます。医師の間でも「洗い過ぎない」ケアの重要性が広まっており(日本経済新聞・朝日新聞など複数メディアで報告)、洗顔は朝夕の1日2回が基本原則です。
正しいスキンケアの要点をまとめると:
- 🧴 洗顔は低刺激の弱酸性洗顔料を使い、泡を肌の上で転がすようにやさしく洗う
- 💧 洗顔後は必ず保湿を行う。油分が多い時期は油分が少ないローション、乾燥が気になる時はやや油分のある乳液を使い分ける
- 🌞 紫外線対策を怠らない。紫外線は皮脂を遊離脂肪酸に変換し、脂漏性皮膚炎を悪化させます。紫外線散乱剤タイプのUV下地が肌への負担を抑えやすいです
- 🚫 かゆくてもこすらない・かかない。傷ができるとそこから細菌が入り、炎症が拡大します
- 😷 マスクによる摩擦が原因のかゆみには、インナーマスクを活用する方法があります
かゆみがある部分には特に刺激を与えないことが大原則です。
スキンケアの見直しだけで皮脂トラブルが改善するケースも少なくありません。薬と並行して生活習慣を整えることが、根本的な改善につながります。
薬やスキンケアだけでなく、「食べるもの」も皮脂分泌に直結しています。意外に見落とされがちな視点です。
脂漏性皮膚炎の患者では、ビタミンB2・B6・ビオチン(ビタミンH)が不足しているという研究報告があります。これらのビタミンは体内に蓄積できないため、毎日の食事や薬・サプリメントで継続的に補う必要があります。また、糖質の多い食事をしていると代謝のためにビタミンB群が大量消費されるため、食事の内容を見直すことが皮脂コントロールに有効です。
アメリカの医療ガイドライン「Whole Health Library」では、脂漏性皮膚炎の予防として次の食事アプローチが紹介されています。
- 🥗 地中海食を取り入れる:精製された炭水化物を減らし、野菜・魚・オリーブオイルを中心にした食事
- 🍺 酵母の増殖を助ける食品を控える:パン・チーズ・ビール・ワインなど(マラセチアの増殖を助長する可能性がある)
- 🐟 不飽和脂肪酸を積極摂取:オメガ3脂肪酸(青魚・亜麻仁油など)は抗炎症作用があり、皮膚炎の改善を助けます
- 🥚 ビタミンB2・B6・ビオチンを意識する:レバー・卵・ほうれん草・トマト・キャベツなどが補給源として有効
食事だけですぐに効果が出るわけではありませんが、薬の効果を底上げする「土台づくり」として非常に重要です。
「薬を飲んでも繰り返す」という方は、食事の内容を見直してみると突破口が見つかることがあります。市販のビタミンB2・B6含有薬(例:チョコラBBプラス)をまず試しながら、並行して食事内容を整えると相乗効果が期待できます。薬と食生活は両輪です。
参考:脂漏性皮膚炎の予防・食事アプローチ(米VA Whole Health Library)
https://www.va.gov/WHOLEHEALTHLIBRARY/tools/seborrheic-dermatitis.asp
参考:脂漏性皮膚炎とビタミンBの関係(第一三共ヘルスケア・ひふ研)
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hifuken/symptom/shirouseihifuen/
市販薬を試しても改善しない場合は、放置が危険です。
脂漏性皮膚炎は慢性的に再発する疾患であり、特に成人では正しい治療をしないと症状が長期化します。下記のサインが当てはまる場合は、皮膚科への受診を優先してください。
| 受診すべきサイン | 考えられる理由 |
|---|---|
| 市販薬を2〜4週間続けても変化なし | 皮膚科疾患の可能性、薬が合っていない |
| 膿をもつ赤く痛いニキビが多発 | 炎症が市販薬の対応範囲を超えている |
| 頭皮・顔・耳周りに繰り返し症状が出る | 脂漏性皮膚炎の慢性化・再発パターン |
| 皮膚に目立った異常がないのにかゆみが続く | 肝臓・腎臓・甲状腺など内科的疾患の可能性 |
| ステロイドを自己判断で長期使用している | 皮膚萎縮・毛細血管拡張などの副作用リスク |
皮膚科で脂漏性皮膚炎を治療する費用は、3割負担の場合で診察料・薬代込みおよそ2,000円前後が目安です。市販薬を数ヶ月分買い続けるよりもコスト効率が高いケースもあります。
また、かゆみの原因が「酒さ」「接触性皮膚炎」「アトピー性皮膚炎」など別の疾患である可能性もあり、見た目だけでは判別が難しいことがあります。自己判断での塗り薬の長期使用は、症状の悪化や誤診の原因になるリスクがあります。
受診の決断が遅れると、慢性化が進んで治療期間が長くなります。 2〜4週間を一つの判断基準にして、早めに動くことが健康と医療費の両方を守ることにつながります。
参考:かゆみが止まらない場合の内科的原因について(大阪・淀川区 よりおかクリニック)
https://www.osaka-yorioka-cl.com/the-itching-wont-stop/