

保湿クリームを毎日塗っても、かゆみが止まらないのはあなたの塗り方が原因です。
「ポリグルタミン酸(PGA)」という名前を初めて聞いた方も、その正体を知ればきっと親しみが湧くはずです。これは、毎朝の朝食でも食べられている「納豆」のネバネバ、あの糸引きの主成分そのものです。アミノ酸の一種であるグルタミン酸が30〜5,000個も鎖のようにつながった天然のポリペプチドで、納豆菌が大豆を発酵させる過程でつくりだします。
人や環境への毒性がなく、水溶性で生分解性にも優れているため、化粧品・医薬品・食品と幅広い分野に活用されています。つまり安全性は高い成分です。
かゆみで悩む乾燥肌の方にとってうれしいのは、この成分が「ただ水分を引き寄せるだけ」ではない点です。資生堂の研究によると、ポリグルタミン酸に含まれる「D-グルタミン酸」は幼児の肌に多く存在しますが、20代以降は約3分の1にまで急激に減少することが明らかになっています。さらに実験で意図的に荒らした肌にD-グルタミン酸を塗ると、わずか4時間後にバリア機能が回復したという驚くべきデータも報告されています。
ヒアルロン酸は1gで約6リットルの水を抱えると言われていますが、ポリグルタミン酸は最大で自重の5,000倍もの水分を保持できるとされており、保水力の比較ではヒアルロン酸の2〜10倍と複数の研究で示されています。これはすごい数字ですね。
乾燥してかゆい肌に外から保湿剤を塗り続けても一時的なケアに過ぎませんが、ポリグルタミン酸は肌そのものが水分を保持する力を取り戻すよう働きかける点が、他の一般的な保湿成分との大きな違いです。
そもそも、なぜ肌が乾燥するとかゆくなるのかをまず整理しておきます。肌の一番外側にある角質層は、セラミドなどの細胞間脂質・NMF(天然保湿因子)・皮脂膜という3層構造でバリアを形成しています。この3層がそろっていれば、外からのホコリや花粉といった刺激物をはじきながら、内側の水分も逃がしません。
バリアが壊れると一変します。皮膚の内側から水分がどんどん蒸発し、同時に外部刺激が角質の奥まで届くようになります。その刺激が神経に触れると「かゆみ」として認識されるのです。つまり乾燥とかゆみは切り離せない関係にあります。
NMFはその大部分をアミノ酸が占めており、ポリグルタミン酸(特に低分子タイプ)はこのNMFの産生を促進する働きがあることが研究で示されています。NMFが増えれば、角質層が自力で水分をキープできるようになります。これが根本的な保湿です。
さらに見逃せないのが「ヒアルロニダーゼ阻害作用」です。ヒアルロニダーゼとは、炎症が起きたときに活性化し、皮膚組織を壊す酵素のこと。この酵素が暴れると炎症が拡大し、かゆみもひどくなります。低分子ポリグルタミン酸はこのヒアルロニダーゼの活性を強く阻害するため、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状の緩和にも期待できると報告されています。
バリア機能の回復が条件です。かゆみをゼロにするためには、一時的に「かゆみを止める」のではなく、バリアを再建して外部刺激が届かない肌をつくることが目標になります。ポリグルタミン酸はその土台を作る役割を担っています。
ポリシー化粧品「ポリ-γ-グルタミン酸Naの効果」(D-グルタミン酸によるバリア機能回復とNMF活性化のデータを含む詳細解説)
ポリグルタミン酸には「高分子タイプ」と「低分子タイプ」の2種類があり、それぞれ働き方が大きく異なります。これを知らずに使っていると、期待した効果が得られない可能性があります。
高分子ポリグルタミン酸は分子が大きいため、肌の奥には浸透せず、肌表面に薄い膜を張って水分の蒸発を防ぎます。いわば「ラップで肌を包む」ような働きです。一方、低分子ポリグルタミン酸は分子量1,000以下に分解されており、角質層の内側へ浸透することができます。これにより、前述のNMF産生促進やコラーゲン減少の抑制、ヒアルロニダーゼ阻害といった「内側からの保湿」効果が発揮されます。
ヒアルロン酸の分子量はおよそ100万〜200万程度ですが、低分子ポリグルタミン酸はそれの約1/5以下のサイズです。東京ドームを「高分子ヒアルロン酸」とするなら、低分子ポリグルタミン酸はテニスコート1面分ほどの大きさのイメージで、桁違いに小さいことがわかります。
化粧品の成分表示では「ポリグルタミン酸」や「ポリ-γ-グルタミン酸Na」と記載されています。かゆみや乾燥の根本改善を目的とするなら、「低分子」と明記された製品、またはセラミドとのセット処方を選ぶとより効果的です。低分子タイプが肌の内側を整え、高分子タイプが外側から蓋をするという二重の保湿が理想といえます。
つまり高分子と低分子の使い分けが重要です。乾燥かゆみが強い時期は、低分子PGA配合の美容液を化粧水の直後に使い、その上から高分子PGA配合のクリームで蓋をするという「重ねづけ」の戦略が有効です。
「肌を潤すバイオのちから」岩本ら(2013年・生産と技術誌)(低分子γ-PGAの皮膚浸透性とNMF増加に関する学術論文)
ポリグルタミン酸とセラミドはよく「最強コンビ」と呼ばれますが、その理由はそれぞれが担うバリア機能の「役割分担」にあります。整理してみましょう。
| 成分 | 主な働き | 肌の層 |
|---|---|---|
| 低分子ポリグルタミン酸 | NMF産生促進・内側から保湿 | 角質層内部 |
| 高分子ポリグルタミン酸 | 肌表面に皮膜を形成・水分蒸発防止 | 肌表面 |
| セラミド | 細胞間脂質を補填・バリアの「壁」を修復 | 角質細胞の間 |
セラミドは角質細胞と細胞の「隙間」を埋めるセメントのような役割を担っています。乾燥肌やアトピー気味の肌はこのセメント部分が薄く、隙間から水分が逃げてしまいます。ここをセラミドで補修し、さらに上からポリグルタミン酸で肌表面に膜を張ることで、2方向から水分を閉じ込める仕組みになります。
かゆみの原因となるバリア破綻を防ぐには、この「セメント+ラップ」の二重ガードが欠かせません。スキンケアの順番としては「化粧水→セラミド配合美容液→ポリグルタミン酸配合クリーム」が理想的です。セラミドを先に入れてバリアの素材を補い、その後にポリグルタミン酸で蓋をするイメージです。
これは使えそうです。特に冬場の乾燥・かゆみが気になる方は、入浴後5分以内というゴールデンタイムに素早くこの順番でケアを完結させることを目安にしてみてください。時間を空けてしまうと、肌から水分がどんどん蒸発してしまいます。
この組み合わせを試したい場合は、「ポリグルタミン酸+セラミド」を同時配合したオールインワンジェルも市販されており、手順を簡略化したい方にとっては一石二鳥です。まずは1本で試してみるという選択肢も検討してみてください。
堺クリニック「NMF(天然保湿因子)は肌の保湿に欠かせない成分」(NMFの仕組みとセラミドとの役割の違いをわかりやすく解説)
ポリグルタミン酸配合の化粧品を買ったのに「あまり効果を感じない」という声が少なくありません。その多くは、使い方の問題です。意外ですね。
最もよくある失敗は「洗顔後、間を置いてから塗る」ことです。洗顔直後は肌が一時的にうるおっているように感じますが、そのまま放置すると10分足らずで洗顔前よりも水分量が下がるというデータがあります。特に乾燥肌の方は、洗顔後1〜2分以内にスキンケアを始めることが鉄則です。
次に多いのが「薄塗りすぎ」です。高分子ポリグルタミン酸が肌表面に有効な皮膜を形成するには、ある程度の量が必要です。顔全体に均一にのばせる量として、ジェルやクリームタイプは「500円玉大よりやや多め」を目安にしてください。特に乾燥しやすいフェイスライン・首筋・腕の外側は重ねづけが有効です。
また、見落とされがちなのが「摩擦」の問題です。乾燥してかゆい肌は角質が薄くダメージを受けやすい状態にあります。ゴシゴシとなじませると、せっかく形成しかけた皮膜が壊れてしまいます。手のひらで軽く押さえるように密着させる「ハンドプレス法」が正しい塗り方です。
最後にもう一点、内側からのケアも忘れないでください。ポリグルタミン酸を含む納豆は、食べることでカルシウム吸収促進・免疫活性化・腸内環境の改善といった全身的な効果も期待できます(味の素の研究によりカルシウム吸収促進が実証済み)。スキンケアと食事の両面から取り組むことで、かゆみ体質の根本改善につながります。
健康な肌は外と内からつくるが基本です。ポリグルタミン酸は化粧品としてだけでなく、食品としても毎日の生活に取り入れやすい成分というのは、他の美容成分にはないユニークな強みと言えるでしょう。
全国納豆協同組合連合会「ポリグルタミン酸(美容・美肌効果)」(食品としてのポリグルタミン酸の健康・美肌効果についての解説)

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