

市販のシャンプーで頭皮のかゆみをケアしていると、かえって症状が長引くことがあります。
頭皮のかゆみやフケが出ると、「とりあえず市販薬」で対処してしまいがちです。しかし頭皮湿疹には複数の種類があり、原因がまったく異なります。間違った薬を使い続けると、症状が改善どころか悪化することもあるため、まずは自分の状態をおおまかに把握しておくことが大切です。
最も頻度が高いのが「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」です。皮脂の分泌が多い頭皮や顔(眉間・鼻まわり・耳の後ろ)に発症しやすく、湿ったベタつくフケや黄色っぽいかさぶたが特徴です。皮膚に常在するカビ(マラセチア菌)が増殖することで炎症が起き、かゆみを引き起こします。日本の皮膚科受診患者の2〜3%がこの病気だとされており、決して珍しくありません。
次に多いのが「接触皮膚炎(かぶれ)」です。シャンプー・ヘアカラー・整髪料に含まれる成分が原因で起こります。新しいヘアケア製品に変えた後から症状が出始めた場合は、この可能性が高いです。製品を替えることで改善しますが、アレルギーの原因特定にはパッチテストが必要な場合もあります。
「アトピー性皮膚炎」は頭皮にも発症します。強いかゆみと乾燥したカサカサのフケが特徴で、耳周りや首筋にも症状が出やすいです。良くなったり悪くなったりを繰り返す点が他の湿疹と異なります。
「尋常性乾癬(かんせん)」も頭皮湿疹の原因になり得ます。銀白色の厚いフケと、境界がはっきりした赤い盛り上がりが特徴です。乾癬は免疫系の異常が関与しており、市販薬では対応できないため、皮膚科での治療が必須となります。
つまり、4種類が原因ということですね。
| 疾患名 | フケの特徴 | かゆみの程度 | 市販薬の効果 |
|---|---|---|---|
| 脂漏性皮膚炎 | 黄色っぽくベタつく | 軽度〜中等度 | 限定的 |
| 接触皮膚炎 | 原因物質に触れた部分 | 強め | 原因除去が先決 |
| アトピー性皮膚炎 | 乾燥・カサカサ | 非常に強い | 不十分 |
| 尋常性乾癬 | 銀白色で厚い | 中等度 | ほぼ対応不可 |
見た目がよく似ているため、自己診断は難しいのが正直なところです。症状が2週間以上続く・繰り返す場合は、皮膚科での確認が最短ルートと言えます。
参考:脂漏性皮膚炎の症状・原因・治療薬について詳しく解説した医療機関の記事です。
脂漏性皮膚炎の原因や薬・日常の治し方について【頭皮・顔】 – 一之江駅前ひまわり医院
頭皮湿疹の治療薬にはいくつかの種類があります。症状や原因によって使い分けられますが、中には市販薬では買えないものがあることを覚えておいてください。
① ステロイド外用薬
赤みやかゆみを速やかに抑える代表的な薬です。頭皮には軟膏やクリームが塗りにくいため、ローションタイプが処方されるのが一般的です。市販薬にも「ウィーク〜ミディアム」強度のステロイドは販売されていますが、皮膚科では症状に合わせて「ストロング〜ベリーストロング」クラスの強度を選択できます。処方薬のほうが対応できる症状の幅が広く、即効性も高い傾向があります。
市販ステロイドの使用は5〜6日程度の短期間に限られています。それを超えて使い続けると、皮膚が薄くなるリスクがあります。
脂漏性皮膚炎の根本原因であるマラセチア菌に直接作用する薬です。ここが重要なポイントで、日本ではケトコナゾールを含む薬は処方薬のみであり、ドラッグストアでは買えません。症状が改善した後も再発予防として定期的に使用できる点が特徴で、長期間使用しても副作用が少ないとされています。抗真菌薬が必要な場合は、皮膚科の受診が唯一の手段です。
根本治療には処方薬が必須です。
③ コムクロシャンプー
2017年に登場した、シャンプータイプのステロイド薬です。有効成分は「クロベタゾールプロピオン酸エステル」で、ステロイド最強クラス(ストロンゲスト)に分類されます。洗髪の15分前に乾いた頭皮に塗布し、その後シャンプーとして洗い流す「短時間接触療法」で使用します。頭皮全体に広がった湿疹や乾癬に特に有効で、2021年から頭皮の湿疹・皮膚炎にも保険適用が追加されました。3割負担の場合、1本あたりの薬剤費は約900円台(初診・再診料は別)です。これは市販薬を何本も試し続けるコストと比べると、大幅に安い場合があります。
④ プロトピック・コレクチム(免疫抑制薬)
ステロイドや抗真菌薬で再発を繰り返す場合に使われます。長期使用しても副作用が少ないのが特徴ですが、塗り始め数日間はヒリヒリ感が出ることがあります。これらも処方薬です。
⑤ 抗ヒスタミン薬(内服)
かゆみが非常に強く、夜眠れないほどの場合に飲み薬が処方されます。かゆみで掻き壊すと炎症がさらに悪化するため、症状が強い段階では特に重要な薬です。眠気の出にくいタイプもあるので、日中でも使いやすくなっています。
参考:皮膚科の処方薬と市販薬の具体的な違いについてまとめた記事です。
市販薬と皮膚科の薬、何が違うの? – 五条桃谷皮膚科クリニック
処方薬をもらっても、塗り方が間違っていると十分な効果が出ません。頭皮へのローション塗布には、体の他の部位とは異なるコツがあります。意外に多い「やってしまいがちな失敗」と合わせて、正しい手順を確認しておきましょう。
正しいローションの塗り方:4ステップ
1. タオルドライ後に塗る:完全に乾かすより、タオルでしっかり水分を拭いた「少しだけ湿った状態」のほうが薬が馴染みやすいです。
2. 髪を分けて地肌を出す:2cm間隔ほどで分け目を作り、ローションを直接地肌に垂らします。毛に吸収されてしまうと地肌まで届きません。
3. 指の腹で優しく押し込む:爪を立てると傷がついて炎症が悪化します。爪は立てず、指の腹で軽くなじませるようにしてください。
4. 容器の口を直接頭皮に当てない:容器が細菌で汚染されると、薬の品質が落ちます。
爪を立てずに、がポイントです。
よくある失敗パターン
最もよく見られるのが「髪の上からローションを垂らして終わり」にしてしまうケースです。ローションの大部分が髪の毛に吸われてしまい、肝心の頭皮にほとんど届いていません。これでは量を使っても効果が薄く、薬が無駄になってしまいます。
次に多いのが「症状が和らいだからすぐにやめてしまう」パターンです。脂漏性皮膚炎は再発しやすい病気で、一時的に良くなっても原因菌が残っている場合があります。医師の指示通り継続使用することで、再発予防の効果が高まります。
また、「塗り薬をこすりつけるように伸ばす」のも逆効果です。ステロイドローションは、患部全体にテカる程度・ティッシュが貼りつくくらいの量が適量とされています。少なすぎても多すぎてもいけません。
コムクロシャンプーの場合は使い方がやや特殊です。必ず「乾いた頭皮」に15分前に塗布し、その後シャンプーとして洗い流す手順を守ることが重要です。濡れた頭皮に塗ると有効成分が薄まり、効果が落ちます。
正しい塗り方さえ守れば、薬の効果を最大限に引き出せます。
参考:横浜市が公開する外用薬・保湿剤の塗り方のコツ(PDF資料)です。頭皮へのローション塗布法について図解で確認できます。
「どのくらい症状が続いたら病院に行くべきか」と迷っている方は多いです。目安を知っておくと、受診のタイミングを逃しにくくなります。
受診を検討すべきサイン
- 市販薬を2週間使っても改善しない、または悪化している
- 頭皮にかさぶたや出血が見られる
- 以前より明らかに抜け毛が増えた(脂漏性皮膚炎が進行すると脂漏性脱毛症を併発するケースがある)
- フケやかゆみが年に3回以上繰り返す
- 頭皮以外の部位(顔・首・胸など)にも同様の症状が広がっている
- ジクジクとした液体(滲出液)が出ている
抜け毛の増加は要注意です。
受診前に準備しておくと役立つこと
皮膚科では問診が重要です。以下の点をあらかじめメモしておくと診察がスムーズになります。
- いつから症状が始まったか
- フケの性質(ベタついているか、乾いているか)
- 今まで試した市販薬と使用期間
- アレルギー歴・現在使用中の薬
- 普段使っているシャンプーやヘアケア製品の名前
- 生活習慣(睡眠時間・ストレスの有無・食事内容)
何科を受診すれば良いかというと、基本的には皮膚科です。頭皮の脂漏性皮膚炎が疑われる場合も、アトピー性皮膚炎が疑われる場合も、皮膚科が対応します。診断に応じてダーモスコピー(皮膚を数十倍に拡大する検査機器)や真菌検査(フケや皮膚を採取してマラセチア菌の有無を確認する検査)が行われることもあります。いずれも痛みのない検査なので過度に心配する必要はありません。
保険適用で受診できるため、初診・処方薬込みでも思ったほど費用はかかりません。コムクロシャンプーであれば3割負担で薬代が約900円台、一般的なローション処方も同程度の負担感です。市販薬を何度も試し続けるより、むしろ経済的なケースが多いです。
参考:フケやかゆみが市販薬で治らない場合に皮膚科でどのような診察・検査が行われるかを詳しく解説した、皮膚科専門医による記事です。
フケとかゆみが市販薬で治らない…皮膚科へ行く目安と病院での治療法 – こばとも皮膚科(大垣中央病院関連)
薬で症状を抑えても、生活習慣が乱れたままでは再発を繰り返します。これは脂漏性皮膚炎に特に当てはまります。薬以上に再発予防に効果的なのが、日常のケアです。
シャンプーの方法を見直す
洗髪のやり方は意外と見落とされがちです。まず、お湯の温度は38〜40℃が理想とされています。熱すぎるお湯は必要な皮脂まで洗い流してしまい、バリア機能を低下させます。シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って優しく頭皮をマッサージするように洗うのが基本です。爪を立ててゴシゴシ洗う習慣がある方は要注意です。
すすぎは最低でも3〜5分かけて行いましょう。洗い残しが残ると、それ自体が刺激になります。洗髪後はドライヤーでしっかり乾かすことも重要で、濡れたまま放置するとマラセチア菌が繁殖しやすい高温多湿の環境になります。
食事と栄養素の見直し
脂漏性皮膚炎の悪化に関係する栄養として、ビタミンB2・B6・ビオチン(ビタミンH)の不足が挙げられます。ビタミンB2はレバーや卵・乳製品、B6はマグロやバナナ・じゃがいもに多く含まれます。逆に、白米・パン・お菓子などの精製炭水化物、チーズ・ワイン・ビールなどは皮脂分泌を促進するとされており、摂りすぎに注意です。
ビタミン不足に注意すれば大丈夫です。
ストレス・睡眠のコントロール
ストレスは交感神経を刺激し、皮脂の分泌を増やす要因になります。睡眠不足も同様に頭皮環境を悪化させます。完全にストレスをゼロにするのは難しいですが、週3〜4回・30分程度の有酸素運動(ウォーキングや水泳など)は、ストレス軽減と免疫機能の維持に効果的とされています。就寝2時間前のスマートフォン使用を控えるだけでも、睡眠の質が改善しやすくなります。
紫外線対策も頭皮に必要
紫外線は皮脂を遊離脂肪酸に変換し、脂漏性皮膚炎を悪化させる原因になります。外出時は帽子の着用が有効です。生え際や頭頂部が特に紫外線を受けやすいため、夏場は意識的にガードする習慣をつけておきましょう。
再発を防ぐ「プロアクティブ療法」という考え方
これはあまり知られていませんが、脂漏性皮膚炎の再発予防において有効とされているのが「プロアクティブ療法」という方針です。症状がなくなった後も、週1〜2回など定期的に抗真菌薬(ニゾラール® ローション等)を患部に塗り続けることで、マラセチア菌の再増殖を抑制し、再発間隔を延ばす効果が期待できます。「治ったからやめる」ではなく、「治っている間も定期的に使い続ける」という考え方です。具体的な頻度は医師に確認した上で実践してください。
参考:脂漏性皮膚炎が治らない・繰り返す原因と、慢性化を防ぐ維持療法について詳しく解説した記事です。
脂漏性皮膚炎が治らない・繰り返す原因|慢性化を防ぐ維持療法と生活習慣 – 沖縄の皮膚科