ビフィドバクテリウムが肌の炎症や痒みを改善する効果

ビフィドバクテリウムと肌の痒み改善効果

ビフィドバクテリウム菌の基本情報
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菌の分類

Actinomycetota門 Actinomycetes綱 Bifidobacteriales目 Bifidobacteriaceae科に属する善玉菌

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主な生息場所

主にヒトの腸管内に生息し、日本人成人の腸内細菌の上位を占める

健康への効果

腸内環境の改善、免疫機能の調整、炎症抑制など様々な健康効果がある

皮膚の痒みに悩まされている方は多いのではないでしょうか。その原因はさまざまですが、近年の研究で腸内環境と皮膚の健康には密接な関係があることがわかってきました。特に注目されているのが、ビフィドバクテリウム(ビフィズス菌)と呼ばれる腸内細菌です。

 

ビフィドバクテリウムは、主にヒトの腸管内に生息する善玉菌の一種で、日本人成人の腸内細菌の中でも占有率が上位に入る身近な存在です。特にビフィドバクテリウム シュードカテヌラータムは、日本人の腸内から高頻度で検出される菌種として知られています。

 

この菌は1979年にイタリアのスカルドヴィらによって新種として報告されました。名前の由来は、pseudoが「偽の」、catenulatumが「鎖状に連なる」という意味で、先に報告されていたビフィドバクテリウム カテヌラータムの菌体形状と似ていることから名付けられました。

 

ビフィドバクテリウムは腸内環境を整えるだけでなく、免疫系の調整や炎症の抑制にも関わっており、これが皮膚の健康状態にも影響を与えていることが最新の研究で明らかになってきています。

 

ビフィドバクテリウムの種類と肌への効果

ビフィドバクテリウム属には様々な種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。主な種類とその特徴を見ていきましょう。

  1. ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)
    • 最も研究が進んでいる種の一つで、森永乳業が開発したBB536株は、皮膚トラブルと便秘の改善に効果があることが臨床試験で示されています。

       

    • 8週間の継続摂取により、被験者の肌の「つや」「はり」「毛穴の目立ち」「赤み」「乾燥」「化粧のり」「にきび」などの自覚症状が改善されました。

       

  2. ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(B. pseudocatenulatum)
    • 日本人の腸内から高頻度で検出される菌種で、キシラン類の利用性が高いという特徴があります。

       

    • キシラン類はコメやムギなどの穀物に豊富に含まれており、日本人の食生活に適した菌と言えます。

       

  3. ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B. breve)
    • 主に乳児の腸管に多く見られる菌種です。

       

    • 日清食品グループが保有するN708株は、ストレスによる下痢を軽減する効果が臨床試験で実証されています。

       

    • 炎症を抑制する効果があり、これが間接的に皮膚の炎症や痒みの軽減にも寄与すると考えられています。

       

これらのビフィドバクテリウム菌は、腸内環境を整えることで免疫系のバランスを調整し、体全体の炎症反応を抑制する働きがあります。その結果、皮膚の炎症や痒みといった症状の改善にも効果を発揮するのです。

 

ビフィドバクテリウムと腸内環境が痒みに与える影響

腸内環境と皮膚の健康には「腸-皮膚軸」と呼ばれる密接な関係があります。この関係について詳しく見ていきましょう。

 

腸内環境の乱れが皮膚に与える影響
腸内環境が乱れると、以下のような経路で皮膚の健康に悪影響を及ぼします。

  1. 免疫系の過剰反応

    腸内細菌のバランスが崩れると、免疫系が過剰に反応し、全身の炎症反応が高まります。これが皮膚の炎症や痒みの原因となることがあります。

     

  2. 腸の透過性亢進

    腸内環境の悪化により腸壁の透過性が高まると、本来は体内に入るべきでない物質が血流に入り込み、アレルギー反応や炎症を引き起こすことがあります。

     

  3. 有害物質の産生

    悪玉菌が優勢になると、有害な代謝産物が増加し、これが血流を通じて皮膚に到達すると炎症や痒みを誘発する可能性があります。

     

ビフィドバクテリウムによる改善メカニズム
ビフィドバクテリウムは以下のようなメカニズムで皮膚の痒みを改善すると考えられています。

  1. 抗炎症作用

    ビフィドバクテリウムは炎症性サイトカインの産生を抑制し、抗炎症性サイトカインの産生を促進します。これにより全身の炎症反応が抑えられ、皮膚の炎症も軽減されます。

     

  2. 腸管バリア機能の強化

    腸内環境が整うことで腸壁の透過性が正常化し、アレルゲンや有害物質の侵入を防ぎます。

     

  3. 免疫調整作用

    ビフィドバクテリウムは免疫系のバランスを整え、過剰な免疫反応を抑制します。これがアレルギー反応や自己免疫反応の軽減につながります。

     

和歌山県立医科大学と森永乳業の共同研究では、皮膚トラブルがあり便秘がちな成人女性28名にビフィズス菌BB536を含む乳酸菌飲料を8週間継続摂取させたところ、排便状況の改善とともに肌状態も改善されました。特に注目すべきは、排便回数の増加とにきびの改善に有意な相関が見られたことで、これは腸内環境の改善が皮膚状態の改善に直接関与していることを示唆しています。

 

ビフィドバクテリウムを増やす食事と生活習慣

ビフィドバクテリウムを増やし、腸内環境を整えるためには、適切な食事と生活習慣が重要です。以下に効果的な方法をご紹介します。

 

ビフィドバクテリウムを増やす食品

  1. プレバイオティクス食品
    • オリゴ糖(バナナ、玉ねぎ、ニンニク、アスパラガスなど)
    • 食物繊維(全粒穀物、豆類、野菜、果物など)
    • キシラン類(米、麦などの穀物)
  2. プロバイオティクス食品
    • ヨーグルト(ビフィドバクテリウム菌が含まれているもの)
    • 発酵食品(味噌、漬物、キムチなど)
    • 乳酸菌飲料

特にビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムはキシラン類の利用性が高いため、日本人の食生活に合った米や麦などの穀物を積極的に摂ることで、この菌の増殖を促進できます。

 

生活習慣の改善ポイント

  1. 規則正しい食生活
    • 一日三食、規則正しく食事をとる
    • 食事の時間を十分に取り、よく噛んで食べる
    • 夜遅い食事を避ける
  2. ストレス管理
    • 適度な運動
    • 十分な睡眠
    • リラクゼーション法の実践
  3. 抗生物質の過剰使用を避ける
    • 抗生物質は腸内細菌のバランスを崩す可能性があるため、必要な場合のみ使用する
    • 抗生物質治療後はプロバイオティクスの摂取を検討する

これらの食事と生活習慣の改善により、腸内のビフィドバクテリウムを増やし、腸内環境を整えることができます。その結果、皮膚の炎症や痒みの改善にもつながるでしょう。

 

ビフィドバクテリウムと口腔内細菌の意外な関係

ビフィドバクテリウムといえば腸内細菌として知られていますが、実は口腔内にも存在し、そこでは意外な役割を果たしていることが最近の研究で明らかになっています。

 

口腔内のビフィドバクテリウムとむし歯の関係
東北大学の研究によると、虫歯の多い子供の口に多く見られるビフィドバクテリウム菌が、従来のむし歯菌であるミュータンス菌とは異なる働きによって糖から酸を作り出し、むし歯を誘発していることが分かりました。

 

この発見には、以下のような重要なポイントがあります。

  1. 酸の種類の違い
    • ミュータンス菌は糖から主に乳酸を作り出します。

       

    • ビフィドバクテリウム菌は酢酸と乳酸を4:1の割合で作り出します。

       

    • 酢酸は乳酸よりも歯の深くに浸透しやすいため、むし歯の進行スピードや大きさに影響する可能性があります。

       

  2. フッ化物への反応
    • 従来のむし歯菌であるミュータンス菌はフッ素によって酸の産生が抑制されます。

       

    • しかし、ビフィドバクテリウム菌にはフッ素が効かず、「ビフィドシャント」と呼ばれる特殊な代謝経路によって酸を作り続けます。

       

  3. 糖の種類による影響
    • ミュータンス菌は主に砂糖(スクロース)から酸を作ります。

       

    • ビフィドバクテリウム菌は乳糖(ラクトース)から酸を作るのが得意です。

       

    • これは母乳や牛乳などの乳製品がむし歯リスクに関与する可能性を示唆しています。

       

この研究は、むし歯予防の方法を見直す必要性を示す重要な発見です。特に小児のむし歯予防においては、砂糖だけでなく乳糖を含む食品にも注意を払う必要があるかもしれません。

 

口腔ケアと腸内環境の関連性
口腔内の細菌バランスと腸内環境には密接な関連があります。

  1. 細菌の移動
    • 口から摂取した食物とともに、口腔内の細菌も腸に運ばれます。

       

    • 口腔内の細菌バランスが乱れると、腸内環境にも影響を及ぼす可能性があります。

       

  2. 全身の健康への影響
    • 口腔内の炎症は全身の炎症反応を高める可能性があります。

       

    • これが皮膚の炎症や痒みにも関連する可能性があります。

       

  3. 総合的なアプローチの重要性
    • 皮膚の健康を考える際には、腸内環境だけでなく、口腔内の健康も考慮する必要があります。

       

    • 適切な口腔ケアと腸内環境の改善を組み合わせることで、より効果的に皮膚の炎症や痒みを改善できる可能性があります。

       

この意外な関連性は、体の健康が口腔から腸、そして皮膚まで連続的につながっていることを示しています。総合的な健康管理の重要性を再認識させる発見と言えるでしょう。

 

ビフィドバクテリウムを活用した皮膚炎や痒みの改善方法

ビフィドバクテリウムを活用して皮膚の炎症や痒みを改善するためには、内側からのアプローチと外側からのアプローチを組み合わせることが効果的です。

 

内側からのアプローチ:サプリメントと食品

  1. プロバイオティクスサプリメント
    • ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536など、研究で効果が確認されている菌株を含むサプリメントを選びましょう。

       

    • 摂取量と継続期間が重要です。臨床試験では8週間の継続摂取で効果が確認されています。

       

  2. 発酵食品の日常的な摂取
    • ビフィドバクテリウムを含むヨーグルト
    • 味噌、醤油、納豆などの発酵食品
    • キムチ、漬物などの乳酸発酵食品
  3. 食物繊維とプレバイオティクスの摂取
    • 水溶性食物繊維(オートミール、りんご、バナナなど)
    • 不溶性食物繊維(全粒穀物、豆類など)
    • オリゴ糖(玉ねぎ、ニンニク、アスパラガスなど)

外側からのアプローチ:スキンケアと生活習慣

  1. 適切な保湿ケア
    • 刺激の少ない保湿剤を選ぶ
    • 入浴後すぐに保湿する
    • セラミドやヒアルロン酸など、皮膚バリア機能を強化する成分を含む製品を使用する
  2. 刺激を避ける
    • 強い洗浄力のある石鹸や洗剤の使用を控える
    • 合成香料や防腐剤などの添加物が少ない製品を選ぶ
    • 極端な温度変化を避ける
  3. **ストレ
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