ビフィズス菌とアトピー性皮膚炎の症状改善効果

ビフィズス菌とアトピー性皮膚炎

ビフィズス菌がアトピー性皮膚炎に効果的な理由
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腸内環境の改善

ビフィズス菌は腸内環境を整え、免疫システムのバランスを調整することでアトピー症状の緩和に貢献します

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科学的に実証済み

複数の臨床試験により、ビフィズス菌の摂取がアトピー性皮膚炎の症状、特にかゆみを軽減することが確認されています

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乳幼児から大人まで効果的

年齢を問わず効果が認められており、特に成人型アトピー性皮膚炎に対する有効性が近年注目されています

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う慢性的な皮膚疾患で、多くの方が日常生活に支障をきたしています。従来の治療法としてはステロイド外用薬や保湿剤などが主流でしたが、近年、腸内環境とアトピー症状の関連性が注目され、プロバイオティクスの一種であるビフィズス菌が新たな対策として脚光を浴びています。

 

ビフィズス菌は私たちの腸内に自然に存在する善玉菌の一種で、腸内環境を整えることで免疫系のバランスを調整し、アレルギー症状の緩和に寄与すると考えられています。特に、アトピー性皮膚炎患者の腸内ではビフィズス菌の割合が健康な人と比べて少ないことが報告されており、ビフィズス菌を積極的に摂取することで症状改善が期待できるのです。

 

実際に、複数の研究機関による臨床試験では、ビフィズス菌の摂取がアトピー性皮膚炎の症状、特にかゆみを軽減させる効果が確認されています。これらの研究結果は、アトピーに悩む多くの方々に新たな希望をもたらしています。

 

ビフィズス菌LKM512の成人アトピー症状への効果

特に注目すべきは、ビフィズス菌LKM512という特定の菌株の効果です。この菌株は、成人型アトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において、顕著な効果を示しました。

 

2014年に発表された研究では、GCP(臨床試験の実施基準)に準拠した治験により、ビフィズス菌LKM512が成人型アトピー性皮膚炎の症状、特にかゆみを改善することが確認されました。この研究は8つの医療機関に通院する中等症から重症の成人型アトピー性皮膚炎患者44名を対象に実施されました。

 

患者がLKM512を8週間摂取した結果、かゆみの軽減およびQOL(生活の質)の改善効果が認められました。特に摂取8週目には、プラセボ(偽薬)を摂取したグループと比較して、LKM512摂取グループでかゆみのスコアが有意に改善されたことが報告されています。

 

この研究成果は米国アレルギー・喘息・免疫学会の学術誌「Annals of Allergy, Asthma & Immunology」に掲載され、ビフィズス菌LKM512は、2014年7月時点で、成人型アトピー性皮膚炎においてGCPに準拠した治験によって有効性が確証された唯一のプロバイオティクスとなりました。

 

さらに興味深いことに、LKM512のアトピー性皮膚炎軽減メカニズムとして、腸管内で産生されるキヌレン酸がかゆみ抑制に関与している可能性が示唆されています。これは、ビフィズス菌がただ単に腸内環境を整えるだけでなく、特定の生理活性物質を産生することで直接的にアトピー症状に働きかけている可能性を示しています。

 

ビフィズス菌M-16Vによるアトピー性皮膚炎の緩和作用

ビフィズス菌M-16Vも、アトピー性皮膚炎の症状緩和に効果があることが報告されています。特に乳幼児のアトピー性皮膚炎に対する効果が注目されていますが、大人のアトピー症状にも改善が見られたことが報告されています。

 

2003年に服部らによって発表された研究では、アトピー性皮膚炎の乳児15名にビフィズス菌M-16Vを与えたところ、腸内のビフィズス菌の割合が増加し、それに伴いアトピー性皮膚炎の症状が緩和されたことが確認されました。

 

この研究では、ビフィズス菌の摂取前と摂取後で腸内のビフィズス菌占有率とアトピー性皮膚炎症状スコアの変化を測定しており、ビフィズス菌の増加に伴い症状スコアが有意に改善したことが示されています。

 

ビフィズス菌M-16Vは、特に乳幼児の未熟な腸内環境を整える効果が高いとされていますが、成人においても同様の効果が期待できることから、年齢を問わずアトピー性皮膚炎の対策として注目されています。

 

ビフィズス菌の二重盲検試験による皮膚症状改善の実証

科学的な信頼性を高めるために、ビフィズス菌のアトピー性皮膚炎に対する効果は、二重盲検プラセボ比較試験という厳密な方法でも検証されています。

 

2009年に常盤薬品工業株式会社と鳥取大学医学部の研究チームが共同で行った研究では、成人アトピー性皮膚炎患者を対象にプロバイオティクス(ビフィズス菌)の二重盲検プラセボ比較試験を実施しました。

 

この試験では、生きているビフィズス菌を摂取した患者グループと、プラセボ(偽薬)を摂取した患者グループに分けて効果を比較しました。その結果、ビフィズス菌を摂取したグループでは皮膚症状が改善し、さらに腸内環境と皮膚状態に関わるQOL(生活の質)も改善したことが確認されました。一方、プラセボを摂取したグループでは効果は見られませんでした。

 

この研究成果は2009年12月に開催された「日本研究皮膚科学会 第34回年次学術大会・総会」で発表され、ビフィズス菌のアトピー性皮膚炎に対する効果が科学的に実証されました。

 

二重盲検試験は、被験者も研究者も誰がどちらのグループに属しているかわからない状態で行われる最も信頼性の高い試験方法の一つです。この方法で効果が確認されたことは、ビフィズス菌のアトピー性皮膚炎に対する効果が偶然や心理的な要因ではなく、実際に生理学的な効果であることを強く示唆しています。

 

ビフィズス菌とアトピーの関係:腸脳皮膚連関の視点から

最近の研究では、「腸脳皮膚連関」という新しい概念が注目されています。これは、腸内環境が脳を介して皮膚の状態に影響を与えるという考え方です。ビフィズス菌とアトピー性皮膚炎の関係もこの観点から理解することができます。

 

腸内に存在するビフィズス菌などの善玉菌は、短鎖脂肪酸などの代謝産物を産生します。これらの物質は腸管免疫系に作用し、全身の免疫バランスを調整します。また、腸内環境は迷走神経などを通じて脳と双方向に情報をやり取りしており、脳はさらに神経伝達物質やホルモンを介して皮膚の状態に影響を与えます。

 

アトピー性皮膚炎患者では、この腸脳皮膚連関のバランスが崩れていることが多く、腸内環境の乱れが免疫系の過剰反応を引き起こし、皮膚症状として現れると考えられています。

 

ビフィズス菌を摂取することで腸内環境が改善され、免疫系のバランスが整うことで、結果的にアトピー性皮膚炎の症状が緩和されるというメカニズムが想定されています。特に、ビフィズス菌が産生するキヌレン酸などの物質が、直接的にかゆみを抑制する効果を持つことも明らかになってきており、これが症状改善の一因と考えられています。

 

この腸脳皮膚連関の視点は、アトピー性皮膚炎を単なる皮膚の疾患としてではなく、全身の免疫バランスや腸内環境の問題として捉え直すことを促しており、治療アプローチにも新たな可能性をもたらしています。

 

ビフィズス菌の効果的な摂取方法とアトピー対策の総合的アプローチ

ビフィズス菌をアトピー対策として効果的に取り入れるためには、適切な摂取方法と他の対策との組み合わせが重要です。

 

まず、ビフィズス菌の摂取方法としては、サプリメントや発酵食品が挙げられます。研究で効果が確認されているLKM512やM-16Vなどの特定の菌株を含むサプリメントを選ぶことで、より効果的にビフィズス菌を摂取することができます。また、ヨーグルトや乳酸菌飲料などの発酵食品も、ビフィズス菌の供給源として有効です。

 

ただし、ビフィズス菌は胃酸や胆汁酸などの消化液に弱いため、腸まで生きて届くように工夫された製品を選ぶことが重要です。また、ビフィズス菌の餌となるオリゴ糖などのプレバイオティクスを一緒に摂取することで、腸内でのビフィズス菌の定着と増殖を促進することができます。

 

さらに、アトピー対策としては、ビフィズス菌の摂取だけでなく、以下のような総合的なアプローチが効果的です。

  1. 食生活の改善。
    • 抗炎症作用のある食品(オメガ3脂肪酸を含む魚、オリーブオイルなど)を積極的に摂取
    • 加工食品や精製糖、トランス脂肪酸の摂取を控える
    • 食物アレルギーがある場合は、アレルゲンとなる食品を避ける
  2. スキンケア。
    • 保湿を徹底し、皮膚のバリア機能を高める
    • 刺激の少ない石鹸や洗剤を使用する
    • 入浴後は速やかに保湿する
  3. 生活環境の整備。
    • ダニやカビなどのアレルゲンを減らす
    • 適切な湿度と温度を維持する
    • ストレスを軽減する方法を取り入れる
  4. 医療的アプローチ。
    • 必要に応じて医師の指導のもとでステロイド外用薬などを使用
    • 症状が重い場合は、免疫抑制剤や生物学的製剤などの治療を検討

これらの対策をビフィズス菌の摂取と組み合わせることで、アトピー性皮膚炎の症状を総合的に管理し、QOLの向上を図ることができます。

 

アトピー性皮膚炎は個人差が大きく、効果的な対策も人によって異なります。自分に合った方法を見つけるためには、医師や栄養士などの専門家に相談しながら、継続的に取り組むことが大切です。

 

ビフィズス菌の摂取は、アトピー性皮膚炎に対する新たなアプローチとして期待されていますが、あくまでも総合的な対策の一部として位置づけ、バランスの取れた対応を心がけましょう。

 

アトピー性皮膚炎に対するプロバイオティクスの効果に関する詳細な研究論文はこちら
日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎診療ガイドラインはこちら

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