

アレルギー性接触皮膚炎は、特定の物質(アレルゲン)との接触によって引き起こされる遅延型過敏反応です。この疾患は、皮膚科医が頻繁に遭遇する皮膚疾患の一つであり、適切な診断と治療が重要です。
アレルギー性接触皮膚炎の発症メカニズムは、主に2つの段階に分けられます:感作相(sensitization phase)と惹起相(elicitation phase)です。この過程には、T細胞介在性の免疫反応が深く関与しています。
アレルギー性接触皮膚炎の主な症状には以下のようなものがあります。
これらの症状は、アレルゲンとの接触部位に限局して現れることが多いですが、重症の場合は接触部位を超えて広がることもあります。症状の程度は、アレルゲンの種類や接触の頻度、個人の感受性によって異なります。
慢性化すると、皮膚の肥厚や苔癬化(苔むす様の変化)が見られることがあります。これは、長期間にわたる炎症反応と掻破行動によるものです。
アレルギー性接触皮膚炎を引き起こすアレルゲンは非常に多岐にわたります。以下に代表的なものを挙げます。
これらのアレルゲンは、日常生活のさまざまな場面で接触する可能性があります。例えば、ニッケルは装飾品やベルトのバックル、ボタンなどに含まれており、頻繁に皮膚炎の原因となります。
アレルギー性接触皮膚炎の診断は、主に以下の方法で行われます。
医師は患者の症状の経過、生活環境、職業、使用している製品などについて詳細に聴取します。これにより、可能性のあるアレルゲンを絞り込むことができます。
皮疹の形態、分布、経過などを観察し、アレルギー性接触皮膚炎の特徴的な所見を確認します。
アレルギー性接触皮膚炎の診断において最も重要な検査です。疑わしいアレルゲンを含む物質を患者の背中や上腕に貼付し、48時間後と72時間後に皮膚反応を観察します。
日本皮膚科学会による接触皮膚炎診療ガイドライン2020
パッチテストの実施方法。
診断が困難な場合や、他の皮膚疾患との鑑別が必要な場合に実施されることがあります。病理組織学的検査により、アレルギー性接触皮膚炎に特徴的な所見(表皮の海綿状態、リンパ球浸潤など)を確認できます。
アレルギー性接触皮膚炎の診断に特異的な血液検査はありませんが、他のアレルギー疾患や全身性疾患の除外のために行われることがあります。
アレルギー性接触皮膚炎の治療は、主に以下の3つのアプローチで行われます。
診断で特定されたアレルゲンとの接触を避けることが、最も重要な治療法です。これにより、症状の再発を防ぐことができます。
日本アレルギー学会による接触皮膚炎の治療ガイドライン
治療の注意点。
アレルギー性接触皮膚炎の予防と管理には、日常生活での注意が重要です。以下に主な注意点を挙げます。
一部のアレルゲンは、化学構造が類似した他の物質とクロスリアクションを起こすことがあります。例えば、ウルシかぶれの人はマンゴーの皮にも反応することがあります。自身のアレルゲンと関連する物質についても注意が必要です。
一部の接触アレルゲンは、経口摂取によっても症状を引き起こすことがあります(全身性接触皮膚炎)。例えば、ニッケルアレルギーの人は、ニッケル含有量の多い食品(ココア、ナッツ類など)の過剰摂取で症状が悪化することがあります。
アレルギー性接触皮膚炎の分野では、近年さまざまな研究が進められています。以下に最新の研究動向と将来の治療法の展望について紹介します。
アレルギー性接触皮膚炎の診断や重症度評価に役立つバイオマーカーの研究が進んでいます。例えば、特定のサイトカインやケモカインの発現パターンが、診断や治療効果の予測に有用である可能性が示唆されています。
皮膚バリア機能を強化する新しい外用薬や保湿剤の開発が進んでいます。これらは、アレルゲンの侵入を防ぎ、症状の予防や軽減に役立つ可能性があります。
アレルゲン特異的な免疫寛容を誘導する治療法の研究が行われています。これにより、アレルゲンに対する過剰な免疫反応を抑制し、長期的な症状改善を目