蕁麻疹の症状と原因
を蕁麻疹の主な症状と特徴
蕁麻疹の主な症状は、皮膚に突然現れる膨疹(ほうしん)と呼ばれる盛り上がりと、それに伴う発赤です。これらの症状は以下のような特徴を持っています。
- 膨疹の特徴。
- 大きさ:数ミリから数センチまで様々
- 形状:円形や不整形、時に地図状
- 色:赤みを帯びた皮膚色または白っぽい
- 触感:周囲より硬く盛り上がっている
- かゆみ。
- 程度:軽度から激しいものまで様々
- 特徴:ピリピリした痛みを伴うこともある
- 症状の経過。
- 出現:突然現れる
- 持続時間:通常24時間以内に消失
- 再発:場所を変えて繰り返し出現することが多い
- 随伴症状。
- 粘膜症状:まれに口唇や舌の腫れを伴う
- 全身症状:重症例では呼吸困難や血圧低下などのアナフィラキシー症状を伴うことがある
これらの症状は、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与える可能性があります。特に慢性蕁麻疹の場合、長期間にわたって症状が持続するため、患者さんの精神的ストレスも考慮に入れる必要があります。
蕁麻疹の原因と誘因
蕁麻疹の原因は多岐にわたり、完全に特定できないケースも少なくありません。主な原因と誘因は以下の通りです。
- アレルギー性反応。
- 食物アレルギー(卵、牛乳、小麦、甲殻類など)
- 薬物アレルギー(抗生物質、解熱鎮痛薬など)
- 昆虫刺傷
- ラテックスアレルギー
- 物理的刺激。
- 機械的刺激(デルモグラフィズム)
- 寒冷刺激(寒冷蕁麻疹)
- 温熱刺激(温熱蕁麻疹)
- 日光(日光蕁麻疹)
- 水との接触(水性蕁麻疹)
- 感染症。
- ウイルス感染(特に上気道感染)
- 細菌感染
- 寄生虫感染
- 自己免疫疾患。
- 甲状腺疾患
- 全身性エリテマトーデス
- 関節リウマチ
- その他の要因。
- ストレス
- ホルモンバランスの変化
- 運動
- アルコール摂取
- 特発性。
- 原因不明の慢性蕁麻疹(全体の約50%)
これらの原因や誘因を特定することは、適切な治療法の選択や再発予防のために重要です。しかし、特に慢性蕁麻疹の場合、原因を特定することが困難なケースも多いため、症状のコントロールに焦点を当てた治療アプローチが必要となります。
蕁麻疹の病型分類と診断基準
蕁麻疹の病型分類は、症状の持続期間や誘発因子によって行われます。主な分類と診断基準は以下の通りです。
- 急性蕁麻疹。
- 定義:症状が6週間未満で消失するもの
- 特徴:原因が特定しやすく、多くは自然軽快する
- 慢性蕁麻疹。
- 定義:症状が6週間以上持続するもの
- 分類。
a) 特発性慢性蕁麻疹(原因不明)
b) 誘発性慢性蕁麻疹(特定の刺激で誘発される)
- 誘発性蕁麻疹の分類。
- 物理性蕁麻疹。
- デルモグラフィズム(皮膚描記症)
- 寒冷蕁麻疹
- 温熱蕁麻疹
- 日光蕁麻疹
- 圧迫蕁麻疹
- 振動蕁麻疹
- コリン性蕁麻疹
- 接触蕁麻疹
- 水性蕁麻疹
- 物理性蕁麻疹。
- 診断基準。
- 膨疹の存在:中心が淡く周囲が赤い盛り上がり
- かゆみの有無
- 一過性の症状:24時間以内に消失
- 再発性:新しい部位に繰り返し出現
- 鑑別診断。
- 血管性浮腫
- 多形紅斑
- 虫刺症
- 薬疹
- 自己免疫性水疱症
診断には、詳細な問診と身体診察が重要です。必要に応じて以下の検査を行います。
- 血液検査:炎症マーカー、甲状腺機能、自己抗体など
- アレルギー検査:特異的IgE抗体、皮膚プリックテストなど
- 誘発試験:物理性蕁麻疹の診断に有用
蕁麻疹の正確な診断と分類は、適切な治療方針の決定に不可欠です。特に慢性蕁麻疹の場合、患者のQOLに大きな影響を与える可能性があるため、早期の正確な診断と適切な管理が重要となります。
蕁麻疹と関連する合併症や併発疾患
蕁麻疹は単独で発症することが多いですが、時に他の疾患と関連したり、合併症を引き起こすことがあります。皮膚科医は、これらの関連疾患や合併症について理解し、適切に対応する必要があります。
- アナフィラキシー。
- 定義:全身性のアレルギー反応
- 症状:蕁麻疹に加え、呼吸困難、血圧低下、意識障害など
- 注意点:緊急対応が必要な生命を脅かす状態
- 血管性浮腫。
- 特徴:皮下組織や粘膜下組織の浮腫
- 好発部位:口唇、舌、喉頭、手足
- リスク:気道閉塞の可能性があり注意が必要
- 自己免疫疾患との関連。
- 甲状腺疾患(特に慢性蕁麻疹患者の約10-20%)
- 全身性エリテマトーデス
- 関節リウマチ
- セリアック病
- 感染症との関連。
- ヘリコバクター・ピロリ感染
- 慢性副鼻腔炎
- 慢性扁桃炎
- 寄生虫感染
- 精神的影響。
- うつ病
- 不安障害
- 睡眠障害
- その他の関連疾患。
- 喘息
- アトピー性皮膚炎
- 食物アレルギー
これらの合併症や関連疾患の存在は、蕁麻疹の治療方針や予後に影響を与える可能性があります。例えば、自己免疫疾患を合併している場合、免疫抑制剤の使用を考慮する必要があるかもしれません。また、精神的影響が大きい場合は、心理的サポートや精神科との連携が重要になることがあります。
特に注目すべき点として、最近の研究では、慢性蕁麻疹患者における自己免疫性甲状腺疾患の有病率が高いことが報告されています。
Thyroid Autoimmunity and Chronic Urticaria: A Comprehensive Review
この論文によると、慢性蕁麻疹患者の約20%に自己免疫性甲状腺疾患が認められるとされています。このため、慢性蕁麻疹患者では定期的な甲状腺機能検査を考慮する必要があるかもしれません。
また、蕁麻疹とアナフィラキシーの関連性も重要です。特に、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、特定の食物摂取後の運動によってアナフィラキシーを引き起こす状態で、初期症状として蕁麻疹が現れることがあります。このような患者さんに対しては、詳細な問診と適切な指導が重要となります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー - 日本アレルギー学会
このリンクでは、FDEIAの診断と管理に関する詳細な情報が提供されています。
蕁麻疹の患者さんを診察する際は、これらの関連疾患や合併症の可能性を常に念頭に置き、必要に応じて適切な検査や他科との連携を行うことが重要です。また、患者さんの全身状態や生活の質(QOL)にも注意を払い、包括的な医療を提供することが求められます。