

蕁麻疹の主な症状は、皮膚に突然現れる膨疹(ほうしん)と呼ばれる盛り上がりと、それに伴う発赤です。これらの症状は以下のような特徴を持っています。
これらの症状は、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与える可能性があります。特に慢性蕁麻疹の場合、長期間にわたって症状が持続するため、患者さんの精神的ストレスも考慮に入れる必要があります。
蕁麻疹の原因は多岐にわたり、完全に特定できないケースも少なくありません。主な原因と誘因は以下の通りです。
これらの原因や誘因を特定することは、適切な治療法の選択や再発予防のために重要です。しかし、特に慢性蕁麻疹の場合、原因を特定することが困難なケースも多いため、症状のコントロールに焦点を当てた治療アプローチが必要となります。
蕁麻疹の病型分類は、症状の持続期間や誘発因子によって行われます。主な分類と診断基準は以下の通りです。
a) 特発性慢性蕁麻疹(原因不明)
b) 誘発性慢性蕁麻疹(特定の刺激で誘発される)
診断には、詳細な問診と身体診察が重要です。必要に応じて以下の検査を行います。
蕁麻疹の正確な診断と分類は、適切な治療方針の決定に不可欠です。特に慢性蕁麻疹の場合、患者のQOLに大きな影響を与える可能性があるため、早期の正確な診断と適切な管理が重要となります。
蕁麻疹は単独で発症することが多いですが、時に他の疾患と関連したり、合併症を引き起こすことがあります。皮膚科医は、これらの関連疾患や合併症について理解し、適切に対応する必要があります。
これらの合併症や関連疾患の存在は、蕁麻疹の治療方針や予後に影響を与える可能性があります。例えば、自己免疫疾患を合併している場合、免疫抑制剤の使用を考慮する必要があるかもしれません。また、精神的影響が大きい場合は、心理的サポートや精神科との連携が重要になることがあります。
特に注目すべき点として、最近の研究では、慢性蕁麻疹患者における自己免疫性甲状腺疾患の有病率が高いことが報告されています。
Thyroid Autoimmunity and Chronic Urticaria: A Comprehensive Review
この論文によると、慢性蕁麻疹患者の約20%に自己免疫性甲状腺疾患が認められるとされています。このため、慢性蕁麻疹患者では定期的な甲状腺機能検査を考慮する必要があるかもしれません。
また、蕁麻疹とアナフィラキシーの関連性も重要です。特に、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、特定の食物摂取後の運動によってアナフィラキシーを引き起こす状態で、初期症状として蕁麻疹が現れることがあります。このような患者さんに対しては、詳細な問診と適切な指導が重要となります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー - 日本アレルギー学会
このリンクでは、FDEIAの診断と管理に関する詳細な情報が提供されています。
蕁麻疹の患者さんを診察する際は、これらの関連疾患や合併症の可能性を常に念頭に置き、必要に応じて適切な検査や他科との連携を行うことが重要です。また、患者さんの全身状態や生活の質(QOL)にも注意を払い、包括的な医療を提供することが求められます。