当帰飲子の効果と乾燥肌やアトピーへの作用

当帰飲子の効果と特徴

当帰飲子の3つの特徴
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血行促進作用

血液循環を改善し、肌に栄養と水分を届ける効果があります

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乾燥肌改善

皮膚の保湿力を高め、乾燥によるかゆみを軽減します

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複合生薬処方

10種類の生薬からなり、皮膚の健康を多角的にサポートします

当帰飲子(とうきいんし)は、乾燥肌やかゆみを伴う皮膚疾患の改善に効果が期待できる漢方薬です。特に冬季に悪化する湿疹アトピー性皮膚炎など、乾燥が原因となる皮膚トラブルに対して高い効果を発揮します。

 

この漢方薬は、「血(けつ)」を補給する「四物湯(しもつとう)」をベースに、「気」を補う生薬やかゆみを止める生薬を配合した処方となっています。体内の血液循環を促進し、肌に必要な栄養と水分を届けることで、根本から皮膚の健康をサポートする働きがあります。

 

当帰飲子は体力中等度以下で、冷え症があり、皮膚が乾燥する方に適した漢方薬です。ただし、分泌物が多い湿疹や皮膚炎には適していないため、症状に合わせた適切な選択が重要です。

 

当帰飲子の血行促進と肌への効果

当帰飲子の最も重要な作用は、体内の血液循環を改善することです。血行が悪くなると、肌に必要な栄養素や水分が十分に届かず、乾燥やかゆみといった症状が現れやすくなります。

 

当帰飲子に含まれる「当帰」をはじめとする生薬は、血管を拡張させ、血流をスムーズにする効果があります。これにより、肌細胞への栄養と水分の供給が促進され、乾燥肌の改善につながります。

 

また、血行促進は肌のターンオーバー(新陳代謝)を正常化する効果もあります。健康な肌のターンオーバーは約28日周期ですが、これが乱れると古い角質が残りやすくなり、肌荒れの原因となります。当帰飲子はこの周期を整えることで、長期的な肌質の改善をサポートします。

 

冷え性の方は特に血行が悪くなりやすく、それに伴って肌トラブルも起こりやすいため、当帰飲子による血行促進効果は大きなメリットとなります。体を内側から温める作用もあるため、冬季の肌トラブル対策としても効果的です。

 

当帰飲子のアトピー性皮膚炎への効果と作用機序

当帰飲子は、特に乾燥が原因となるアトピー性皮膚炎に対して効果を発揮します。アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下により水分が失われやすくなり、外部刺激に対して敏感になる症状です。

 

当帰飲子に含まれる生薬の中には、炎症を抑える作用を持つものがあります。特に「何首烏(かしゅう)」と「蒺藜子(しつりし)」には、ステロイド様の作用があり、皮膚の炎症やかゆみを抑制する効果が期待できます。

 

また、「黄耆(おうぎ)」には皮膚表面の余分な水分(水毒)を取り除く作用があり、皮膚環境を整える効果があります。これらの生薬が複合的に作用することで、アトピー性皮膚炎の主な症状である乾燥、かゆみ、炎症を緩和します。

 

臨床研究では、当帰飲子を用いた治療で皮膚そう痒症の患者14例中10例に効果が見られたという報告もあります。特に冬季に悪化するタイプのアトピー性皮膚炎に対しては、高い有効性が示されています。

 

当帰飲子の配合生薬と各成分の働き

当帰飲子は10種類の生薬から構成されており、それぞれが独自の役割を持ちながら相乗効果を発揮します。主な配合生薬とその働きは以下の通りです。

  1. 当帰(とうき):血行を促進し、肌に栄養と水分を届ける中心的な生薬です。

     

  2. 地黄(じおう):血を補い、肌に潤いを与える効果があります。

     

  3. 芍薬(しゃくやく):鎮痛作用があり、かゆみを抑える効果が期待できます。

     

  4. 川芎(せんきゅう):血行促進作用があり、当帰と共に働きます。

     

  5. 蒺藜子(しつりし):ステロイド様作用でかゆみを抑えます。

     

  6. 防風(ぼうふう):発散作用があり、皮膚病の原因を発散させます。

     

  7. 何首烏(かしゅう):ステロイド様作用があり、皮膚の炎症を抑えます。

     

  8. 荊芥(けいがい):発散作用があり、皮膚病の原因を発散させます。

     

  9. 黄耆(おうぎ):皮膚表面の水毒を取り除き、皮膚の栄養を高めます。

     

  10. 甘草(かんぞう):他の生薬の働きを調和させる役割があります。

     

これらの生薬のうち、当帰、地黄、芍薬、川芎の4つは「四物湯」と呼ばれる処方の構成生薬で、血を補い血行を改善する基本的な働きをします。これに発散作用のある防風と荊芥、ステロイド様作用のある何首烏と蒺藜子、栄養を高める黄耆が加わることで、皮膚疾患に特化した効果を発揮します。

 

当帰飲子の副作用と服用時の注意点

当帰飲子は比較的安全性の高い漢方薬ですが、いくつかの副作用や注意点があります。

 

主な副作用として、以下のような症状が報告されています。

  • 消化器系:食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢
  • 皮膚:発疹・発赤、かゆみ

特に胃腸が弱く下痢しやすい方は、服用前に医師や薬剤師に相談することが推奨されています。また、服用後に上記の症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医療専門家に相談してください。

 

服用時の注意点

  1. 妊婦または妊娠の可能性がある方は、服用前に医師に相談してください。

     

  2. 医師の治療を受けている方は、他の薬との相互作用の可能性があるため、事前に相談が必要です。

     

  3. 薬によるアレルギー反応を起こしたことがある方も、事前に相談してください。

     

  4. 1ヶ月程度服用しても症状が改善しない場合は、服用を中止し、医師に相談してください。

     

服用方法としては、通常、成人は1日3回、食前または食間に水またはお湯で服用します。顆粒剤の場合は、あらかじめ口や食道を湿らせてから服用すると、薬が貼り付くのを防ぐことができます。

 

当帰飲子と他の漢方薬との比較と使い分け

皮膚疾患に用いられる漢方薬には当帰飲子以外にもいくつかの処方があり、症状や体質に合わせて使い分けることが重要です。ここでは、当帰飲子と他の主要な漢方薬との違いを比較します。

 

当帰飲子と当帰芍薬散の比較
両方とも「当帰」を含む処方ですが、用途が異なります。

 

漢方薬 主な配合生薬 主な効果 適応症状
当帰飲子 当帰、川芎、芍薬、地黄、蒺藜子、防風、何首烏、荊芥、黄耆、甘草 血行促進、肌の保湿 乾燥肌、かゆみ、乾燥性アトピー
当帰芍薬散 当帰、川芎、芍薬、茯苓、白朮、沢瀉 血行促進、水分代謝改善 冷え性、月経不順、むくみ

当帰飲子は皮膚の乾燥とかゆみに特化しているのに対し、当帰芍薬散は冷え性や水分代謝の改善に重点を置いています。

 

当帰飲子と温清飲の比較
両方とも皮膚疾患に用いられますが、症状の性質によって使い分けます。

 

漢方薬 主な配合生薬 主な効果 適応症状
当帰飲子 当帰、川芎、芍薬、地黄、蒺藜子、防風、何首烏、荊芥、黄耆、甘草 血行促進、肌の保湿 乾燥肌、かゆみ、分泌物の少ない湿疹
温清飲 当帰、川芎、芍薬、地黄、黄芩、黄柏、黄連、山梔子 血行促進、熱を冷ます 熱感を伴う皮膚炎、赤みのある湿疹

当帰飲子は乾燥が主な症状の場合に適しているのに対し、温清飲は熱感や赤みを伴う皮膚炎に効果的です。

 

その他の比較

  • 黄連解毒湯:熱感が強く、赤みやかゆみが激しい皮膚炎に用いられます。

     

  • 真武湯:冷えが強く、水分代謝が悪い方の皮膚疾患に効果的です。

     

皮膚疾患の漢方治療では、症状だけでなく体質や体調も考慮して処方を選択することが重要です。医師や漢方の専門家に相談して、自分に最適な漢方薬を見つけることをお勧めします。

 

当帰飲子のドライアイや頭皮トラブルへの効果

当帰飲子の効果は皮膚だけでなく、体内の様々な粘膜にも及びます。特に注目すべきは、ドライアイや頭皮のトラブルに対する効果です。

 

ドライアイへの効果
当帰飲子には、目の粘膜の乾きにアプローチする作用があります。ドライアイの原因となる「ドライシンドローム」を軽減する効果が期待できます。

 

ドライアイは現代社会で増加している症状で、長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用、エアコンの効いた乾燥した環境などが原因となります。当帰飲子による血行促進効果は、涙腺の機能を改善し、涙の分泌を促進することで、ドライアイの症状緩和に寄与します。

 

頭皮トラブルへの効果
当帰飲子は「乾性フケ」の発生を抑える効果も期待できます。乾性フケは頭皮の乾燥が原因で発生し、かゆみを伴うことが多いです。

 

頭皮のかゆみは、つい掻いてしまうことで皮膚がダメージを受け、さらにフケが増えるという悪循環を引き起こします。当帰飲子はかゆみを抑制しながら血行を促進することで、頭皮の乾燥を軽減し、フケの発生を抑える効果があります。

 

また、頭皮の血行が改善されることで、髪の毛の成長にも良い影響を与える可能性があります。頭皮環境が整うことで、健康な髪の毛の成長をサポートする効果も期待できるでしょう。

 

これらの効果は、当帰飲子が単に皮膚表面だけでなく、体内の血行を全体的に改善することによるものです。体の内側からのアプローチにより、外用薬だけでは得られない総合的な効果が期待できます。

 

当帰飲子の効果的な服用方法と治療期間

当帰飲子の効果を最大限に引き出すためには、適切な服用方法と治療期間の理解が重要です。

 

標準的な服用方法
成人の場合、通常は以下の用量を目安に服用します。

  • 1回量:1包(1.5g程度)
  • 服用回数:1日3回
  • 服用タイミング:食前または食間に水またはお湯で服用

年齢によって服用量が異なりますので、以下の目安を参考にしてください。

  • 15歳未満7歳以上:成人の2/3量
  • 7歳未満4歳以上:成人の1/2量
  • 4歳未満2歳以上:成人の1/3量
  • 2歳未満:服用不可

効果が現れるまでの期間
漢方薬は西洋医学の薬とは異なり、即効性よりも体質改善による根本的な治療を目指します。そのため、効果が現れるまでには一定の期間が必要です。

 

一般的に、当帰飲子の効果が現れ始めるのは服用開始から2〜3週間程度と言われていますが、個人差が大きいため、1ヶ月以上かかる場合もあります。クラシエ製薬の情報によると、「1ヶ月位服用しても症状が良くならない場合は服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談する」ことが推奨されています。

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