

「無添加」と書かれた日焼け止めにも、オキシベンゾンが堂々と入っている商品が存在します。
オキシベンゾン(Oxybenzone)は、化学名をベンゾフェノン-3とも呼ばれる紫外線吸収剤のひとつです。UVA・UVBの両方を吸収できる成分として、日焼け止め製品に幅広く配合されてきました。日本の医薬部外品・化粧品の成分表示では「ベンゾフェノン-3」と記載されていることが多く、「オキシベンゾン」という名前を見かけない人も少なくありません。
紫外線吸収剤は、紫外線のエネルギーを化学反応で熱に変換することで肌を守ります。一方、紫外線散乱剤(酸化亜鉛・酸化チタンなど)は物理的に紫外線を反射・散乱させる仕組みです。つまり仕組みが根本的に異なります。
オキシベンゾンは肌への浸透性が比較的高く、アメリカのFDA(食品医薬品局)が2019年に「安全性の確認が不十分な成分」に分類しました。血中から検出されたという報告もあり、内分泌かく乱作用(ホルモンへの影響)を懸念する研究者もいます。これは意外ですね。
かゆみが出やすい人にとっては特に注意が必要な成分です。オキシベンゾンはアレルギー性接触皮膚炎の原因物質(アレルゲン)として、欧州の皮膚科学会データベース(ESSCA)においても上位に挙げられており、日焼け止め成分の中でアレルギー反応を起こしやすいことが複数の臨床研究で示されています。
かゆみで悩んでいる場合、まず疑うべき成分のひとつがオキシベンゾンということです。
日本で販売されている日焼け止めには、オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3)を配合している製品が一定数存在します。特に「高SPF・高PA」をうたうウォータープルーフタイプや、外国ブランドの製品に多い傾向があります。ただし、メーカーは配合成分を随時変更するため、購入前に必ず最新の成分表示を確認することが原則です。
代表的な配合傾向としては以下のようなカテゴリに注意が必要です。
成分表の読み方は難しくありません。商品パッケージの「成分」欄、または添付の成分リストに「ベンゾフェノン-3」の文字がなければ、基本的にオキシベンゾンは入っていないと判断できます。成分表示は全成分表示が義務付けられているため、必ず確認できます。
製品の成分情報を素早く調べたい場合は、「INCI Decoder」(英語サイト)や国内の「@cosme」の成分タブなどが便利です。これは使えそうです。
上記リンクでは、日本の化粧品成分表示の法的根拠となる薬機法の情報を確認できます。成分名の正式な記載ルールを知るうえで参考にしてください。
オキシベンゾンによるかゆみは、大きく2種類のパターンで現れます。ひとつは「刺激性接触皮膚炎」で、成分が直接肌を刺激して引き起こされるもの。もうひとつは「アレルギー性接触皮膚炎」で、免疫反応が過敏に働くことで生じるものです。後者は初めて使用したときには症状が出ず、複数回使用した後に突然かゆみが出ることがあります。
アレルギー性の場合、一度感作(体がアレルゲンを記憶した状態)されると、ごく少量のオキシベンゾンでもかゆみ・赤み・湿疹が出るようになります。これが厄介なところです。
症状の特徴としては次のような点が挙げられます。
かゆみの原因がオキシベンゾンかどうかを確認するためには、皮膚科でのパッチテスト(貼付試験)が最も確実な方法です。パッチテストでは、疑わしい成分を背中や腕の内側に48時間貼り付け、72〜96時間後に反応を確認します。オキシベンゾンへの陽性反応率は、接触皮膚炎患者の調査で2〜3%前後というデータもあります。数字で見ると小さく感じますが、日焼け止めの使用者が多いことを考えると、実数としては無視できない規模です。
かゆみが繰り返す場合は、自己判断より専門家への相談が確実です。
上記リンクでは、接触皮膚炎の原因や対処法について皮膚科専門医の見解を確認できます。オキシベンゾンによるかぶれの理解に役立ちます。
かゆみの原因がオキシベンゾンと疑われる場合、「ノンケミカル」や「紫外線散乱剤のみ使用」と表記された日焼け止めへの切り替えが有効な対策になります。紫外線散乱剤(酸化亜鉛・酸化チタン)は肌に浸透しにくく、アレルギーを起こしにくい傾向があります。ノンケミカルが基本です。
国内で入手しやすいオキシベンゾン不使用の製品ジャンルとしては以下が代表的です。
成分を一目で確認したいときは、EWG(Environmental Working Group)の「Skin Deep」データベースも参考になります。製品名で検索するとオキシベンゾンの有無と安全スコアが表示される便利なツールです。ただし米国製品が中心のため、国内製品はカバーされていないこともあります。
EWG Sunscreen Guide|日焼け止め成分の安全性データベース(英語)
上記リンクでは、成分ごとの安全性評価が確認できます。オキシベンゾンの危険度スコアの根拠を知るうえで役立ちます。
日焼け止めを選ぶ際は、「ノンケミカル」「紫外線吸収剤不使用」「ベンゾフェノン-3不使用」などの記載をパッケージで確認する、この1アクションだけで対策できます。
日焼け止めによるかゆみの原因は、オキシベンゾンだけではありません。この点は見落とされがちですが、複数の成分が重なって反応することも多く、「オキシベンゾン不使用に変えたのにまだかゆい」という状況はよく起きます。つまり複合リスクへの理解が必要です。
かゆみを引き起こしやすい成分として、皮膚科学の文献で繰り返し登場するのが以下の成分です。
複数の成分に感受性がある場合、アレルゲン特定が難しくなります。そのため、かゆみが続く場合には皮膚科での総合的なパッチテストを受けることが最も効率的な対策といえます。
また、オキシベンゾンを含む紫外線吸収剤は、肌のバリア機能が低下しているとき(アトピー性皮膚炎・乾燥肌・摩擦後など)に特に浸透しやすく、症状が強く出る傾向があります。紫外線対策の方法として、日焼け止め塗布だけに頼らず、UPF(紫外線防護係数)対応の衣類・帽子・アームカバーを組み合わせることで、肌への成分接触そのものを減らすアプローチも有効です。かゆみを根本から減らすには成分との接触を減らすことが条件です。
かゆみが出やすい人は、日焼け止めを顔・首など摩擦や汗の多い部位に使用する場合、単回パッチテストとして腕の内側に少量を24時間塗布してみてから全体に使用する「セルフパッチテスト」を習慣にするだけでも、大きなトラブルを回避できます。
国立医薬品食品衛生研究所|化粧品の安全性評価と皮膚感作性に関する資料(PDF)
上記リンクでは、化粧品成分の皮膚感作性評価の手法と基準について専門的な情報が確認できます。オキシベンゾンを含むUV吸収剤全体のリスク理解に役立ちます。